僕のヒーローアカデミア〜頭平成ジェネレーションズForever〜 作:パラドクスのガシャットは俺が飲み込んだ
『じゃあ、明日から出発ね。はいこれ俺の携帯番号。行けそうな時間が決まったら連絡して』
『はい。送ってくれてありがとうございました』
『大丈夫大丈夫。俺のせいで時間取ったみたいなものだし。じゃ、また明日!』
『は、はい、さようなら…!』
ヘルメットをかぶり直した彼のサムズアップが遠ざかる。何とか、伝えておいた時間には間に合った。それでもなんとなくそっと、ドアを開けて見る。
『ただいまー…』
『お帰り、出久』
すぐに迎えるのはお母さんだ。僕の行動をこうして見守ってくれている。正直頭が上がらない。昔は僕が原因で傷つけてしまったこともあって、出来るだけ心配はさせたくない。
それでも、僕は言わなければならない。他ならない、僕が僕を好きである為に。
『お母さん。話が、あるんだ―――』
――――…
翌日、僕は荷物を纏めて町外れにある山に来ていた。
なんでも、この山に今響鬼が来ているのだという。
昨日から憧れのライダーに出会ってちょっと感覚が麻痺しているかもしれないけど、仮面ライダー響鬼といえば知る人ぞ知るといった仮面ライダーで、あまり人前に出てくることはない。
それは彼らの活動からすれば当然であり、もし人の目に触れるような場所で彼らがいる場合、その時点で複数の死者が出ているのが確定しているため、そう頻繁に見かけても困るのだけど。
山の麓にトライチェイサー2000を停車させ、そこからは歩きだ。この山にも道路は整備されているんだけど、生憎と目指す場所には繋がってないらしく、道なき道を突き進んでいく。
負荷をかけて走り込みなんかもしているけど、やっぱり手つかずの山道を行くのはまた違った辛さがある。その点、冒険家をしているといった五代さんはこういった場所にも慣れているんだろう。先導しては時折振り返って声掛けをしてくれた。
「そういえばさ」
五代さんが少し手前で止まり、杖をついて口を開く。
「ここの山は最近落石事故が数件発生してるんだよね。全員運転中の事故だったんだけど、運が悪いのか、結構大きな岩がぶつかって即死したってさ」
サーッと血の気が引く。
「何で今そんなこと言うんですか!?」
「いやぁ、流石に大丈夫だとは思うけどね。地盤が緩くなってる可能性もあるから気をつけてねってこと」
確かに足を取られやすいのが崩れでもしたら祈るしかないけど、だとしてもこの斜面で言われたところで対策も何も取れない。
結局、あれからしばらくは恐々としながら斜面を登っていくことになった。
――――…
「ふう、とりあえずは大丈夫かな」
五代さんが薄く滲んだ汗を拭いながら言う。
何とか斜面になっている部分を抜け出し、木々の乱立する平地が増えてきてからの言葉だ。
「はぁ…はぁ…」
何とか息を整え、軽く水分を補給する。走り込みなんかも行ってきたけれど、それよりずっと辛い。傾斜がキツイのもあるけど、それ以上に足を取られていく。
込めた力が空回りして、焦りと一緒に下に降ろされる。その緊張も合わせて慣れない山道での消耗も激しい。
あれだけ鍛えたと思っていても、この程度で息を切らすなんて、自分の目指す先はまだまだはるか先だと思い知らされる。
「スゥー……ハァ……」
休憩ついでに瞑想の構えを取る。自然に意識を溶け込ませ、そのまま自分の内面と向き合うようにしている。
これはオールマイトらトップヒーロー達の言葉から、個性がないのならせめて精神を鍛えようと思って去年から続けている。
目に見えるほどの効果はないけど、これをやるようになってから集注力が上がって、体力が回復するのも早くなった気がする。……これも本当に、気がするだけだけど…。
「…もう大丈夫です。行きましょう」
「いや、中々体力あるね。俺が君くらいの頃はこんな山登りなんかしたらもう息もゼエゼエでもっと休んでたのに」
一瞬お世辞かとも思ったけど、多分本心で言ってるんだろう。短い付き合いだけど、この人がこういう感じで言うときは大抵思わず口から溢してしまったような感じだから。
その事実に、自分の細々とした努力の積み重ねも、形になってはいるのだと少しだけ誇らしい気持ちになった。
そんなとき、感覚を研ぎ澄ませていた名残か、遠くの方から何か大きなものが音を上げて迫ってくるような気がした。
五代さんはどうなのかと伺うが、本人は手帳やスマホの画面とにらめっこしているようで気づいた様子はない。
「あの、五代さん…」
