僕のヒーローアカデミア〜頭平成ジェネレーションズForever〜   作:パラドクスのガシャットは俺が飲み込んだ

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お ま た せ 


情報共有と煮立った思考

 

 

 貴虎さんたちに連れられ向かった場所は、例のフルーツパーラー『ドルーパーズ』だった。

 やっぱりというか、そこには凰蓮さんもいたし、何なら京介さんや知らない男の人達も一緒にいた。何も言わないあたり、彼らもきっと関係者なんだろう。

 

 ドルーパーズの店長さんに連れられて新しい服を貸してもらうと、京介さんと貴虎さん主導での話し合いが始まった。

 

「さて、全員揃ったな。では始めるか」

 

((((親しみやすさ……?))))

 

 貴虎が話し始めたが、その場の視線は緑谷に向いていた。何故なら、彼の来ているシャツはピンク地に白で『親しみやすさ』とプリントされており、謎にインパクトのある姿に目が奪われてしまっていた。

 

「 みんな何を余所見している。これは全員に関係する事柄だぞ」

 

 そんな中、貴虎だけはその理由に気づかず話を続けたが、終いには京介が咳き込むことで話を戻す。

 

「話を戻すが、この街で今異変が起こっていることに気づいている者はどれくらいいる?」

 

 問われ、手を挙げるのは僕と京介さん。そして凰蓮さんとザックさんだ。残りの二人…城乃内さんと仁藤さんは思いの外挙がったことにショックを受けたのか仲間を見るような目で互いを見やっている。

 

「ありがとう。知らない者もいるようだが、確認も含めて話させて貰う」

「ちょっと待った。普通に馴染んでたから言いそびれたけど、この三人は誰なわけ?」

 

 城乃内さんが僕達を指して尋ねる。その疑問を貴虎さんは尤もだと返しながらも、話しながら説明すると言えば城乃内さんも席につく。

 

「まず、こちらは共通の認識として語らせてもらうが数ヶ月ほど前からここ沢芽市に新たなクラックが出現した。発見当時は異常もなく、数分ほどしたら自然消滅した故に侵食もない。そんなことが暫くの間続いた。俺と光実で調査していたが、数週間前を堺にこちらに敵対的なインベスの発生を確認した。直ぐに処理したが、その先の森で採取したヘルヘイムの実が変化しなかったことから、おそらくは変種だろう」

 

 変種…。確かドロタボウの落とした実にもそう言っていたような…。

 

「その間も調査は続けていたが、分かったことと言えば、この件に葛葉は関与していないということぐらいだ。ほぼ進展はないに等しかった。原因不明であり、対処療法にしかならなかった現状に、ある存在が現れ始めた。それが―――」

 

 貴虎さんの語り口調に、みんな真剣な顔で頷き次の言葉を待つ。しかし、その言葉を拾ったのは他ならぬ京介さんだ。

 

「―――なるほど、ドロタボウという訳だ」

「そういうことだ」

「ドロタボウ? なんだそりゃ?」

「馬鹿、泥田坊ってのは日本に伝わっている妖怪で、確か子供のために田んぼを遺して死んだ爺さんが、農業を継がずに酒を飲んで遊んでばっかだったから「田を返せ〜」って感じで化けて出たって話よ」

 

 疑問の主、ザックさんが城乃内さんに説明されて、凰蓮さんがズバッと切り込む。

 

「それで。その妖怪とやらが今回のことに関わってくるのかしら?」

「ああ、奴は明らかにヘルヘイムに寄らない存在だ。しかしやっと現れた新たな進展だ。情報もない中で無闇に関わるのは避けるべきだと判断した俺は、数少ない目撃情報や身体的特徴を一致させ、専門家を呼び寄せた」

「なるほど、それがこいつらって訳か」

 

 成る程合点がいったとこちらをまじまじと見るザック。京介はその好機の視線に辟易としながらも、仕方のないと割り切っているのか然程咎めることもなく説明に入る。

 

「紹介に預かった。猛士から派遣された桐矢京介だ。こっちは弟弟子の緑谷出久。俺たちは“鬼”…今風に言えば魔化魍と戦う仮面ライダーとして活動している」

「魔化魍…。確か何年も前に話題になっていたアレか」

「ああ。詳しくは省くが、概ねそちらのインベスの様に人外の化け物だと認識してもらっていい」

 

