山田太郎が行く教室へ   作:ジャイリ

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隠された天才って響きかっこいい。

それではどうぞ。


隠された天才ってわけじゃないよ

 今までの日々を忘れないために思い出を絵日記にしてまとめていると、いつの間にか放課後を迎えていた。ずいぶんと熱中していたようだ。それもそうだ、たった1ヶ月ではあるが、ここでの思い出は宝物のようだったのだから。

 

「あと何回高校生活でスキップできるのだろう。そうだ、スキップ同盟の二人と今日から毎日スキップをして帰ろう♪」

 

 思い立ったが吉日、あたりを見渡してみると鈴音を見つけることはできたが、綾小路君は見当たらない。少し残念に思ったが、親友の鈴音と二人きりでスキップをして帰るのも悪くない。すぐさま鈴音のもとに向かった。

 

「鈴音、一緒にスキップして帰ろ♪」

 

「……あなたずいぶんとお気楽なのね。あなた退学の危機なのよ?」

 

 鈴音は少し不機嫌な感じでそう言ってきた。どうしたのだろう、また頭痛がしているのだろうか?

 

「どうしたの鈴音、また頭痛?」

 

「9割は妙子さんが頭痛の原因なんだけど……」

 

 ため息をついて頭を押さえる鈴音、しまった、今はバファリンしかない。鈴音はイヴの方が良いから困ったな。

 

「そのお気楽さが今はうらやましいわね。妙子さん、あなた自分がDクラスだということに不満……は持ってるわけないわよね、小テスト0点だったのだし」

 

「まぁね♪ 鈴音は自分がDクラスに配属されたことに不満を持っているの?」

 

「あたりまえよ。入試の手ごたえも悪くなかった。今回の小テストだってそれなりの結果だったと自負しているわ」

 

「そういえば、小テストの結果鈴音はクラスでも上位だったかも。すごいね鈴音、さすが私の親友」

 

「そんな成績を収めている私が何故Dクラス?納得できるわけがない。こんな落ちこぼれの烙印、兄さんに知られたらと思うと……」

 

 鈴音は知りつぼみに言葉が小さくなっていった。とても落ち込んでいるようだ。なんで落ち込んでるんだろ?あっ!スキップだね、スキップしたいんだね。

 

「じゃあ、一緒にスキップして帰ろっか♪」

 

「あなたのそのスキップの異常な執着はなんなのよ。それに、私は職員室によるから一緒には帰らないわ」

 

「ええ!?いやだよ、残り少ない学校生活はスキップしながら親友と帰りたいんだ!!」

 

「残り少なくならないために勉強しなさい!!何を考えているのよあなたは」

 

「……へへ、スキップのない僕はテストをまともに受けることもできないのさ」

 

「スキップして受けること自体まともではないのだけれど……」

 

 え、スキップをして受けるのはまともじゃないの?初めて知った。ちょっとショック。

 少しばかり呆然としている間に、鈴音はいつの間にか教室を出て廊下を歩いているところだった。

 

「あぁ、待ってよ鈴音ー、僕も一緒に職員室についていかせてーーー」

 

 急いでスキップで追いかけるのだった。

 

 

……………………

…………

……

 

 

 職員室に到着すると鈴音は茶柱先生を呼び出していた。一体何を聞きたいのだろうか?

 

「どうした堀北……と、山田か。何の用だ」

 

「お伺いしたいことがあってきました」

 

「それは山田と二人でということでいいのか」

 

「いえ、個人的なことです」

 

「……あぁ、その、なんだ、うん。こいつが一緒に聞いても構わないないような内容なのか?正気の沙汰とは思えないが」

 

「それについては、まぁ、おっしゃりたいことはわかりますが、どうせ何を言ってもついてくるので諦めました……遺憾ながら親友でもありますので」

 

 何か嬉しいことを言ってくれている。鈴音から親友って言葉を聞くとむずがゆくなるな。

 

「しん、ゆう……堀北が構わないのならそれでいい。それで、聞きたいこととはなんだ」

 

「なぜ私がDクラスに配属されているのでしょうか」

 

「ほう、不満でもあるのか」

 

「先生は本日、クラスは優秀な人間ほど上位のクラスに行くと仰いました。そして、Dクラスは学校の不良品が集まるクラスだと。私は自分がDクラスに配属されるとは思えません」

 

「そうだな、入試の結果も全体4位、面接での対応も悪くないという結果を私は聞いている。すごいじゃないか堀北」

 

 すごいなぁ鈴音ちゃん。僕って何位くらいなんだろう?

