Lycoris Recoil 花守のうた 作:RoLeRuLiRA
#01-1 PeaceMaker
声が聞こえる、かつて聞いたことのある男の声だ。誰だかは分からないし顔も見えないその男が、呼びかけてくる。感情の薄い淡々とした声音と真摯な云い方をどこか知ってるような感じがしたが、思い出せない。その男は淡々と告げた。
俺たちには使命がある。
原作: Spider Lily 「リコリス・リコイル」
世界に冠たる極東最大都市、東京。平和で安全、豊かな日本の中心。そのある朝、その街の一角を男が歩いている。手にスポーツバッグを持つその姿は朝の通勤中にしか見えないがそのバッグの中にあったのは手製の爆弾。男はそれを爆発させる場所にむけて歩いている最中だった。バレるはずない。男はそう確信していた。爆弾は時限式だが男がリモコンのスイッチを押せばいますぐにでも起爆できる。男は目的地に向けて少し急ぎ足で歩き続けた。道路を避けて大きな公園を通り抜ければショートカットが出来ると思った男は公園内に入り散策路を進む。ふと、足を止めた。早朝の公園、人がいないのは決して不思議なことでは無いが、いやに静かな気がして男は何とは無しに周囲を見回す。何もいないはずなのに何か、変な感じがしたと同時、聞き馴れない音がした。その音の正体を男が知ることはない。突然全身から力が抜けて男は崩れ落ち、暗転しだした視界に見えた学生のような影、それが男が見た最後の光景となった。
企画 Aelectivision
脚本 弾痕版文庫(Acceed Media Works)
男を射殺した少女は銃を鞄にしまうとすぐさま鞄を拾い上げてその場を立ち去る。背後から聞き馴れた車の停車する音が聞こえる。あの男を回収に来たのだろう。男の持っていたこの鞄を処分すれば、今日もまた一つ悲劇がこの国から取り除かれる。それに大した感慨も抱かず少女は鞄を持って歩き続けた。
また同時刻の東京。別の場所では拳銃を懐に入れて男が歩いている。東京鉄道網の中心であるターミナル駅の傍まで歩いてきた男は清掃中という看板を気にせずトイレに入る。これからすることを思えばどうとも思わなかったが最期になって小便を垂れるようでは格好が付かないと思った男は用を足そうと便器の前に立ちズボンに手をかけた瞬間に背後の個室トイレが空く音を聞く。清掃の人間だろうと後ろを振り返らずいた男に向かって突如銃弾が放たれ男は血と小便を垂らしたまま崩れ落ちた。男を撃ち殺した学生服を着た少女は男の懐から拳銃を抜きとり鞄にしまってトイレから出た。入れ替わりに清掃員の服を着た集団がトイレに入り入り口をテープで封鎖する。悲劇を未然に防いだ少女はひと言も発することなく雑踏の中へと消えていった。
設定協力・参考
小島プロダクション メタルギアシリーズ
フロントウィング グリザイアシリーズ
UBI soft
Tom Crancy's The Division
Tom Crancy's Rainbow Six
Tom Crancy's Ghost Recon
Activision Call of Duty Cold War
小林源文 キャットシットワン
オメガ7
高橋慶太郎 ヨルムンガンド
ordinary+-
伊藤計劃 虐殺器官
カサハラテツロー RIDEBACK
過去8年間、世界一の治安を維持する日本の首都、東京。日本人は規範意識が高くて温厚。安心安全、豊かな国。それこそが日本。人々は半ば盲目的にそれを信じている。根拠はないが現に平和なこの日常が、ただ人々の意識によって成り立っていると、そう人々に信じさせていた。危険は常に海の向こう、画面の向こう。
それを少し奇妙に感じる人がいたとしても真実は闇の中にすら無く、実際にこの平和が多くの犠牲と銃弾のもとに築かれているとは予想できるはずもなかった。
銃器協力:コンチネンタルホテル
オルロフ通商
装備協力:HCLI Japan ドレビンズ商会
彼女たちには使命がある。人々に危険が迫る前にその種ごと消して、消して、なかったコトにする。危険があったことすら気付かせない、日本人の気質と規範意識によって、法治国家日本の平和が成り立つ。そう信じさせることが 彼女たち、リコリスの使命なのだそうだ。
そうだ、俺たちには使命がある。
俺の知るリコリスにも、使命があった。
Lycoris Recoil 花守のうた
