最強少女は幸せを探している   作:但野ミラクル

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今回も説明が若干多くなります。



第2話

「イム、本当に大丈夫か?」

「大丈夫だってキュリエ。いつもキュリエもやっているでしょ、囮役」

 あれから七年程経ち十二歳になった私は何人かの孤児と一緒に外に出ていた。その目的は周辺の住民から物資を奪うためである。

 きれいな長い銀髪をなびかせるキュリエ・ヴィルステインこと、キュリエに私は言った。

「キュリエに教わった剣術もあるし、大丈夫。危険そうだったらすぐ逃げる、それに予兆を探るのと回避行動はキュリエより得意だし問題ないよ」

「……それはそうなんだが」

 説得しようと言葉を重ねてもキュリエは不満そうにしている。確かにキュリエと私は仲がいい。キュリエには剣術を教わっているし、一番長く第六院にいるからこの反応も分からないではない。私としてもその気持ちは嬉しい。

 けれど、予兆が分かるというのも真実だし、私が囮役として優れていることは紛れもない事実だ。なぜか私は危険が迫っている予兆に気づきやすい。それに相手の動きを見ているとどう動くのか推測できる、それもかなりの精度で。だから囮役としてはかなり優秀だと思う。

「しつこいぞ、キュリエ。こいつなら大丈夫だろ、あれ(・・)も持っているんだからよ」

「……ロキア」

「そうよそうよ。イムもこう言っているんだし、やらせてみればいいじゃない。……死んでも私はむしろラッキーだしね」

「おい、ノイズ! 聞こえているからな!」

 キュリエに目付きが悪い深い藍の髪の少年、ロキアと長い紫色の髪をうねらせる少女ノイズが反対の意見を告げた。

 ロキアはいいとしてノイズはちょっと酷くない? いやもうキュリエが抗議の声を挙げたから一々言わないけど私のこの嫌い過ぎるでしょう。まあ、その理由が――

「ノイズ、もしわざとイムを殺したら許さないからな!」

「いやーん、キュリエったら情熱的。大丈夫よ。殺してキュリエに嫌われたくないもの、だってキュリエのこと大好きだから」

 キュリエといつもいるのが私だから、まあ理解はできなくもないけどね。ただ、ノイズは性格が綺麗にねじまがっているから同情できないし、する気も起こらない。

「まあ、とりあえず行ってきます。フォローよろしく、頼りにしてるよ、キュリエ」

「おい、俺は?」

「あれ、もしかして気にしてた? もちろん頼りにしてるよ、ロキア」

「ねえ私は?」

「行ってきます」

「おい!? この野郎」

 口が悪くなったノイズは無視して私は荒くれもののいるところに向かった。

 

 

 

 

 

 

「おー、大漁大漁、屑もかなり持っているもんだな」

「この終末郷じゃ屑の方が物資を持っているからね。いやーん、劇的~」

「どこがだ。クソノイズ」

 この地域は終末郷と呼ばれている。位置の関係上戦争する場所として長年使われたこの土地は不毛の地となり、訳ありの物が多く集まる場所となった。そこにいるのは大体屑が多い。まあ、つまりロキアとノイズが言っているのは私の容姿を見て食い物にできると思った奴という訳だ。

 自分で言ってなんだが私もかなり容姿は整っている方だ。髪は薄い青、肌は透き通っているように見えるからかなりの美少女だ。まあ、キュリエはもっと美人だし、ノイズも残念ながら妖艶な色気を放っているからあんまりこの中じゃ自慢できる話でもないのだけれどね。

 私を狙った人も「上物だぜ、こいつはよぉ」ということを言っていたからこの世界でも結構整っている方だと思う。下衆に綺麗だと言われても嬉しくはないけど、下衆だと分かるからこっちも罪悪感なく狩れるから助かるね。下衆な人は毎回「上物だぜ、こいつはよぉ」って言ってくれたらいいんだけどなあ。

 

 

 

 

 

 

 

「ふんふふーん」

「どうした、イム。ずいぶん気分が良さそうだな」

「あ、ヒビガミ」

 第六院に戻り、鼻歌を歌いながら食堂に向かっていた私に、戦闘狂のヒビガミが長い髪をなびかせながら話しかけて来た。

「いや、キュリエがさプレゼントをくれたんだよ」

「ほう、キュリエがか。まあ、イムになら納得だがな。己らは仲がいいからな。それで何を貰った?」

「短剣だよ。装飾がついているやつ」

「ほう? 装飾が付いている物を渡すとはキュリエにしては珍しいな。もっと使えそうな物を渡しそうなものだが」

 うん。私も正直にいうと渡したいものがあると言われたときは実用性が高い物を渡してくると思っていた。だけど――

「私に似合うと思ったからって」

「……クカカ、愛されておるな、イム」

 笑うヒビガミに私も笑みを向ける。

「うん。とても嬉しいよ。でも……」

「依存されるのが怖いか?」

「っ」

「図星のようだな。確かにキュリエはここでは異質だ。唯一自分に共感してくれる己に依存しているのは確かだ。だがイムよ。己も俺の目にはキュリエに随分依存しているように見えるがな。キュリエよりもイム、己の方がずっとな」

 私が依存している?