 分かりやすい一例を出された彼らは、各々の解釈に当てはめて納得する。

 

「ちょっと待てよ。それじゃ、俺達じゃ力不足ってことか?」

 

 この場において、誰よりも熱血漢なザックが眉をしかめて問いただす。

 彼は一時こそ軽薄な態度を取っていたがユグドラシルの一件で成長し、人々を守るために戦ってきたアーマードライダーとしての自負がある。

 確かに、ザックは変なプライドに固執するような男ではないし、協力も有り難く受け入れる人当たりのいい人物ではある。

 だがしかし、ここは自分たちの戦ってきた土地だ。かつてのリーダーとある青年に託されたこの街の問題に、自分は蚊帳の外で勝手に部外者を呼び入れたことは、少なからず自負している己の力を疑われているようで、我慢ならないことでもあった。

 怒鳴らないのは、それだけ貴虎の慧眼を信頼しているということでもあったが…。

 その視線を向けられた貴虎は、しかして動じることはなく、京介とすり合わせた認識を交え、依頼した概要を端的に伝えた。

 魔化魍の特性。そして何よりドロタボウという厄介な性質を持つ敵の姿が確認されたことを。

 

「……なるほど、そいつらの攻撃じゃなきゃ倒せないどころか、同じ強さのやつが増え続けるってことか」

「確かに、もし出くわして無闇に攻撃してればと考えると……怖いねぇ」

 

 確認のために声を絞り出したザックに、城乃内が相槌を打つ。

 

「その認識で間違いない。が、一つ予想外の事態がある」

 

 京介の言葉に続き、貴虎の手から彼らの前に一つの果実が差し出される。ドロタボウから実り落ちた、ヘルヘイムの果実だ。

 

「「「!」」」

 

 この場に集うのは、みな歴戦のアーマードライダー達。これが何を意味するのか理解できない者はいなかった。

 

「…これが、ドロタボウの元から落ちたものだ。それに、異常はそれだけじゃない。緑谷」

「は、はいっ。僕が最初に出会った時は、普通のドロタボウとの違いは蔦が巻いたような見た目だけでした。でも、駆けつけたヒーローの方が攻撃すると、瘤からは子供じゃなくて、ずんぐりむっくりの…灰色のインベスを増やしたんです」

 

 分かっていたとはいえ、この人数に自分の意志を表明するのは少々勇気がいる。それでも、やや早い鼓動に従って一息に情報を伝えた。

 明らかに緊張していることが丸わかりの説明に、逆に冷静になった彼らは、大人しくその事実を受け止める。そして、今まで沈黙していた凰蓮が鋭い指摘。

 

「それは大変。雑兵とはいえ無限に増やされちゃ溜まったものじゃないわ。いつかは抑えが効かなくなるかもしれない…。でも、その程度じゃここまではしないでしょう? 何かあるのね?」

「……はい。インベスを生み出したドロタボウは、体中に生えてる蔦から、何個ものヘルヘイムの実を実らせていて、それを食べたインベスが進化しました。その後、ドロタボウはクラックの中に戻って…」

 

 出久の説明を聞いた彼らに、沈黙が訪れる。かつてのヘルヘイムの侵略に比べれば、一個体が出来ることなど高が知れている。

 その進行もかつてのものとは比べ物にならないほど緩やかで、その脅威も以前より周知されているため大事に至りにくい。

 

 では何が問題なのか。それは、自分たちではその大本を断つことが出来ない、ということだ。

 かつての侵略は、不定期にクラックが開くことによる散発的なものだった。しかし、それはこちらに現れた植物たちを焼くことで対処出来、クラックも事故のようなもので、それこそ偶発的なインベスによる被害もそう多くはない。

 しかし、ことドロタボウは別だ。本体が倒せないのに、対抗すれば種子を植えてくる侵略生物を増産し、ランダムな場所に果実を持ち込んでくる可能性があるからだ。

 それに、たちが悪いのが今回のクラックの性質だ。クラックによる侵略被害は、その維持時間により早期に発見出来ており、この街に侵略を始めたのならすぐに把握できる程度には目立つ。