First session Peace Maker
何かが圧し掛かっているような感触と違和感が男の眠りを遮って目覚めを促した。
まどろみから抜け出し切れていない意識の中で男は手首の腕時計を見やる。
04:30
いつもよりも一時間は早い起床となった原因に一つの心当たりがあった男が寝ていたベッドの布団をひっぺがすと、そこには黄色かかった白髪の少女がすうすう寝息を立てており、あろうことか男の腹の辺りに頭をのせて涎を垂らしていた。
男はこのまま見なかったことにして寝てしまおうかと一瞬だけ迷ったが、ため息を吐くと少女の頭を腹からどかしてベッドから出た。少女は何やら唸っていたが起きることなく惰眠を続けておりそれを確認した男は黙って枕だけ持って別室のソファへと歩いて移る。もう1時間ほど寝直そうかとも思ったが今しがた見た少女の寝顔がちらついてその気になれず、結局はソファに腰掛けて昨晩淹れてそのままだったコーヒーを一口すすると、すっかり冷めきって温めになったブラックコーヒーが増した苦みを伴って少し意識をクリアにしてくれる。一息ついて少女の涎がついたシャツを脱いで洗濯かごに放り込んで新しいシャツに着替えると再びソファに身を預けた所でテーブルの上に積み重なるDVDの山と数冊の本。どちらも手にせず男はボーっと横の窓の朝空を見る。ベランダに止まった2羽の鳥と目が合った所で、目の前のテーブルに置かれていた端末が通知が来たことを男に知らせて男の視界を引きもどす。通知は仕事の取引先からで、コーヒーの値段が上がるという只の通知だったが最後の数行に男は顔を顰めて返信する。
Dias 05:08
{タバコも輸入に制限が、近く値上がりするだろう。}
Aki 05:08
{どうにか出来ないのか?}
Dias 05:09
{無理だな。ウチは合法がモットーだ。}
Aki 05:10
{誰も法を犯せとは言ってない}
Dias 05:10
{勿論努力はしてみる でも期待するなよ。}
Aki 05:11
{頼む じゃあな}
Dias 05:11
{OK bye}
予期せぬ早起きに悪い報せが男を喫煙スペースとなっているベランダへと向かわせる。四方を完全に隣家に囲まれたスペースにポツンと突き出たベランダは男にとって大事な憩いの場でありこういう時に至っては聖域と言ってよかった。
気付けばいつの間にか1時間が経っており陽が登りだした朝の澄んだ空気と安いタバコに不味いコーヒーが男を限りなく幸福で満たしていたのだが、幸せというのは儚いもので、唐突な少女の声の前に崩れ去った。
「おはよう安喜(あき)、何してんのかな?」
笑顔でそう聞いてきた少女、錦木千束はどうやらすっかり起きたようで既に髪はいつものボブカットに整えて見慣れた赤色基調の制服に着替えていた。
「早起きの幸福を堪能してるとこだ」
明らかに怒りを秘めた笑顔を浮かべている少女に男は開き直って堂々と答えた。自分の家なのに何を遠慮するというのか、そんな必要は無い!と安喜と呼ばれた男が平然と答えた瞬間には彼の手からタバコがひったくられて灰皿へとさよならし、その灰皿すらも彼女の手でゴミ箱へと消えていった。
「なんてことを!まだ吸い終わって無いんだぞ!」
「なんてことを!じゃない!前も先生にダメって言われたじゃん!しかも臭うから!」
何という暴虐!何という傲慢!朝の唯一最大の愉しみを奪われた男は…………
「わかった?」
「いや....悪かった」
一瞬で降伏していた。少女は先程までの笑顔から転じて少し真剣な眼差しを男に向けている。安喜と呼ばれた男は未だこの少女の言う事には抗えなかった。特にこんな真剣な眼をする時には。
朝日が昇り街が動きだす時間帯。身支度を済ませて家を出る前にコーヒーを淹れた所で電話が鳴る、相手は二人の職場の店長だ。安喜が受話器を取る。
「おはようミカさん。どうしました?」
「朝早くに済まないが仕事だ、千束もそこにいるか?」
ミカと呼ばれた男の声に紛れて車の音、どうやら店ではなく外にいるらしい。
「いますよ。こいつまた入り込んでて、変わります?」
「いや、丁度いいから二人で来てくれ場所は地図で送った。昨日言ったビルだ。6階だがエレベーターが使えない。走ってもらうことになる。」
「了解。これから出ます。 千束!コーヒーはお預けだ。出るぞ。」
安喜は受話器を置いてコーヒーを飲もうとしていた千束を呼んだ。
「え~今飲むとこだったのに~。」
