理想のシチュ   作:モン娘好きの勿忘草

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お待たせしました。後編になります。
今回は悪魔のメア視点になります。


悪魔とのシチュ(後編)

 私は生まれた頃から落ちこぼれだった…。周りが上手に出来ることも満足に出来ずに失敗ばかり。周りはどんどん成果を上げていっても私は空回り…。

唯一持っていたのは凄まじい力だけ。その力も周りを恐れさせ遠ざける…。

私は周りに近付きたくて色々なことを引き受けた。どんな勝手なことも嫌なことも笑顔でやった。そうすればきっと好かれる、認めてもらえる。

…でも現実は違った。私は誰にも愛されず都合の良い存在として怒らせなければいいやつと言われていた。

…そうか。周りの顔色を見て行動しても結局はこうなる。

もういい。力のある「私」は…「我」はその力を使い決して周りに屈しない存在であろう…。

 

「ん…。なんだ?朝か…。嫌な夢を見た。」

 

我は布団からもぞもぞと身体を這い出し時計を見る。

 

「8時50分か…。あいつはもう大学か。」

 

我は仰向けになり大の字で天井を見る。

あいつが母親に歯向かったあの日から全てが変わった。あいつはバイトを始めて金を貯めていき学校で頼み事をされても我が間に入らなくても自分で断る様になった。

母親はあいつに「いい子」を強制することはなくなったがお互いに干渉はしなくなっていった。あいつは母親に大学進学に伴って家を出て1人で暮らすことを提案した。前から男と会っていて仲を深めていた母親はあっさりと了承した。今では男と2人で暮らして楽しく過ごしているらしい…。

あいつはというとバイトした金で部屋を借りてそこで我と2人で暮らしている…と言っても以前の様な「従姉妹のメア」ではなく周りには姿も見えない本来の悪魔としてだ。

あいつは卒業した後に我の居場所が無くなると思い自由でいられる様にと部屋を借りたそうだ。

確かにあいつがいないあの家にいる理由も無いしかと言って大学まで着いていき全て予定を合わせるのは不自然かと思っていたが…。

 

「あいつの魂…願いはなんだろうか…。」

 

我ら悪魔は人間の魂の輝きが見える。魂とは己を高めていくごとに磨かれその美しさを放つ。悪魔はその輝きを願いの契約によって印をつけて…堕落させその魂をいただく。

我もあいつの魂の金色の輝きを目にして狙いをつけた。最初は本当にそれだけだった…。しかしあいつを近くで見ているとわかってきた。あいつの魂の輝きはメッキだ。あいつは『いい子』である為に周りの頼みを断れず周りに認めてもらえる様に振舞っていた。それが…かつての「私」の姿と被ってしまいあいつへの頼み事を全て邪魔する様にした。

力がありすぎる為に独りだった「私」はなんでも言うことを聞いて周りに溶け込もうとした。結果、「私」は都合の良い道具と呼ばれた。道具の扱いは辛かったから力を誇示して周りを圧倒する「我」としてあり続けた…。

きっとあいつは迷惑だろうと…邪魔だろうとわかっていながら。しかしそんなことをしててもあいつは決して我を嫌がらなかった。口では悪態を吐きながらも心の底からは邪魔だとは思っていなかった。

ある時からあいつの魂の輝きが変わり始めた。メッキが剥がれ落ちてその中から本物の輝きを放ち始めた。それは安っぽい輝きでは無くルビーの燃える様な真紅、エメラルドの様な透明感のある緑、ラピスラズリの星空を思わせる光沢のある深い青、そしてダイヤモンドの様な眩い輝き。

そしてその光は周り全員ではなく我に向けてのものだと言わんばかりに主張している。

つまりそれは…そういうことなのだろう。

果たして我でいいのだろうか。こんな独りよがりの悪魔に…。

ふと腹の音が鳴る。時計を見るともう11時半になろうとしていた。考えに耽っていたら2時間以上も経っていたらしい。ごちゃごちゃとした考えは一旦置いておいてまずは食事にしよう。我は1人でヨシッと呟くと出掛ける用意を始めた。

 

 我はあいつが通っている大学の食堂で天ぷらうどんとおにぎりを頬張っていた。あいつの部屋から大学までの距離は結構近い上に食堂は一般開放していてコンビニ飯を買うよりも遥かに安いし味もいい。

我は食事はからっきしだし家事といっても大したことも出来ない。あいつは嫌な一つ見せずに全てやってくれる。他の悪魔は人間を堕とすためにそういったことは得意なのだが…。

