死神とリコリス   作:ルルイエカナタ

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第1話

「クッソ!なんで死神が」

 

ㅤ男はそう言いながら暗闇の中を走り回る。

 

「おい!大丈夫か!!」

 

ㅤすると目の前に仲間らしき影が見つかる。

 

「ああ、なんとかな……そっちも平気そうだな」

 

ㅤすると男はそこで安心したのか、手を膝に当て安心を噛み締めるように息を吐いた。

ㅤその瞬間を()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

ㅤ突如襲ったのは顎への衝撃、からの側頭部への痛み、そして突如の浮遊感、顔面への打撃。

 

ㅤそれが彼の意識を奪ったものだった。そんな彼が最後に見たものは薄い水のような青色少女だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全員意識は失ったよ、ウォールナット…………いつも通りやるから」

 

ㅤ彼か、彼女か、判断のつかない暗殺者は右耳に付けた機械にそう話す。

 

「相変わらず手際はいいな、君は」

「まるで手際以外は悪いみたいな言い方だね」

 

ㅤその言葉にウォールナットは当たり前だろと返す。

 

「何せ誰一人殺さず意識を失わせたうえ、こいつらに更生の機会を与えるなんて」

「僕は先を見ているだけだよ。ここでこの人たちを殺しても相手の手足をつぶしてるだけで解決しないからね」

 

ㅤ死神は、それにと付け加える、そのタイミングで遠隔操作されたキャラバンの車が目の前に止まった。

 

「僕達はやってることは違うとはいえ同業者だ、なら上手い落とし所があると思うし、恩義を重んじる人なら今後見逃してくれるかもしれないから」

 

ㅤそれはただの理由付けだった。理屈でもなんでもない、結局のところやりたい方法でやってるだけに過ぎなかった。

 

「全く、僕達は別に世直し目的でやってる訳じゃないんだけど」

「そう言いながら一年以上続いてるよね。割と悪くないと思ってたり?」

 

ㅤウォールナットはそれに、はっ、と笑い飛ばした。そんな会話の中、死神は意識を失った男達を車の荷台部分に突っ込んでいく。

 

「そんなわけがないだろ。僕にとってお前と組む方が利益があるからだ」

「わかってるよ、ウォールナットの依頼は必ず完遂する」

 

ㅤこの場の男達を積み終えた死神は別の場所で意識を奪った男達の元へ向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っん、」

 

ㅤ男が1人、目を覚ます。

ㅤまだ少しボケっとしているのか、ペシペシ、と往復ビンタをする。

 

「ッツ、ここは?」

「おっ、起きた?」

 

ㅤ起きたのはこの部隊を率いていたリーダーらしき男。

 

「………………テメェ、死神か?」

「あ、君達が質問することは無いよ。僕がするのは君たちへの提案だ」

 

ㅤその言葉に覚悟と対応をするため薄い青の髪の死神の仮面と同時に辺りの風景を見る。

ㅤ見た限りでは窓は一切なく外は見えない、その上扉は防弾と防音仕様に見える。

ㅤ考える限り地下室だろうか、もしかすると窓をつけないように設計された部屋かもしれないが、そういうのは足が着くものだ。自然とバレにくく何をやっているか分からないようにするには自然と風景に溶け込ますのが1番だ。となるとここは災害用の避難室とかだろうか、違ってもそういう類のものに近いだろうと、男は考える。

 

「君達がするのはふたつの選択からひとつを選んでもらう」

 

ㅤどうにか脱出法を考えを無視するかのように目の前の死神は言葉を放つ。

 

「ひとつ依頼を達成出来なかった者として死ぬか」

 

ㅤその言葉に男は少し動揺する。当然だ、たとえどのような強者であっても殺されるとなれば動揺するだろう。その上生殺与奪は相手に取られている。

 

「それで……」

「話は聞かないよ」

 

ㅤなんとか、対話して情報を得ようとするがバッサリと対話を拒否される。

 

「2つ目の選択、名前も戸籍も、君たちの存在を証明する全てのものを消した上で別人として生きるか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕の名前は潮田渚…………の姿で転生した元日本大学生だった人だ。

そんな僕だが語ることは多くない。僕がこの世界で初めての記憶は5歳の頃のアメリカのストリートギャングの溜まり場でボロボロの布一枚でゴミ袋を背に起き上がった時の光景だ。その時の思いを正直に語ろう。

神様なんのつもりだコノヤロウ。

この一言に尽きる。こちとら順風満帆の大学生コース歩んでいたら、いきなり人生捨てさせられてしかも殺しの才能持ちの体に詰められるってどういうつもりだよ!。と、叫びたくなるのは当たり前だろう。

ㅤそれから生きるために全力で生きた。生存するためならスリでも殺しでも、あらゆる犯罪に手を染めた。それに対しては別に後悔はない。

 

ただまぁ、一言言うなら…………

 

善人をやめた気がした。

 

初めは冗談気分で楽しもうと思った。

そんな考えは数日間で覆された。

まずは腹がすく、当たり前だ……人間だから。

次に体調を崩す、栄養失調になるのは必然だ。

そして意識を失った、カラスの羽ばたきで目を覚ました

目の前でゴミ袋漁ってた。ただ。その目だけは僕をしっかりと見つめていた。

 

「ハハ…………」

 

不思議と乾いた笑いが出た。

今の僕はカラスと大して変わらないな。

そう思い、コンビニで打ってるような弁当箱の食いかけの食料に手を伸ばした。必至に力強く、ゴミ袋を引っ張り破れていた所から食料が落ちた。それを必死に手に取り食いかけを食べる。

 

食べる

 

ㅤ食べる食べる!!

