山田太郎が行く教室へ   作:ジャイリ

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殴っちゃだめだよ♪


反省しないとダメ

「るるるんるんるん♪るるるんるんるん♪るるるんるるるんるるるん♪」

 

 無事に中間試験を乗り越えた僕は、ここのところ気分が最高にハイだった。普段から早起きなのだが、今日は更にいつもより早くに目が覚めた。4時に目が覚め、1時間ほどいつもの日課のラジオ体操を行っても学校に行くにはまだ早い時間だった。時間が余ったため、大好きなスキップ散歩をすることにしたのだ。

 

「るるるんるんるん♪るるるんるんるん♪るるるんるるるんるるるん♪」

 

 やっぱりスキップはとても楽しい。

 

 のんびりスキップをしていると、上半身裸で逆立ちをしながら腕立て伏せをしている男を発見した。

 

「おや?あれは確か、高円寺?君だっただろうか?」

 

 机足のせ師匠である。いつの日か、あの姿を真似したい。せっかくなのでどうやったらあんなにきれいに足を机に乗せることができるのか聞いてみよう。

 

「机足のせ師匠おっはよー♪今日も良いスキップ日和だね♪」

 

 僕が話かけると、逆立ちを腕立て伏せをやめて、バサッと髪をかき上げてこちらに向く師匠。

 

「机足のせ師匠、とは私の事かな。トレーニングをしている最中に話しかけるとは、美しくないねぇ」

 

 なんか、微妙にポーズをとっている。様になっていてかっこよかった。

 

「そういう机足のせ師匠はとっても美しいよね♪ほれぼれしちゃうよ」

 

「机足のせ師匠が何のことを言っているのかわからないが、私が美しいのは当然だよ。私は完全無欠な高円寺六助なのだからね、スキップガール。いやスキップボーイと言った方が正しいかな」

 

 美しいという単語に気分を良くしたのか、ちょっとだけテンションが上がる机足のせ師匠。

 

「それにしても君はとても不思議なボーイだ。いつものクレイジーな素行に目をつぶれば、とても美しい。その変装姿は一種の芸術だよスキップボーイ。その美しさに免じて、トレーニングを邪魔したことを許そうじゃないか」

 

「ありがとう♪今度から師匠と呼ばせてもらってもいいかな?」

 

「好きにしたまえ。それではアデュー、スキップボーイ」

 

 そう言うと、師匠は走り出してしまった。早い。机足のせについて聞けなかった。

 今から追いつこうとしても大変だ。スキップモード制限解除を使えば可能ではあるが、今日はあきらめることにしよう。

 

 僕に師匠ができた。

 

―――――――――――――――

 

 スキップ散歩を終えて、男子制服に着替えて学校に着くと、教室ではポイントについての話で持ちきりだった。六月のはじめ、今回もポイントが振り込まれていなかったためである。

 

 ポイントについては割とどうでもよかった僕は、そんなことよりも人を探していた。きょろきょろとあたりを見渡していると、鈴音が話しかけてきた。

 

「そんなにきょろきょろしてどうしたの太郎」

 

「いや、須藤君がいないなっておもって。遅刻かな?」

 

「あなた、最近須藤君ばかり気にしてるわね」

 

「そりゃ一度スキップした仲だからね。気にもなるよ」

 

 中間テストが終わり、なぜか須藤君とスキップをすることになった僕。一度スキップした人は大切な仲間さ。ただ、スキップ同盟に加入してくれるかと思いきや、バスケットボールを理由に断られている。仕方ないよね。須藤君にとってバスケは僕にとってのスキップらしいから。無理強いはできない。

 

「……あなたって、スキップができれば誰でもいいのね」

 

 鈴音がちょっと不機嫌になって不貞腐れる。およよ?どうしたんだろう?スキップをしたいのだろうか?でも鈴音とは誰よりもスキップを一緒にしているはずなんだけど。もしかして、さらなるスキップの高みに目覚めたのだろうか。それは嬉しい限りである。一人でもできるスキップをレクチャーするときがきたのかもしれない。

