機動戦士ガンダム 水星の魔女  ターンA(エース)をねらえ!   作:ノザ鬼

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その7

11

 

** 格納庫 **

 

 格納庫…。

 

 そこは、モビルスーツと呼ばれる巨人が、その巨体に見合うハンガーデッキ並ぶ場所…。

 

 整備のやり易さからか、大抵は無重力ブロックにある。

 

 そこに向う通路を専用の移動設備で、

『スィィィィィ。』

 進むスレッタは、

〔もしかしたら…。〕

 重い気分で、

〔負けたら、特訓終りにならないかな…。〕

 甘い考えを浮かべる。

 

 が…。

 

 今までの流れから、

〔そんな事は無いだろうな…。〕

 自らの考えを否定する。

 

 

 左手首の機能で、

「まだ、時間は大丈夫…。」

 確認するスレッタ。

 

 

 扉の前で、

『トンッ。』

 軽い着地。

 

 開閉スイッチを、

『カチッ。』

 押し、

『ウッ…。』

 開くまでの、

「はぁ…。」

 溜め息で、

『ィィィィィン。』

 覚悟を決めた。

 

 

 軽いキックで、

『スーッ。』

 格納庫に身を踊らせ中へと入る。

 

 

 後ろで、

「人を…。」

 扉が閉まるよりも、

「待たせるなんて…。」

 早く、

「何で失礼な人なんでしょう!」

 前から声が飛んでくる。

 

 出処は、パイロットスーツ姿に、ヘルメットを小脇に抱えた女子学生…。

 

 言わずと知れたイフレである。

 

 当然、

「本当に…。」

「うんうん。」

「失礼な人…。」

 取り巻き達も賛同する。

 

 

 身体を、

『クイッ。』

 捻り、

『トッ…。』

 足を、

『ン。』

 床へと付ける。

 

 まだ残る慣性力を、

『グ…。』

 下半身の筋肉で、

『ッ!』

 吸収させ、

『ストッ…。』

 イフレの前に立つ。

 

 残る上半身の慣性力は、

「ごめんなさい!」

 振り子運動の如く、

『ペッ!』

 大袈裟な、

『コッリィ!』

 お辞儀に換えた。

 

 

 格納庫内の全ての人に見えた謝罪は、

「うっ…。」

 イフレの出鼻を挫き、これ以上の追撃を止めた。

 

 

 それは、スレッタの予期しない出来事であった。

 

 

 

12

 

** アドバイス **

 

 

 そんな二人のやり取り…。

 

 いや、攻防など無かったかの様に…。

 

 何処吹風とばかりに、

「揃ったようだな…。」

 二人に視線を、

「では、これより実機による模擬戦を行う。」

 送りながら話始めるコーチ。

 

 

 偶然か、

「はい!」

 二人の、

「はぃ…。」

 返事が揃う。

 

 が…。

 

 それぞれの意気込みは込められた力が物語る。

 

 

 二人に、

「アドバイスをしておこう。」

 

 先ずは、

「自分の戦いをしろ…。」

 イフレに…。

 

 

 表情まで、

「えっ…。」

 驚く。

 

 そして…。

 

 心の奥から湧き上がるのは、恥ずかしさの感情。

 

 

 密かに…。

 

 ひた隠しにしていたもの…。

 

 

 それは…。

 

 月光蝶夫人への憧れ…。

 

 初めて戦いを見た時の衝撃は全身を駆け巡り、憧憬(どうけい)へと昇華された。

 

 戦い方を、機体の細部まで見落とさず観察し、自らのものとする…。

 

 それは、近付こうと努力すればする程に、その距離が離れると思い知る事でもあった。

 

 でも、本人はそれでも良かった…。

 

 自分の目指す先に輝きを持って君臨する月光蝶夫人が居るだけで…。

 

 

 そんなイフレの思いを、コーチは見透かしていた…。

 

 

 恥ずかしさの感情は、イフレの胸から駆け上がると…。

 

 首から順番に顔を桜色に染め上げた。

 

 

 そして…。

 

 怒りが恥ずかしさを覆い隠す。

 

 顔を染めていた、

「そ…。」

 桜色は濃さを、

「そんな…。」

 増しドス黒さを、

「言われる筋合いはありません!」

 秘める赤となった。

 

 

 驚いたのは、

「イ!」

 彼女の、

「イフレさん!」

 取り巻き達。

 

 慌て、

「お…。」

 烈火の如く激昂するイフレを、

「落ち着いて!」

 体をはって制する。

 

 

 そんな取り巻き達との攻防を一瞥だけは興味…、関心を持つが…。

 

 次へと、スレッタに向く。

 

 

 向けられた鋭い視線が、

『ギロリ…。』

 スレッタに、

「ひっ…。」

 口の中だけで悲鳴を上げさせた。

 

 

 語り始めは、

「お前は…。」

 ゆっくりと、

「自分を…。」

 続く言葉は、

「広げろ…。」 

 無感情。

 

 

 何故か…。

 

 その謎の言葉は、

「?」

 スレッタの奥深く入り込むと、

「どういう…。」

 心の中で反響し、

「意味だろう…。」

 次第に大きく膨れ上がって行った。

 

 

 それは…。

 

『パン!!!』

 

 コーチが両手を打ち合わせて作った区切りの音。

 

 

 先ずは…。

 

 少し落ち着いたイフレに視線を送り、謎の言葉に考え込むスレッタでしめる動作。

 

 口を次の、

「模擬戦…。」

 声の形にする間(あいだ)を、

「開始だ。」

 間(ま)に変えた。

 

 

 二人は、

「は…。」

 互いに、

「はい!」

 一瞬遅れ、

「コーチ!」

 返事。

 

 直後…。

 

 床を蹴り、

『トンッ。』

 体を無重力に、

『スーッ。』

 舞わせる。

 

 目的地は言わずもがな、二人が乗るモビルスーツのコックピット。

 

 

 

 

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