 

「ありがとうございます。では何故?」

 

「まるで自分が優秀だと疑ってないような反応だな堀北?」

 

「当然です。優秀な成績を収めた。それが全てでは?」

 

 茶柱先生はおかしそうに笑いだす。面白いところらしいので僕も一緒に笑っておく。鈴音に思いっきり殴られた。解せぬ。

 

「痛い、ひどいよぉ鈴音」

 

「はぁ、はぁ……何がおかしいんですか先生」

 

「こ、こほん。本気で言ってるとしたらお笑いだと思ってな。それに、本当はうすうす気づいているのではないか?」

 

「話になりません。もっと上の方と掛け合います」

 

「これは学園の総意だ。上に掛け合ったところで結果は変わらんさ」

 

「……失礼します。妙子さん、帰るわよ」

 

「あ、うん。じゃあね茶柱先生♪」

 

 スキップをして帰ろうと鈴音の手をつかんで職員室を出ようとする。鈴音が嫌そうな顔をしたが、仕方ないわねと言って手を握り返してくれた。およ?手を握り返してくるなんて珍しいこともあるもんだ。さぁ、スキップで帰ろう。

 

「まぁ待て。お前が今後Aクラスを目指すというのなら避けては通れない人物をここに呼んでいる。おい、出てこい」

 

 鈴音は僕から手を離すと、茶柱先生に向き直った。あぁ、スキップの時間が……

 

「それはどういう……まさか、にいさ、」

 

「待たせすぎですよ茶柱先生」

 

「……綾小路君あなた、聞いていたの?」

 

「あぁ、何のことだ?俺は何も聞いてない」

 

「そこの部屋の壁は薄い。すべての会話は筒抜けだったはずだ」

 

 あ、綾小路君!!ここにいたんだ。今日は3人でスキップできるかもしれない。綾小路君にブンブンと手を振ると、綾小路君が小さく振り返してくれた。鈴音は僕の脇腹をチョップした。痛い。

 

「なぜ綾小路君がここに?」

 

「先ほど言ったとおりだ。Aクラスを目指すにあたって、こいつの存在は重要になってくるだろう」

 

「重要?」

 

「綾小路、お前はおかしな生徒だな」

 

「茶柱という名字に比べたら大したことはありません」

 

「あ゛、全国の茶柱さんに土下座でもしてみるか、ん?」

 

「すいません冗談です」

 

「次はないと思え……綾小路、お前は入試ですべての教科が50点だったそうだ。今回の小テストもそうだ。50点という成績を残している。これは偶然なのか」

 

 鈴音は信じられないものを見る目で綾小路君を見ていた。

 

「偶然って怖いっすね」

 

「今回の小テストで正答率3%をの問題を簡単に解いたかと思えば、正答率76%の問題を間違っていた。これでも偶然だと言い張るつもりか?」

 

「……あなた、何故こんな訳の分からないことをしたの」

 

「本当に偶然だ。隠れた天才とかって訳でもないからな」

 

「これでわかっただろう。綾小路はもしかしたらお前よりも優秀な生徒なのかもしれないな」

 

 鈴音は何やら深刻そうに考え込んでいる。僕は途中から話についていけてないので軽く職員室をスキップで一周していた。

 

「……これは本来言うつもりはなかったんだが、山田がここにいるのも何かの巡りあわせだろう。こいつの入試の成績は1位だ」

 

「「は?」」

 

 鈴音と綾小路君がぽかんとしてこちらを見ていた。あ、1位だったんだ僕。さすがスキップだね。

 

