僕のヒーローアカデミア〜頭平成ジェネレーションズForever〜 作:パラドクスのガシャットは俺が飲み込んだ
「それで、わざわざここまで来たってことは何か用事でもあるのかい」
場所を変え、問われたその言葉に僕は一層の決意を込めて告げる。
「…僕がヒーローになれるように…、いえ、僕がヒーローを目指すための力を手に入れるために! 僕に修行をつけてください!」
そう言って、腰を直角に折り曲げる。
言った。ああ、言ってしまったぞ。こんな言い方じゃあまるで踏み台にするようだけど、ここだけは譲れない。譲っちゃいけない。理由を誤魔化すのはより不誠実で、何より自分が許せない行為だったから。
「ヒーローに、なれるように…?」
ピクリと、茶髪の男性が反応する。彼はヒビキさんと同じ“鬼”で、響鬼さんの弟子でもある桐矢京介さん。
京介さんが明らかな動揺を示すのに対して、ヒビキさんは黙して何かを考えるような仕草を見せる。
「ま、とにかく顔上げな。少年、名前は?」
「み、緑谷出久です!」
急に話しかけられたのでどもってしまったけど、言われたとおりに、体ごと起こしてピンと直立。僕より大柄なヒビキさんは真摯に僕の目を見て言った。
「そうか。じゃあ出久、お前は何のためにヒーローを目指す? 何もヒーローにならなきゃいけない理由でもないんだろう。そして俺達“鬼”には相応の役割がある」
「犯罪者を捉えたり、慈善事業をしたりするヒーローとは違って、俺達は“魔化魍”……さっきの化け物を専門に鎮めるための力を厳しい修練で身につける。似ているかもしれないが全くの別物というワケだ」
分かっている。力を乞うのに、彼らの理念と反することをしているというのは。
歯を食いしばる僕に、京介さんが続けて放つ。
「“鬼”の力を望むなら、同じように“鬼”として活動すればいい。“猛士”でも人助けのために動ける。脅威から人を守るのは何もヒーローに限った話じゃない」
「それはっ…、その通りです…!」
おや、といった顔でヒビキさんが見る。僕の返答が何かに触ったのだろう。
「あなた達の力を学ぶだけ学んで、別分野で使うのは虫のいい話だってことも理解してます! でも、それでも、僕は過去の自分と決別したいんです! 無個性だからと無理だって決めつけて、自分の努力も『ヒーローにはなれない』と、諦めて見ないふりをしていた自分を!」
「へぇ」
「緑谷君…」
「幼い頃に憧れた、誰もを笑顔に出来る“ヒーロー”に、僕はなりたい! それがっ、僕自身が誇ることのできる夢なんです!」
言い切った。喉が枯れるくらいの声量で叫ぶように発せられて言葉は、僕たち以外に人気のない山の中に木霊した。
そして、必死に次の言葉を待ち構える僕に対して、あっけらかんとヒビキさんは言う。
「よし、オーケーオーケー! 気合の入ったいい声出せるじゃん! 鬼の才能あるかもね」
「へっ?」
途端に破顔し、バシバシと肩に手を当てる。
「いやぁー、それにしてもこんなに夢に向かって行動できる子は久しぶりに見たなー。うんうん、やっぱこういうひたむきな子がなんだかんだいって大成していくんだよ」
「あの、弟子入りの件は…」
「あ、うんいいよいいよ」
「あ、はい。ありがとうございます……」
「って、へぁっ!?」
冗談のように軽く告げられたその言葉に、僕は声にならない声を上げる。…何だか昨日今日でひたすら驚きの天井を塗り替えている気がするけど、それも仕方がないだろう。
なにせ、結構なことを言ったつもりなのに、こうまで気にされてないと、却って伝わってなかったのか不安になる。
「あ、あの。い、いいんですか? こう、この力を身につけるのに相応しいか試す…とか、嘘じゃないことを証明してみせろ…、とか。てっきりそういうのを想像してたんですけど……」
「え、そういうのがあった方がいいの?」
「いっ、いえいえいえ! な、ないならいいんですけどっ。こう、資格とかそういうのはいいのかなって思いまして……」
そう、資格だ。早口で語る僕だけど、いわば仮面ライダーはヒーローとは別種の特別な力という感覚が強い。それも、試験で受かりさえすれば誰もが手に入れられるヒーローという立場とは一線を画していると、そう無意識に線を引いてしまっていた。
「いやー、よっぽど悪いことに使おうって企んでるとかならそりゃ断るけどさ、わざわざここまで来て弟子入りしようって少年がそんな回りくどいことするかね?」
「それは…」
やや返答に困る。ないとは言えないけど、そんなことをするのはかなり屈折した性格なのだろうとは思う。
「あと、最初からそんな資格を持ってる人なんていない。普通に弟子いりして教わるんだからさ、その間に色々と学んでけばいいのよ」
「でも、いいんですか? こんな、中学生で」
「あんまりそういうところは気にしてないかな。警察から鬼になったヤツも知ってるし、何よりそこに中学生で弟子入りした張本人がいるんだから」