「ん?」
何か音がします。そう言おうとした瞬間、僕達を巨大な影が覆い尽くした。
「超変身!!」
「うわぁっ!?」
今の今まで僕たちがいたところを轢き潰すように現れたそれに驚き、そして自分が地面から遥か高い空に飛び上がっていることに声にならない言葉を吐き出す。
見た目は巨大な岩のよう。けどこんな木々の生い茂る平地でこんな大岩が転がってくるのは明らかに不自然だ。
急な上空からの俯瞰視点にも関わらず、高速で頭を回転させる。個性か、自然災害か、それとも超常生命体に近しいものか。
そう考えを巡らせた瞬間、僕と僕を抱えていた五代さんの体は重力に従って落ちていく。
「何だこれ、岩?」
その大岩らしきものから離れた所に着地し、クウガに変身した五代さんはそっと僕を下ろす。その姿は先日の赤い姿ではなく、複眼と装甲は青く染まり、何より無手だった赤の姿と違い棒状の武器を手にしている。
「わ、分かりません。でも、ただの自然現象じゃなさそうです」
注意深くその大岩を眺めていると、岩のように見えていたそいつは、格納されていた四肢を露わにし、巨体が動く。
「……サイ?」
「いや、カメ…?」
のっそりと正体を表したそれは、約11mほどもあり、サイの様な頭部と亀のような体が混ざりあった不思議な容姿をしていた。
「異形型個性、それとも未確認みたいな存在か…? 少なくとも、友好的な相手じゃなさそうだ」
振り向き直ったそれは、こちらに対して敵対的な視線を向けており、明らかに理性と呼べるものが残っているとは思えない。
「ゴォオオオオォォッ」
「来る! 緑谷君離れて!」
莫大な質量がその見た目とは裏腹にかなりの素早さで迫る。僕は言われたとおりに脇道に逃げ込むが、相手は目の前のクウガしか見ていないのかこちらの存在を気にする様子もない。
「はあッ…! …ッとりゃあ!」
クウガは先に見せたように素早く躱し、通り過ぎざまにドラゴンロッドの一撃を食らわせた。
「硬っ!?」
しかし、打ち下ろされた攻撃は見た目通りの硬い甲羅に阻まれ効果があるようには見えない。
「この姿じゃっ…駄目かっ…?」
続けざまに足や首など甲羅に覆われていない部位にドラゴンロッドで打突を与えていくもダメージはそう通っていない様だ。
備考として青いクウガ。即ち“ドラゴンフォーム”はスピードとジャンプ力はマイティフォームに勝っているが、純粋なパワーは大きく落ちている。
ドラゴンロッドでの攻撃が通用しないとなれば、この形態での対処は困難となる。
(でも、紫の姿じゃこいつのスピードに追いつけない…)
自身の持つ圧倒的な力を持つ姿に変身することを考えるが、それでは今までの素早い動きが不可能となる。青の姿でさえ予測をつけてから躱してやっとの状況なのだから、万が一にも己以外に注意が向けば大変なことになる。と思い迂闊な変身は出来なかった。
実のところ、目の前の相手は四肢を出した状態では見た通りのスピードしか出せない。とてつもない速さで移動するには四肢を収納するというプロセスが必要なのだが、初めて戦う相手にそれを期待するのは酷だろう。
「うわっ!」
「五代さん!」
考え事に気を取られていると、角での一撃を咄嗟に受け止めてしまった。筋力の低い青の姿では抵抗できず、跳ねるように飛ばされてしまう。
絶体絶命。正しくその言葉が似合う状況であった。
相手はダメージを与えた優越感など欠片も滲ませず、先程と変わらず攻め立てようと距離を詰める。
その歩みは遅々としているが、却ってそれが死へのカウントダウンと成り果てる。
「何か弱点でもあれば…」
そう独りごちるが、状況は変わらない。突進を横っ飛びに躱し、ごろごろと地面を転がる。背後にあった木は圧し折れるという勢いを越え、一瞬の均衡もなく吹き飛ばされる。当たっていたらクウガと言えど大ダメージは避けられなかったことだろう。
「弱点…? そうか、弱点だ!」
そんなとき、緑谷が何かを思いついて声を上げる。
「五代さん! あなたに抱えられて上に跳んだとき、見えたんです! 背中付近の目みたいな場所! その部分だけ甲羅がなく、柔そうな見た目でした!」
全力の声。これは確かに耳に入り、クウガは立ち上がる。
拾った枝をモーフィングパワーで再びドラゴンロッドに変え、クウガは高く跳んだ。
「…あれか!」
視界の悪く、木々も多い山中では見えなかったが、確かに前面付近に目のような器官がついている。
クウガはそこに狙いを澄ませ、右肩を後ろに引き投擲の構えを取った。そして腕から伝わる燃えるような橙色のエネルギーがロッドの石突きを覆い尽くすと、勢いよく投擲した。
