最強少女は幸せを探している   作:但野ミラクル

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一先ずこれで一区切りとさせていただきます。



第14話

「禁呪も手に入れましたし、タソガレに会いに行きましょう。シャナさんに聞きましたが、確か行くの明後日でしたよね。」

「え、イム、お前学園は?」

「休みます。許可も取りました」

「手際がよすぎるぞ」

 

 

 

 

 

 二日後

「という訳でタソガレがいる家に突撃だー!?」

「イム? テンションがおかしくないか!?」

「ちょっと色々あって徹夜しただけです。いざ突撃ー!」

「一旦落ち着け!?」

 

 

 

 

 

「ここがタソガレの家ですか」

「……今日イムさんの様子おかしくないですか? キュリエさん」

「うん、大分な。まあ大丈夫だろう。イムだし」

「まあ、言いたいことは分かりますが」

 ……二人の言葉が聞こえない振りを私は三回ノックする。

「ラグナさんはいらっしゃいますか」

「いるよ」

「……いきなり後ろに現れないでくださいよ、タソガレ」

 思わず切りそうになったじゃないですか。

「ふふ、正直君たちがここに来るとは思っていなかったよ」

「本当ですかね」

「信用がないね、悲しいよ」

「思ってもないことをよくすらすら言えますね?」

「まあね。数少ない特技の一つなんだ」

「あのキュリエさん、この人が?」

私とタソガレの掛け合いを見ていたクロヒコがキュリエに聞いた。

「ああ、元第六院の院長、タソガレだ」

 

 

 

 

 

「水でいいかな? 茶葉を切らしていてね」

「私は別に構いません」

「私も」

「俺も構いません」

 タソガレの家に入った私たちはタソガレが用意していた三脚の椅子にそれぞれ座り三人ともタソガレに向かい合う位置にいた。

 何が来るとは思っていなかったよ、だ。わざわざ四脚も用意している癖に白々しい。

「それで用件は?」

 私はキュリエの目を見る。キュリエは少し迷った様子を見せていたが私が頷くと意を決したように口を開く。

「なぜ第六院、いや孤児院を建てたんだ? タソガレ」

「おや、それかい。そうだね。あるものを見つけたかったんだ。でも失敗に終わったけどね」

「あるもの?」

「ふふ、それの正体自体は言えな――」

「スコルバンカー」

「……イム? どこでその名前を?」

 私はわざと嫌らしい笑みを作った。

「さあ、どこででしょうか?」

「……イム、あなたは大体予測がついているようですね」

神の世界(・・・・)を作ること。それがあなたの目的でしょう? タソガレ」

「ふふ、ふはははは。あなたは本当に何者なのでしょう。得体が知れませんね」

「……イムいきなり何を?」

「ふふ、その時が来たらまた会いましょう」

 そう言うとタソガレは半透明になっていく。

「逃げるんですか」

「ええ、それではまた会いましょう」

 その台詞を最後にタソガレはその場からいなくなってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

「まさかこんなに早く時が来るとは思いませんでしたね」

「ええ、私もです」

 獄の中心地で私たちは顔を見合わせた。ルーヴェンアルガンで会ったときから僅か一年での再会だ。思っていたより早く再会したものだ、と心の中で愚痴る。

 獄それは終末郷でも特に危険視されている者たちを閉じ込めてあるとされている場所である。終末郷の中心地にある世界有数の危険地帯である。

 そして、そんな場所になぜ私たちがいるのかというと――

「フム、ソたちがここに来るとは想定外であるが想定内でもあるな。そして、今はありがたい。何せ相手は我の世界を汚した元凶なのだからな」

「まあ、今はそうですね。私も今はいてもらって良かったと思いますよ。何せ――」

 私は目の前のモノ(・・)に意識を集中させる。

「神、それも禍津日神(まがつのひのかみ)に意識を乗っ取られた禁呪使いなんて最悪なんて言葉では言い表せられないぐらいの事態ですからね」

 

 

 

 

 

 

 

 色々あって、本当に色々あって獄に行った私たちはスコルバンカーと徒競走をしに来た。何でもスコルバンカーが命の取り合いではない決闘をしようと持ちかけたらしい。そしたらなぜかクロヒコさんの体が黒く染まった。すると黒く染まったクロヒコさんが口を開き、自分の名を禍津日神と名乗りこの世界の神を魔に染めたと言い放ったのだ。何でもクロヒコさんの使っていた禁呪は汚染された神の兵器であり使えば使う程人から神に変質し禍津日神と繋がりが強くなり意識を乗っ取れるようになってしまったらしい。

