最強少女は幸せを探している   作:但野ミラクル

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第10話

「げほっ、げほっ。イム、そいつはゆっくりとした動きの後に食らったら即死級の攻撃を繰り出す技を使ってくるぞ。溜めを潰せば回避は可能だ。気をつけろ!」

「さて……行くぞ?」

 キュリエが警告を発した次の瞬間スコルバンカーは動き出した。バシュッ。

 ――速い。目で追えない!

 だが、焦ってはいけない。全てを演算しろ、スコルバンカーの体付き、動き出しの体勢、音、気配、全てを使って――

 !後ろか!?

 私は即座に前にステップを踏む。次の瞬間、後ろで轟音がした。

 うわあ、これはまずい。これはむしろキュリエが生きていることが不思議な位ヤバい。身体能力が高過ぎる。しかも、キュリエが技があるとか言っていたってことはそれを数回受けているってことだよね、しかも対策まで見つけた上で。改めてキュリエの凄さが分かる。

 そんなことを考えている間にもスコルバンカーは動きを止めない。体を捻り殴る、殴る、ジャンプ、移動、殴る。動きを止めず攻撃してくる。……これ、私の体力と気力持つかな?

「フム、防御一辺倒とはいえ、我の攻撃をこうもかわすか、敬意に値する個体だな。フム、お主にも敬意を表し我王撃を使おう」

 ! さっきキュリエが言っていたやつか。注意しないと……。

 そう思った。次の瞬間、世界が加速した。いや正確にはスコルバンカーの動きが超が付くほどの減速を始めた。……なるほど。これが技か。キュリエの情報なかったら絶対に困惑していたに違いない。

 私は左にステップを踏ん、ガオンッ、まじかよ。

 直撃をしていない。完全にかわした。距離も取ったなのに、軽くとはいえ衝撃が来た(・・・・・)。直撃を普通に食らったら即死だ。よっぽどの守りじゃないとダメージの現象さえも難しいだろう。見た感じでは射程自体は短そうだ。わざわざ近づいた後に我王撃とやらを放って来ていたし。

「これはまずいかもしれませんね」

「フム、漸く戦力差を悟ったかヒトの雌よ。しかし、その雌と同じようにあまりにも他のヒトとは戦闘力に隔たりがあるな。残酷なものだ」

 そういうスコルバンカーに私は大きな声で叫んだ。

「人は多様性が武器なのでね!得意なことで役割を果たすんです。数こそが人の持つ唯一の力とさえ言えます!それよりもヒトとは。その言い方だとまるであなたは神とでもいいたげですね!!」

「然り、我は神だ。変質してしまってはいるがな」

 神、神ときたか。まあ、ただの虚言では無さそうだ。体が異形であることも神というのであればまだ納得できなくは――待てよ。スコル、神、神……

「……まさかあなたはハ――」

「それは我に勝ってから話すと言ったはずだ」

 なるほど、確かに話を聞くには勝つしかないようだ。ただそれはもう問題ない。何故なら――

「第三禁呪解放」

 勝つための援軍はすでに来ているのだから。

 スコルバンカーの背後にいた黒い翼の生えたクロヒコさんが目から赤黒い禍々しい光線を出した。光線はスコルバンカーの背に直撃した。

 ……が、スコルバンカーの皮膚は少し腫れているだけのようだ。すかさずクロヒコさんは持っていた刀で攻撃を仕掛けたが、効いた素振りをせずにフックを食らわせようとしていた。本当に強い敵だ、嫌になるほどに。

「ふっ」

 私はスコルバンカーに近づき剣を振るう。

 これはクロヒコさんが一旦この場を離脱する隙を作るためだ。が、少し不味かったか。スコルバンカーが無理やり姿勢を変えて私の方を向いた。さっきまでクロヒコさんに攻撃をしていたというのに、まさかこちらへと無理やり攻撃をしようとするとは。……演算しきれなかったか。スコルバンカーは我王撃の準備を取りかかっている。

 ……クロヒコさんはキュリエを抱いて少し離れたところにキュリエを運んでいた。キュリエはキュリエで何かをクロヒコさんに伝えている。おそらく我王撃のことを伝えているのだろう。あ、私に我王撃が放たれそうになったのに、気づいたみたい。クロヒコさんもこっちに来ようとしている。……クロヒコさんの動きは悪い訳ではなかった。スコルバンカーの視線を私から移させ、キュリエを運びつつ距離を取る。キュリエが巻き込まれる可能性はあったから悪い手ではなかったのだ。問題があるとすればスコルバンカーの動きが想定以上のものだった。それだけ、だが致命的だった。普通の防御では我王撃は防げない。

