前回から3か月たってんすけどね
断じてまどソフトの新作をやっていて書く時間がなかったわけじゃないんだ
深度1200m 太陽の光も届かない暗黒の世界でそれは悠然と泳いでいた。
哨戒機を撃墜し、潜水艦「ユヴェントス」にミサイル攻撃を浴びせたそれは、今度こそ「ユヴェントス」を毒牙に掛けようと機会を待っていた…
同日同時 アルキリア軍潜水母艦「ユヴェントス」
「深度、規定位置につきます。」
深度1200mで静止した「ユヴェントス」はまるで眠っているようであった。
発令所内の空気は重く張り詰めている。
誰も口を開こうとはしない。
ただ索敵手がキーボードをたたく音だけが反響していた。
索敵手の一人が沈黙を破る
「目標ロスト… 音紋は取りましたが…」
どうやら奴も同じく静止しているようだ。 先ほどまでが嘘のように海は静まり返っていた。
水雷班は魚雷を撃ちたくてウズウズしているようだが、艦長はそれを制止する。
相手の性能がよくわからない以上、そう簡単に攻撃はできないし、第一敵を補足すらしていいないのだ
5分、10分と時間は経っていく、しかし、敵は捕捉できない。
20分がたったころ、ソナーマンが闘志にあふれた声で報告を上げる。
「先程観測された音です!本艦に突っ込んできます!」
アルヴァンとしてはもう少し観測してから攻撃したかったのだが、相手がダンスを申し込んでいるのだ。逃げることはできない。
「よし。魚雷発射用意、発射口開け!」
火器担当官が復唱し、魚雷室へそれを伝える。
まもなくして発射可能のランプが点灯した。
「これより、目標をT-01と呼称する。 名無しじゃ呼びにくい。」
呼びにくさに嫌気がさしたアルヴァンはとりあえずの名前を付ける。
「T-01 本艦にさらに接近!魚雷有効射程まで20秒」
20秒が永遠に感じられる。
いくら熟練の潜水艦乗りたちとは言えど、得体のしれないものが自分たちに近づいてきているのだ。
緊張しないわけがないだろう。
2度の紛争を経験したアルヴァンも、先任将校のユーフォル中佐も背中に嫌な汗が湧き出るのを感じた。
「T-01 魚雷射程に入りました!」
「魚雷戦闘用意、1番から4番、発射用意、ファイヤ」
「了解、魚雷斉射確認、まっすぐ向かっていきます」
「ユヴェントス」から放たれた4本の魚雷は水中を進む黒い影へ向けて全力で航行する。
通常の潜水艦ならかわし切れない。
しかし「ユヴェントス」のクルーは招待のわからない違和感に囚われていた。
そしてそれは最悪の形で当たってしまう
「魚雷、全弾ロスト… 回避されました…」
T-01は潜水艦には取れない軌道を取り、ユヴェントスが放った必殺の魚雷を躱したのだ。
「なんてこった…」
誰かが失意の声を上げる。しかしながら、ここで諦めるわけにはいかない。
「深度1900mまで潜航、いそげ!」
幸い海底は1900m付近で安全深度にある。
そして海底には起伏もあるため、安全に退避できるだろう。
「緊急脱出用フードはこの深度では使用できない。万一の際の脱出は脱出用チャンバー、もしくは艦載機を使用せよ。」
こうはいうものの潜水艦というものの性質上撃沈されたら逃げられないだろう。
よくて圧死、悪くて酸素不足の窒息死だろう。
とにかく、この艦を沈められるわけには行かない。
そんな決意と共に、アルヴァンは指揮を取る。
発令所内に警報が鳴り響く。
「t-01、本艦を追尾してきます。距離9.3km。なおも接近中。」
やはりというべきか、奴は追尾してくる。世界でも最高峰の性能を誇るアルキメリア級原潜を追尾できるとは。何処のどいつが作ったのか。
「本艦深度1900m 海底洞穴へ入ります。T-01はさらに接近」
海底洞窟に飛び込み、敵から逃げ切れたらいいのだが…
そこまで考え、アルヴァンは気づく。
戦うことを考えず、逃げることに専念している自分に。
彼が指揮しているのは隣国との戦争時に乗っていた旧世代のディーゼル艦ではないのだ。
アルキメリア級の力を生かし切れていない。 この艦艇は潜水母艦なのだ。
「UAV1番から3番、発艦!」
この「ユヴェントス」が持つ最大の力を開放する。
「UAV発艦確認。設定した地点まで急行中」
UAVの射出を確認し、即座にポイントへ急行させる。
狭い海底洞穴内でも自動航法装置と新型システムにより安全かつ高速に移動できるのだ。
「UAVウェポンシステムアクティヴ 攻撃指示を」
T-01はいまだに「ユヴェントス」を追跡していている。 さすがの奴も岩陰に隠れたUAVには気付けないようだ。
UAVが所定位置についたことを知らせるランプがともり、同時に艦内の別の場所に設置された艦載機管制室から連絡が入る。
「UAV搭載の短魚雷は、直射にセットしますか?」
「いや、誘導なしで仰角60°にセット、岩にぶち当てろ。」
艦内電話の向こうでUAVの火器担当士官(ガンナー)が復唱するのを聞きつつ、指令室の天井の斜めパネルに視線を戻す。
この狭いスペースでは奴も魚雷を躱すなんてことはできないだろう。第一直射ではないから気付くとも思えないが。
ドローン3機が待機するポイントにT-01は刻一刻と接近する、
「T-01 ピケットラインに接触します」
「よし、全UAV魚雷発射!同時に本艦は180度回頭!」
第二ラウンドは、こっちが主導権を握らせてもらう。
そう心に決めたアルヴァンは先手必勝とばかりに先制攻撃をかます。
「魚雷着弾!洞穴の天井が崩れます!」
「今だ!装填完了魚雷から順次発射しろ」
「ユヴェントス」に備え付けられた6つの魚雷発射管全てから魚雷が飛び出す。
十数秒後には「ユヴェントス」にまで爆発音が届く。
「やった!目標沈黙!」
「残骸は回収できそうか?」
これまで一言も発しなかった副長がソナーマンに声をかける。できればもう近づきたくないのが本音だが、一応回収しておいたほうがいいだろう。
「ダメみたいですね、完全に岩につぶされている上に6本の魚雷をもろに食らってますから、回収は不能でしょう」
「そうか…」
少し残念そうだが、生き残れただけでも運がよかっただろう。
「ようし、こんな暗い海底洞窟から出て暖かい海へ戻るぞ。」
もうすぐしたら海面に出られるだろう、ひとまず危機は去った。
そう考え、アルヴァンはゆっくりと座席に腰を下ろした。
しかし「ユヴェントス」は気づけなかった。
後ろから忍び寄る影がいることに。
「目標ロスト、おそらく浮上したものと思われます。」
アルキメリア級の鯨のような形と異なり、サメのような滑らかな外壁。
攻撃的な艦のライン。
不気味に光る赤色のランプ。
まさしくこの海で「潜水艦殺し」として恐れられるカフカス帝国軍の156型潜水艦「ヴェルグガング」であった。
西の軍事大国の潜水艦がなぜ東の地中海にいるのか…
「ヴェルグガング」はゆっくりと「ユヴェントス」の後をつけていく。
目的地にたどり着くまで、ユヴェントスにはまだまだ試練が待ち受けていそうだ。
これは果たして完結するのか。
ここで1話に出てきた156型潜水艦が出てきます。