 けれどもドロタボウが現れ、消えていったクラックは直ぐ側に現れ役目を果たすと消滅した。それはまるで、アーマードライダーやオーバーロードインベスのように、自由に移動できるようではないか。

 そのくせ、敵対的でどこにでも現れ、手のひら程度の果実をどこかへ落としていく。見た目から分かりやすい森の侵食ならいざ知らず、手のひらサイズの果実では場所も数も正確に把握できるものではない。

 

 纏めると、何処にでも現れ、倒せない敵が無限にインベスを増やしつつ、街中にヘルヘイムの実をばら撒いているという状態だ。

 公になっていないヘルヘイムの実の特性に気づいて届け出る者がどれだけいるだろうか。はたまた、知っていたとしても己を摂取させるように誘導する侵略の果実に抗える者がいるだろうか。

 

 下手をすれば、一般の住民が被害に合うだけでなく、変化してしまったそれらを()()することだってあり得る。

 

 そのことに気づいた彼らは険しい顔、及び何かを思い出すような様子を見せる。

 

「このことは街に?」

「ああ。核心となる部分は伝えていないが、似たような果実を見かけたら決して近づかずこちらに通報するように今手掛けている」

「でも、やっぱ早くやらねえと不味いよな」

 

 貴虎の言葉に最大の懸念は収まったが、それでも息をついていい場合ではない。ザックの言う通り、早期に対処せねばそれこそねずみ算式に被害が拡がりかねないのだから。

 

 彼らがそれを強く認識したタイミングで、貴虎は強く声を上げる。

 

「だから俺たちで片をつける。そして、ここにはその為の戦力が揃っている。……各自、区域ごとに分担して捜索網を張るぞ。遭遇者は直ちに位置情報を送信して合流するんだ。猛士以外では討伐できないとはいえ、被害を抑えることは可能だ。対処療法でしかないが、今はこれが最善だろう。仕留められるのならばそれでよし。だがここで留意しておいてほしいのが、仮に逃がしても一人では追跡するな」

「な、何で」

「ただのインベスなら俺もそうは言わない。だが、今回はイレギュラーな要素が多い。確実に根を断つためには、保険を重ねなければいけない。……異論はないな」

 

 返答は深い首肯。誰もが異論はなかった。

 

「よし、それでは今から指定した区画の担当を決める。光実はチーム鎧武の周辺をメインに、ザックは――――」

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 各自解散後、出久は振り分けられた区画にて与えられた端末を弄りながら散策していた。

 どこかに異常はないか、あの妙な妖気はないかと、感覚を研ぎ澄ませる。人間態といえど、猛士の一員となれば五感も発達している。それにより確実に捜索範囲を広げていた出久たが、ふとあることに気づく。

 

(…あれ、何か妙に人が少ないや)

 

 昼間、かっちゃんと会った時は普通に出歩いていた人が減っている。ドロタボウが原因かとも思ったが、ここは遭遇した場所とは離れている。実際に目にした人達ならばともかく、話程度でここまで人はいなくなるものかと、そう考えたのだ。

 

 それも、今の価値観ならば仕方のないことかもしれない。たとえ凶悪な犯罪者が現れたとしても、己の目の届く範囲にいなければそれは対岸の火事。眼の前にその悪意が迫るまで、怖い怖いと言いながらもどこか「自分だけは大丈夫だ」と考えるのだ。

 

 だが、その想像はいい意味で裏切られている。スマホを見ればこの街の情報発信局からの勧告が出ている。

 いつ撮られたものなのか、そこにはインベスの姿が添付されている。その内容は、過去に起こった時同様にインベスが現れたことと、神出鬼没であるということが記され、重要事項としてインベスによる攻撃の感染効果などが細かく記されている。

 

 成る程、ここまで現実的に起こりうる可能性を示されては、例え巫山戯半分でも関わりたくはない。加えて、過去の教訓が役立っているのだろう。

 今の若い大人の世代の殆どが、実際にインベスたちの危険性を知っている者達。となればその情報の信頼性も高く、より注意の輪が広がり迂闊な行動をする者も少ないだろう。

 

 ……とはいえ、それでも完全にゼロに出来ている訳では無い。確かに数は減ったものの、その情報を受け取っていない住民もいる。

 

