コバヤシさん家のカツだって一生懸命生きてるんだよ!!   作:社畜だったきなこ餅

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ちょっと簀巻きにされたカツの脱出手段で悩み始めて中々書けなかったので。
たまりにたまってた小ネタ集でお茶を濁してみる。

時系列的にいつごろやねんって突っ込みありそうですが、そこはアレです。
Gジェネのアンソロ本の中の短編みたいなノリでお楽しみ頂ければと思います。


コバヤシさん家のカツ、はみだしアーガマ祭

 

【何事も限度ってモノがある】

 

 突然な話であるが、エゥーゴと言う組織は連邦軍の中の一派閥……スペースノイド中心に集まった軍事組織である。

 しかし同時に現在の主流と言えるアースノイド至上主義なフルスロットルタカ派のティターンズと敵対しており、そんな関係から台所事情は聊かお寒いモノを抱えている。

 そして重要な戦力であるMS、そしてMSを運用する戦艦と言うモノは総じて金食い虫であり、機体や消耗品の補充どころか維持するだけでも金が吹っ飛んでいく代物だ。

 

 では、何故そんなエゥーゴが戦闘行動を続けられるかと言えば答えは簡単、スポンサーであるアナハイムエレクトロニクスの存在がある。

 色んな政治力学やら思惑やら何やらかんやらがあり、エゥーゴはスポンサーからの資金提供や装備の提供によって活動できているのだ。

 

 そんな大事な大事なスポンサー様であるアナハイムエレクトロニクス。

 そこから派遣された有力者であるウォン・リーと言う存在は、それはもう大事なお客様と言っても過言ではない。

 故にこそアーガマの艦長であるブライト・ノアや、エゥーゴにとって中核的人物と言えるクワトロ・バジーナが主に応対をしているわけだが……。

 

 

「ゴチになります!」

 

 

 アーガマの中でも割と自由人な、カツ・コバヤシは物怖じする事なく接していた。

 なんせ今も、ウォンの奢りでアーガマの食堂でステーキをがっついている始末である。

 

 

「カツ、少しは遠慮しろよ……」

 

「子供が遠慮なんてするな。カミーユ・ビダン、お前もパイロットなのだからカツを見習ってしっかり食べろ」

 

 

 そんな友人の様子に、思わず苦言を呈するカミーユ・ビダンの言葉に遠くから見守っていたアーガマクルー達が何度も力強く頷いたのは言うまでもない。

 しかしウォンがどんな反応を示しているかと言えば、カツの喰いっぷりに不快な様子を見せる気配はなくむしろ鷹揚な口調でカミーユにまで食を薦めてくる始末だ。

 

 困惑するのはカミーユである、地球へ降りる前……エゥーゴに参加して間もない頃にウォンに鉄拳制裁による修正を受けた記憶が色濃く残っているのだから当然とも言えるが……。

 その時に感じた、傲慢で口先だけの喧しい大人と言う印象とは全く違う様子を見せているのだから。

 

 

「どうした? 意外そうな目で私を見て」

 

「いえ……」

 

 

 コーヒーを一口啜り、自身へ視線を向けてきたウォンの言葉に目を逸らすカミーユ。

 まるで自身の内面を見透かそうとしてくる大人に、カミーユはどこか居心地の悪さを感じていた。

 

 

「当ててやろうか? あの時修正した人間とは別人に見えているのだろう?」

 

「そんな事……! ……いえ、その通りです」

 

 

 そして愉快そうに喉を鳴らして笑いながらウォンが放った言葉に、自身が感じた疑問を言い当てられたカミーユは思わず激発しかけて勢いよく席から立ち上がるも。

 何も考えてなさそうな顔でステーキを頬張っている隣の友人の視線に、バツの悪さを感じながらウォンの言葉を小さな声で肯定して椅子に座り直す。

 

 

「あの時のお前は増長し傲慢になっていた、そして志願者という立場でこそあるが問題行動があったから修正した。それだけだ」

 

「だから子供を殴っても良いっていうんですか?」

 

「それが必要だと思ったからな」

 

 

