機動戦士ガンダム 水星の魔女 ターンA(エース)をねらえ! 作:ノザ鬼
14
** 宇宙 **
発進シグナルが、
『ピコン!』
順番に、
『ピコン!』
緑になり、
『ビコン!』
三つ揃う。
刹那!
リニアが、
『ギュ。』
モビルスーツを、
『ーーーーーーンッ!』
超加速させる。
慣性の法則により、パイロットの体と心をこの場に残しながら…。
初めての、
「グッ…。」
加速に、
「ェェェェェ…。」
体が、
「ッッッッッ…。」
声を絞り出せ、
「ツ!」
超加速に抗議する。
だが、カタパルトが、
「やはり…。」
終りを迎える頃には、
「シミュレーターとは違う…。」
体が慣れてきた。
流石、スレッタも一応宇宙の民である。
一方…。
流石、上級生…。
実機での経験も多い。
赤から緑に、
「イフレ。」
変わる発進シグナルに、
「出ま…。」
同調する。
台詞の終わりと、
「す!」
最後の発進シグナルの色の変わりが、
『ピコン!』
同時である。
[決まった!]とばかりに、カタパルトがモビルスーツを超加速させた。
だからと言って、
「ク…。」
加速のGが、
「ッ!」
減るわけではない。
気構えが出来ていると言うだけであったが、それがイフレの心の余裕であった。
二機同時に、カタパルトによる超加速を終える。
瞬間!
二機のモビルスーツのコックピット画面が外を映すのを止めた。
互いのモビルスーツの位置を確認させない為の平等な仕掛けである。
二機は自動でランダムに決定された初期位置へ向う。
ノズルが噴き出す美しい光の奇跡を描きながら…。
残念ながら、コックピットの二人には見えないが…。
手の甲が見える方に左右の指を、
『スイッ…。』
互い違いに挿し込むと、
『スーッ。』
前に目一杯伸ばし、
『ギューッ。』
首を左右に、
『グギ…。』
捻り、
『グギッ!』
順番運動した。
無意識に、
『ぺろり。』
舌舐めずりしていた。
その行為に、
「私の方が…。」
相応しい目が、
「選抜メンバーに相応しいと思い知らせてあげるわ。」
怪しく光っていた。
操縦桿を、
『ギュ。』
何度も、
『ギュ。』
握り直し、
「ふーっ。」
深呼吸で、
「ふーっ。」
心を、
「落ち着け私。」
なだめる。
トドメに、
『フッ…。』
両手で頬を張ろうとしたが、
「あっ…。」
ヘルメットの存在を思い出した。
15
** 開幕 **
今まで、
『プシュ。』
後ろ向きに感じていた加速が、
『プシュ。』
前向きに変わり、
『シューッ。』
制動を掛け、
『プシュ!』
止まった体感が伝わる。
モビルスーツが止まった事により、
「?」
より鮮明に、
「まただ…。」
伝わる不思議な感覚。
着替えの時よりも強く鮮烈に感じる…。
そして…。
故郷に帰って来た懐かしさに包まれた。
不意に、
「何だろう…。」
小さく混ざるものに、
「この嫌な感覚は…。」
心がざわつく。
スレッタには、この嫌な感覚を知っていた…。
前の学園でも、今の学園でも…。
内向的な性格故に向けられる小さな残虐の視線である。
それは、次第に…。
強く…。
強く…。
感じられる様になり、
「うっ…。」
スレッタに粘る様に纏わり付く。
突然!
『ブッ…。』
メインモニターに、
『オン!』
映し出されるコーチのアップ。
不思議な感覚に意識が向けられていたスレッタには、
「わっ!?」
十分過ぎる不意打ちとなり、
「わわわっ。」
思いっ切り慌てさせた。
そんなスレッタを、一瞬目を細めただけで流すコーチ。
そして…。
冷たい声で、
「始めろ…。」
宣言した。
直後…。
メインモニターを美しい宇宙(そら)が満たす。