 

「もしかして、鈴音、スキップをする頻度が物足りなくなってるんだね。大丈夫、僕がいなくてもできるスキップを今日レクチャーするから♪」

 

「そうじゃないわよ……ばか」

 

 あれれ~、さらに機嫌が悪くなったぞ?めっきり機嫌が悪くなった鈴音は話しかけても何も答えてくれなくなった。いったいどうしたんだろう?わが友綾小路君に聞いてみよう。

 

「どうしたんだろう?鈴音?」

 

「山田、今回はお前が悪い」

 

「えぇ、全く身に覚えがないよ~」

 

「お前の鈍さは美点でもあるが欠点でもあるな。スキップもいいが、そればかりに目を向けすぎるのもよくないぞ」

 

 哲学かな?今日の綾小路君は哲学者なのかもしれない。でも確かに僕はスキップ以外は運動音痴で鈍い。そういう事なのかな?

 

「そうだね、スキップ以外の運動はできなくて鈍い。普段の行動ももっと素早くできるようにするべきだよね」

 

「……そういうところだぞ山田」

 

 どういうとこ?今日の綾小路君はとっても哲学者だった。

 

……………………

…………

……

 

 今回、何故ポイントが振り込まれていなかったのかが分かった。

 

 茶柱先生の話によると中間試験の結果にて、DクラスはCPが87に上がったらしい。だが、ポイントは振り込まれてはいなかった。本来であれば8700ポイントが振り込まれているはずだ。

 どうやら今回、うちのクラスと他のクラスでもめ事があったらしい。暴力行為が発覚したのだ。その対処のために、現在全クラスのポイント配布は停止しており、暴力事件が解決次第、順次ポイントが振り込まれることとなっているようだ。

 だれが暴力事件の当事者なのか。なんと、須藤君だった。須藤君、何故だ、どうして?

 

 今回の事件は須藤君がCクラスの男子三人をケガさせてしまったという内容だ。その三人組を一方的にけがをさせてしまっているらしい。事件が起こった場所には監視カメラなどはなく、事の顛末がわからない状況である。

 須藤君の話によると、Cクラスの挑発行為があったとのことだった。つまり一方的にではなく喧嘩だったのだと言う。信じてあげたい。でも殴っちゃってるんだよねぇ。

 当事者以外の目撃者もいないため、真相はわからない状態だ。

 

 クラスでは、その話し合いがおこなわれているところであった。

 

「須藤君は巻き込まれただけみたいなの。お願いみんな。協力してくれないかな」

 

 櫛田?さんはクラスのみんなにそう呼び掛けていた。ほとんどのものが懐疑的だったが、平田?君という人が賛成すると、ちょっとばかし協力する雰囲気になる。

 

「私は協力する気にはなれないわ」

 

 鈴音はそう言って席を立つ。

 

「んだとてめぇ」

 

 その言葉に反応して須藤君は悪態をつく。

 

「本人に反省の色がない。そんな人の協力なんて御免だわ」

 

「俺は悪くねぇ。相手が突っかかってきたんだ。悪いのはむこうだろうが」

 

「暴力をふるった事実がある以上あなたにも非があるはずよ。それがわからない限り協力する気にはなれないわ」

 

「だから、それは相手が悪いって言ってんだろ」

 

「そう。話にならないわね」

 

 そう言って鈴音は教室を出て行ってしまう。僕はそれを慌てて追いかけた。

 

 

「待って鈴音、どうしてスキップを愛してる二人が争わないといけないの?問題はCクラスの人たちのことのはずだよ」

 

「スキップを愛してるって今関係ないでしょ……私は間違ったことを言ったかしら?」

 

「言ってないけど、でも二人が争うのは違うでしょ?」

 

「それはわかってるわ。でも、反省もしない人の協力をすることが正しいとも思えない」

 

 鈴音の言っていることは正しい。何も言えない。

 

「う、それは。でもスキップを共にしたものが苦しむのも……」

 

「はぁ……あなたもついてきなさい」

 

「え?」

 