またナーバスになろうとしていた我はその考えをかき消す様にうどんのつゆを一気に飲み干し食堂を後にした。

今の我の姿は本来の悪魔としての姿ではない。角は隠し銀の長い髪も茶髪のショートボブで肌も青ではなく人間と同じ色だ。そしていつも同じ姿で行くと顔を覚えられ、もしあいつの家に一緒にいるとなると普段あいつ以外から見えない我は面倒になるだろうと毎回容姿を変えていた。

 

「このまま帰るのもなんだしあいつを少しからかってから帰ろうか。」

 

たまに変えた姿で声色も変えあいつに会いに行き思わせぶりな態度をとってからかう。

しかしあいつは全然ドギマギすることなくいつも我の正体を見破り

 

「なんだメアか。今日はそんな姿なんだな。」

 

くらいで終わらせる。そして我はすぐにバレて悔しいのと気付いてくれた時のなんとも言えない心地よさの中帰る。それがこの大学に来る食事以外のもう一つの楽しみになっていた。

あいつがどこにいるかは魂の輝きでわかる。さて、今日はどうかな?そんなことを考えながら我はあいつのもとへ向かっていった。しかし今日はいつもと違ってからかうことは無かった。

 

 あいつはどこだ?輝きが近いからすぐ見つけられるに違いない、お?見つけた。

我はあいつに声をかけようと手を振ろうとしてすぐに手を引っ込めた。

あいつの隣で楽しそうに話している女は誰だ?

学生が沢山歩いていて混雑しているとはいえ近すぎないか…?

女は目をキラキラと輝かせながらあいつの話を聞いている。あいつもとても楽しそうに女と喋っていて盛り上がっていく様子と共に魂の輝きが増す。

我は会話が気になり聞き耳を立てた。

 

「……って凄い素敵…好き……私も……」

 

「ありがとう……じゃあ学校が終わったら……を買いに行こう…プレゼント……」

 

「…じゃあ駅前の…時計塔で……3時半…」

 

人混みに紛れて聞こえてくるのはこんな感じだ。

…そうか。あいつはいつの間にか彼女がいたのか…。

まぁあいつは元々人を助けるのは嫌いではなかった。そして以前と違い芯もある。その魅力に気付く女だって当然現れるだろう。楽しそうに笑い合う2人を見ながらチクリと心が痛んだがその痛みに気付かない振りをして大学を去った。

 

今は3時半、我は時計塔の裏で変装をして立っている。何故だ!我は何故ここにいる…?

そうだ、もしかしたらあいつが彼女が出来たことでそれに関する願いをするかもしれない!或いはあいつが頼まれ事を引き受けているのではないかとそれを見に来ただけだ!

自分にそう言い聞かせていると向こうから男女が2人で歩いてくる。

 

「結局、時計塔に着く前にあっちゃったねー。」

 

「ごめん、すぐに見にいきたくてさ。大学終わったらすぐに向かおうって必死だったから。」

 

「全然いいよ?むしろそういう風に一所懸命なんだなぁってわかってなんかいいじゃん?」

 

あいつと今日見た女だ。

女はとても楽しそうな様子であいつをからかい、あいつは顔を真っ赤にして照れている。

 

「いいな…。」

 

ポツリと我の口から溢れる言葉に我は慌てて口を紡ぐ。

そうだ、我とあいつは悪魔と人間…。願いを叶える為に我はいて、何より種族も違う。

 

「それじゃ、早速だけど行こうか!」

 

「え?もう?ちょっと僕はまだ心の準備が…」

 

「何言ってるの?善は急げだよー?時間は待ってはくれないからね!早く行こー!」

 

女はあいつの手を引き走り出した。我はバレない様に距離をとりながら着いて行った。

 

 大きなショッピングモール、我は服を見るふりをしながら向かいのジュエリーショップで話している2人を観察している。

 

「……あまり……高すぎる…私は……どうかなー……?」

 

「でも……大事な……だし……」

 

「……気持ちだよ……私は……嬉しいなー……」

 

やはり人混みの中だとあまり聞き取れないか…。

しかしあいつはあの女に何かをプレゼントしようとしている様だ。相当高いものの様で女が遠慮してるのか…。魂の輝き目当てに引き寄せられた我とは大違いだな…。

 

「お客様ー?何かお探しの服はありますでしょうかー?」

 

愛想の良い笑顔で店員が尋ねてくる。ここで目立ってしまっては尾行がバレてしまうかもしれない。

 

「いや…いい。もう…帰るから。」

 

我はここにはもう居られないと思い、店を後にした。店員と話していて見つかると面倒だし…何より楽しそうなあの2人をもう見ていたくはないと思った。

 

