今回は三人称視点になります。
イム・アルカディア。それは戦いの天才である。強靭な体、高い動体視力、相手の動きを演算し予測できる頭脳を持った天才中の天才である。だが――
「イム、流石に働き過ぎじゃ。有給たまっているから休め」
シャナは呆れたように息を吐いた。
無休で働くのは無理であった。
「え?」
「え、じゃないわい! 働き過ぎじゃって言っておるんじゃ」
「いや、人間頑張れば何とかなるものですよ?」
イムはぐだっー、と椅子にもたれて生気が抜けた顔で言った。
「その状態で言われても信用できんわい」
「……いやいや、ちょっと体調悪いだけですよ?」
「ちょっとの範疇じゃないわい、わしの前ですら取り繕えなくなっとるのが証拠じゃろ、休むのは怠惰ではなく仕事の一部じゃぞ?」
「……休むのが仕事ですか?」
「そうじゃ。休憩を取らないと長期的には集中できないし、最終的にはパフォーマンスが落ちる。わしのために休め」
「……」
イムは顎に手をやり、考え込んだ。そして、数秒目を閉じたかと思うと、ゆっくり口を開いた。
「わかりました。有給取ります。……でも休みってどんな風に取ったらいいですかね?」
「……そうじゃな。休みの予定が取れたらわしに言え。わしもその日に休むから案内してやろう。都合が合えば特別ゲストも用意しておくわい」
「え? シャナさんはともかく特別ゲストというのは?」
「くふふ、その日になってからのお楽しみじゃ」
シャナがニヤリと笑うところを見てイムは少し不安げに首をかしげた。
「という訳で、キュリエが来てくれたぞ!」
「え?」
休暇を取ったその日に来たのはキュリエであった。
変装用の魔導具を身につけたシャナはイムを驚かせたためか得意げな顔になっていた。
「……ちょっとシャナさん、何を気軽に隣国の騎士団のナンバーツーを呼び出しているんですか!?」
「いや私も長めの休暇を取ってな、せっかくだから遊びに来た、クロヒコも来たがっていたんだがな、流石にトップが休日を取るのは中々難しいようで今回は見送りだ」
「ナンバーツーが長めの休みを取るのも大概なのですが?」
イムは額に手をやり空を仰いだ。
「いや、他の団員がいい加減休めとうるさくてな。特に私の親友とかが、上司が休まないと部下が休めないからって」
「あー」
「……本当にお主ら元とはいえ終末郷の住人か疑わしくなるときあるわい」
「……確かに休んではいないが無茶はしていないんだがな」
「お主ら過労死しないか、今から心配になってくるわい」
「いや、国のためにやらないといけないこと」
シャナはイムとキュリエを見てため息を吐いた。
「おおー、これは……」
「デカイじゃろ?」
イムはそれに釘付けになっていた。
「分厚いですね」
「ああ、すごく大きい肉だな」
それは肉の塊であった。キュリエたちよりも横幅も高さも上。あまりにも巨大な肉だった。
キュリエたちが見ていたのは軽食の肉料理の出店である。
吊るした肉を薄くスライスしパンに挟んで食べる、要するにケバブである。
「うまうま」
「……イムは食事のときだけはめちゃくちゃ気が緩むんだよな」
「たまに小動物かと思うことあるわい」
「え、これクリームですよね? え? マジですか?」
スイーツの店でイムは驚きのあまり挙動不審になっていた。
「ん? そんなに驚くことか? 何年も前からこの場所で営業しておる店なんじゃが」
「まあ、イムの気持ちも分かる。私も最初見たときはこんなものがあるのかと驚いたからな」
イムの考えとは違う方向でキュリエは同意を示した。
イムが驚いているのはこの時代の文明でクリームが商品として使われていることについてだ。詳しいクリームの歴史は知らないが、もう少し近代化してからの代物だと思い込んでいたイムは驚いたのである。実はクリーム自体は16世紀にはあったとされている。もちろん、現代のクリームとは違い今より手間はかかるし脂肪分の高いものではなかったがそれでもあることはあったのだ。
「ふわっふわしてますね」
「キュリエ、イムの目がめちゃくちゃキラキラしておるのじゃが」
「……イムって甘いものすきだったんだな」
「え? キュリエも知らなかったのかのう?」
「いや、終末郷でめったに甘いものなんてなかったし、万が一手に入ってもイムは食べなかったからな。……もしかしたら我慢していたのかもしれんな」
イムに聞こえないぐらい小さな声でシャナとキュリエは囁き合った。
「ねえねえ二人とも早く食べましょうよ!」
((テンション高いな!?))
二人はイムの珍しい子供のような言動に内心突っ込んでいた。
ちなみにその後シャナとキュリエはイムへの誕生日プレゼントは甘いものにしようと決めたようであるがそれはまた別の話。
キュリエ、イム、シャナの三人はその後も街を歩き楽しんでいた。
「キュリエならこんな服似合いそうですよね」
「うむ」
「……何で私の周りの友人はそんなに私にフリフリした服を着せたがるんだ? 似合ってないだろに」
「似合いますよ」
「似合うわい」
「イムにはこんなの似合うんじゃないか?」
「……青いバラを模したシュシュですか、ちょっと買ってきます」
「え? 今?」
「キュリエ、多分お主がイムにかわいいとか似合うって言ったら何でも買うのではないかの?」
「いやいやそんな訳……否定できんな?」
三人は色々な店を回った。本当に色々な店を回った。
「どうじゃった。イム、楽しかったか」
「ええ、とても。これなら明日から働けそうです」
「「いやもうちょっとイムは休め」」
まだまだ有給が余りまくっているイムに二人は呆れた表情で言った。
しばらく投稿できていなくてすいません、別にウマ娘に魂売った訳ではなく色々都合が合わなくて投稿できていませんでした。決してウマ娘のチャンピオンミーティングに時間をかけて投稿するタイミング逃したとかそういう訳ではありま(略)
真面目に話すと中々都合が合わない、ちょっとこの作品のネタが尽きたとか色々な事情がありました。
この作品を楽しみにしてくださっている方には申し訳ないのですが、別の禁呪の二次創作を書こうと思うのでこの作品の投稿はしばらくの間しなくなると思います。もしその作品ができればよければ見ていってください。
どれ読みたい?(色々あって何書いたらいいか分からないため書くものを絞るアンケート)
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シャナとイムのその後(その他諸々)
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こんなことあった的話(ヒヒガミ)
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こんなことあった的話(ルノウスレッド)
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イムたちのゆるふわな日常話