機動戦士ガンダム 水星の魔女 ターンA(エース)をねらえ! 作:ノザ鬼
22
** 秘密ノ **
光の尾を引くビームは、命を刈り取る一撃である。
当たれば、助かる確率は少ない…。
そう、スレッタは初めての実戦…。
命のやり取りをしているのである。
極限のプレッシャーは、十代の少女の精神と体力を奪っていく…。
デブリの陰に身を潜めるスレッタのモビルスーツ。
コックピットでは…。
ヘルメットのバイザーを、
「はっ…。」
曇らせる息は、
「はっ…。」
間隔が、
「はっ…。」
短くなっていた。
疲労が、
「ふ…。」
目に見え、
「ーーっ。」
蓄積されている。
今の状態から、
「このままじゃ…。」
推測される答えは、
「やられる…。」
簡単であった。
額に流れる汗を、
『ツーッ。』
ヘルメットの上から、
『キュッ…。』
また無意識に右手が拭う。
スイッチを、
「何か…。」
切り替えながら、
「ないか…。」
表示を読み取っていく。
それは…。
悪あがきではなく、信頼であった。
スレッタのコーチに対する信頼…。
とは、少し違う…。
他の女学生も一人一人に目を配らせ、的確な指導を行う姿は信頼できた…。
まあ、言葉の選び方と態度は置いておいてだが…。
そんな、コーチがわざわざ寄越(よこ)したものが、これだけのはずはない…。
そんな読みが働いた…。
何度目かの、
『カチッ…。』
スイッチ操作。
お約束の、
「ん?」
画面を戻す操作。
前の画面の、
「こ…。」
表示を、
「これは!」
再確認する。
アニメ的表現なら…。
スレッタがモニター画面を見るのではなく…。
モニター画面からスレッタを見るアングルである。
薄っすらと透けるモニター画面に映る画像と文字の奥に、こちらを見るスレッタ。
その顔に浮かぶ表情…。
左の口角が少し上がり、
『ニヤリ…。』
効果音を出す。
目は、
〔流石、コーチだ。〕
語る。
そんな、何かを期待させるシーンである。
鼻から、
『すーっ。』
吸い込んだ息を、
「はっ!!!」
気合と共に吐き出す。
そして…。
ヘルメット越しに、
『バシッ!』
両手で頬を張った。
そして…。
操縦桿を、
『グッ。』
握り直し、
「いくぞ!」
自らを鼓舞する。
押し込まれた操縦桿が、
『グイッ!』
モビルスーツに、
『グ…。』
パイロットの、
『ォォォォォ…。』
意思を伝え、
『ン!』
光の尾を引かせる。
23
** 決着 **
敵が、
『ビシューーーン!』
撃つ。
その前に、
『グイッ!』
スレッタが、
『ギュィィィィィ!』
回避する。
スレッタが、
『ビシューーーン!』
撃つ。
敵が、
『ギャォォォォォン!』
回避する。
その攻防は、正に千日手!
互いに譲らず戦い続ける。
その一挙手一投足を、
「きゃぁ!」
モニターで見ている、
「えっ!」
女学生達が、
「あぁぁぁぁぁっ!」
悲鳴にも似た声で、
「危ない!」
飾る。
それは、突然やって来た…。
この楽しい時間の終わりである…。
スレッタが、
『ビュ…。』
デブリの陰から、
『ゥゥゥゥン!』
出る。
その瞬間!!!!
モニターに映ったビームライフルの銃口。
軌道が読まれていた…。
知らず知らずに、体力と精神が削られ、いつしか単純な動きになっていた…。
敵の、
『ニヤリ。』
モビルスーツが、
〔勝った!〕
と…。
その瞬間…。
俯き加減のバイザーの反射でスレッタの表情は読み取れない。
だが…。
辛うじて透ける口元に浮かぶのは…。
少し口角が、
「そうだよね…。」
上がり、
「その位置に…。」
確かに、
「来るよね…。」
笑っていた。
それは、些細な違和感となって感じられた。
何かは、解らないがが確かに感じられる。
モニターに映るスレッタのモビルスーツを確実に勝利の瞬間に捉(とら)えていた。
モビルスーツのコンピューターが、
『ピッピ…。』
先に違和感の正体に気が付いた。
モニターに画像解析された二枚の静止画。
無い!
スレッタのモビルスーツが装備していたはずのシールドが、今は無い。
敵の迷いが生んだ数瞬の時間…。
それは、スレッタには十分過ぎる刻(とき)であった。
力を、
「もう!」
入れた指が、
「遅い!」
トリガーを引く。
スレッタの機体が、
『ビッシューーーン!』
駆け抜けた軌道上のデブリの陰から、
『ビッシューーーン!』
放たれるビームの光が、
『ビッシューーーン!』
交点を結ぶ。
そこは…。
敵のモビルスーツ!
時間にして、瞬き二回程…。
ビームの交点が、
『チュ…。』
宇宙に、
『ド…。』
爆炎と、
『ォォォォォ…。』
爆音を、
『ン!』
ばら撒いた。