スタスタと迷いなく歩く足取りは軽やかだ
あたしは着いて行くのに精一杯だというのに……
「ここだよ」
ようやく辿り着いたその教室はごく普通の教室
ーーのように見えるのに
いつもみたいに恐怖や怯えが消える
1人じゃないと思えたからかな……?
「瀬野ー!お前はまぁたサボりか!」
勢い良く開いた扉からは担任と思われる先生が怒鳴り込んでくる
「まぁまぁ、転校生ちゃんを連れてきたから許してよ」
そんな怒る先生を軽くいなし、あたしを教室へと引っ張る
先生はいつものことなのか呆れたようにため息をつき、あたしに笑みを向けた
あたしのこの髪を見ても尚、こんな笑顔を向けてくれる人は少ない
「水坂……だな?」
「は、はい。今日からよろしくお願いします」
慌てて頭を下げる
先生は『堅苦しいのはいいよ』と教室へと促す
それでも少し躊躇うあたしの背を押してくれる人がいた
ここまで案内してくれたーー恐らく、瀬野さん
「おーい、皆お待ちかねの転校生だー!」
先生がクラスに呼び掛けるように伝えると一気に教室がざわめいた
そのざわめきが好意的なことが余計に嬉しくて、逆に怖くもある
静まりかえらないかな?悲鳴あげたりしないかな?
「大丈夫だよ。君はここでは1人にはならない」
あたしの心を察したようにそっと語りかけてくる
ーーそうだね、ここは貴方のクラスでもあるんだよね
スッと心が軽くなるのを感じた
今までなかった期待が、少しずつ溢れてくる
その期待に身を任せて足を一歩、踏み出す
「今日からクラスメイトになります、水坂 桐乃です」
一瞬にしてクラスのざわめきが消え去る
やっぱり駄目かと思ったが、その直後にどっと笑いが溢れた
何故、皆がそこまで笑うのかが分からないあたしは戸惑うばかり
「クラスメイトになるのにそんなに堅苦しい必要ないでしょー!」
「おいおい、今度の転校生は真面目だなー!」
その笑いはあくまで否定的じゃないことが嬉しかった
それぞれが気さくに笑ってくれるのがこんなに新鮮だなんて知らなかった
あたしもいつの間にかつられて笑っているのに気づく
何年振りだろう?こんなに心から笑えるのは……
「そんじゃ、テキトーに交流深めとけー」
先生は軽い感じであとの進行は生徒に任せる
本当に自由そうなクラスだ
あたしはここでなら、本当の友達を作れるかな?
ここでなら、居場所が作れるのかな?
ーーいや、作ってみせる
「改めて、桐乃ちゃん!僕は瀬野 葵!よろしくね」
スッと差し出された手が嬉しくて思わず、握り返す手が強くなる
そこであたしは、ようやくこのクラスの異変に気付いた
瞳の色が様々だったり、あたしみたいに髪色が違う人が大半
ここはもしかして、そういう人が集まってるの……?