最強少女は幸せを探している   作:但野ミラクル

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第5話

「おお、よく来たの!」

「シャナさん」

 私は馬車を降りて迎えに来てくれたらしいシャナさんに口を開く。

「ん?どうした?」

「いや、どうしたもこうしたもありません。なぜ私の相手がローズ・クレイウォルさんなのですか?」

「ああ、それはのローズならお主の実力も分かりやすくなると思っての」

 いや、それにしては相手が悪くないですか? ローズ・クレイウォルってルーヴェルガン最強の戦士って呼ばれてましたよね? 負けてもどれぐらい強いか判別できないですよ。

「大丈夫じゃ、お主を殺害不能と書き込んでおるから死ぬことはないじゃろ」

 シャナさんの言葉に私は思わず首を傾げる。殺害不能と書き込むってどういうことだ?

「さて行くぞ。出発じゃー!」

「……はい」

 私は重い足取りで軽やかに歩くシャナさんに着いていった。

 

 

 

 

 

 

 シャナさんに着いていった先にあったのは大きな訓練所だった。ドーム場のシンプルな構造をした屋根に百人程度なら軽く入れる広さがある。うん。とてもシンプルだがいい建造物だと思う。

 そしてこの訓練所には私たちが来る前に人が一人佇んでいた。

 その人物は全身を漆黒の鎧を纏っていた。顔も鬼を連想させる二本の長い角が着いた兜ですっぽりと覆っているので性別すら分からない。何故か分からないが鎧自体にも無骨な突起物が多数ある。何か理由があるのだろうか。

 背丈は二メートルは優に越えている。そして、オーラ、これも凄まじい。一目見ただけで分かる。強いと。

 そしてその人物は一言も発する事なくこちらをじっと見ていた。だが、名前を言わなくても推察はできる。あの人物の名を。

「紹介するぞ。あやつはローズ・クレイウォル。神罰隊の隊長じゃ」

《鎧戦鬼》ローズ・クレイウォル。

 名の通りの見た目であった。正に鎧の鬼。

 ……なんでこんな人と戦うことになってしまったのだろうか。私は改めて嘆息した。

 

 

 

 

 

 

 

 シャナさん曰くローズ・クレイウォルさんはとても無口らしく話しかけてもほとんど反応しないらしい。

 そのため、私はローズ・クレイウォルさんの声を聞かないまま戦うことになった。とても残念だ。もし話せたのなら性格からある程度(・・・・)予測できることもあったのに。

「ルールは簡単じゃ、十分間ローズの攻撃を受けて降参(・・)しなかったら勝ちじゃ」

 え? それって、つまり攻撃しなくても耐えきれれば合格ということですか? まあ、それでもきついのは間違いないですが。

「別に攻撃しても構わんぞ、ちなみにお互い聖魔剣、聖剣、魔剣の使用は禁止じゃ」

 流石にそれは駄目でしょうね。使ってもいいならあまりにも私が有利ですから。……シャナさんには私の聖魔剣のことは話してないので偶然でしょうけどね。

「儂が腕を振り上げたそのときから試験開始じゃ、双方よいな?」

 私とローズ・クレイ……長いから心の中でローズさんと呼ぶことにするか。私とローズはさんは同時に頷く。

 そして私はシャナさんから借りた訓練用の双剣を構える。……あれローズさんは、剣を持ってない? 素手で構えた? もしかしてローズさんの戦闘スタイルって……。

「それでは」シャナさんが腕を振り上げた。「開始!」

 その瞬間、ローズさんは俊敏な動きで殴りかかってきた。

 ……やっぱりステゴロか。私はローズさんの拳を避けながら(・・・・・)考える。

 本来素手より武器を持っていた方が強い。リーチが違う上に威力も武器の方が普通は高い。しかし、ローズさんは全身鎧。全身鎧なら下手な剣術よりは体当たりの方が強い。つまり、わりと理にかなっている訳だ。