 

吐きそうになっても食べ続ける。

 

食べる終わると不思議と涙がではじめた。

 

「うあ、あああ…………」

 

それは決して、喜びでも幸せの涙でもなかった。

現実を理解し始める。今までどこか非現実的に考えていた物が、覆される。

 

「ぜんぶ…………ぜんぶ………………!!なくなっちゃだよ"ぉ"ぉ"」

 

今までの人生は全て失い、泥まみれの人生が始まったことを

 

 

 

それから数ヶ月間ゴミ袋を漁り、スリを行う生活の毎日だった。

幸いと言っていいのか分からないが、そういう才能はどうやら持っていたようだ。アニメキャラの潮田渚になったおかげか、相手の波長を感知するような技術を初めから持っていた。だからスリの成功確率も99%だった。

 

つまりほんのわずかだが未来に死神と呼ばれる彼女は、()()()()

 

次に相手をしたのはギャングの下っ端だった。

そいつから財布を巻き上げ去ろうとした。相手の波長に大きな反応はない、行けると思った。

僕は見逃した、目の前だけを見ていた、他に仲間がいた事に気付くことは無かった。

「ゴブッ!?」

 

殴られる

 

「ゲホッ!?ゴブーー!?」

 

ㅤ息を整えている間に顔面を掴まれ地面に叩きつけられる。

 

「アガッ!?」

 

口に、いや喉の奥に蹴りを放たれ歯が折れる。

 

ころされる

 

コロサレル

 

殺される

 

痛い、苦しい、辛い。

 

誰か……………………

 

「た…………す……け、て…………」

 

それから意識を失い取り戻したのは半日後だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あかい。

 

 

ㅤ目を覚ました時朧げな視線で見たのは真っ赤な背景だった。

体が重い。何か重たいものが体の上に乗っているようだった。

力が入らない。全身痛くて体に力を入れようとしただけで激痛が走りまともに動くのとすらできない。でもこのままというわけにもいかないからなんとか身体をよじり体を動かすと、その重さから脱出する。

 

「……………………ははッ……」

 

あぁ、もう………………いいかなぁ

 

赤い水が、()()()()()()から流れていた。

 

この時彼女の中にあった人としての倫理観は、壊れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9歳、ある女に出会った。

見た目は赤い髪を纏めた耳飾りを両耳に着けた女だった。

 

「あんたは?」

「君が死神ですか?」

「別に名乗ったことは無いけど」

 

ㅤそう返すと彼女は名刺を渡してきた。とはいえその名刺には住所は書かれてなく、あるのは名前と電話番号だけだった。恐らくだが名前は偽名で電話番号の方も使い捨て用の電話の番号だろう。

コツコツお金を貯め拠点とパソコンを入手し、3年ほど前にdeepWeb内に僕自身のサイトを作っておりそこに暗殺依頼が入るように作っている。だからハッカーなどの協力を得れば一応僕の元まで辿り着くことは可能だ。実際、今までも何人か僕の元に辿り着いたものはいた。そしてたどり着いた者たちは全員海の底へ消えている。

暗殺を依頼するものは基本はそのサイトで足を止める、が暗殺を行った組織が逆にやり返しに来る場合もある。だが今回は様子は違うようだ。

 

「本当に小さいのですね」

 

そういう彼女の目線の先にはカッパを着た小学生程の身長の人間がいるだけだ。

今まで襲ってきた相手は殺した相手がこれ程幼いとは思わなく、油断をしていた。

だがこの女は違うらしい。油断などしていないし、同時に敵意を向けてこない。

とはいえ僕からすれば隙だらけだ。

 

「私たちはアラン機関です。才能を持つ存在を世に輩出するためにあらゆる支援を行います。」

 

女はそう言うと手を伸ばして来た。かなりこちらに好意的であることは伺える、だが。

 

「つまり才能を持ってるやつを道具扱いで消費するってことか?」

「そのような意図で「僕のような才能を持ってるやつにお前ら(アラン機関)が話しかけてるだけで明白だろ」………」

「そしてもうひとつ、私は他人を信用しない」

 

そして彼女の持つものから火花が咲いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれから14年かぁ」

 

ㅤ彼女は自身の始まりを思い出す。もう自分の前世は覚えていないし、死神になったあとの時からの光景はあまり覚えていないけどあの光景だけは忘れたことはない。目を瞑ればあの時を思い出す。眠れば夢でその時間を繰り返す。

 

「…………そろそろウォールナットの依頼をやるかな。それで暫くは引退しよう」

 

ㅤ噂をすればなんとやら、そのウォールナットから回線が繋がる。

 

「どうしたの?」

「やっと状況が揃ったみたいだ。直ぐにこっちに来てくれ」

「場所は?」

「日本の延空木近く、日本についたら連絡してくれ」

「わかった、それまで生きていてね」

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