2話まで続いてしまいました
「やっとこさアルキリア海峡までやってきたな、ここなら友軍も活動している。一度浮上しよう」
「了解、メインタンクブロー 急速浮上」
艦が軋む音とともに原子力の鯨「ユヴェントス」が浮かび上がる。
目的地はまだまだ先だが、友軍の勢力圏内に入り少しは安心できる今の内に一度乗員を風に当てておいた方が士気向上につながるだろう。
「現在深度50.40.30.20.潜望鏡深度です。
ヘリを飛ばして索敵しますか?」
「よし、そうしよう、後部デッキに注水、ヘリを発進させてくれ」
10分後、水中から一匹のファンヘリコプターが飛び出した。
水中からでも発艦できるアルキリア連邦軍主力ヘリ、ブロティカ Mk 3だ、
「ヘリの画面、メインディスプレイに出します」
ヘリのカメラには船影ひとつない見事な南国の海が映されていた。
「冷たい中央海と比べて綺麗だな。」
「レーダー ソナーともに感なし、安全ですね。」
あたりには魚と鳥しかいない。 暗く冷たい中央海を見慣れた潜水艦乗りたちには新鮮で心が癒される光景だった。
「艦長、これなら良さそうですね。」
「よし、浮上航行、アップトリム15度」
派手な音とともに「ユヴェントス」は海面に飛び出す。
その姿はさながら息継ぎするクジラだった。
2時間後……
にわかに甲板がざわつく音で艦長のアルヴァン大佐は目覚めた。
「なんだなんだ?」
そばにいた副官のユーフォル中佐に話しかける
「さぁ? 我々もも行きましょうか」
ユーフォル中佐を携えて甲板上に出ると、そこには倒れたフライトスーツの男と、心肺蘇生を行う医務官のランツ中尉と周りで不安げに見る乗組員たちがいた。
「ランツ中尉、このパイロットは?」
「わかりません、泳いでいたグリスマン一等兵が救助しました。」
乗組員たちをかき分け、2人に近づく、ユーフォル中佐を携えて甲板上に出ると、そこには倒れたフライトスーツの男と、心肺蘇生を行う医務官のランツ中尉と周りで不安げに見る乗組員たちがいた。
パイロットの手を取ると脈はあった。胸骨圧迫を行いながら、軍医に聞く。
「手帳とかなかったか? 軍人なら持ってるはずだが」
軍医は首を縦に振った。
彼の手の中には一冊の手帳があった。
アルキリア軍の手帳だ。
表紙を見ると、階級章と名前が書かれていた。
階級は中尉、名前はウィリアム・アーキンソンと書かれている。
どうやら近くの基地のパイロットのようだ。
アルヴァンはこのパイロットを医務室に運ぶよう命じた。
翌朝
ウィリアム・アーキンソンは目を覚ました。
真っ白な天井が見える。
(ここはどこだ?)
上半身を起こすと、自分がベッドの上にいることに気がつく。
(俺は確か哨戒任務に出たはずだが……)
そこから先は思い出せない。
最後に覚えているのは、真っ赤に染まる視界だけだった。
あの箱型物体はなんなのだろう? それが一番の問題だ。
自分の機体を墜落させたということは、間違いなく攻撃してきたということだ。
味方の攻撃だとは考えにくい。
そんなことをすれば、中央海艦隊は大混乱に陥るはずだ。
ならば敵の可能性が高い。
しかし、中央海艦隊にあんなものは存在しない。
中央海艦隊の保有する艦船は全て知っているつもりだが、あのような形状の船を見たことはない。
もしかすると、古代紀の遺物かもしれない。そう考えると辻妻が合う。
あれはきっと古代の船なのだ。
お伽話の世界の話だが、そうとしか考えられないのだから仕方ないだろう。
結局、結論は出ないまま、夜を迎えた。今は考えるよりも体を治すことに注力しよう。
翌日。アルヴァン艦長はウィリアムの病室を訪れた。
彼の体は順調に回復しているようだ。
顔色もよくなり、食欲もあるようで、安心する。
アルヴァンは彼に質問を始めた。
まず、名前から聞くことにした。
「アルキリア連邦軍、第11哨戒航空団所属、ウィリアム アーキンソン 中尉です。」
いくつか平凡な質問を繰り返した後、本題の質問に移る。
「君の乗っていた哨戒機は何故墜落したのか覚えている範囲でいいから教えてくれ、」
ウィリアム中尉は二、三秒迷った後に、口を開き、起こったことをありのまま伝えた。
アルヴァンは真剣な顔をして聞き、ウィリアム中尉が話し終えるとすぐにブリッジへ向かった。
「今回の任務内容が大体わかったかもしれない。 話は後だ、全乗組員を収容して急速潜航!急げ!」
ブリッジクルーは皆混乱していたが、さすがは訓練された軍人、命令を着実に進めていく。
「ベント開け!ダウントリム10」
「甲板上安全確認!」
みるみるうちに水面下に潜っていく「ユヴェントス」、しかし、衝撃は潜り切る数秒前にやってきた。
「レーダーに感あり!ミサイルらしきものが本艦に接近中!」
アルヴァンは認めたくなかったが、認めざるを得なくなってしまった。
この海域にはなにかがいる……
おそらくウィリアム中尉が遭遇したものと同じものが。
「潜望鏡に被弾!損傷しました!」
「潜り切れ!深度1200につけ!総員対戦戦闘配置!オールウエポンズフリーだ!」
潜水艦は深海において初めてその実力を発揮するのだ。
低深度ではろくに戦えない
「音源探知!聞いたことがない音です!」
ついに聴音員が捉えた。
「音紋をとれ、どんな音だ」
「聞いたことがない音です。クジラが鳴くような……」
聴音員はそういいつつヘッドフォンを回す
確かに熟練の潜水艦乗りであるアルヴァンでも聞き覚えのない音だった。
しかし音がするなら勝ち目はある。
それが潜水艦の戦いなのだ。
やってやろうじゃないか、アルヴァンはそう心に決めた。