「今からほかのクラスに事件について聞き込みに行くところだから。もともとそのつもりだったのよ」

 

「そうなの?」

 

「あなたが何を勘違いしているのかわからないけど、クラスの為になることの行動はするつもりよ」

 

「協力はしないんじゃ?」

 

「しないわ。反省しない限りね。でも、反省したときの準備はしておいてもいいでしょ?」

 

 なんという事でしょう。鈴音はちゃんと考えていたんだね。大好き鈴音。

 

「ツンデレだね♪」

 

「殺してほしいの?」

 

「ごめんなさい」

 

 

……………………

…………

……

 

「あまり、成果はないわね」

 

 あれから他クラスに今回の事件の目撃者についての聞き込みを行ったが、あまりいい成果はなかった。もし目撃者がいたとしても、面倒ごとのため、名乗り出る人がいない可能性もある。

 

「もしかしたら、目撃者なんていないのかもしれないね」

 

「そうね、他のクラスにはいないのかもしれないわね……でも、おそらくだけど、うちのクラスに目撃者はいるわ」

 

「え?そうなの?」

 

「えぇ。確証はないけれど、佐倉愛理さんが目撃者でしょうね。先生に目撃者のことを聞いていた時に、一人だけ下をうつむいて居心地が悪そうにしていたから」

 

「そうなんだ。でも分かってるならなんでこんな聞き込みを?佐倉?さんに話を聞いた方が早いんじゃない?」

 

「できれば他クラスからの証言が欲しかったのよ。先生に言われたときに佐倉さんが名乗り出ているならまだしも、後々自クラスから証言者が出たとなれば、須藤君をかばうためにうその証言をしていると言及されるかもしれないわ」

 

 なるほど。鈴音は頭がいいなぁ。

 

「もちろん、いないよりはましなのだけれど。聞き込みに成果を得られないようなら、佐倉さんに直接話を聞くしかないわね」

 

「そうだね。目撃者の情報もないみたいだし」

 

「ちょっといいかな」

 

 突然後ろから声をかけられる。そこにはきれいな女の子が立っていた。おっぱいも大きいな。そう思っていると足を思いきり鈴音に踏みつけられる。痛い。なんで?

 

「突然ごめんね。あなたたちはもしかしてDクラスの生徒かな?」

 

「そうだけど。あなたは?」

 

「私は一年Bクラスの一之瀬帆波です。よろしくね」

 

「そう。私はDクラスの堀北鈴音よ。こっちの馬鹿は山田太郎よ」

 

「馬鹿なのは本当だけどその紹介はひどくない?どうも初めまして山田太郎です♪」

 

「あ、あはは。仲がいいんだね」

 

 一之瀬?さんは苦笑いを浮かべていた。それにしても一之瀬?さんは見る目があるようだ。僕たちは大の仲良しだからね。

 

「それで、Bクラスのあなたが何の用?」

 

「堀北さんと山田君は今回の事件を調べている最中だったんじゃない?もしよければ協力させてほしいんだ」

 

「それは助かるけれど。何故?Bクラスのあなたが?」

 

「実は、Bクラスは最近Cクラスと揉めることが多くてね。それでCクラスにはちょっと思うところもあるし。Cクラスと揉めているBクラスとしては、Dに加担したい気持ちが大きいの」

 

「そう。CクラスはBクラスにもちょっかいをかけているのね」

 

「うん。だから、協力させてくれないかな?」

 

「こちらとしては願ってもないことだわ」

 

「決まりだね」

 

 鈴音と一之瀬?さんは握手をした。ここにBクラスとDクラスの同盟が結ばれた。そこまでじゃないか。

 

「それじゃ記念にスキップだね」

 

 僕は一之瀬?さんの手をつかみスキップした。

 

「な、なにこれ、なにこれ~!?」

 

 一之瀬さんとのスキップ。一之瀬さんから伝わってくる。この子はとっても優しい心の持ち主だ。でも何だろう?少し心に傷があるような……

 

「やめなさい太郎。だれかれ構わずスキップするんじゃないの」

 