 そんな人達を犠牲にしないため、ぐっと気を引き締める。そうして、クラックの特徴的な音を聞き逃すことのないように集中して歩いていると、後方から聞き慣れた声がする。

 

「デク…!」

「っかっちゃん…!」

 

 爆豪だ。それも、その声音はすこぶる悪い。ズンズンと駆け寄ってくるのが背中越しでも伝わる中、どうしたものかと恐る恐る振り返り――――

 

「うわっ、何するんだ!」

 

 ――――思い切り突き出された右腕の大振りを、苦も無く躱して腕を掴む。

 

 そのことに、ただでさえ歪んでいた爆豪の顔は更に深い皺が刻まれる。それはそうだろう。気に食わない奴が、何らかの秘密を隠して力をつけており、歯向かった末に()()()()()()()まで見せつけられた。

 それに加えて、今の背後からの不意打ち。声を出していたとして、個性を使っていなかったとしても、振り返ったその一瞬で完全に対応してみせた。爆豪も身体能力のセンスは素晴らしいが、それでも簡単には解けない拘束。不意打ちを対処され、たやすく動きを封じられたことに、爆豪はさらなる苛立ちを募らせる。

 

「っ…離せや!」

「離すわけ無いだろ!? 後ろからいきなり殴りかかってくる人を!?」

 

 これに関しては出久が正論。力づくで振り払おうとする素振りを見せるが、力の起点を抑えられており、加えて掌も内側に向けられているせいで個性も使えない。

 ならばと、空いている左手を出久の腕に向けるも、それは出久も読んでいる。させまいと手を伸ばすが、瞬間その拳が開け放たれる。

 

「!」

 

 爆破が来る! そう思い咄嗟に腕を外へ弾くが、これが爆豪の策だった。

 弾かれた勢いそのままに地面に向けて個性を発動し、爆風で出久諸共体を持ち上げ、予想外の浮遊感に襲われる出久をそのまま地面へ投げる。

 

「うぐっ」

 

 背中を打ち付けた緑谷はくぐもった声を上げるが、対して優位に立った筈の爆豪の顔は厳しい。

 起き上がった出久は形式状のファイティングポーズは取るが、それでも爆豪に対する敵意はない。

 

「…なれよ。さっきの姿に」

「さっきの…って見てたのか!?」

「ああ…。ヒーローを押しのけて殴りかかるテメェがな。それとも何だ、俺相手にゃ使うほどもないってか、アァ!?」

 

 苛立ち、驚愕、鬱憤。あの戦いを見て、ヒーローよりも上手く立ち回っていたこいつの技量に。一年でどんだけ実力をつけたのか分からねぇこいつの成長に。そして、あれを見て敵わねぇかもしれねぇと思ってしまったこの思考に。

 その集積が、爆豪を短慮なヤケに走らせた。市街地での個性発動による他者への暴力。大事な入学式を控えたこの期間に、その行動のデメリットを考えないはずはない。

 だがそれでも、煮立った思考が脳を支配してしまったのだ。

 

 爆豪は緑谷を睨みつける。緑谷は対応するように爆豪を見据える。

 

 いつの間にそんな力つけやがったという疑念と、それを自分に使おうとしない怒り。

 

 ごちゃまぜのまま問を投げかけようとした瞬間―――。

 

「きゃああぁぁ―――っ!」

 

 ―――悲鳴が轟いた。

 

「「っ!」」

「ごめんかっちゃん! また後で!」

 

 悲鳴が聞こえるや否や、ファイティングポーズを解いた緑谷はタブレット端末を開きながら、爆豪を無視して走り去ってしまった。

 

「〜〜っの野郎…!」

 

 あまりに躊躇なく踵を返す緑谷への恨み節を呟きながら、爆豪はその後ろ姿を追うのであった。

 




すげぇ…もうすぐ1年立つのにまだ雄英にも入ってねぇ…。

これからのヒーロー達(出久やライダーも含む)の難易度は?

  • Hard 難しい
  • Easy 簡単
  • Intermediate 中級
  • Standard 標準
  • Excite 宝生永夢ゥ!
  • Impossible 不可能
  • ↑頭文字を取って……
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