最強少女は幸せを探している   作:但野ミラクル

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第9話

「つまり――」

 この世界の無法地帯、終末郷には終末女帝と呼ばれる存在がいたらしい。その力は絶大とされているが今は行方不明である。今ではおとぎ話みたいな扱いを受けている。

 その終末女帝を信仰する団体が終末女帝を騙ったノイズを殺しに行ったのだが、逆にヒビガミたちにやられたらしい。それで何故かルノウスレッドに責任があると判断されルノウスレッドの要人たちを殺すことにしたらしい。そしてその団体の最大戦力、九殲終将という暗殺者が明日大聖場を堂々と襲撃をするという宣戦布告を出したらしい。

 とりあえず、一言。何を言っているか分からない。

 ノイズが終末女帝を名乗ったことについては分かる。それに怒っていることも分かる。だがそれが何故ルノウスレッドの責任になるのか。色々やったのもヒビガミなのに、それが起こった国のせいにされるなどどう考えてもおかしい。

「イム、気持ちは分かるが、ときには理屈が通じない相手もいるのじゃ、そういう連中は徹底的に潰さないと後々面倒なことになる」

「そうですね。徹底的に潰すしかないですね」

 身勝手な理屈で大勢の人を殺そうとしたことを後悔させてやる。

「……相手をするのは聖樹士じゃよ?」

 あ、そっか。聖樹士はこの国の騎士団の名前だ。かなり練度が高いとの話だ。

「クロヒコとキュリエも参戦するらしいがの」

「キュリエたちもですか」

 シャナさんは頷く。

「何か協力できたらよいのですが……」

「まあ、国の面子があるからの」

「無事だとよいのですが」

「不安か?」

「四凶災を倒したのを知っていての襲撃ですからね」

「確かにの」

「油断は絶対できないです」

 シャナさんは私の言葉を聞き、うむうと唸る。

「……なんとかしてみてもよいぞ?」

「本当ですか!?」

「まあ、確実に上手く行くか分からないがの」

「それでもありがとうございます」

 私は頭を下げる。

「止めい」

 シャナさんは「てい」と私にチョップした。

 

 

 

 

 

「護衛ありがとうございました、キュリエ、クロヒコさん」

「いえ、イムさんたちも気をつけてください」

「守りは私たちはに任せておけ」

 翌日、私たちは大聖場まで護衛をしてもらっていた。これは九殲終将たちの襲撃を警戒してのものであったが、襲撃はなかった。本当に正面から大聖場を襲撃するつもりか。

 大聖場には東西南北に分かれた四つの入り口がある。それ以外からは侵入できない造りになっているため、四つの入り口を守り切れば侵入をさせずに済む。

 キュリエは南、クロヒコさんは西門、他の門は聖樹士の幹部の方が担当するらしい。

 キュリエとクロヒコさんがいればなんとかなる気もするが、やはり心配でもある。

 ただ介入することは私ではできない。シャナさんにお任せするしかない。

 

 

 

 

 

 

 

 なんとかなった。シャナさんすげえ。

 話術でルノウスレッド、ギュンタリオス側を納得させて援軍を出させる許可を取らせた。さすがルーヴェルアルガンの魔女と呼ばれる人物である。しかもヴァラガにも何かさせようとしているようだ。まあ、ヴァラガは働きかけてもちゃんとやるかは微妙なところではあるが、そこはいいだろう。大事なことは援軍として行けることだ。私が行くところは――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 そこには惨状があった。騎士たちが倒れ血を流しピクリとも動かない。死んでいるかは分からない。息はありそうだが。しかし、それよりも重大なことがあった。

 キュリエがぼろぼろになって倒れていた。意識はあるようだが血は吐いているし動くこともきつそうだ。

おまけに息すらも荒い。あのキュリエがだ。

 そしてその元凶は明らかだった。

 それは(・・・)全ての造形が歪だった。体の全てが頭部、胴、脚部どれもが異形。同じ生物とは思えない。だがそれ故にどこか神秘さがあった。一種の美しくさえあった。

 これは(・・・)九殲終将ではない気がする。少なくとも人間とは思えない

「……」

 私は静かに剣を抜き双剣を構える。

「ふぅふぅ、ぐっ。い!?」

 キュリエは私を一瞬見つめ目を見張る。

「フム、ソは何者か?」

 異形の者が口を開く。

「イム・アルカディア、あなたを殺す者の名です。覚えなくてよろしいですよ? どうせすぐ死ぬので」

 これはもちろんはったりだ。キュリエが怪我を負う程の相手だ。私の腕では殺すことはおそらく不可能に近い。ただ、その前にこの異形の者に攻撃をさせなければ始まらない。

「フム、雌よ、不可能なことをいうものではないぞ。不敬である。とはいえソは名は名乗った。では我も名乗ろう。私の名はスコルバンカー。かつてこの世の王として君臨した者である」

「この世の王? ……スコル?」

 どこかで聞いたことがあるような……。

「む、我を知っているのか?」

「どこかで聞いたことがあるような……」

 でもおかしい。確かそれはこの世界ではなく――前世(・・)でだった気がする。スコル、スコル。……なんだったか。

「フム、古代のことを知っているのか」

「……古代?」

「よい。私に勝てたら我について教えてやろう」

 スコルバンカーと名乗った者は大きく体を捻った。それだけなのに、私の背筋が氷る。……ああ、これは死ぬかもしれないと。

 ……奥の手を使うときですね。私は左手の聖魔剣カテドラルに魔素を注ぐ。聖魔剣が光を放つ。そして私の体を包みこんだ。そして――

「フム、あの雌と同じことができるとは」

 私は蒼い全身鎧を纏った。これが今私にできる中で最強の防衛手段、術式魔装。身体能力、剣の切れ味、耐久力が上がる。その上、追加で特殊能力も使えるようになる。

 聖魔剣全てがそうではない。術式魔装を使える聖魔剣は少ない。そもそも聖魔剣自体が少なく使える者も少ないから、もしかしたら全ての聖魔剣は術式魔装できる素質があるかもしれないが、まあそれはいいだろう。

 問題は術式魔装ができるキュリエがぼろぼろにされていること。要するにめちゃくちゃ強い能力を使えるキュリエですら倒してしまったスコルバンカーをキュリエよりも弱い私が倒さなくてはいけないという訳だ。唯一希望があるとすれば私の術式魔装と聖魔剣自体の能力、そして私の戦い方が防御に特化しているから時間稼ぎだけはできるという点か。

 まあ、やれるだけやってみよう。この絶望しかない戦いを。

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