「教室ではさよならと言ったがな、本来の実力を発揮すれば退学になることはないと思っている。小テストですべての回答をスキップと答え、名前すらスキップと記入する常軌を逸している奴だがな。なぜこんなふざけたことをする山田」

 

「入試はスキップしながら受けさせて貰いましたからね♪スキップができないならそうなっても仕方がないのです」

 

「入試をスキップしながら受けられるものか。スキップで試験をしたいからと言ってでたらめを言うな。と言いたいところだが本当な気もするから悩ましい。何故かこいつの情報は秘匿されているし……こいつを制御出来たらもしかしたらジョーカー的な存在になるかもしれないぞ堀北」

 

 鈴音と綾小路君はずっとこちらを見たまま固まっている。そんなにみられると恥ずかしいな、照れ照れ。

 

「話は以上だ。さっさと職員室から退室しろ」

 

 二人はいつまでも固まっているので、仕方がないから僕がスキップで運ぶことにした。

 

「はーい、じゃあね茶柱先生♪あ、先生がつけてる香水とってもいい匂いですので、今度その香水教えてくださいねぇ♪」

 

「お、おぉ、そうか、今度教えてやる」

 

 茶柱先生の少しばかり嬉しそうな顔をバックに、僕たちは教室を出るのだった。

 

―――――――――――――――

 

 とある日の朝、男用の制服がクリーニングから戻ってきていたので、今日は久しぶりに男の子になることにした。

 

「ああああ、ああああ、ああああ。うん、しばらく声変えてたから、戻すのにちょっと苦労した」

 

 さて、今日も元気に学校にレッツゴー。

 

……………………

…………

……

 

「おっはよー」

 

 教室に入るといつもと違ってなんかざわざわしだした。なんだろう?とりあえず鈴音を見つけたので挨拶をしよう。

 

「おっはよう鈴音。今日も1日頑張ろうね」

 

「……あなた誰?それもなれなれしく下の名前で呼ばないで。ストーカー?どこのクラスの人なのかしら。気軽に話しかけないで」

 

「えええ?僕だよ僕」

 

 そ、そんなぁ……これはショックが隠せない。

 

「知らないわあなたなんて」

 

 よくわからないけど鈴音から僕の存在は消え去ってしまったらしい。とほほと肩を落として自分の席に着く。

 

「ちょっとあなた、そこは妙子さんのせき、……まさかあなた、妙子さんなの?」

 

「? 違うよ、僕は太郎だよ?」

 

「いや太郎は妙子さんで……ややこしいわね。あなた男の格好をするとそんな感じなのね。全くの別人じゃない」

 

「あぁ、そっか、しばらく妙子でいたからこの姿を見せてなかったこと忘れていたよ。僕の事ちゃんと覚えてる?」

 

「覚えてるとかそういうことではない気がするのだけど。男の声を出してるあなたはどうも違和感がぬぐえないわね」

 

 その後やってきた綾小路君もたいそう驚いていた。

 

……………………

…………

……

 

 お昼になり、珍しく鈴音から食堂に誘われた。綾小路君も誘っていたみたいで3人で食堂に向かうこととなった。

 綾小路君は鈴音からご飯をおごってもらっていた。いいなぁ。うらやましそうにみていたら、仕方ないわねと僕にも奢ってくれた。嬉しい。

 どうやらその食事は綾小路君を協力させるためのものだったらしく、綾小路君はもう人間が信じられなくなりそうだと落ち込んでいた。スキップで元気づけようとしたらそれもいいかもなと言っていた。綾小路君、好き。

 そうそう、僕は鈴音の中で自然と頭数に入っていたみたい。ちょっと嬉しい。

 

 どうやら鈴音は中間試験で赤点を取りそうな人の勉強会を行うつもりらしい。それで綾小路君を誘っていたんだね。納得。スキップ同盟はいつだって不滅だ。

 

「綾小路君には須藤君、池君、山内君を勉強会に連れてきてほしいの。お願いできるかしら」

 

