機動戦士ガンダム 水星の魔女  ターンA(エース)をねらえ!   作:ノザ鬼

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その5

07

 

** 月光蝶夫人 **

 

 それから、地球時間で約一ヶ月…。

 

 コーチにやり方に納得のいかない女学生達の白い視線を浴びながら、スレッタの猛特訓は続いた。

 

 

 この頃には、一年生もド素人から、歩きはじめのパイロットへとレベルアップしていた。

 

 

 シミュレーターでの、NPCモビルスーツとの疑似戦闘訓練。

 

 それが、日々行われていた。

 

 

 飛び交うのは、

「やったー!」

「二機撃破~。」

「私も撃破出来た?。」

 歩きはじめのパイロット達の歓声。

 

 

 そんな中で、女学生達を大型モニターの群れに釘付けにする存在。

 

 

 異彩、鬼才…。

 

 否…。

 

 そんな形容詞は似合わないだろう…。

 

 

 誰が言った…。

 

「その姿は月夜に舞う蝶の様だ。」

「宇宙の暗闇に美しく輝いている。」

「モビルスーツが虹の光を纏っている。」

「ああ、お近付きになりたい…。」

 

 操縦テクニックと容姿を形容する言葉は、この世には存在しない…。

 

 そんな彼女…。

 

 ナーデーアに付けられた異名…。

 

 それは、

【月光蝶夫人】

 である。

 

 

 言い出したの者が、不明なのはお約束であった。

 

 

 月光蝶夫人が操る…。

 

 と、言うよりは…。

 

 手足…。

 

 よりも…。

 

 モビルスーツを自らの体の一部と同等に扱う。

 

 それも華麗に…。

 

 

 当然、引き立て役として祀り上げられるスレッタ。

 

 コーチのやり方に不満を覚える女学生がグループを作り陰で、他にも聞こえる様に皮肉も込め面白可笑しく会話の話題にする。

 

「あんな動きで選抜メンバーですって…。」

「コーチに色目でも使っていたのかしら。」

「あれなら、家のペットを乗せた方が、ましってものですわ。」

 

 スレッタの内向的な性格を見抜いた女学生達は、攻撃の手を緩めない。

 

 

 だが…。

 

 その性格故に、こんな事には慣れているとは、気付いていなかった。

 

 

 月光蝶夫人だけは、

「お止めなさい!」

「みっともないとは思いませんか。」

「コーチの考えに不満があるのなら、直接言いなさい。」

 目に付くと注意してくれた…。

 

 それは、スレッタには嬉しかった…。

 

 初めて出来た理解者のように思えていた。

 

 

 

 

08

 

** 不満 **

 

 繰り返す毎日が、月日の感覚を麻痺させる。

 

 

 そんな中で、イフレの増す苛立ち。

 

 それは、ある特別な日が近付くに比例していた。

 

 特別な日…。

 

 それは…。

 

 選抜メンバーによる学園対抗戦の大会が行われる日。

 

 コーチのえこひいきが無ければ、自分が出場するはずだった大会。

 

 それが、イフレの中で怒りに嫉妬等の負の感情を、心の闇の溶鉱炉で煮えたぎらせた。

 

 

 そんな溶鉱炉に自らの意思で蓋をしていた…。

 

 

 だが…。

 

 火に油を注ぐどころか、火薬を投げ込む出来事…。

 

 

 歩きはじめ達が、ひよっ子のパイロットへと成長を見せ始めた頃…。

 

 学生同士によるシミュレーターでのモビルスーツの対戦が始められた。

 

 

 シミュレーターの扉の開く勢いが、

「ヤッター!」

 出て来る女学生の喜びを表す。

 

 出迎える女学生達も、

「ヤッタネ。」

「すごーイ。」

「やるじゃん。」

 自分の事の様に喜ぶ。

 

 

 出迎える笑顔を、

「まさかね。」

 受けて、

「スレッタを倒せるなんて…。」

 出て来た女学生の一言。

 

 そう、この女学生はスレッタと対戦していたのであった。

 

 

 その対戦を、他の女学生達と共に、大型モニターで見ていたイフレの心が、

[もたもた。]

[まごまご。]

[トロトロ。]

 スレッタの操縦技術を、そんな擬音が表現する。

 

 そんな感情が、神経を逆撫でしながら導火線の如く、火花を上げ心の闇の溶鉱炉へ吸い込まれる。

 

 直後…。

 

 自ら閉めた蓋を、

『ドォォォォォン!』

 煮えたぎる負の感情が吹き飛ばす。

 

 そして…。

 

 ドス黒いモノとなり、イフレの全身から黒き炎のオーラとなり立ち昇る。

 

 

 自分では、

「コーチ!!!!」

 冷静だと…。

 

 

 腕組のままで、

「何だ?」

 声だけ向ける。

 

 

 だが、

「私とスレッタのどちらが選抜メンバーに相応しいのか…。」

 発する声も、

「対戦で決めさせてください!」

 ドス黒く塗られていた。

 

 

 ゆっくりと行った瞬きの間を、

「よかろう。」

 考える時間に変え答えるコーチ。

 

 解いた腕組で小型端末を操作し、

「出て来い。」

 スレッタを呼んだ。

 

 

 

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