「じゃあ行ってくるよ」
そう言って僕は斧と籠を背負いながら家族に挨拶を済ます。何故斧と籠を背負っているのかって?それは山へかまどに必要な薪の調達と今日の晩御飯用にキノコや山菜を採るのに必要だからだ。
両親と僕、そして自慢の妹。村で何不自由なく当たり前の日常を過ごして居た。
玄関を出て行く時のいつもの家族のいってらっしゃいの声をもう聞けなくなると言うのに。
「ふぅ…ちょっと寄り道しすぎたかな。皆んな心配してなきゃ良いけど」
あの時、どうして寄り道して山菜を取りに行こうとしたのか今でも後悔している。いや、仮に僕があの状況で居たとしても何も出来なかっただろう。
山の麓まで降りているとある事に僕は気づいた。村に火の手が回っていた。何かあったのかと心配になった僕は背負って居た籠を捨てて片手に斧を持って急斜面を滑るように山を降りて行く。村は大丈夫なのか、家族は、両親は、妹は…嫌な考えばかりが頭を巡らせて行く。
ようやく村の入り口付近までたどり着いた時に見たのは筆舌に尽くし難い光景だった。村の住人達が何者かによって食い荒らされたのか四肢や臓物が辺り一面に飛び散り踏み潰され、人だったものは肉の塊と呼称する他ない状態だった。そんな状況でも僕は必死になって自分の家に向かった。ダメかもしれない。いや、きっと逃げ出して無事だろう。この行動は自分を安心させるための行動だった。
家の前にたどり着くと真っ先に見えたのは家の近くに立っている巨大な大木の枝に首から上だけ無くなった両親の身体が深々と突き刺さっていた。僕はその光景を目にしては思わず吐いた。恥もなく思いっきり吐いたが、今日は朝から殆ど食べてなかったので口から出てくるのは胃液ぐらいだ。ふらふらと立ち上がると妹の姿を見て居ない事に気づいた。もしかしたら家で隠れているかも。一種の現実逃避とも取れる考えだが、それだけが今の僕の行動を支える柱となって居た。斧を両手で力強く握り締めながら自分の家のドアをゆっくりと蹴って開けて室内を確認する。家族でいつも楽しく喋りながら食事をするテーブルには誰かの悪趣味なのか、皿が数枚置かれてそのうちの2枚に両親の無くなっていた首から上がそれぞれ置かれていた。顔の表情は見て無いがきっと苦痛と絶望に染まった表情だっただろう。室内を探し回ったがどこにも妹が居なかったので村を出て自分がさっき居た山の方に行ったのかと考えると、家を勢いよく飛び出して来た道を戻ろうと走る。
すると一瞬自分の妹の声が聞こえ足を止める。そしてもう一度耳を澄まして辺りの音を拾い上げて行くと間違いなく妹の声が聞こえた。良かった。まだ生きて村の何処かにいるんだと分かった僕は、村の中央辺りから捜索しようと走り出した。
村の中央には村の住人の死体が積み重なって出来た山と、それに火をつけている大柄の怪物。そしてその隣にその怪物に指示をしている中年太りをしたマスクを付けた人物と、その人物の腕には自分の妹が抱えられていた。
僕はその姿を見ては何も考えずに村を襲撃したであろう2人に向かって走り出しては
「俺の妹から手を離しやがれぇぇ!!」
大声で叫びながら妹を抱き抱えている人物の左肩から胴体に向かって斜めに思いっきり力一杯斧を振り下ろした。ザシュっと言う音と共に斧が相手の左肩を大きく裂き、胸辺りまで深々と入っていった。よし、まずは1人!!っと喜んだのも束の間。普通なら即死してもおかしくない傷を負ったマスクを被った人物が妹を抱えていた右腕を動かして僕の頭に向かって思いっきり拳を振り下ろした。ゴンっ!!と鈍い音と共に僕の身体は地面に思いっきり叩きつけられた。痛い、なんて言葉で済むような物では無い。もしかしたら頭部が陥没したのでは?っと思うほどの衝撃とそれに身体の反応が追いついていないのか視界が大きく揺らぎ、脳がガンガン響く。身体中がたった1撃の攻撃で危険信号を発している。大きく息を吸うのもままならない。
マスクを被った人物が自分を守らなかった大柄の怪物相手に怒鳴っている。怒鳴り終えたのか深いため息を吐いた後に右手で僕の頭を強く掴んで無理やり立たせるように持ち上げると、そのまま大柄の怪物が僕に向かって持っていた棍棒で思いっきり遠くまで殴り飛ばした。
「ん〜あれは死んだだろ。さて…」
攻撃をして来た少年が近くの山の中腹まで飛んで行ったのを確認すると、先程少年によって千切れかけた左肩を右手で掴んでは無理やり傷の断面を合わせるようにグリグリ押し付けると、先程の傷が嘘だったかのように無くなり。怪物と共に唯一生かして置いた少女を持って去っていった。
ガサガサっと草木を掻き分けると先程怪物によって思いっきり殴り飛ばされた少年が姿を現した。自分でも何故生きているのか不思議なぐらい瀕死の状態で何とか歩いて戻ってきたのだ。
火の手はもう収まってしまったのか村だった場所は今やただの炭化してしまったカス同然の場所となった。少年はその場で膝から崩れ落ちると、大粒の涙を流して絶叫した。
数年の月日が流れ。とある街では毎年恒例の勇者にしか引き抜けないとされている伝説の聖剣を引き抜く大会が開かれていた。屈強な強者共達が力技で引き抜こうとするがびくともしない。そんな中で少し見た目が細い青年がその聖剣を引き抜くのにチャレンジしようとしていた。それを見ていた観客達はどうせ抜けないだろうと思いながら見ていた。
青年は両手で剣の柄を握って力を込めると、先程までびくともしなかったはずの聖剣がゆっくりと、そして着実に台座から引き抜かれていく。その様子を見ていた観客達、そしてその様子が気になった街中の人々がぎゅうぎゅうになりながら集まり、そして聖剣がその青年によって見事に引き抜かれたのだった。っと同時に青年以外の時間がまるで止まったかのように一斉に静かになった。いや、本当に止まっていた。風の音や街のざわめきも一切聞こえない。辺りを青年が見回していると突然、天から一筋の光が青年を照らし、光の筋からゆっくりと純白の大きな翼を背中に生やし、頭には光り輝く光輪の輪が浮いている、いわゆる天使が青年の目の前に舞い降りた。その見た目は男性とも女性ともどっちとも取れるような体躯。そして瞳を輝かせながら青年を見ては満面は笑みを浮かべこう言った。
「パンパカパ〜ン。おめでとうございます。聖剣を抜いた貴方は今から勇者になって貰います」
っと
語彙力や表現力が欠如しておりますが、温かく見守って頂けると幸いです。
次回 勇者の使命