「まぁ、やってみるが。俺だってうまく誘えるかはわからないぞ」

 

「この中ではあなたが一番あの3人組と仲がいいのだし適任でしょ?じゃ、頼んだわよ」

 

「山田でもいいんじゃないかその役目」

 

「……あなた本気で言っているの」

 

「……すまん、ちょっとした冗談だ」

 

 よくわからないが僕の話題が出た。もう、二人とも僕のことが大好きなんだから。

 

……………………

…………

……

 

 綾小路君は結局うまく誘うことができなかったらしく、櫛田?さんに協力してもらい、3人組を誘うことになった。そのかいあって、何とか勉強会は開催することとなるのだった。

 

 その結果は。

 

 崩壊だった。

 

 ものの見事に勉強会は喧嘩へと発展してものの5分で終了してしまう。鈴音と須藤?君が喧嘩して3人組は帰り、そのあと櫛田?さんともちょっともめて、櫛田?さんもいなくなる。綾小路君も帰ってしまい、鈴音と二人きりになってしまった。

 

「こんなことなら勉強会なんて開かなければよかった。全くの時間の無駄だわ」

 

「じゃ、スキップする?」

 

「しない……私の言っていたことは間違っているかしら」

 

 誰に言うわけではなく呟くように鈴音は言う。よくわからないけど、鈴音は何かと葛藤しているようだった。

 

「間違ってはないと思うよ。ただ、スキップに置き換えてみるとちょっとかなしいかな」

 

「ごめんなさい、私はあなたが何を言っているのかがわからない」

 

 あれれ?なじぇ?

 

「……今日はもう帰りましょうか。巻き込んでしまって悪かったわね」

 

「親友の頼み事はいつだって大歓迎だぜ」

 

 鈴音は少しだけ微笑むと、手を差し出してきた。

 

「今日は、スキップ、付き合ってあげるわ」

 

 スキップをご所望のようだ。思っているより鈴音の心は疲弊しているかもしれない。

 

「行きましょうか、お姫様」

 

「馬鹿……ほら帰るわよ」

 

 いつもより長めにスキップした。

 

 

―――――――――――――――

 

 少しばかり暗くなった夕方。僕は気分転換のスキップにいそしんでした。鈴音が思ってたより落ち込んでいたことにより、何かいい方法はないものかと、スキップで思考を加速させていた。ちなみに私服は姉のいたずらなのか、女物しかないため今は妙子の格好である。ポイントがないため男物の服をいまだに買うことができないでいたのだった。

 

「るるるんるんるん♪るるるんるんるん♪るるるんるるるんるるるん♪ん?あれは鈴音」

 

 とある場所に、いつかのイケメン男子と鈴音がいるのを発見した。どうやらもめているらしい。おやおやと眺めていると、イケメン男子が鈴音に暴力を加えようとしているのを見てしまった。

 

「す、鈴音!! スキップモード制限解除!! 秘儀、高速スキップ!!」

 

 一瞬でイケメン男子の腕をとる。ぎょっとしてこちらをイケメン眼鏡は見ていた。鈴音も突然のことに驚いていた。

 

「それはいけないよ♪ちょっとばかしおいたがすぎるんじゃない鬼畜眼鏡♪」

 

 僕は珍しく怒っていた。

 

―――――――――――――――

 

side 綾小路

 

 堀北と生徒会長が揉めているのを物陰からこっそりと俺は眺めていた。一応何かあった時の為に録画でもしておいた方が良いかなと携帯を取り出そうとしていた時に、堀北が生徒会長に暴力を受けようとしているところだった。これはまずいと思い、助けに行こうとしたところで、いつの間にか山田がそこにいた。

 

 速い、速すぎる。

 

 自分の反応速度をはるかに超えるスピードで堀北を助けに行った山田を見て驚愕するしかなかった。あんな動き、自分でもできない。おおよそ、人間にできる動きなのかと不安になる。不安?これが不安という感情なのか。

 

 あれは危険だ。驚異的存在だ。

 