 鈴音に思いきり殴られてスキップは中断した。最近鈴音は平気で僕を殴りすぎな気がする。

 

「痛いよ鈴音ぇ」

 

「ごめんなさい一之瀬さん。この馬鹿には後できつく言っておくわ」

 

「あはは、だ、大丈夫だよ。ちょっと不思議な感覚だったけど……」

 

「太郎、私の許可なく他の人とスキップすることは今後禁止よ」

 

「えぇえええええ!?そ、そんな、スキップがない僕はどうやって友達を作れば」

 

「今も大して友達なんていないでしょう」

 

「なにおう、鈴音に言われたくない」

 

「なんですって!?」

 

「ちょ、ちょっとストップストップ。喧嘩しちゃだめだよ」

 

 少しヒートアップしそうになるところを一之瀬さんに止められる。あのままだったらとんでもない喧嘩になっていたことだろう。さすがは一之瀬さん。スキップした一之瀬さんの優しさは50倍だ。

 

「ありがとう一之瀬さん。スキップしたあなたは更に優しい女の子になったんだね♪」

 

「スキップ関係あるの!?私は優しくなんてないよぉ。とりあえず、BクラスはDクラスに全面的に協力するから。何か情報があったら連絡したいし連絡先交換しよう」

 

 一之瀬さんと連絡先を交換する鈴音と僕。今度スキップのお誘いでもしようかな。あ、でも鈴音にさっき他の人とのスキップを禁じられてるんだった。ショック……綾小路君とならいいかな?スキップ同盟だし。

 

「それじゃ、頑張ってね。Dクラスを応援してるね」

 

「ありがとう一之瀬さん。頼りにしてるわ」

 

「またね、一之瀬さん♪」

 

 一之瀬さんは笑顔で立ち去った。可憐な女の子だった。やっぱりスキップをした女の子は一段も二段も魅力的になる。

 そういえば、最近神室さんに会ってないな。元気にしているだろうか?

 

「何デレデレしてるのよ汚らわしい」

 

「してないよ?どうしたの機嫌悪い?」

 

「別に悪くないわ。あなたなんてそこら辺でだれかれ構わずスキップでもしてればいいのよ」

 

「えぇ、さっきそれ鈴音が禁止したじゃん。いいのしても?」

 

「うるさいわよ。もう知らない。……馬鹿」

 

 鈴音は不機嫌になりながら歩きだす。最近の鈴音は本当に怒りっぽい。やっぱりスキップ不足なんじゃ?そう思って僕は鈴音の手を取った。

 

「何この手は」

 

「スキップして帰ろうよ鈴音」

 

「嫌よ、一人でスキップして帰りなさい」

 

「鈴音と一緒にして帰りたいんだ。鈴音と一緒にスキップするのはどんなことよりも幸せだから」

 

「……何よそれ」

 

「鈴音と一緒のスキップが一番大事なんだ。一人でするよりも何よりも大切なんだ。誰とやるから楽しいんじゃない。鈴音とやるから楽しいんだよ」

 

 僕の口から出た自然な言葉。そっか、鈴音と一緒のスキップが僕は今、一番好きみたいだ。一人でやるよりも。

 

「……仕方ないから一緒に帰ってあげるわ」

 

「ありがとう鈴音♪」

 

 僕たちはいつもよりゆっくりとスキップをして帰った。少し遠回りして、少しでも長く一緒にいられるように。僕は鈴音と長く一緒にいたいみたいだ。そんなことに気付いた瞬間だった。鈴音も同じ気持ちだといいな。

 

 しかし、暴力事件はまだ何も解決の糸口を見つけていない。何とかなるだろうか?

 

 大丈夫だ。鈴音となら。綾小路君もいる僕たち三人のスキップ同盟なら解決できる。

 

 そんなことを思いながらも、今は鈴音とのスキップを全力で楽しむのだった

 

 

 

続く?




最強のコミュニケーションスキルのスキップを封じられてしまった山田太郎。がんばれ太郎、負けるな太郎。彼に未来はあるのだろうか。
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