 そして今に至る。今の状態は最悪と言っていい。何故なら今のクロヒコさんは全ての禁呪を使えるようになっている。

 つまり万全の状態である。

 ただこちらに有利な点があるとすれば、メンバーの豪華さだろうか。私、キュリエ、タソガレ、スコルバンカー。メンバーだけ見ればめちゃくちゃ凄いのだ。ちなみに私とキュリエは術式魔装を既に纏っている。禁呪使いが相手でなければ、の話だが。今から始まるのは絶望の戦いである。

 

 

 

 

 

 

「我、禁呪ヲ発ス、我ハ翼ノ王ナリ――」

「第五が来る。私が防御、スコルバンカーとキュリエが攻撃、タソガレは何か妨害を」

「分かった」

「本来は従うなどあり得ないが今は従おう」

「私だけ雑だねえ」

 それぞれが私の提案を了承し、動き出す。

「正気に戻れ、クロヒコ。お前はそんな奴に乗っ取られ続ける程弱い奴じゃないだろ!」

 キュリエは光の槍を作り出しクロヒコに放つ。禁呪を唱えていたクロヒコは光の槍を避ける、――禁呪詠唱は続けたまま。

「フム、やるか」

 しかし、スコルバンカーが背後から殴ったことで禁呪詠唱が途切れた。

「グッ」

「流石に多対一は対応できるぬか」

「我、禁呪ヲ発ス、我ハ――」

 スコルバンカーから逃れようと前に飛び出すクロヒコ。だが、何かにつまずいたのか、倒れてしまった。

「ハ?」

「フム、これは」

 そう、絶対聖域だ。小さなバリアを作ってつまずかせたのだ。

「グッ、ニゲ」

「逃がさないよ?」

 怯んだ様子のクロヒコがなぜか動けなくなった。その原因はクロヒコの腕を掴んだタソガレにあるのだろう、おそらくだが。

「今なら彼に言葉が通じるんじゃないかな? 私がこっちの方を固定(・・)しているからね」

「クロヒコ目を覚ませ! お前は優しくて強い男だろうが! そんな危害を与えるしかできない奴なんて追い出してしまえ! ……もう、お前と会えないなんて嫌なんだ!」

「うっ、キュ、リエ、さん」

「クロヒコ!?」

「うっ、頭が、くっ」

「クロヒコ戻って来い!」

「ぐあああああ!」

 キュリエの言葉が届いたのかクロヒコさんの体が元に戻っていく。

「クロヒコー!?」

 膝から崩れ落ちそうになったクロヒコさんをキュリエは抱きしめて受け止める。

「キュリエ、クロヒコさんは」

「……息もしているし、元に戻っているおそらく大丈夫だと思う」

「タソガレ」

「大丈夫だよ。あれは消えたから」

「……消えた?」

「精神体で生きていたけど本来は死んでいてもおかしくなかったものだ。あれは禁呪に寄生みたいなことをしていたんだ。無理やり死ぬことを免れていた奴がの寄生先の持ち主に拒絶されたらもう終わりさ」

「なるほど」

「これで禁呪も呪われなくなったから、聖呪になるね」

「え、……もしかして聖呪が呪われていたから禁呪になっていたのですか?」

「そのとおり」

「神話で禁呪が聖呪の名で呼ばれていたはそういうことですか」

「まあ、これでハッピーエンドという奴さ、私は元凶潰せたし」

「いや、まだ問題が残っている、私にはな」

「おやキュリエ、何かあったかな?」

 キュリエは深い、とても深いため息をついた。

「ヒビガミとの決闘だ」

「あ」

 

 

 

 

 

「クカカカカ、ついにこのときが来たな、クロヒコ」

「……ああ、そうだな、ヒビガミ」

 ルノウスレッドの学園前で二人の男が向かい合っていた。最強の禁呪使いと最強の戦闘狂。もし二人が協力したら大抵の国は落とすことができるだろう。それほどの戦力。どちらが勝つか全く想像が付かない。