 しかも不思議なことに全身鎧を着ているとは思えない素早さだ。防御に徹していなければ瞬殺だっただろう。

 それに加えてローズさんはいくら避けても疲れを見せない。どうなっているんだ? 普通少しは動きが鈍るはずだ。

 そんなことを考えている最中もローズさんの攻撃は止まない。

 右フック、ジャブ、ローキック、ジャブ、右ストレート、タックル。

 すごいな。これなら大抵の傭兵一発で終わるだろう。もし、動きを予測できなければ(・・・・・・・・・・・)私もここまで粘れないだろう。聖魔剣を使えればまた話は違うが。

 ……もしこれがローズさんを倒せとか降参させろならおそらく無理だっただろう。私は避けることしか能がない。あとはせいぜい不意打ちとかカウンターもちょっとできる程度だ。

だから総合的に見ればローズさんの方が遥かに強い。というかおかしい。特に持続力が。何故こんなに全身鎧で動いて動きが鈍らないのか?

 だとすれば――ジリリリリリ!!

「終了じゃ!」

 ああ、もう十分経っていたか。なんとかなってよかった。

「お主、想像以上にヤバいの」

「はい?」

「はい? じゃないわい! ローズの攻撃を一度も食らわんのは普通無理じゃ!」

「そうですね。ただ私はちょっとズルができまして」

「そのズル込みでヤバいと言っておる、ズル程度でローズの攻撃を避けられると思っておるならローズに失礼じゃろ」

「うっ、……そうですね」

「そのズルを使えていることも含めてお主はすごいと認めるがよいのじゃ」

「分かりました」

「……ちなみにそのズルというのはなんじゃ?」

「軽い未来予知のようなものです」

「……はあー!?」

 シャナさんの絶叫が、訓練所内に響き渡った。

 

 

「……落ち着きましたか?」

「まあ、のう」

 私は恐る恐るシャナさんに問うと、シャナさんははあはあと息を吐きながら返事をした。

「いや、お主規格外が過ぎるのお」

「はい、シャナさんに言われて分かりました」

「言われんでも分かって欲しかったわい」

 あの後一時間程かけて私のやばさを熱弁したシャナさんは疲れたように言った。

「なあ、お主が自信を持てなかった理由は第六院の者がお主より強かったからじゃろう?」

「はい」

「……どのくらい強かったのじゃ?」

 シャナさん、随分と難しい質問をしてきたなあ。あの強さを言葉で表せ、だなんて。まあ一言で言うなら――

「人によってある程度ばらつきはありますけど……全力で相討ち狙いなら勝てる可能性はあるかな? ってぐらいの奴がゴロゴロいました。それでも勝てない相手が四人はいましたが」

「化けもんじゃのう」

「そうですね」

「他人事みたいに言っておるが、お主も十分その領域におるのじゃぞ。相討ちで可能性があるとか言っておる時点での」

「……はい」

「まあ、追々認めていけばよい。っとそういえば」

「凄く今さらなのじゃが、お主の名前は?」

 ……そういえば、名乗ってなかった。考えると凄く不敬なことをしていたな。

「申し訳ありません。名乗りが遅くなりました。私の名はイム・アルカディアです」

「そうかそうか、イム・アルカディア……イム・アルカディア!?」

「えっ、はい?」

「儂ながら凄い掘り出し物を見つけたものじゃい」

 え?どういうことですか? 何故名前を聞いただけでそんな反応になっているんですか?

「実はキュリエ・ヴィルステインから第六院の話を聞いていたのじゃが実力者として名前が挙がっておったのじゃ」

「キュリエがですか」

 私は思わず聞き返した。

 そっか。そんな風に思ってくれていたんだ。……凄く嬉しいな。

「イム。試験に合格したから改めて言うぞ、神罰隊に入らんか」

「分かりました。養成学校に入ってからの話ですが前向きに検討させてもらいます」

「まあ、卒業してから決めるがよい」

「はい」

 こうして私は養成学校に通うことが決まった。

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