 呻くようなカミーユの言葉に、悪びれる事無くコーヒーカップを傾け中身を飲むウォンの様子にカミーユは苛立ちを覚えながらも。

 目の前の大人の言葉に、今は納得を感じる事も出来るカミーユはもやもやした気持ちを抱えながらも、その気持ちを飲み下すかのようにドリンクを喉へ流し込むのであった。

 

 

「すんませんウォンさん、ステーキ定食お代わりいいっすか?」

 

「お前は少しは遠慮しろ、カツ」

 

 

 

 

 

【アレを見つけた時、やるしかねえって思いました。 ~カツ・コバヤシの述懐より~】

 

 アーガマの居住ブロックにある倉庫の一角、別名『持ち主不明品エリア』

 その中で二人の少年が棚や箱の中身を物色していた。

 

 

「おーいカミーユ、そっちに何か良さそうなのあった?」

 

「無さそうだよカツ、全くどうして俺達がレクリエーションの余興なんてやらなきゃいけないんだよ」

 

「ボヤくなって、くじ引きでそうなったんだから」

 

 

 そう、アーガマのMSパイロットである志願兵組の二人ことカミーユ・ビダンとカツ・コバヤシの二人である。

 事の発端はエゥーゴ所属艦『ラーディッシュ』の艦長であるヘンケン・ベッケナーがアーガマクルーとラーディッシュクルーの懇親を兼ねたレクリエーションをしてはどうだ、などと言い出したのが始まりである。

 そんな事してる場合じゃないだろなどとカミーユがボヤいたりもしたが、しかし一時の平穏とも言える時間を有効活用するのも悪くないとアーガマに同乗しているスポンサーのウォンが許可を出してしまい。

 

 厳正なる抽選と言う名のくじ引きの結果、一部から凸凹コンビなどと呼ばれているカミーユとカツが余興で何かをする羽目になったのであった。

 

 

「そもそもレクリエーションで余興って何なんだよ、そんな事やってるほど暇でもないだろうに」

 

「気持ちはわからんでもないけど、決まった事だし諦めなよカミーユ」

 

「カツ、お前はレクリエーションで出される御馳走が目当てだからそう言えるんだよ」

 

「だってしょうがないじゃん、スポンサーことウォンさんが自腹切ってまで旨いもの補充してくれるって言うんだからさ」

 

 

 そんなもん補充するぐらいなら弾薬なり強力なMSなり補充しろよ、などと思うカミーユであるも。

 御馳走に夢膨らましている友人の喜びに水を差すのも悪いと思ったのか口には出さず、溜息一つ吐いて倉庫の中で余興に使えそうなものを探し始める。

 そして。

 

 

「なんだよこの全身タイツ、こんなもの誰が買ったんだ」

 

「こっちにはカボチャの被り物があったよ」

 

 

 箱の中から二人分のフリーサイズの真っ黒な全身タイツを取り出したカミーユが、意外とアーガマのクルーはアホが多いのかもしれないなどと考える中。

 カツが棚の奥からカボチャの被り物を二つ見つけ、両脇に抱えてカミーユの下へ持ってくる。

 

 

「そんなキワモノ使えるかよ!」

 

「でもさカミーユ、それ着てコレ被って踊ったら。ウケそうじゃない?」

 

「恥ずかしくて出来るか!!」

 

 

 ギャーギャーと倉庫の一角で騒ぐ少年二人、やがて口論も不毛だと言う事でいったん被り物とタイツを使う手段は保留となる。

 しかし、他に使えそうなものも見つかる事はないのであった。

 

 

 

 

【なおこの時の映像はUC.0093にラーカイラムに乗船したハサウェイが偶然発見して視聴する模様】

 

 とあるコロニー近隣の宙域。

 そこに停泊しているエゥーゴ所属艦のアーガマとラーディッシュ両艦のスタッフは、一部の人員を警戒要員として残しつつ交代でレクリエーションによる束の間の宴を楽しんでいた。

 

 

「……話は以上だ、今は各員この宴で英気を養ってくれ。乾杯!」

 

 

 そして会場に設置された檀上で挨拶をしていたウォンの合図を皮切りに、会場の各地で乾杯の言葉が響き歓談が始まる。

 無論万が一の事態に備えてアルコールこそ用意されていないが、それでも普段の食事よりも幾らか豪勢な料理や飲み物にエゥーゴ人員はその顔に笑みを浮かべている。

 

