悪役が最後に笑顔で死ねる物語   作:あう

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シャンプーで鼻が痛い。


命からがら

 命からがら、魔族特有のゴキブリ並みの生命力で死の淵から私は如何にか息を吹き返した。危なかったぜ。

 

 あの後の結末は語るまでも無いだろう。何せ母様が相手したんだ。只の雑兵に勝ち目などあるわけがない。

 ん?じゃあ雑兵達は死んだのかって?まさか。

 ちゃんとサキュバス達に生気…じゃなくて精気を吸い取られてるよ。後は知らん。まあニンゲンの男の夢だと聞いたことあるし、きっと大丈夫だろう。

 

 と言うかそんなことは如何でもいいんだ。それを知ったところで如何と言う訳でもないからね。

 私にとって今重要なのはそう。

 

 

 

 

 「ちょっと。ちゃんと聞いてる?私本当に心配したんだからね!」

 

 

 

 

 母様の説教から如何にして逃れるかと言うことだ!

 

 

 

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 この状況は非常に不味い。

 何せ悪いのは勝手に単独行動をとった私であり、母様に非はないからだ。抱擁で死にかけたのも私の体が貧弱だからといわれれば何も言い返せない。…母様が強すぎただけとも言うが。

 なので説教から逃れるのは至難の業と言える。

 

 

 「クーから貴女が逃げ出したって聞いた時の私の気持ちが分かる?貴女はまだ幼いし、体は貧弱じゃない。ニンゲンどもに何かされてるんじゃないかと内心ヒヤヒヤしながら探し回ってたわ」

 

 

 クーと言うのは私の侍女だ。私がこの世に生まれ落ちてからずっと私の世話なんかをしてくれている。なので私と彼女の関係はさながら姉妹のようなものであり、彼女も割りかしズケズケと物申してくる。一応主従関係では私の方が上の筈何ですが…可笑しくない?

 

 そういえば自己紹介もまだだったな。私の名前はラピュセル・デ・ビル。よく苗字が安直だと言われるので触れないでほしい。

 名前から察せる通り私は魔族の中でも最上位に位置する悪魔だ。そして私は悪魔の中でも…。

 

 いや、その前に目の前にいる彼女。母様について触れるとしよう。

 

 名はリリス・デ・ビル。そろそろ苗字を言うのが恥ずかしくなってきた。

 ちんと澄まして控えると上品で美しく。正しく悪魔の如き美貌で、虫も殺さないと言うような顔をしている。

 だけどその実、彼女の性格は苛烈などと言う言葉では足りない程苛烈だ。

 

 西に暴れる竜がいればすぐさま駆けつけタコ殴りにし、東に悩める魔族がいればタコ殴りにする。

 ただの無差別暴力犯だ。

 笑いながら殴り続ける姿は正しく悪魔だと巷ではもっぱらの評判だとクーから聞いた。

 ニンゲン界なら忌み嫌われ、収容所にでも入れられていることだろう。

 

 そんな母様だが、驚くべきことに魔族の間では名君としてその地位を確立しており、毎日のように持て囃されいる。

 なんでも母様に殴られてから運命がいい方に向かったと言うやつが続出しているらしい。

 魔族の力こそパワーの風潮が恐ろしい。よく分からない所が毎年とっている人気ランキングでは不動の一位だ。

 

 で、そんなカルト的な人気を誇っている母様は先程も述べた通り名君、つまるところ女王として魔族の頂点に君臨している。

 そして彼女の唯一の後継者、次代の女王と目されているのは、そう!

 

 何を隠そう、この私だ!

 普段なら民草に会えば崇め奉られるものだが…。

 

 彼女たち——クーと母様——にはその権威を傘に来て威張ることができない。

 

 

 伏せていた顔を上げ、恐る恐る玉座に座る母様を見る。

 何度見ても、同性の私が見ても惚れ惚れするような美貌だ。

 そんな美貌で今、彼女は頬を膨らませている。此れがタチが悪い。

 

 

 「ちゃんと反省しなさいよ?リリス様、『ラピュセルが居なくなるなら私も消えてやるー!』って言ってたのを如何にか皆んなで止めたのよ?」

 

 私の隣でクーが小声でそう伝えてくる。

 そう、そうなのだ。いっその事こと手でも上げてくれれば大義名分の出来上がり。此処から逃げ出す事ができるのだが…。

 

 「これからヒト里に向かうときはちゃんと私に伝えなさい。一緒に着いて行ってあげるから」

 

 巷での噂は何だったのか。…母様は本当に私のことを心から思っているのだ。なので手を上げたりせず、対話を試みようとしてくる。

 私がこうやって失敗したときも責めることなく諭すのだ。…少々過保護気味だが。

 そんな彼女から逃げ出すのは…如何にもバツが悪い。

 

 「母様、ゴメンなさい…」

 

 項垂れるように私は謝罪する。…二人からの生暖かい視線が何処か気恥ずかしい。

 母様は満足と言わんばかりに頷き、明るい声色で言う。

 

 「よし!じゃあ一緒に夜ごはんを食べに行こう!今日はコックにも迷惑かけたんだから、ちゃんと謝りなさいよ?あ。勿論クーも一緒に食べるわよ!」

 

 

 母様とクーに促されるように謁見室を後にして、食堂へ向かう。

 …母様のこう言う所も、人気の一因なのかなと思ったりもした。

 

 

 

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 この時の私はまだ知らなかった。

 私のしでかした事がまさか、あんな事態を引き起こすだなんて…。

 

 その時の私は、考えもしなかったのだ。




休憩時間に書いたのでセーフ。30分くらいオーバーしたのは気のせいだと思います!

イッタイナニガオキルンダー?
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