機動戦士ガンダム 水星の魔女 ターンA(エース)をねらえ! 作:ノザ鬼
09
** 突然 **
外の一悶着(ひともんちゃく)を、
〔ヤバい…。〕
知らないスレッタは、
〔怒られる…。〕
恐る恐るシミュレーターから出る。
そして、
『グッ…。』
嫌がる心に足を逆らわせ、
『キュッ…。』
コーチの元へと向かわせた。
スレッタが、
「今から三十分後に…。」
到着の足を、
「実機による模擬戦を行う。」
止めるより早くコーチが告げた。
まさか、それが自分に向かられたとも思わないスレッタの我関せずの表情。
イフレの口元に、
〔やった!?〕
浮かべる薄笑いは、
〔シミュレーターと実機では、経験のある私の方が俄然有利だ。〕
勝利を確信したほくそ笑み。
向けられたコーチの顔が、
「お前は…。」
当事者だと、
「四番機を使え。」
強調する。
人は驚きを超えると、
「えっ…。」
呆けるのであった。
スレッタも、多分に漏れかったのは言うまでもなく…。
他の女学生達から、
「えっ…。」
同様の声が出たが、
「四番機って…。」
違う意味を持っていた。
珍しく、
「修理は終わったと報告があった。」
皆の疑問に答えるコーチ。
四番機は、原因不明の不調の為に、メーカーによる修理が行われていた。
次に向けた視線の、
「お前は…。」
先のイフレ。
大声が、
「コーチ!」
コーチの言葉を遮る。
声の主に、
「何だ?」
顔を、
「ナーデーア?」
向け直すコーチ。
コーチに臆する事もなく、
「イフレさんには…。」
凛として、
「私の一番機を…。」
意見した。
その申し出に、人工重力が消え去って無重力となり、解き放たれる心。
ようは、舞い上がったと言う事である。
憧れの君が、専用の機体を使わせてくれる。
何とも、心躍る申し出だった。
だが、
「ありがとうございます。」
平静を装い、
「月光蝶夫人。」
深々と礼をするイフレ。
これから始まる事などは、
「二人共…。」
たいした事では無いと言った雰囲気で、
「準備しろ…。」
指示を出した。
10
** 感覚 **
ロッカールーム…。
自分に割り振られたロッカーの前にて…。
中の物を取り出すスレッタ。
それは、宇宙服。
それも、パイロットスーツで自分専用。
このパイロット科に編入した時に誂(あつら)えた。
宇宙服は今までに数え切れないほど着たが、パイロットスーツを着るのは今日は初めてだった…。
脚を通し、順番に体に纏わせていく…。
思わず、
「この感じ…。」
その感覚に、
「悪くない…。」
独り言が出る。
やがて、四肢を通され人と一体となる。
全面のファスナーを、
『ギューーーィ。』
上げ、
『キュッ。』
首輪元を止める。
不意に、
〔何だろう…。〕
左右に首を振り、
〔この感覚は…。〕
何かを確かめる。
それは初めて感じた不思議なモノだった。
宇宙服を着る事は何度もあったが、こんな事は一度も無かった…。
この感覚を例えるなら…。
懐かしさが一番近いと言えた…。
故郷に帰ってきた…。
昔の友達にあった…。
そんなものがスレッタの何かを刺激する。
が…。
正体不明の感覚よりも…。
遅れてコーチに怒られる事の方が気になり、
「まっいいか…。」
と…。
ヘルメットを右手に掴み、着替えを完了とした。