 

「え、エマ中尉。どうだ、楽しんでいるか?」

 

「ええヘンケン艦長、このような宴の機会を申し出て下さりありがとうございます」

 

「い、いやいいんだ。それよりどうかな、少し話でも」

 

「申し訳ありません、あちらで友人を待たせているので……」

 

 

 そしてヘンケン艦長は勇気を振り絞ってドリンク片手にエマへと言い寄るも、やんわりと躱されて肩を落としていた。

 あまりの不憫さにラーディッシュの艦橋クルーが思わず慰めに走る始末である。

 

 

「あら良かったの? エマ中尉」

 

「いいのよ、何話していいのかわからないし」

 

「気の毒ねえ、ヘンケン艦長も」

 

 

 そんなやり取りを見ていたレコアは、自分の方へ近寄ってきたエマを揶揄うように笑うが、エマはレコアの言葉に肩を竦めるのみで。

 あまりにも取り付く島のないエマの様子に、思わずヘンケンを不憫に思うレコアであった。

 

 

「そう言えば余興でカミーユとカツが何かさせられるみたいだけど、大丈夫かしらね?」

 

「カミーユは最後まで文句たらたらだったわね、カツは何だか妙に張り切ってたけど……不安しかないわ」

 

 

 ドリンクで喉を潤し、新鮮な野菜が挟まったサンドイッチを一口齧ったレコアの放った言葉にエマは苦笑いしながら応じると共に。

 最後まで嫌だ嫌だと抵抗していたカミーユと、やるからには全力だと妙に張り切っていたカツの様子を思い出してげんなりとした口調で呟く。

 

 戦場でも日常でも、カツが全力を出すと言った時は何かしらやらかすという事を、エマは知っていたのだ。

 そして会場に若干困惑した声でファ・ユイリィのアナウンスが入り、パーティに参加している人達の視線が先ほどまでウォンがスピーチをしていた檀上へと向けられ。

 

 

 パーティ参加者全員の空気が凍り付いたと言えるほどに、停止した。

 

 

 思わずクワトロはサングラスを外してまで檀上に立つ二人の姿を二度見し。

 

 口さがない人間には白目なしとか言われるつぶらな目つきをしたブライトは、目を見開いたまま固まり。

 

 ヘンケンは口の中を潤そうと口へ含んだドリンクを勢いよく噴き出し。

 

 エマは遠い目をして会場の天井を仰ぐように見上げ。

 

 レコアはツボに入ったのか引き攣るような声で爆笑を始め。

 

 ウォンはあのバカ二人め、と呻くように呟いた。

 

 

 壇上に現れた二人……カミーユとカツは全身タイツを着用した状態で小脇にカボチャの被り物を抱えて、立っていたのだ。

 カミーユの顔は羞恥の余り暴発秒読みと言えるぐらい真っ赤に染まっていて、一方でカツは渾身のドヤ顔と言うべき表情をしていた。余りにも酷い対比である。

 

 そして流行のポップなミュージックのイントロが流れると共に、カミーユとカツがシンクロしているかのような動きで一斉にカボチャの被り物を被る。

 どこからともなく『ブッピガァン!』という音がしたような気がパーティ参加者はしたが特にそんな事はない。

 

 

 やがてカボチャの被り物をした全身タイツを着用した二人の少年はミュージックに合わせて踊り始め、激しい旋律へと切り替わった瞬間キレッキレのダンスを披露し始めた。

 

 

 結果から言えばレクリエーションの余興として100点満点と言える大絶賛と爆笑を引き出したカミーユとカツであったが。

 人生最大の汚点だと叫びキレ散らかしたカミーユが、発案者であるカツを追いかけ回した末にボコボコに殴り倒す痛ましい事件が発生した事を踏まえ、このパーティの映像は封印される事になるのであった。

 

 




最初はカツがカボチャ被って全身タイツ着て踊ってたところを、カミーユが殴って正気に戻すとか考えてたんですけども。
どうせならカミーユも踊らせようぜ、って閃きが降りてきた結果こうなりました。
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