 ……ごめん、キュリエ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――ここからは博打だ。

 能力発動――絶 対 聖 域(アブソリュート・サンクチェアリ)

 

 

 

 

 

 パリン

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

「まさか防げるものとは思わなかったぞ、ヒトよ」

 やっぱり一撃で砕けるか。まあ、八割ぐらいの確率でそのまま突き破るとは、思っていたが。二割の方になってよかった。

 絶 対 聖 域(アブソリュート・サンクチェアリ)、それは私の周囲に透明なバリアを作り出す能力。一応バリアを飛ばすことは可能だが耐久性は私の距離と反比例して弱くなるから遠くにはバリアを張れない。

 一回魔素を注ぎ込めば私が解除するまでなくならない。ただし最大硬度のバリアを一回作ることにかなりの魔素を注ぎ込むので壊されたなら何回も作れば問題なし、とはならない。そこまで堅くないのなら魔素もそこまで多くなくてよいのだが、強敵相手だと最大硬度でないと防げないだろうから継続して使うには効率は悪いし、魔素も尽きる。とはいえ、奥の手として使うならこれ以上使い勝手のいいものはないだろう。かなり頑丈で、口の堅い信頼できる傭兵とかにお願いして耐久力テストをしてもらったが壊れることはなかった。まあ、その傭兵もかなり頑張ってくれたのだが本当に壊れないからどれくらい頑丈か計りきれなかった。魔素をめちゃくちゃ少なめにしたら割ることごできる程度のバリアができたので性質は分かったのだがある程度魔素を注ぐと壊せなくなってしまった。つまりぶっつけ本番で使うしかなかった。……生きて帰られたら今度ローズさんに頼んで耐久テストをして貰おうかな?まあ、今はそれはいいか。

「本当にジリ貧ですね、これは」

 決定打が本当にない。一応、攻撃の手はあるのだがスコルバンカーに使える程のものではない。

 さてどうしようか。

「フム、確かに優秀な戦士たちではある。だが、我も王として負ける訳にはいかぬ、いくぞ?」

 そしてスコルバンカーのラッシュが始まった。左右から揺さぶるようなパンチ、避ければローキックによる足場を狙い勢いそのまま膝蹴り。演算、演算、演算、避ける、避ける避ける。我王撃、左に行く振りをして右に避ける。……これはきつい。そろそろ集中力も体力もきつくなってきた。

「ふっ、ふっ、はぁ」

「どうやら体力には差があるようだな」

「……全然平気ですよ?」

「フム、どうやらお主は虚勢を張りたいであるようだが一目瞭然、むっ?」

 私と話している隙を狙ってクロヒコさんが攻撃を仕掛けていた。

 クロヒコさんは刀を振るう。刀はスコルバンカーの首の辺りを切り裂いたが、依然動じない。痛みを感じないのだろうか。だとすれば相当厄介だ。

 クロヒコさんが更に刀を振るおうとすると、スコルバンカーが膝でクロヒコさんの頭を強打した。

「ぐっ」

 クロヒコさんはうめき声を上げた。

 すかさず私は、クロヒコさんに追撃しようとしたスコルバンカーに接近し、割り込みクロヒコさんが一旦離脱する隙を作る。

 だが、

「ぐはっ」

 割り込んだ瞬間膝を受けてしまった。そしてパンチをラッシュでされる。……まずい。そう思ったがかろうじて剣で防ぐことしかできず私は吹き飛ばされた。

「イムさん!」

「クロヒコ、さん、私はいいからそいつを!」

 ……私は演算によって敵と戦うことはできる。だが、それは自らが主体的に動かなければという条件付きだ。何故なら自分も動けばその分演算が複雑になるためだ。だから私は極力動かずカウンターを狙う。だがスコルバンカー相手は持久戦も集中力、体力の問題からできず私でさ決定打もないため、クロヒコさんを援護するしかない。絶対聖域は私でないと見えないため最悪動きを阻害するため連携には向きにくい。それに加えスコルバンカー相手では大技じゃないと我王撃の保険として必要なため多用できない。だから使わなかったが、それが裏目に出た。

 痛みで意識を失いそうになるが、力を込めて体を起き上がらせてなんとかクロヒコさんの方を見る。スコルバンカーがマウントの姿勢を取ってクロヒコに覆い被さろうとしていた。……痛みで気絶してしまいそうだ。それでもこれだけは、これだけはやらないと。私は聖魔剣カテドラルに大量の魔素を注ぎ込みクロヒコさんとスコルバンカーの間にバリアを作った。

「むっ? これは」

「っ!」

 ……もう、限界。キュリエ、クロヒコさん。ごめん……。 

 そうして私は意識を失った。

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