「来い! クロヒコ、存分に試合おうか!」

「……しっ」

 クロヒコさんは刀を素早く振るう。それをヒビガミは危うげなく受け止める。

「クカカカカ、いいぞいいぞ、強くなっている。速くそして重い。いい太刀筋だ、クロヒコ」

「我、聖呪ヲ発ス、我ハ――」

「クカカ、来るか」

 今度はヒビガミからの攻撃。クロヒコさんの死角、即ち視力のない左側から打ち込んだ。が、クロヒコさんはそう来るのが分かっていたのかのように防いだ。

「むっ」

「第九聖呪解放」

 クロヒコさんがそう言い放つと突然空間が割れた(・・・)。そしてそこから金色の鎖が出て来てヒビガミを縛ろうと向かっていく。以前は黒色の鎖だったのだが聖呪となったことで色が変化したらしい。それだけでなく――

「む、強度が上がったか」

 鎖を弾いたヒビガミが目を少し見開く。そう、強度や速度の上昇が確認されたものが多くあった。ヒビガミといえどもこれは軽々対象できないだろう。

「クカカカカ!! いいぞいいぞ、なら己もこれを使おう」

 そう言うとヒビガミの顔に黒い血管が浮き上がった。

「さあ、行くぞ」

「第一聖呪解放」

 ヒビガミが喋っていた間に詠唱していたクロヒコさんは発動する最強と言われた第一禁呪を解き放った。

「む、これは光?」

 クロヒコさんが第一聖呪を唱えた直後クロヒコさんの周りを白い光がぐるぐると螺旋状に滞空していた。

 その直後ヒビガミの体が光によって撃ち抜かれた。

「がっ!? これは!?」

 クロヒコさんはヒビガミに容赦なく光線を放っていく。

 だが、ヒビガミも慣れて来たのか光線を避けていくようになった。だがこれでは終わらない。第一聖呪の強さは光線だけではない。光はヒビガミに覆い被さり檻の形を取った。

「ぬっ、拘束したか、だがまだだ」

 ヒビガミは剣を振るうが檻は頑丈だ。そしてその隙に――

「第六聖呪解放、――第聖七呪解放、――第八聖呪解放我、――第五聖呪解放、――第二聖呪解放、――第七聖呪二界解放」

 クロヒコさんの聖呪はどんどん放たれていく。

「ぬおおおおおおおおおお!!!」 

 

 

 

 

 

 

 

 ……ヒビガミは頑張った。強かった。だが勝てなかった。

 ただ――

「クカカカカ!! 負けたか、クロヒコ、殺すかは己に任せる! クカカカカ!!」

 まだ死んでいないのだからやはりヒビガミは最強に位置する存在だ。クロヒコさんさえいなければの話だが。

 普通跡形もなく終わるはずなんだけどなあ。第一聖呪は絶対聖域を容赦なく突き破る火力あったからクロヒコさんと戦ったのなら普通なら分すらもかからず負けるはずなんだけどなあ。

「ヒビガミ、俺は今回は殺さない」

「む?」

「あんたとは色々あったからな。感謝もしている。だが」

「己の仲間に手を出さなければ……か?」

「そうだ、それと俺が困ったとき助けることも追加だ。それを守るなら殺さないでおく」

「クカカカカ!! やはり己は変わっている。邪悪だ、クロヒコ」

「ああ、そうらしいな」

「分かった。その条件を飲もう」

 そういうとヒビガミは去って行った。ちなみにこれはマキナさんにも通達しているらしい。反対されたらしいがクロヒコが押し通したらしい。……この後聞いたらクロヒコが暴走したら止められるのがあの男しかいないと考えていたキュリエの発案らしい。

 

 

 

 

 

 斯くして聖呪の国の禁呪、いや聖呪使いの物語は幕を閉じる。だが完全に終わるのはまだ随分先だ。何せ彼らの、いや私たちの人生はまだ続くのだから。

 

 

 

 

 

 

「ふ、数年振りだな。イム、いや神罰隊第三位殿と呼んだ方がいいかな?」

「イムで構いませんよ、聖樹八剣副隊長キュリエ殿、そして聖樹八剣隊長クロヒコ殿」

 私がそう告げると、私とキュリエ、そしてクロヒコの笑い声がその辺りに広がった。

 今私は胸を張って言える。私は今とても幸せだと。

 

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