機動戦士ガンダム 水星の魔女  ターンA(エース)をねらえ!   作:ノザ鬼

6 / 16
その6

09

 

** 突然 **

 

 

 外の一悶着(ひともんちゃく)を、

〔ヤバい…。〕

 知らないスレッタは、

〔怒られる…。〕

 恐る恐るシミュレーターから出る。

 

 そして、

『グッ…。』

 嫌がる心に足を逆らわせ、

『キュッ…。』

 コーチの元へと向かわせた。

 

 

 スレッタが、

「今から三十分後に…。」

 到着の足を、

「実機による模擬戦を行う。」

 止めるより早くコーチが告げた。

 

 

 まさか、それが自分に向かられたとも思わないスレッタの我関せずの表情。

 

 

 イフレの口元に、

〔やった!?〕

 浮かべる薄笑いは、

〔シミュレーターと実機では、経験のある私の方が俄然有利だ。〕

 勝利を確信したほくそ笑み。

 

 

 向けられたコーチの顔が、

「お前は…。」

 当事者だと、

「四番機を使え。」

 強調する。

 

 

 人は驚きを超えると、

「えっ…。」

 呆けるのであった。

 

 スレッタも、多分に漏れかったのは言うまでもなく…。

 

 

 他の女学生達から、

「えっ…。」

 同様の声が出たが、

「四番機って…。」

 違う意味を持っていた。

 

 

 珍しく、

「修理は終わったと報告があった。」

 皆の疑問に答えるコーチ。

 

 四番機は、原因不明の不調の為に、メーカーによる修理が行われていた。

 

 

 次に向けた視線の、

「お前は…。」

 先のイフレ。

 

 

 大声が、

「コーチ!」

 コーチの言葉を遮る。

 

 

 声の主に、

「何だ?」

 顔を、

「ナーデーア?」

 向け直すコーチ。

 

 

 コーチに臆する事もなく、

「イフレさんには…。」

 凛として、

「私の一番機を…。」

 意見した。

 

 

 その申し出に、人工重力が消え去って無重力となり、解き放たれる心。

 

 ようは、舞い上がったと言う事である。

 

 憧れの君が、専用の機体を使わせてくれる。

 

 何とも、心躍る申し出だった。

 

 だが、

「ありがとうございます。」

 平静を装い、

「月光蝶夫人。」

 深々と礼をするイフレ。

 

 

 これから始まる事などは、

「二人共…。」

 たいした事では無いと言った雰囲気で、

「準備しろ…。」

 指示を出した。

 

 

 

10

 

** 感覚 **

 

 ロッカールーム…。

 

 自分に割り振られたロッカーの前にて…。

 

 中の物を取り出すスレッタ。

 

 それは、宇宙服。

 

 それも、パイロットスーツで自分専用。

 

 このパイロット科に編入した時に誂(あつら)えた。

 

 宇宙服は今までに数え切れないほど着たが、パイロットスーツを着るのは今日は初めてだった…。

 

 

 脚を通し、順番に体に纏わせていく…。

 

 思わず、

「この感じ…。」

 その感覚に、

「悪くない…。」

 独り言が出る。

 

 やがて、四肢を通され人と一体となる。

 

 

 全面のファスナーを、

『ギューーーィ。』

 上げ、

『キュッ。』

 首輪元を止める。

 

 

 不意に、

〔何だろう…。〕

 左右に首を振り、

〔この感覚は…。〕

 何かを確かめる。

 

 それは初めて感じた不思議なモノだった。

 

 宇宙服を着る事は何度もあったが、こんな事は一度も無かった…。

 

 

 この感覚を例えるなら…。

 

 懐かしさが一番近いと言えた…。

 

 故郷に帰ってきた…。

 

 昔の友達にあった…。

 

 そんなものがスレッタの何かを刺激する。

 

 

 

 が…。

 

 正体不明の感覚よりも…。

 

 遅れてコーチに怒られる事の方が気になり、

「まっいいか…。」

 と…。

 

 ヘルメットを右手に掴み、着替えを完了とした。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。