そう言って、指されるのは京介さんの方。指をさされた本人はバツの悪そうにそっぽを向くけど、僕は驚愕の視線を向ける。
曰く、響鬼さんと肩を並べて戦っていたあの京介さんも僕と同じような位に弟子入りして、着々と成長して今や立派な鬼の一人なのだとか。
そのことに、やっぱり自分が外に目を向けていなかったと思い知らされた。僕が勝手に夢を諦めてる間にも、自分で道を決めて一直線に突き進む先達がいたことを目にしているのだから。
「ま、そういうわけだ。これからよろしく頼むぜ」
「はっ、はい! よろしくお願いします!」
その日から、僕が最高のヒーローになるための修行が始まったのだった。
―――…
「いいか、兎にも角にもまず大切なのは己の肉体の修練だ。出久も分かってるとは思うが基本的に体を鍛えていて困ることはない」
「はいっ!」
「というわけで基本的な筋トレと体力を管理するための持久走もやってもらう。ほら、メニュー」
「……タクシーを使ったりはするなよ」
―――…
「“鬼”といえば清めの音を扱う“音撃”が特徴だ。だがそれには元の楽器の知識も相応に必要だ。楽器の奏で方とリズムの取り方を全力で学んでもらう。今回は音撃戦士なら必修の太鼓だ」
「はいっ!」
「なんだ…? 見覚えがあるような…。ウォズ…? いや、誰だ?」
―――…
「“鬼”は自然界に満ちる力を上手く使って変身するんだ。まずはその力を自覚するところから始めるか!」
「はいっ!」
「……………」
「ぷはぁっ…! だ、駄目だ…! 全然わからない…!」
「まあ最初はそんなもんだ。あんまし気にすんな」
「…そう簡単に習得されたらこっちの立つ瀬がないからな」
―――…
「鍛えて体力を消耗したらとにかく食え! 修行に関わらずともエネルギーを使ったときはこいつが一番だ」
「ふぁいっ!」
「喉に詰まらせるなよ?」
「ひょうふへひゃん。んぐんぐ、京介さん、その椎茸食べないんですか?」
「……どうした。食いたいのか?」
―――…
「何ですか? それ」
「ディスクアニマル。動物の魂を使った式神の一種だ。普段はこんなディスクの形状だけど、こうやって変身音叉なんかの音で起動する」
「わっ、ディスクが動物の姿に…」
「録画、録音機能があり、偵察や探索、武器にまでなる頼れる味方さ」
「すごい技術力ですね猛士って…」
―――…
「俺達鬼が相手取るのは“魔化魍”といって、ただの土塊なんかが悪気に当てられて自然的な力を得てしまった存在だ。今世に広まってる妖怪はかつて魔化魍を見かけた当時の人々が広めていったものだ」
「それを“鬼”として祓って人を助けるんですよね!」
「そうだ。でも、鬼も魔化魍も自然界の力をまとって変化するという点じゃ同じだ。つまり、根本的には鬼と魔化魍は同一の存在と言ってもいい。実際、過去に道を違えて魔化魍と化した鬼もいる」
「っ…」
「まあまあ、そう身構えなくてもいいって。力は使いようって話だよ。ほら、“個性”だって無闇に使えば“敵”になるけど、正しく使うことのできる人は“ヒーロー”と呼ばれる。だから、この力を正しく扱うためにも精神の鍛錬も怠らないようにってこと。最初のうちは瞑想なんかでもいいかもしれないな」
「…っ、分かりました!」
―――…
山に籠もってから、あっという間に一週間が経った。
その修行はどれも基礎的なものだったらしいけど、今までの僕の修行よりもずっと辛かったし、大変だった。でも、これも正式に弟子になったからと思えばへっちゃらだ。
何より、響鬼さんや京介さんは厳しいだけじゃなくて優しくもあって、何ていうか、人の心を掴むっていうのかな。そんな感じの人柄もあって、僕は時間も気にせず続けられたんだと思う。
でも、そんなつきっきりで修行を見てもらえるのも今日までだ。
「明日から3年生か…」
欲を言うなら、このまま修行をつけてもらいたいのだけど「学校ならちゃんと通ったほうがいいよ。このまま猛士になるならそれでもいいかもだけど、雄英高校に受かりたいならそっちを疎かにしちゃ駄目でしょ」と言われてしまった。
それを言われてしまっては弱いので、渋々家に帰ることになったのだった。
「基本的なことは教えたから、あとは同じことを家でも続けてればとりあえずは大丈夫。うん、ちゃんと連絡くれれば任務でもない限り休日には会えるからさ」
「いいか、鍛錬は当然として、何のために力を手に入れるのかを見失うなよ。正しく修行の意味を理解して行わなければ意味はないからな」
「はい! お二人共ありがとうございました!」
わざわざ見送りに山を降りてくれた二人に感謝の言葉を告げる。言われたとおり、修行は続けるし、その意味も考えるようにする。いくら休日に行ける距離とはいえ、勉強もあるからそう簡単に行くことは出来ないだろう。