 綾小路は、山田太郎への警戒レベルを跳ね上げる……

 

「スキップなら、ありえるか」

 

 ことはなかった。綾小路は着々とスキップに毒されていた。

 

side out 綾小路

 

 

―――――――――――――――

 

「いつの間にお前は背後に来ていた。警戒はしていたのに俺はお前に気付かなかった」

 

「そんなことより、鈴音から手を放せ鬼畜眼鏡」

 

 僕とイケメン眼鏡は睨みあう。鈴音に手を出す奴はどんな奴でも許さない。

 

「……お前、部活動説明会で俺を邪魔した女子か」

 

「じゃま?助けられたの間違いでしょ?恥ずかしがり屋さん♪」

 

「あれは俺の作戦だった。邪魔さえしなければ俺の目論見通りになっていたはずを、お前が邪魔したんだ……それはもういい。手を放せ」

 

「先にそっちが鈴音を放せ、順序が逆だよ♪」

 

 さてどうしてくれようか。そう思っているときに鈴音が声をかけてきた。

 

「やめて、妙子さん……お願い」

 

「鈴音、それはできない。こいつは鈴音に危害を加えようとしたんだよ。とてもじゃないけど許せない」

 

「お願いやめて。私が悪いの」

 

「そんなことないと思うけどな」

 

「……兄さんなの、お願いだから」

 

 切ない声の鈴音。こんなに弱っている鈴音はいたたまれない。しかしながら、どうやら兄妹げんかのようだ。こればかりは鈴音の言い分を聞くしかないか。兄妹げんかにしてはこの兄、めちゃくちゃ暴力振るおうとしててちょっと許せない。

 

「わかった」

 

 僕はイケメン眼鏡から手を放す。その瞬間強烈な裏拳が飛んできた。

 

「秘儀、スキップ回避」

 

 ありとあらゆる暴力が俺を襲うが、すべて回避する。制限解除したスキップに死角はない。

 

「……とんでもない反応速度だな。お前何かやっていたのか」

 

「スキップをひたすらやってました」

 

「スキップ、何を言って……」

 

 イケメン眼鏡は何故か考え込んでしまった。その間にイケメン眼鏡と鈴音の間に入り、鈴音を守る体制を整える。鈴音は僕の服の袖をキュッと握って震えていた。可哀そう、あとでスキップしようね。

 

「スキップ……お前、まさか山田花梨の弟か」

 

「花梨は姉だけど、姉を知っているの?」

 

「そうか、お前が……山田太郎という人間が入学していたことは知っていたが、情報が秘匿されていたため山田という名字だけでは確証には至っていなかった。やはり来ていたか弟が。変装が得意だという情報も間違いではなさそうだ。とても男には見えないな」

 

「今は山田妙子です、きゃるるん♪」

 

「花梨さんも変人だったが、弟はもっと変人だったようだ……」

 

 この人は何で姉のことを知っているのだろうか?

 

「何故、姉のことを知ってるんですか?」

 

「花梨さんはここの学校で歴代最高成績で卒業していった。お前まさか知らなかったのか?」

 

 あれ?そうなんだ、全然知らなかった。まぁ姉ならすごい成績を残すことにもうなずける。

 

「なんか3年くらい見かけないなって思ってたんですけど、そういうことだったのかぁ」

 

 ここ全寮制だからそれで3年見かけなかったんだ。いまさらながらなんか納得。

 

「お前それは本気で言っているのか?……本気で言ってそうだな、やはり変人か」

 

「さっきから変人変人って、僕は普通の人なんだぞ、失礼しちゃう、ぷんぷん♪」

 

「……鈴音、お前とこいつはどういう関係なんだ」

 

「……え、っと、その、親友です」

 

「……し、親友……そうか」

 

 なんか知らないけど、ちょっと空気が緩んだ気がする。いつの間にか仲直りできたみたい。よかったよかった。

 

「鈴音、上に上がりたければ死に物狂いであがけ。この学校はお前が考えているよりも甘くない。そのことを胸に刻め、成長しろ。それ以外にお前の道はない」

 

