僕のヒーローアカデミア〜頭平成ジェネレーションズForever〜 作:パラドクスのガシャットは俺が飲み込んだ
「あっちだ!」
「やっぱり…! あいつだ!」
田等院商店街に集まる人集り。人々の間を縫い、ようやく見つけたそのヘドロ敵はその流体を遺憾なく発揮させ並み居るヒーローへ大立ち回りを演じている。
「ヒーローなんで棒立ち?」
「中学生が捕まってんだと」
遅かった…! もう既に誰かが犠牲になっていた!
「オールマ…! えっと、その、どうにかなりませんか!?」
「……少し厳しいな」
「そんな!?」
オールマイトへ助けを求めると、深刻そうな顔のまま僕にだけ聞こえるように答える。
「さっき私の姿が変わったのを見ただろう。つまりほぼ活動時間は過ぎているんだ。何とか力めばほんの僅かに力を発揮することも出来ないでもないが…。あの様子では残された時間で人質まで助けることは敵わない…」
オールマイトから告げられた情報に歯噛みする。
つまり、今のオールマイトではあの敵を倒すだけの力は残っているが、人質の中学生も無事に済む保証がないということだ。
だからこそ、誰か他のヒーローが人質さえ何とかすれば片付くのだけど…。その人質が抵抗することでプロですら手が回らなくなってきている。
オールマイトも無理、今いるヒーローだけではジリ貧。誰か、有利な“個性”を持ったヒーローが駆けつけてくれたら―――!
「いや…違う。そうじゃない。僕が憧れたヒーローは、僕の目指す英雄は、そんな悠長なことはしない」
たとえ相性が悪くても、最善を尽くすよう努力するんだ。現に、響鬼さんは音撃棒では相性の悪い魔化魍だって倒してきたんだ。
(考えろ。考えろ緑谷出久。僕が出来るのは何だ? 戦う? 無理だ。掴めない相手に力ない僕じゃあまりに無謀。まずは個性の確認と意識を逸らすことが先決で、そのためにも―――)
高速で思考を働かせる最中、そのヘドロが蠢き人質の顔が顕になる。
「馬鹿ヤロー!! 止まれ!!止まれ!!!」
気がつけば、僕の体は人集りを超えて走り出していた。
ああクソ! 何で出た、何してんだよ。まだ最善の行動も見出だせてないのに!
「でも、そんな顔されちゃあ無理じゃないか……!」
今にも泣きそうな強かった幼馴染の歪んだ顔。あのかっちゃんが、口が悪くて天才肌で自信家なあのかっちゃんが、あんな顔をしていたんだ。
「ハァ…、そこのガキ! また目潰ししようったって無駄だぞ!? 今ならこの“強個性”の隠れ蓑のお陰で最強なんだよぉ!」
「ふざけるな! かっちゃんはお前の道具なんかじゃない!」
そうして爆破する腕を突き出してくるヘドロ敵。だけど、僕の狙いはこいつの顔面なんかじゃない。第一、無個性だとバレていて目潰しを一度行ったんだからそこは警戒されて叱るべきだ。
「かっちゃん!!」
「何で!! てめぇが!!」
上に投げたリュックに気を取られた相手の下を潜り、かっちゃんの元まで辿り着く。
「足が勝手に! 何でって、そんなの今はどうでもいい! 気づいたら体が動いてたんだ…!! とにかく全力で小規模な爆破をして!」
「うるっ…せぇ…! 俺に命令すんじゃ…!」
「君の方こそうるせえ! いいからさっさとしろ! 君なら出来るだろ!」
「あ゛…!?」
普段反抗してこない緑谷のあまりの気迫に押され、取り込まれかけの鈍った脳みそが自らの個性を制御する。
「…何やってんだ〜? こいつが個性を使えば使うほど…! 俺の力も増すんだぜ〜?」
へらへらと得意気に笑う“敵”は無視。連続小爆発が周囲の音と混ざってちょっとした声なんかは掻き消してしまう。
これが狙いだ。あのヘドロ敵の耳が何処にあるかは分らない。でも、会話が聞き取れる以上は耳、あるいは類似した器官は持っているはず。じゃなけりゃ、あんなに周囲の声に反応するはずもない。
そうやって耳を誤魔化しているうちに、かっちゃんの顔近くでこっそりと作戦を述べる。かっちゃんはそれでも反対したけど、最早議論の余地はない。
「いいから!! 信じろ!!!」
「っ…!」
力強い返答、その気配に思わず尻込みをする。けれど、当の彼こそがその事実を認めたくない。故に、爆豪はその提案に乗ることにした。あくまで、いいなりになっているわけではないと自身に言い聞かせて。
「あぁ…!?」
そう言ったのは誰だろうか。プロだったか、民衆だったか、それともこのヘドロ敵だったか。
何故そのような声を上げたのか。それは当然、今の今まで抵抗していた人質がだらんとその腕を下ろして目をつぶったからに他ならない。
周囲に悲哀と切羽詰まったような空気が流れ、言葉を失うヒーローと民衆に向かって“敵”は嘲笑う。
