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聖武祭は大聖場と呼ばれる闘技場で行われる。大聖場はルノウスレッドの闘技場の中でも一二を争うほどの巨大な建物である。そのため――
「うわあ、素晴らしいですね! あの曲線。やっぱり大聖場は美しいですね!!」
ギアス王子のテンションはとても上がっていた。私たちを置いて先に行ってしまうぐらいには
「シャナさん、護衛対象の側にいなくていいんですか?」
「大丈夫じゃろ、大聖場の入り口は見張りがおる。なんかあったらすぐ分かる――ローズ!? イム!?」
私はギアス王子の近くに人影があることを気づき走り出した。どうやらローズさんも同様らしい。
「おや、あなたはルーヴェルアルガンの『鎧戦鬼』か? 本物と出会えるとはなんとも光栄だな。それと……美しいお嬢さん、あなたは誰かな?」
ギアス王子の近くにいた肌が病的な程に白い、緑髪の女性は首を傾げる。私は彼女の金色の瞳を見つめる。
「……」
「私はイムと申します」
ただローズさんは相変わらず無言であった。
緑髪の女性はギュンタリオス帝国第一皇女、ヘル・ギュンタリオスだった。
ギアス王子と同じくルノウスレッドの王に招待されていた人物のようで、ここにいることは問題ない……のだが、どうやら予定よりも早く来たようだ。マキナさんがかなり動揺していた。ちなみにヘル皇女は偶然早く着いたのではなく、わざと早く着かせたらしい。中々癖の強い人物に見える。いや危なっかしいというのが正しいか。
そんなヘル皇女にもギアス王子は私たちと話していたように変わらず積極的に話しかけていた。ギアス王子は将来大物になるだろう。いや、今も王子だから大物ではあるか。
ここまでは問題はなかった。ヘル皇女が戦争とは進化とかいう持論を語り再びかなり危うい印象を受けたがそこまではよかった。ヘル皇女がギアス王子に平手打ちしようとするまでは。
正気か?というが私の正直な感想だった。脈絡がほぼなく平手打ちしようとするなど少なくとも皇女のすることではないだろう。
皇女の平手打ちを止めるべく、動こうとしたがローズさんが動くのを見て止めた。位置的にローズさんの方が早かったためだ。そして、ローズさんはヘル皇女とギアス王子の間に割り込んだ。そしてヘル皇女の腕を掴もうとした。しかし、ローズさんの腕はある者に捕まれていて掴めなかった。
「やれやれ、ヘル皇女。こんなお遊びは止めるように言いましたよね?」
その者の名は私と同じヴァラガ・ヲルムード第六院の出身者である。そして、強者蔓延る終末郷の住人に恐れられた第六院の中でも強者とされた男である。
その後、ヘル皇女がギアス王子に無礼を謝りギアス王子が許したことで大事にならずに済んだのだが、ヘル皇女が唐突に、今思い出したと言いたげに口を開いた。
「そういえばこの国には禁呪使いがいるらしいね。確か聖樹の国の禁呪使いと呼ばれているのだったかな? もしよろしければ一度会わせて頂きたいな」
マキナさんは口ごもる。
禁呪使い。それは伝説の禁呪と言われた呪文を使いこなす者のことである。その呪文は強大な力を有しているとされていた。最近まではただのおとぎ話とされていた。禁呪を記した巻物はあったが、誰も読めなかったためだ。しかし、今この時代に禁呪使いは現れた。そして、その者をルノウスレッドは保護しているというわけだ。
シャナさんの話では禁呪使いが四凶災を倒したらしい。左目に眼帯をした黒髪の少年と聞いている。
そう丁度、銀髪の少女と一緒にいる少年みたいな……みたいな――
あれじゃない? 眼帯付けた黒髪の少年。横にいるのはキュリエだ。間違いない。よりにもよってこのタイミングか。
「あれ? シャナさん? マキナさん?」
あー、マキナさんは呆然としているし、シャナさんは天を仰いでいる。
シャナさんがこんか反応するの初めてではないかな?ヘル皇女ある意味すごいな。
その後禁呪使いの少年、クロヒコ・サガラがヘル皇女に禁呪使いかを聞かれて、自分が禁呪使いだと明かしたことでその場は丸く収まった。クロヒコさんがごまかさず誠実に明かしてくれてよかった。もし、ごまかしていたら面倒なことになっていた気がする。
この後はギアス王子がとヘル皇女がルノウスレッドの聖王と会うためこの場は離れることになる。キュリエとは色々話したかったが、この場ではちょっと話し辛いため、後で合う約束をこっそりと交わした。ちなみにもちろんその話はシャナさんに通達済みである。
「なあ、イムよ。あの男、ヴァラガ・ヲルムードは……」
「はい。同郷です」
「……なるほどの」
「まあ、彼の逆鱗に触れなければ大丈夫だとは……思います」
「なんじゃ、その間は」
「逆鱗が不明なんですよ」
「……面倒じゃのう」
「まあ、よっぽど自分のことしか考えず自由を奪おうとしなければおそらくは大丈夫です。もしシャナさんが意図せずしてしまったなら……」
「してしまったなら?」
「私が時間稼ぎをするのでその間になんとかする方法を考えてもらうしかないですね」
「おおざっぱじゃのう」
「だって彼の望むものは彼自身分かってない節がありますから、私には時間稼ぎぐらいしか無理ですよ」
「そんなにか」
「はい、少なくとも私では倒すことは無理ですね。防御に徹されたらキュリエ、ノイズ、ヒビガミ、ロキアならいける可能性があるぐらいですかね」
「ふむ、それならクロヒコもやれる候補に入りそうじゃのう」
クロヒコ、禁呪使いの少年か。
「あの人が強いのは分かります。気配、体幹、歩き方、どれをとっても強者のものでしたね」
「分かるものなのか」
「心根が臆病なので」
「臆病のう? 臆病なものは傭兵はしないと思うがな」
「生きるためには必要でしたから」
「まあ、それはよいとして……キュリエと何かこそこそ話しておったがあれは?」
「今夜聖ルノウスレッド学園の学園長室で会うことになりました」
「なるほどの、まあ、ギアスの護衛は儂らとルノウスレッド側で行うと事前に決まっておったからの、好きにせい」
「ありがとうございます」
「せいぜい楽しんでくるがよい。宿は事前に言っていた場所じゃ、証明書を見せれば通されるぞ」
「はい。分かりました。行ってきます」
私はシャナさんに軽くお辞儀をしてシャナさんに背を向けた。
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