ようこそクズヒモ男の教室へ   作:妄想癖のメアリー

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明日にはパソコン復活するかな……


心機一転

 

 

 

 その後、何事も無かったかのように教室へ戻ってきた俺を待っていたのは、今日の朝に喧嘩別れをしてしまった堀北さんだった。

 いつも通り、俺の斜め前の席で試験勉強をしていた彼女だったが、扉を開けると盛大に目が合った。ガッツリ見つめあってしまった。

 

「紡、後ろがつかえているぞ」

 

「う、うん」

 

 扉の前で立ち尽くしてしまったのか、綾小路くんが小さく抗議をしてきた。仕方なく教室に足を入れたが、上手く歩みを進めれている自信が無い。

 その間にも堀北さんはこちらを見つめては目を逸らし、見つめては逸らしを繰り返している。何とも可愛らしい姿だが、原因が原因のためそんなことを言っている余裕はない。

 

「……おはよう、堀北さん」

 

「……」

 

 席に付き、いつも通り挨拶をするが一切返事が返ってこない。いつもなら面倒くさそうにだが必ず返してくれたのに……。

 苦笑いを浮かべながら席に着くと、ポケットに入れたスマホが振動する。

 

『まだ喧嘩してるのか?』

 

 通知に書かれていたのは綾小路清隆の文字。そっか、昨日の喧嘩が続いていると思っているのか。これは好都合だ。

 

『堀北さんチャットあんま読まないから、面と向かって謝ろうと思って』

 

 とりあえず内容をはぐらかして伝えておく。本当の話を説明するには、堀北さん個人の話をしないといけないし、それは俺の本意ではない。

 

「お前ら席に着け。ホームルームを始めるぞ」

 

 タイミングのいい事に、茶柱先生が出席簿片手に教室に入って来た……しょうがない。話はホームルームを終わった後にしよう。

 

 

 

「ごめん綾小路君。今日は堀北さんと食べるから他の人と食べてくれる?」

 

「……他に食べる相手が居ないんだが」

 

 午前の授業が終わって昼休み。俺は堀北さんと一緒に昼食を済ませるため、心を鬼にして綾小路くんを突き放した。

 露骨に肩を落として、1人席に向かおうとする綾小路君を呼び止めたのは、意外にも堀北さん当人だった。

 

「別にいいわよ。綾小路君が一緒でも」

 

「本当か! ありがとう堀北!」

 

 そんな堀北さんの言葉に、嬉しそうに彼女の手を取ってブンブンと上下に振る綾小路くん。入学初日に比べて、随分と感情豊かになった彼を見ると、こちらも友達やってて嬉しくなるもんだ。

 

 そうして集まった俺達3人は、各々準備してきた昼食を机の上に乗せる。なんだかんだ言ってこの3人で机を合わせて食べるのは初めてではないだろうか? 

 

「堀北さん、昨日のことなんだけ「昨日のことは忘れてちょうだい。もちろん今日のこともね」……ど」

 

 俺の発言に食い気味に答えたのは、目を閉じてフッと息をついた堀北さんだった。このように相手の発言を遮って話す時は機嫌が悪い時だが、ほのかに朱が差した頬を見れば、それが別の意味であることは一目瞭然だ。

 

「そっか、分かったよ堀北さん。改めてよろしくね?」

 

「……ええ、早速だけど綾小路君。一つ頼まれてくれないかしら?」

 

『改めて』の意味をどう取ったのかは分からないが、恐らく俺の意図は伝わったとみていいだろう。

 そして話題は問題ごとに首を突っ込まないようにと黙々食事を進めている綾小路君へ。事なかれ主義をモットーとしている彼だが、友情を優先して面倒事に巻き込まれるという中々面白い男だ。

 今も堀北さんに話しかけられビクッと肩を震わせている。俺がいるから余程のことは起きないから安心していいのに。

 

「……何だ?」

 

「昨日バラバラになってしまった彼らを、もう一度集めて欲しいの。期限は放課後までに頼むわ」

 

「流石にキツくない?」

 

 余程のことが起きてしまった。あんなことがあった昨日今日でもう一度集めるだなんて、無理難題にも程がある。流石に紡君ストップを掛けさせてもらう。

 

「だそうだ。紡の判断に従ってオレは辞退させてもらう」

 

「女好きという噂が立っている紡くんが、『女の子を二人も部屋に連れ込んでいる』と知られたらどうなるでしょうね?」

 

「綾小路君なら余裕だよ。俺は君を信じてる」

 

「……おい」

 

 チョーっと勘弁して欲しい。もし美人の堀北さんが無理やり連れ込まれたとか言いふらしたら俺は死ねる自信がある。先輩達にも愛想を尽かされてお小遣いだって0になるだろうし。そんなのは嫌だ。ごめんね、綾小路くん。

 