「はい……」

 

 そういって、イケメン眼鏡は立ち去ろうとする。しかし、突然こちらを振り返る。

 

「山田、スキップという枷がありながらその身のこなし大したものだ。お前がいれば、面白いことになりそうだな」

 

「スキップが枷?冗談言っちゃいけませんよ鬼畜眼鏡♪」

 

「鬼畜眼鏡はやめろ……お前が知らないのも無理からぬことだ。スキップの真実。お前が今使えるのは変装とスキップとあと一つしかないことをお前は知らない。真相が知りたくなったとき、生徒会室までくるといい。真実を語ってやる」

 

「スキップがあれば何でもいいです♪」

 

「……あと、忘れていた、端末を貸せ」

 

「?いいですよ」

 

 イケメン眼鏡に端末を差し出す。何かを操作しているみたいだ。

 

「200万ポイント振り込んでおいた。お前の姉から預かっていたものだ。いずれ来るかもしれない弟にとな」

 

「お、おぉ、姉、ありがとう♪」

 

「ではな。生徒会室にお前が来ることは、いつでも歓迎する」

 

 イケメン眼鏡は去っていった。鈴音が心配なので様子を見てみる。まだ少し震えているようだった。

 

「大丈夫鈴音」

 

「妙子さん、あなたすごいのね兄さんの前で堂々としてて。尊敬するわ」

 

「いつもの鈴音の方が堂々としてるよ。だから鈴音はもっとすごい」

 

「……そうね、ありがとう。でも、だめね。兄さんの前だと私は。Dクラスの私にさらに愛想をつかしてしまっただろうし」

 

「そっか、鈴音は鬼畜眼鏡に認めてほしかったのか、ブラコン?」

 

「うるさい」

 

 鈴音が殴ってくる。だがいつもの覇気がなかった。ちょっと心配だな。

 

「Aクラス、一人で無理でも、僕たちが協力したら行けると思わない?だってスキップ同盟は最強だもの」

 

「なにそれ。ふふ、でもそうね、そうかもしれないわね」

 

「綾小路君もいるし、3人もいればできないものはないよ」

 

 二人で顔を見合わせて笑いあう。ちょっと待って、これって青春っぽい。なんて素敵な学園生活なんでしょうか。

 

「その前にあなた退学しそうだけどね」

 

「今までありがとう。スキップ同盟のことはよろしくね」

 

「あきらめるのが早すぎるわよ!!がんばりなさいばか!!」

 

 忘れていた、どうしようテスト……

 

「なんとかしなさい……スキップ同盟で、その、Aクラス目指すんでしょ」

 

 少し頬を赤らめながら鈴音はそう言った。頑張ろう。どうすればいいかわからないけど、鈴音のこの顔見てしまったからには頑張る以外の選択肢はない。

 

「鈴音、僕夢があったんだ」

 

「そう、どんな夢?」

 

「友達と満天の星空を見ること。学校に来る前に見つけた夢なんだ」

 

 そうやって二人してそれを仰ぎ見る。きれいな星空がそこには広がっていた。

 

「夢、叶ったわね。なにしろ私は親友なんだから」

 

「うん、ありがとう、最高の日だよ」

 

「……これからもずっと、見るわよ。星空を。終わりになんてさせない。私がさせないわ」

 

「これからもずっと、僕と一緒に星空を見上げてくれますか?」

 

 あれ、なんかプロポーズっぽくなった。男の格好の方がよかったかなぁ。まぁいいか。

 

「ええ、”太郎”。仕方がないからさみしいボッチのあなたとずっと一緒に見てあげるわ」

 

 心なしか、鈴音の頬は赤いような気がした。

 

 

 この星空を、僕はずっと忘れないだろう。

 

 

 

続く?




 スキップには中毒性があります。いつの間にかスキップとかかわった人は浸食されていくのは内緒だよ。

 茶柱先生のお部屋には色々悩みに悩んだ香水が並べられているのは内緒。山田への香水選びにいそいそと準備をしているのも内緒だよ。
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