「あとで淹れてやるから」
「しょうがないな~。先生何だって?」
「仕事が早まったらしい。道すがら聞こう。」
二人はマンションを出て安喜の車に乗って目的地へと移動を始めた。
「状況はわかったけど、仲間人質にされるって、動き読まれてたんじゃないの?」
車内でミカに電話する千束が現状を聞いた所少しマズイ状況になっていることがわかった。武器商人の取引を押さえようとした作戦が破綻して銃を突きつけ合う膠着状態。おまけにセカンドのリコリスが一人敵に捕まり人質にされている。時間はあまりなさそうだった。
「現場の指揮は?」
「ファーストが取ってるが、様子がおかしい。」
安喜が聞くとミカからは曖昧な情報が流れてくる。リコリスがいくら訓練された兵士だとしても奇襲を前提とした装備と訓練が主体で軽歩兵以下の火力しかない。真正面からの銃撃戦では拳銃が主装備の彼女たちにとって長引くだけ不利になる。道理でこっちに声がかかるわけだ。何年経っても何度進言しても変わらない組織の不始末がこれだ。安喜はイラついて溜め息を吐いたがそれを察した千束に釘を指される。
「イライラしない。先生に言ってもしょうがないじゃん」
「わかってる。ミカさんに言ってるわけじゃない。」
目的地に着いた二人は車を降りて目的のビルへと向かった。6階だと聞いて今度は千束がため息を吐く。
「エレベーター使えないの~」
「ぼやいても仕方ないだろ。」
そう言って安喜は無線でミカを呼ぶ。
「今着いた、これから6階まで上る。現状は?」
『まだ睨みあってる。急いでくれ。着いたら知らせろ。』
恐らくは対岸のビルの屋上辺りで狙撃態勢を取っているであろうミカと連絡を終えた安喜は千束と共に外側の階段を駆け上がる。6階なので少し時間がかかったが二人とも陸上選手並みの体力はあるので迅速に到着出来た。
安喜は無線でミカに合図を送った。
「今着いた。突入するぞ。」
『了解!合わせる。やってくれ。』
「千束、スリーカウントで中に入るぞ!」
「オッケー」
二人は手にした拳銃を構えて突入態勢を取った。安喜が最初に入り千束が続く形だ。
「カウントスリー、スリー、ツー、ワン」
安喜のカウントが終わった瞬間にドアを開けて中に飛び込む。武器商人たちの側面から奇襲という形で入った安喜は成功を確信したが、左手に軽機関銃を構えたリコリスの姿が見えた瞬間にそれが間違いだと気付き慌てて身を返して続いて入ってきていた千束を押し倒す。
「え!?ちょーちょちょっ!」
戸惑う千束の声を無視して押し倒しつつ千束の盾になるように彼女の頭を両手でカバーして床に伏せる。
直後に機銃の轟音と銃弾の跳ね回る音が響き渡り、そして数秒後に止んだ。千束に覆いかぶさる格好になっていた安喜は一発もこちらに飛んで来なかった奇跡に感謝すると同時に体を恐る恐る起こして武器商人たちのいた方を見た。血の雨といって偽りない惨状となっていたが、どうやら人質となっていたリコリスは無事のようだった。返り血で真っ赤にはなっていたが怪我をしているようには見えない。その事にホッとしたもののさっきの機銃を構えたリコリスの方を見やると機銃を構えたまま犯人の方へと近付いていく。ターミネーターよろしくゴツイ銃を構えていることを除けば、黒髪が目を引く綺麗な子だった。
『無事か!?』
ミカから通信が入る。
「なんとか無事だ。」
『すぐに撤収しろ。店で会おう。』
「あいよ。千束、撤収するぞ。」
「......」
意識はあるようだが反応が無いので安喜は慌てて声をかけた。
「千束!おい大丈夫か!」
「え!あ、うん大丈夫。ありがとう。えっと、何が....?」
「いいから行くぞ、撤収だ。」
状況を把握できていない千束を助け起こして手を引いて上ってきた階段を駆け降りる。来て見て帰る、間抜けな話だがしょうがない。それにしても___
「まさかあんな脳筋がまだリコリスにもいるとはな」
安喜がぼやくとようやく状況の飲み込めた千束がハハハと笑う。何故だか少し顔が赤いが急いで階段を上ってまたこうして駆け降りているのだ。如何に体力があっても紅潮くらいするだろうと安喜は勝手に思っていた。
「まあ、人質の子が無事だったから良しとしないと。」
その通りといえばそうなのだが、まさかあの状況で機銃掃射という選択肢を取るとはやはりあそこでは何かいつも通りではないことが起きていたと思う方がいいだろう。
とはいえ、あの子.....