「恨むぞ紡……」

 

「あら、綾小路君は友達の頼みも聞けないのかしら? 事なかれ主義に薄情も追加した方がいいんじゃない?」

 

 そうそう友達の頼みも……って。

 

「「友達?」」

 

 綾小路くんも同じことを思ったのだろう。2人の声が重なって響いた。

 

「……何よ。あれだけ友達がどうのこうの言ってた綾小路君が可哀想だから合わせてあげたんじゃない。別に深い意味は無いわ」

 

 否定はしないと……なるほどね。

 

「そうだな。友達なら仕方ないな」

 

 うんうんと頷きながら、納得したように語る綾小路だったが、吊り上がった口元を見ればその心内は手に取るように分かる。

 

「……文句があるなら言いなさい。その口二度と開けなくしてあげるから」

 

「何も無いぞ。ご馳走様でした」

 

 そんな俺たちの態度が気に食わなかったのか、どこからかコンパスを取り出してこちらを睨みつける堀北さん。

 常日頃彼女からの暴力を受けている綾小路君は、危機を察知したのか目にも止まらぬ早さで食事を終えた。向かった先は同じく食事を終え、教室に戻ってきたであろう櫛田さんの席。

 

「はぁ……すぐ調子に乗るんだから」

 

「いいの? 止めなくて。あいつ櫛田さんの手借りようとしてるけど」

 

 堀北さんの態度。そして今日聞いた櫛田さんの本性を踏まえ考えると、間違いなくこの2人は相性が悪い。犬猿の仲と言っても過言じゃないだろう。

 今まで櫛田さんの協力を拒んできた堀北さんからすると、綾小路君の櫛田さんありきの作戦は気に食わないはずだ。

 

「忘れてとは言ったけど、2人きりの時までとぼけなくていいわ。あなたは確かに言ったわよね、『Aクラスに上がるための手伝いならいくらでもする』って」

 

「言ったね」

 

「貴方だけに手伝わせて、私が全力を尽くさないのは不義理よ。Aクラスに行くのに、櫛田さんの協力は欠かせない。それを私個人の感情で拒むのはただの我儘、そう思っただけ」

 

 当たり前の話だが、この結論を出すのに一体どれだけの葛藤があっただろうか。堀北さんは、確かにあの夜から大きな成長を見せている。

 

「じゃあ、私は櫛田さんのところに向かうわ。あなたにやってもらうことはもう決めてあるから、後に連絡するわね」

 

 そう言って俺に背を向け、櫛田さんの元へ向かう堀北さん。慣れないことをするからか、その顔には緊張が浮かんでいる。

 

「堀北さん」

 

「……何かしら?」

 

 出鼻をくじかれた堀北さんが、不機嫌そうにこちらを振り返る。

 おれはその強ばった頬をつまみ、何時かのようにムニムニと動かした。跡が残らないように、優しくだ。

 

「緊張しすぎ。堀北さんなら絶対上手くいくから、肩の力抜いて、リラックスして行かないと」

 

「……」

 

 摘むだけではなく、手のひらで優しくサラサラの肌を円を書くように撫でる。

 それを無言で受ける堀北さん。そろそろ反撃が来そうなので手を離した時、彼女がとったのは予想の斜め上の行動だった。

 

「……えっ」

 

「意外とゴツゴツしてるのね、斎藤君の手って」

 

 なんと俺の手首を掴み、もう片方の手で指を絡めて来たのだ。俗に言う恋人繋ぎである。人生で何百回やったか分からない繋ぎ方だが、こうも唐突にやられると流石にドキッとする。

 そのままニギニギと俺の手のひらを揉む堀北さん。教室の端の方なのでまだ大丈夫だが、このまま続けているといつ他の人に見られるかわかったもんじゃない。

 

「……堀北さん?」

 

「あら、ごめんなさい。何せ『初めて』だったから」

 

 ……なんだその含みのある言い方。いっつもイタズラしてからかっていたが、逆の立場に立たされた気分だ。

 

「じゃあ、今度こそ行ってくるから、ありがとう斎藤くん」

 

 ……なるほどね。今まではプライドの皮に包まれた天性の人たらしが、少しずつ表に出てきていると……もしかして堀北さんは、魔性の女適性があるかもしれないな。

 

「これは……お兄さんも予想外だろうなぁ」

 

 ────ちなみに、無事メンバー集めは終わったらしい。

ぎこちなさこそあるものの、櫛田さんと須藤君にも謝罪したらしいし、本当に抜け目のない子に育っていて嬉しいよ俺は。

 

 

 




堀北って以外と積極的な事しますよね。入学して1ヶ月ちょっとの綾小路の額に手当てて熱測ったりしてましたし

ぶっちゃけ原作(小説・アニメ・漫画)見てます? 見てない方多かったら、試験の説明詳しく書きます

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