「それでは第一回イムをルーヴェルガンに引き留めるには会議を始める!」
ルーヴェルアルガン騎士団の比較的広い一室でシャナの声が響いた。
「えっと、シャナトリス様? いきなり集められたと思ったらなんですか? これは?」
「……帰っていいですかねぇ? シャナ様」
シャナに疑問の声をかけたのはギアス王子の近衛隊長のゼスと副隊長のプガラである。
「まあ、そう言うな。割りと真面目な議題じゃ」
「まあ、言いたいことも分かります。イム殿強いですから手放したくはありませんよね」
「それは分かりますけど、イム殿は別にここを離れる気はしないけどねぇ」
「確かにイムは何もしなくても離れないかも知れんが、離れたときのダメージがデカいのじゃ」
「「あー」」
シャナの言葉に二人はシャナの懸念が分かった。イムの力はもはや一国級である。他の国からあらゆる手段を用いてスカウトされるクラスの人材である。戦争の抑止力から実戦、指揮、殿どれをやらせても上手くやるだろう、特に殿は適役であるだろう。どんな者だったとしてもイムのことを聞けば絶対に敵に回したくない相手と答えるだろう。少なくともキュリエ、クロヒコ、シャナ、マキナ当たりはそう答えることだろう。
「おそらく離れないだろう、と憶測だけで判断すれば後々痛い目を見かねん。ないかも知れなくてもあり得る未来への対抗策の検討ぐらいはしておいた方がいいのじゃ、後悔しないためにな」
シャナの重々しい言葉に二人は頷く。確かに今の内に考えておくべき事案である。
「しかしねぇ、それならなんで俺たちだけで会議を? もっと多い人数に聞くべきではないんですかい?」
「そうですね。神罰隊の面々に聞いてもよいのでは?」
「まだ検討段階じゃから大人数には聞けないわい。割りと機密事項だからの、お主らは口が堅いから話したという訳じゃ。……神罰隊に関しては、まあ、割りと参考にならなさそうだからかの」
「「……」」
「うむ、二人とも反論はないようじゃの」
「確かに神罰隊の面々だとなあ、ローズ隊長でまともな枠に入るからな」
「個性が強い方たちですからね」
「……うむ、そういう訳じゃ」
神罰隊は王直属の隊であり独立性が高い、そのため他の隊とトラブルが多い。それに加えて実力はともかく協調性、人間性、社会性が欠けているものが割りと多い。……そういうことである。
「そういう意味でもイム殿にはまじで内にいて欲しいですねぇ。どうしたもんですかねぇ」
「やはり有効な手段は限られて来るでしょう、金、地位、権力、愛国心、忠義、恩。これらのどれかしかないのでは? 考えれば他にもあるかも知れませんが」
「うむ、大体そんなものじゃろう、だがのう」
シャナはため息を吐いた。
「イムは終末郷出身じゃから多分愛国心はないの」
「それならやっぱり金じゃないですかねぇ。人間、金があれば大体のことはできますよ」
「そうじゃな、普通なら。だがのぅ、前にイムへ家を買うためのお金をプレゼントしようとしたら断られてのう」
「……いや、でもそれは私でも断ると思いますよ。流石に申し訳ないですから」
「他にも入隊したばかりの国王軍兵士の給料見せたら、高いって驚いておったぞ」
「「え」」
確かに国王軍兵士の給料は安くない。だが、国の英雄クラスの人物が高いという程の給料でもない。つまり――
「イム殿は……」
「ほとんど金に執着がないということに?」
「そういう訳じゃ」
「……じゃあ地位と権力は?」
「……もっと興味無さそうじゃわい、イムの奴地位とか権力はむしろ枷となる位に考えておりそうじゃわい、……いやでも意外と地位を与えられるとその責任を果たそうとしそうじゃの。……いけるか? でもこの国にいたら面倒なことになると思って任命される前にどこか行く可能性もあるかもしれん。……これは保留かの」
「後は……忠義とか恩ですね」
「……」
「え? シャナ殿どうしたんです、暗い顔して」
「……一番無さそうなの、それかも知れんのう」
「え、いや。王とか王子、シャナ殿にはイム殿は結構恩ある気しますけどねぇ。違うんですかい?」
「あるにはある。スカウトしたのはわしじゃしな。だが口約束から外堀を埋めた形じゃったからのう」
「えっ、そうだったんですか?」
「若干強引にスカウトしたの」
「あー、それは確かに恩義とかの方面からは難しいですかねぇ」
「後は……恋愛方面から仕掛けるぐらいでしょうか」
「なるほど、その手が」
「……無理じゃ」
「「え?」」
「それは無理じゃ」
「無理なんですかい?」
「絶対無理じゃ」
シャナが真顔になったのを見て二人は悟る。本当に無理なのだと、理由は分からないが。
「えー、でもそれじゃあほぼ案がなくなりますよ。残っているのは地位と権力案だけですねぇ」
「イム殿を引き留めることに有効な手段か地位と権力を与えるしか具体的にできないって、字面だけ見るとイム殿が野心家に聞こえますね」
「実際は真逆じゃがの」
シャナのため息の後に呟かれた言葉に二人は同意の頷きをした。
「……もう妥協させるぐらいしかないんじゃないですかねぇ、別にイム殿ならこの国でも上手くやっていけますし、他の国が特別住み心地がいい訳でもないですし、長年住んでいるこの国に妥協して住んでくれることを願うしかないのでは?」
「……そうじゃのう、とりあえず現状維持しか無いかのう」
「……私がさりげなくこの国に居着きそうか聞いてみましょうか?」
ゼスの言葉にシャナとプガラは目を合わせた。
「……そうじゃの、まず聞いてみないと分からないからの」
「そうすね、頼みます。隊長」
「そういえばイム殿は将来どうするかは考えていらっしゃいますか?」
「将来……ですか? うーん、そうですね。まだ正確には決まってません。ただ、しばらくこの国にいることとは思いますが」
「そうですか。その言葉が聞けてとても嬉しいですよ、ちなみに理由とか聞いてもいいですか」
「……? いえ、シャナさんに恩がまだ返せてませんから」
「……恩ですか?」
「ええ、私には幼なじみがいたのですが、離れ離れになってしまいまして探していたのですが、シャナさんに見つけて頂きました、後はそうですね学校の手配とか色々面倒事も任せてしまったり、私に自信と居場所をくださったり返しきれないぐらいの恩があります」
「なるほど」
「もし、この国を離れるとすればそのときはシャナさんから私が不要だと思われた時でしょう、そうならないように頑張らないといけませんね」
「……」
それはないという言葉をゼスは飲み込んだ。同時に思った。シャナ様、イム殿、あなたたち似た者同士ですよ、と。
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シャナとイムのその後(その他諸々)
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こんなことあった的話(ヒヒガミ)
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こんなことあった的話(ルノウスレッド)
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イムたちのゆるふわな日常話