だから、もし次本格的な修行を行えるとすれば、受験に忙しくなる後半ではなく、夏休みということになるだろう。
「修行尽くしで緑谷くんも疲れてるでしょ、乗ってきなよ」
「五代さんも、わざわざ付き合ってくれてありがとうございました」
ビシッとこちらにも頭を下げる。
本来ならそのまま帰ってもいいところを、何だか心配だからと一緒に修行までしてくれた。本当に、頭が上がらない人だ。
「いやいや、俺も修行には興味あったしね。来年までに身につける技の目安にもなったからそんなに気にしなくていいって」
「それでも、です。あなたがいなければ、僕は夢を諦めて努力を妥協で誤魔化す日々になっていたと思います。今まで、僕は甘えていたんでしょう。誰かに認められたい、誰かになれると言ってほしい。そんな風に他人任せの願望を盾にして現実から逃げてたんです」
思い起こすのは、“個性”がないと言われ、絶望と母の落涙。あのときの僕は、誰かに認められることでしか夢を描くことのできなかった。でも違う。そうじゃないんだ。
誰に認められなくても、自分の胸を張って誇れる姿を目指すんだ。第一、黎明期のヒーローだって、五代さんだってそうだったんだ。
黎明期のヒーロー達は、やっていることは今のヒーローと同じだけど、当時の法で見れば犯罪者だ。そして五代さんも、最初は人類の敵である未確認生物として追われていた。
そうなんだ。ヒーローは誰かに示された道を歩む存在なんじゃない。このヒーロー飽和社会、忘れかけていたヒーローの大原則。『弱きを助け強きを挫く』。たとえどんな強大な悪であっても、罪なき市民を守るために立ち上がる勇気。その心そのものが“ヒーロー”なんだ。
五代さんが言っていたとおりに、誰かの笑顔を守れたのなら、その人にとっては正しくヒーローなんだろう。
そんな簡単で当たり前のことを、僕は打ちのめされたと思いこんで忘れていた。
だからこそ、次は折れない。もう、折れてはいられない。
そう心に誓って、僕は帰路につくのだった。
◆◆◆◆
「……行きましたね」
「行ったな」
出久と雄介の去った山に、二人の鬼が残される。
よっこらしょっ、と声を上げて座り込んだヒビキは、京介に問いかける。
「それにしても、意外だったな」
「…何がです?」
問いかけられたものに心当たりがないのか、京介は首を傾げる。
「アレだよ、鬼の力をヒーロー活動に使いたいって言ったとき。俺はてっきり反対するのかと思ってたんだけどねぇ」
「ああ…そのことですか」
意表を突かれたとばかりに苦笑する。その顔は何か懐かしいものを不意に見つけてしまった時のような感情に彩られていた。
「何、前にも似たようなやつがいたなと思い出しまして」
脳裏に浮かぶは、己と同じ弟子でありながら、自分と異なる道へ進んでいった少年のこと。
「道は違っても、その心意気は買ってやるべきだと思っただけですよ。…あの時の俺は、そんなことも分からずに軽蔑してしまっていたが……。いや、響鬼さんの方こそ、何で弟子にしたんですか? 次の世代に任せるって、弟子は取らないようにしていたでしょう」
質問を返された響鬼はこれまた一本取られたとでも言うかのように顔を笑みで歪めると、「同じだよ」と話を始めた。
「同じ?」
「ああ。確か明日夢と初めてあった日に聞かれたんだよ。『自分が自分らしくいれる為にはどうすればいいですか』ってね。その時は『自分を信じること』って答えたんだけどさ、それがまた、出久は実践しようとしていてね。俺も歳をとったかなー…なんてね」
茶化すような仕草で誤魔化すが、その顔は確かに喜色の相にまみれていた。
「よし、いっちょ歌でも歌うか」
「はい?」
突然の申し出に困惑の声を上げる京介を尻目に、ヒビキは躊躇うことなくその歌声を山に響かせていく。
「出会いがあれば、別れもあるさ。さ、さ、さ、さ、さささささささささようならっ、と」
いつの日か、かつての誰かと別れたときに歌った懐かしい歌は、浄化されたこの山に染み渡っていくのだった。
「あいつ、夏休みにはまたこっちで籠もるつもりらしいんだがな…」
呆れたように、その声に合わせて口笛を吹く元弟子の姿があったそうななかったそうな…
申し訳ないが修行とか書き方わからないのでカット
感想とか評価とかよろしくおねがいします。
因みに、デクがやっていたのは初期の明日夢や京介よりもキツイメニューです。そりゃ明確な意志を持っていて、更にタイムリミットが来年までであり、体も既に鍛えてあるとなればそらそうよ。
修行編はもうちょっとだけ続くんじゃ
これからのヒーロー達(出久やライダーも含む)の難易度は?
-
Hard 難しい
-
Easy 簡単
-
Intermediate 中級
-
Standard 標準
-
Excite 宝生永夢ゥ!
-
Impossible 不可能
-
↑頭文字を取って……