 部屋に戻った我はそのまま何かをする訳でもなく窓を開けて外の風を感じている。

いつもなら面白い漫画もゲームも今は情報だけが右から左で何も入ってこない…。

あのいくつもの宝石の様な魂は我にずっと向けられていると思っていた。一緒に暮らす為に部屋を借りたと聞いた時は驚きと共に嬉しかったのも事実だ。

大学で変装して会ってもすぐに我とわかる事に満たされていく感じがしていた。

 

「好きになっていたのかー…」

 

誰もいない部屋で我はため息と共に言葉にする。

そうか…人を堕落させ魂を手に入れる悪魔が逆に好意を寄せて失恋して落ち込むとは…相変わらず「私」は落ちこぼれだな…。

そんなことを考えていると外から足音が聞こえてくる。内心焦りを感じながらもある決意をする。

ここを出ていく決意を…。

 

「ただいまー。ごめんな、遅くなって。今から晩ご飯作るからな。今日はメアも好きな生姜焼きだぞ!」

 

いつもと変わらない様子のあいつ…。でも魂の輝きはいつもより眩しく美しい。

あの女とのデートがきっと楽しかったのだろう。

我は全てを覚悟して言葉を紡ぐ。

 

「貴様の願いを…聞こう。」

 

 あいつは一瞬、いつものかと笑いながらこっちを見たが我の表情を見ていつもの様子とは違うと気付いたのだろう。我の前にゆっくりと座る。

 

「いきなり、どうしたんだ?」

 

緊張した雰囲気、空気が張り詰める。

 

「今まで貴様は願いを聞いても特にないと答えてきた。それは本当に望みが無いのは明らかだった。だから今までは特に言及することは無かったが今回は違う…。望みが出来たのだろう?」

 

我の言葉にあいつは驚いている様子だ。

 

「何故、知ってるんだ…?」

 

「何故?我は悪魔だからな。魂の輝きでわかる…。だから貴様の願いを聞こう。…それともし出ていけと願っても安心しろ。その時は魂は奪わない。」

 

我は目を逸らしながら最後の言葉を付ける。

我の言葉にきっとあいつは安堵しているだろう。きっと願い通り我は出ていきあの女を遠慮なく家に呼ぶことも出来る。2人でいる時間ももっと増えるだろう。

 

「ん?出ていけ?何を言ってるんだ?」

 

あまりにも拍子抜けした様な声に思わずあいつの顔を見る。まるで意味がわからないと言った顔でポカンとしている。あいつは続けて

 

「お前は僕の願いがわかっているんじゃないのか?」

 

とキョトンとした顔で聞いてくる。おかしいぞ?何かが噛み合っていない。我は恐る恐る確認した。

 

「え?今日…貴様はあの女と一緒にデー…」

 

「なんだ、今日のあれを見てたのか。それで願いがわかったのか。そうだよ、僕の願いは…。」

 

話の途中であいつは割り込み願いを話し出した…。

待て、まだ心の準備が、

 

「メア、僕と一緒にこれからもずっといて欲しい。」

 

そういうとポケットから小さな箱を取り出した。中には綺麗な金色の指輪が入っている。

呆気に取られていると男は話を続けた。

 

「ごめんな。まだ学生のバイトじゃ高いものは買えなくて…。でも気持ちが大事だって言われたから…。」

 

「ちょっと待て…。今日、あの女とジュエリーショップに行っただろう?あの女は彼女でデートじゃないのか?」

 

しどろもどろな男に確認する様に我は尋ねる。

男は頭に?を浮かべながら

 

「いや?あの子は僕の相談に乗ってくれててメアに送る指輪を一緒に選んでくれていただけだぞ。あの子は恋バナとか好きだからな。」

 

そう言うと照れくさそうにハハハッとはにかむ。

恋バナ?恋?我に?我は…「私」はそんな好意をもらえる様な資格はあるのか?

 

「一緒にいる…。我は…わ、私は本当は力だけある…落ちこぼれで…貴様の魂目当てに来たような最低のヤツで…何より種族も違うのに…。」

 

私は溢れる涙を抑えながらしどろもどろに伝える。そんな言葉にもあいつは

 

「たとえそうだとしても、僕が強くなれたのはメアがいたおかげだし僕に都合の良い人では駄目だと教えてくれたのはメアなんだよ?メアがいない世界なんて考えられないよ。」

 

そう言うと私の頭を優しく撫でた。なんて心地いいのだろうか。こんな私でもそばにいていいのか。

 

「それで…僕の願いはどう?叶えてくれる?」

 

あいつのそんな質問に

 

 「この指輪で…ううん、この指輪がいい…。」

 

聞こえるかどうかの声で呟くと「我」はクククッと笑い声高らかに答えた。

 

「いいだろう。その願い、叶えよう!貴様が生きてる限り我はそばにいて、契約の元、貴様が朽ちても魂は我のものとしてそばにありつづけよう!」

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