「乗っ取り完了だぁ…! 見てろよヒーロー共、手始めにこの力でお前らをブッ殺してやる…!」
「おいおい不味いぞ…!? 人質の少年は無事なのか…!?」
緊迫した状況において、その敵が目をつけたのは当然目の前にいる無力な少年だ。
「おいっ! 早く逃げろ!」
「何でまだ棒立ちしてんだよっ!?」
「やめろー!!」
嗜虐的な笑みを浮かべたまま、その手を向けようとするが…。
「んん…?」
その顔に望む表情は見当たらず、ただ何かを耐え忍ぶような顔でヘドロを躱す。
そして視線がこちらに向いているその間際、少年は真っ直ぐに突き進んだ。
その体はそのままヘドロの元に飛びつき、必死に掻き出している。それは見ようによっては、人質の少年を助けるために無謀な特攻をしているようにも見えたかもしれない。
そして彼の体まで手を伸ばすと、体を引っ張るでもなく、その両腕を掴む。
「何考えてるかしらねぇが…、お前は爆死だ…!」
「――今だかっちゃん!」
「指図すんなやクソデクがあぁぁぁぁっっっ―――!!!!」
BOOOOOOOOOOOOOOM!!!!!
「!?」
「ギャアアアアアアアアアアアアアアア―――ッ!?」
一際大きい爆発。その閃光と爆音はその場にいる人々の行動を止めるには十分すぎるほどの効力を発揮し、それはヘドロ敵ですら例外ではない。
(やっぱりだ…! 耳がないのに聞こえる、そして目潰しも通用する。なら、当然コレにも弱い!)
それは経験から学んだこと。いかに流動する体であっても、視覚と聴覚は存在する。全くの無警戒状態で感覚器官に攻撃されては溜まったものではない。
(いけたっ…! すぐにペットボトルに詰めれることと、触った感じから、体積はあっても粘度はそこまでじゃない! 厄介だったのは本人が上手く扱ってたから…! 閃光と音響で怯んだならその隙を突けば……!)
驚いたことで拘束が緩み、爆豪を抱えたまま真反対へと突き抜けた――!
「人質がはなれたぞ!」
「何だあの学生ズ! クソ度胸だな!?」
そのまま走り去る背中に爆破の勢いが加わってあっというまにヒーローの待ち構えるボーダーにまで辿り着く。
「はやく後ろに!」
「ケガないか二人共!」
ヒーローに保護され、尚も暴れようとする“敵”の前に、No.1が舞い降りた。
「そこまでの覚悟を見せられちゃあ…! 私も応えなければねっ…!!」
「お前っ!?」
「
―――…
ヘドロ敵の一件はオールマイトによって無事解決された。人質を失った敵に対して振るわれた拳は天候すらも変え、散らばったベトベトはヒーローらに回収され、警察に引き取られた。
「君が危険を冒す必要は全く無かったんだ!!」
「危険を顧みない行動は君だけじゃなく他の人まで巻き込む可能性があるんだぞ」
「はい…」
「…だが、個人的に言わせてもらうならナイスガッツだ! だからといって、許すわけではないけど、その気持ち自体は素晴らしかったぞ!」
僕は怒られながらも人質救出の件を褒められ――
「すごいタフネスだ! それにその“個性”!! プロになったら是非
かっちゃんは称賛されていた。
僕たちが話を聞いている間に、いつの間にかオールマイトの姿は消えていた。活動限界がギリギリだと言っていたからだろう。約束を破ったことを謝りたかったけど、そういうことなら仕方がなかった。無理に引き止めて、あの姿を衆目に晒してしまうわけにはいかないからだ。
「デク!!!」
陽も傾き、とぼとぼと帰路を歩く僕に、背後から声が投げかけられる。かっちゃんだ。
「俺は…てめぇに助けを求めてなんかねぇぞ……! あれは全部俺の“個性”ありきだ…! てめぇがやったことなんてなにもねぇ! なあ!? 全部一人でやれたんだ。無個性のてめぇが見下すんじゃねぇぞ!」
クソナードが!! と吐き捨てて元来た道を引き返す姿には褒められた通りのタフネスさが現れていた。
「まぁ、あっちの方がかっちゃんらしいかな」
これでも、昔と比べればマシになったもんだ。正確には、僕が鍛えてその成果が出始めたくらいからかな。あれでも結果を出してる人には優しい……のか? 改めて思うとなんか違う気がするな…。かっちゃんのせいで僕の価値観が変わってしまったかもしれない。
「私が来た!」
「わ!?」
角から現れたのはオールマイト。…真の姿の方だ。
「オールマイト!? 何でここに…てっきりあのまま帰ったのかと…」
「この姿がバレるわけにはいかないからね。少しだけ撒かせてもらったよ。まあ、そんなことは大したことじゃない。礼と訂正……そして提案をしにきたんだ」
礼と訂正は…心当たりがなくはないけど…。提案? No.1ヒーローがこんな学生相手に?