あの黒髪の少女を思い出して安喜は何故かまたどこかで会うような妙な予感がしていた。
車に乗り込んで二人の職場、喫茶店「リコリコ」に着いた時にはもう店の開店時刻を過ぎていた。とはいっても開店時間丁度に客が来るような店でも無いので二人とも焦ることなく店へと入る。
「おはようございまーす!千束しゅっきーん!」
元気にあいさつして入った千束に続いて店に入ると喫茶店のマスターにして仕事のボスであるミカが二人を迎えた。
「おはよう二人とも。すまなかったな今朝は」
「ミカさんの責任じゃありません。そもそもなんでもかんでも
安喜は正直にそう言った。そもそもリコリスたちの仕事は奇襲前提の治安維持活動だ。相手するのは犯罪者であってもアマチュアが大多数で、武器商人と武器の流入を防げなかった他の機関が本来なら片付けるべき仕事のはずだった。
「でもすごかったねー。ダダダダダダって。あれ?てかミズキは?」
まあ当のリコリスの一人が呑気にこんな調子なので安喜も今更どうこうを上に言ったりはしないが、心配はしていた。いつか絶対に痛い目にあうぞと。
「ミズキはもう少しで来るだろう。とにかく無事で何よりだ。千束、着替えてきなさい。安喜は厨房頼めるか?」
店の仕事服に着替えにいく千束を見送り安喜も仕事場である厨房に入る。
「もちろんですよ。丁度あいつにコーヒー淹れてやる約束もしてましたし。」
数分後、安喜が厨房でコーヒーを淹れて調理の準備をしていると、背後に気配を感じて振り返れば喫茶店の和装制服に着替えた千束が立っており、どうした?と聞いた途端に突然背中に抱きついてきたので安喜は少し面喰った。戸惑っている安喜の背中に顔を押し付けたまま千束は一言伝えた。
「今朝、守ってくれてありがとう。」
いつになく静かに、そう伝えた彼女はそれだけ言うと安喜から離れてニッと笑った。
その笑顔に安喜はとても落ち着く感じがして穏やかに微笑む。
「いつでも同じようにするさ。約束したからな。」
千束はうん、とだけ言うとホールからしたドアの開く音に応えて千束は厨房を出て行く。
「コーヒー淹れてあるぞ。」
千束の背中に一声かければ元気のいい返事。
何はともあれ今日もここは平和な喫茶店。そうあることが安喜はとても嬉しかった。
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公開可能な情報
花守安喜(はなもり あき)
20代前半 男性 髪:茶色(若干黒混じり) 瞳:青混じりの茶色 国籍:日本 他複数
喫茶店リコリコの厨房スタッフであり千束の同僚、千束との付き合いはミカに次いで長い。
最近の悩みは千束に家を占領されだしていることとタバコが値上がりしていること。
使用武器はベレッタM92F
錦木千束
喫茶店リコリコのホールスタッフ兼看板娘
であり花も恥らう17歳(自称)、元気で快活な性格だがずぼらな面もある。
凄腕リコリスでありながら不殺を掲げて活動する跳ねっ返りの彼岸花。
最近の悩みは安喜がタバコを止めないこと。
使用武器はカスタム品のデトニクスコンバットマスター
ミカ
喫茶店リコリコの店長でありDAの元教官でもある。愛称は先生。マッチョな黒人で和服を着ていなければ裏社会の人間にしか見えない、とは花守の弁。
千束とは彼女の幼少期からの付き合いで父と娘のような関係を築いている。
ここ数年は花守安喜に千束が懐いているのを微笑ましく見ているが、時々ちょっと寂しくなるらしい。
男親は複雑。
ミズキ
喫茶店リコリコのホールスタッフ。元DA情報部の呑んだくれだが過去の伝手を用いて情報面でのサポートを担当している。
悩みは常に結婚相手が出来ないこと。
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