「どうやら自覚はないようだな。一つだけアドバイスをするとするならば己には軸となる物がない。すぐに周りに順応する。だがキュリエと一緒にいるときだけは順応していない。素というやつだ。そして己はそれに安心感を感じている。その順応と素の落差から気づかぬ内にキュリエを生きる目的にしておる。だから己は自分の欲望をもっと客観的に見つめ直すべきだ。日記でも書いてはどうだ?」

 ……ヒビガミの言っていることがよく分からない。順応している? 普通のことじゃないだろうか。生きるためなのだから。

「では一つ質問だ。俺がキュリエを本気にさせるために己を殺すと言ったらどうする」

「その場合もちろん、自殺するけど?(・・・・・・・)

「クカカカカ! そこよ。キュリエのために命すら度外視している。命を大事にしている己がだ。」

 何故かめちゃくちゃ笑っているヒビガミに私は首を傾げた。いや、普通じゃない? 

「己はキュリエのために自分を大切にすべきだ」

「え?」

「キュリエのことを思うのならキュリエが大事に思っている己を大事にしろ、キュリエ以上に。そしてその自分の感情でキュリエを想え。そうすれば――」

 ヒビガミが濁っている目を細める。

「己はもっと強くなる。そうすれば俺といつか全力で死合えるだろう」

 意味は分からない。でも、大事なアドバイスには思えた。私には何か足りないのかもしれない。そしてそれは漠然と生きているだけでは手に入らない気がした。

 まあ、それはそれとして反論したいことはある。

「……ヒビガミと全力で死合うのは私には無理じゃないかな?」

「ククク、いや俺はそうは思わん。今でもかなり戦えるだろう? 略式魔術もかなり使えるようになったと聞いたぞ」

「……それは汎用性が高いから覚えただけで対してつかえませんよ」

 魔術、それは魔力を使い本来では起こり得ないことを起こすものだ。何もないところから火、水、風、土を生み出したりできる。発動方法も様々で指先に魔力と呼ばれるものを集め宙に古代文字による術式を描くことで発動させる方法や、術を発音することで発動するもの(ただしこちらは術ごとに適正がないと発動しない)などがある。そして略式魔術は古代文字を書くときに省略して描く方法だ。省略して描くため発動速度は早いが省略して描くためちょっとでも間違えると発動しなかったり誤爆したりする上級者向けの魔術だ。

「ククク、それでも伸び代はかなりある。楽しみだ。しかも聖魔剣まで使いこなしているそうだな」

「……」

「おっとこれは秘密にしていたか」

「誰からそれを?」

「クカカ、秘密だ」

「……」

 聖魔剣それは魔力を注ぐことで魔法を使える上に切れ味などの剣としての性能を高めることのできる剣だ。ちなみに魔力を注ぐことで魔法を使える剣は魔剣、剣としての性能を高めることのできる剣は聖剣と言われている。要するに聖魔剣は魔剣と聖剣のいいとこどりの剣という訳だ。ただその数は少なく魔力の制御が難しいため聖魔剣を使えるものはかなり少ないらしい。

 私も最近使えるようになったばかりだ。

「クカカ、大変楽しみだ」

 そう言ってヒビガミがその場を去った。

 ……はあ、疲れた。

 それにしても自分を大事にしろ、か。蔑ろにしたことはないつもりだった。でもちゃんと自分のことを大事にしたり向き合ったりしていたかと言われると若干疑問に思わないでもない。一度ちゃんと自分の気持ちと向き合って見るか。そう思った、1ヶ月後タソガレが突如失踪した。

 

 

 

 

 

 訳が分からなかった。が、やることは簡単だ。

 という訳で私は今全力で第六院から離れたところに行くために走っている。タソガレがいなくなったことを知ったときはキュリエと一緒に逃げようと思ったけど、キュリエが見つからなくて断念した。そのことを記した手紙を急いでキュリエの物入れに入れたから事情は分かると思う。もちろんキュリエを待つことも考えたが、何かとんでもなく嫌な予感がして逃げてしまった。あれは一体なんだったのだろうか。

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