封印エネルギーを纏ったそれは、寸分違わず弱点である背中の目に的中し、少しして封印エネルギーが浸透し刻印が浮き上がる。
「―――ッ!?」
刻印が浮き上がった場所が稲妻を撒き散らして爆散。声にならない声を上げるそれの甲羅はひび割れ、柔らかい中身が隙間から見えている。
「あっ!?」
緑谷が声を上げる。投擲されたドラゴンロッドがクウガの手を離れたことによりモーフィングパワーの影響を離れ、元の姿である木の枝に戻ってしまったのだ。
こうなると先に込めていた封印エネルギーも期待できない。そして、こうまで大きな存在が甲羅を割られた程度で止まるはずもない。むしろ、更に激昂して目の前の存在を撃滅せんと鼻を鳴らす。
「ま、まだ倒れない…」
そのことを認識したクウガは再び枝を拾うことで戦闘態勢を整えようとして……その手を納めた。
「いや、もう大丈夫みたい」
戦闘態勢を解いた五代にギョッとした目を向けるが、「ほら」と指された場所へ視線を向ける。
「悪い! そっちまで逃げられた!」
「よし、ここで決めるぞ!」
声をかけながら駆け寄る二つの影。
何でこんなところに人が!? と自らを棚に上げて驚愕。そしてこの怪物に向かって走っていることに、注意の言葉をかけようとしたその瞬間。
音叉の音が鳴り渡る。
迫る人影は紫炎に包まれ、轟々と勢いよく燃え盛る。それを振り払って現れたのは大柄な人影。
筋骨隆々で角を持つ。その姿は正しく“鬼”であった。
「ハアッ!」
「あああああっ!」
赤と紫、白と金の二人の鬼は雄叫びを上げ、猛然と突き進む。
「やあぁぁっ!!」
白の鬼が二本のバチから強力な火炎弾を絶えず打ち込み、相手の注意を完全に引き付ける。
「今です!」
「おう!」
その隙に跳び上がった紫の鬼は腰のベルトから取り出した何かを露出した部位に貼り付ける。
すると、みるみるうちに大きくなったそれは紋様の描かれた鼓に変わり、そこに着地したままの鬼は勢いよくバチを振りかぶる。
「豪火連舞の型!!」
叫び、怒涛の勢いで叩き込まれる音撃の連打。鼓に打ち下ろされる清めの音は、激しい打撃音を響かせながらも規則的な型をいくつもなぞるようにしていることが分かる。
―――そして…。
「ハアッ!」
フィニッシュ。力強く最後の一撃を終えた鬼が動きを止めると、ほんの僅かな余韻の後、サイのようなそれは爆散した。
パラパラと散らばる破片には生物らしき器官は見えず、粉砕されたそれらは土へと還っていく。
「やりましたね響鬼さん!」
「京介の援護もナイスだったぜ。それに、オトロシの甲羅が割れてたのも大きい。だろ? クウガ?」
二人は健闘を称え合い、そしてこちらに向き直る。今までの装甲から顔だけを露出させてしっかりと顔を見ることが出来た。
「響鬼…ってことは!」
「うん、そうだよ。緑谷くん、あの人が“響鬼”だ」
「よろしくぅ!」
肘を曲げ、顔の前でびっと立てられた指が、ベテランならではの余裕を醸し出しているかのように、緑谷出久は感じたのだった。
というわけで登場した魔化魍は「オトロシ」でしたー。100年に一度しか現れないとか言われてるやつは本編終盤と本編終了後は嘘みたいな頻度で現れるのはあるある。
もしよければ感想、評価などをしていってくれると幸いです。これがモチベアップに関わります。
これからのヒーロー達(出久やライダーも含む)の難易度は?
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Hard 難しい
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Easy 簡単
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Intermediate 中級
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Standard 標準
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Excite 宝生永夢ゥ!
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Impossible 不可能
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