機動戦士ガンダム 水星の魔女 ターンA(エース)をねらえ! 作:ノザ鬼
06
** シミュレーター **
後ろを確認する事もなく、
『スタ…。』
進むコーチの後を、
『スタ…。』
追うスレッタ。
到着したのは、シミュレーターと呼ばれるコックピットだけの設備。
それも、誰が見ても特別だと判るモノ。
他が、隣り合わせに、何列も並んでいる。
それに、数人の女学生達が順番待ちで群がる。
対して…。
連れて来られたシミュレーターは一弾高い場所に四台並んでいた。
そう、選抜メンバー専用であった。
その様子を並ぶ一般のシミュレーターの陰から、
『ギロ…。』
燃える怒りの視線で、
『リ…。』
睨みつけるイフレ。
全身に、
『ブ…。』
受け、
『ッ…。』
震えるスレッタ。
顎で、
「座れ。」
一台を指す。
その返事は、
「えっ…。」
全く解らないと雄弁に語る。
この宇宙時代に生きる一人として、多少の知識はある。
だが、シミュレーターは初めてであった。
結果、またも硬直するしかないスレッタ。
数瞬の後に、
「…。」
コーチの伸ばす手が、
『スーッ。』
シミュレーターの扉のレバーを、
『ガチャ!』
捻ると、
『ゥイーン。』
自動で外へと開く。
開ききると、
「入れ。」
今度は首で促した。
有無を言わせない圧力に押され、中へ入る…。
本来なら閉めるはずの扉から、
「先ずは…。」
上半身を突っ込み、
「シート周りの調整だ。」
指示を出すコーチ。
そこは、特別な場所…。
一部の限られた者しか、知らない場所…。
その一角…。
眼の前の表示が、
『ピピッ…。』
緑に変わり、
「リンク確認。」
オペレーターの女性に、
「データ来ました。」
知らせる。
報告を、
『コクリ。』
顎で受け、
「データ収集開始だ。」
指示出す上官らしき男性。
この男性を我々は知っている…。
我々、観察者…。
それよりも、視聴者と言った方が正しいだろう。
そう、あの秘密会議に参加していた一番階級の高いと思われる人物であった。
了解の合図と、
「はい。」
共にコンソールの
『ポチッ。』
スイッチを押すオペレーター。
同時に…。
目の前の表示が細く別れ、リアルタイムで変化を始めた。
それを眺めながら、
「大佐…。」
上官らしき男性が、
「頼むぞ。」
口の中だけでつぶやく。
コーチの指導は、受けているスレッタには解らなかったであろう…。
それ程に、的確であった。
時に、自らが答えを探す様な課題を織り交ぜていた。
そして…。
いつの間にか、スレッタを夢中にさせていた。
夢中は時を加速させ時間の消耗を早くする。
唐突に、
『キンコン~♪』
流れたのは、
『カンコン~♪』
終了の合図。
それに反応した、女学生達が一斉に片付けを始めた。
夢中が、
「ふ…。」
解かれ、
「うっ…。」
疲労となり、
「疲れた…。」
口から出る。
無意識に、
『ギューッ。』
伸びまでしていた。
前触れもなく、
「各自…。」
スピーカーが、
「今日の訓練から自らの問題点を見付け課題とするように。」
コーチの言葉を伝えた。
女学生達の声が、
「はい!」
その場を埋める。
シートの両サイドに手を掛け、
「よっ…。」
立ち上がるとするスレッタ。
に!
無情な、
「お前は居残り特訓だ。」
コーチの一言。
スレッタの思いっ切り嫌な顔は、
「えっ…。」
コーチの涼やか名無表情に受け流されたのは、
「えぇ…。」
言うまでもない。