「君がいなければ………君の身の上を聞いてなければ、口先だけのニセ筋となるところだった!! ありがとう!!」
「ありがとうってそんな…。僕はプロに任せるって約束したのに突っ込んで…。今回は上手くハマってくれたからよかったけど、それもかっちゃんのおかげだし……」
そうだ。あの顔を見て居ても立ってもいられなくなり、行き当たりばったりに出て行ってしまった。あの時はたまたま手の内や特性なんかを知っていたから何とかなったけど、もし初見だったら大怪我を負っていても可笑しくはなかった。
そうなった場合どうなる? 当然、仕事として来ている現場のヒーロー達の責任になる。マスコミとはきまぐれなもので、ある人物を褒め称えたその口で今度は別の人物の失敗を責め立てる。
文字通り、僕だけの問題じゃない。
「そうだ。反省はいいことだね。こってり絞られたようだしそこに関しては言わないでおこう。だがね、あの場の誰でもない! 無個性で、そのくせ覚悟の決まった君だったからこそ! 私は動かされた!」
「トップヒーローは学生時から逸話を残している………彼らの多くが話をこう結ぶ!!「考えるより体が先に動いていた」と!!」
「あそこまで自分を貫けて、冷静に場を見ていた君が途端に駆け出した。……君もそうだったんだろ!?」
「…っ!」
あの時は確かに、がむしゃらにかっちゃんに…。
その時の心境がフラッシュバックする。無謀で、愚かな行為だった。作戦なんていくらでも立てようがあったし、あの“敵”の特性を伝えるだけでも役立てた筈だ。それなのに、あの時駆け出した僕に後悔はあったか? 疑問と困惑は確かにあった。それでも、それでも――――。
「―――君はヒーローになれる! …なんて、今更な話か。目を見れば分かる! 私に言われずとも、君はきっと素晴らしいヒーローになれるだろう!」
「…………はいっ!! 頑張ります! 僕、僕は、あなたすら助けられるような、無個性でもやれるって、道を示せるような。誰かの笑顔を守れるようなヒーローに! 僕はっ「ちょ、ちょ、ちょ! タンマタンマ!」……えぇ…?」
今の、止めるところじゃなかった気がする。そんな微妙な表情になっているところに、オールマイトは弁解する。
「あ、ゴメンね。君にとっては重要なことなんだろうけど、それを言ったら終わってしまいそうだったから…、つい…。……んんっ! まだ「提案」を言っていないだろう?」
「あ…」
そういえば、それまでの言葉はどちらも礼と訂正だ。肝心の提案がまだだったことを思い出す。
「では気を取り直して…。君なら私の“力”、受け継ぐに値する!!」
“力”…? それって、一体…?
「HAHAHA、なんて顔してるんだい少年!?」
いや、だって、急にそんなこと言われても…。
「私の“力”を――君が受け取ってみないかという話さ!!」
コフッ、と吐血しながらテンション高く続けられた言葉の情報量に圧倒される。「ワン・フォー・オール」…聖火の如く引き継がれてきた個性だって…?
「そんな大層なもの何で………」
「無個性でありながらも諦めることなく進んだ君はあの場で誰よりもヒーローだった! ………元々後継は探していたのだ。そして君になら渡して良いと思ったのさ!! ………まァしかし君次第だけどさ! どうする?」
すごい話だ。少し前までの僕に言ったら、とうとう夢の中の話を現実に持ち出したのかとでも自虐しそうな程に、ありえない提案だ。あのオールマイトの力が、僕に差し出されるなんて。
それはとても光栄な話で、普通の一般人なら断るなんて選択肢はない。…筈なんだけど――。
意を決して、僕に視線を向けたままのオールマイトに向き直る。そしてハッキリと、こう口にした。
「―――ごめんなさい。その力、僕には引き継げません。もっと必要としている人に上げてやってください」
話長くね?
そしてこの前ちらっと日刊載ってたの嬉しかったです(意訳:もっと見ろ)
これからのヒーロー達(出久やライダーも含む)の難易度は?
-
Hard 難しい
-
Easy 簡単
-
Intermediate 中級
-
Standard 標準
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Excite 宝生永夢ゥ!
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Impossible 不可能
-
↑頭文字を取って……