ようこそクズヒモ男の教室へ   作:妄想癖のメアリー

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あらすじの意図に気が付いた方が居て驚きました。



釣った者、釣られた者

 

 

 

 アドバイスデートなんて大層なことを言っているが、実際はただのデートと何ら変わりない。

 相手が見た目に関する相談やアドバイスを求めてきたらそれに応え、ただの愚痴などが目的だったなら相手の望んだ答えを言うだけ。簡単な仕事だ。

 

「あんたはどう思う? この学校のシステム。Dクラスなんだから不満とかあるでしょ」

 

 ……と言ってもこのタイプの子は今まで一人もいなかったけどね。

 クラス間闘争のストレスを発散させるために利用してくれる人が多いため、わざわざこの話をしてくる辺り何か裏があるのではないかと勘ぐってしまう。

 

「最初に聞いた時はびっくりしたよ? でもしょうがないって割り切ってるよ。学校生活も楽しいしね」

 

「……そう。私はまだ納得できてないけどね。こんなシステム。急にクラス同士で戦えなんて」

 

 どこか探りを入れる様に呟く神室さん。うーん、安請け合いすんじゃなかったな、これがもし他クラスの偵察とかだったら面倒だ、Aクラスの子だし。

 人伝のお客さんだと安心してた……ってのは表の理由。実際は可愛かったから、以上。

 

「それでも良いんじゃない? とりあえず退学さえしなければ何とかなるって」

 

 そんな楽観的な俺の言葉に、呆れたようにため息を着く神室さん。

 

「はぁ、こんな事やってるだけあって図太いのね、あなた」

 

 自覚はある。でも面と向かって言われると少々ムカつくので、ここでひとつアドバイスをしてあげよう。

 恥ずかしそうに手を離してくれと言われたため離れていたが、隣を歩く神室さんにスっと近づきその手を取る。

 

「ちょ、何してんの!」

 

「アドバイス1、デートで図太いとか言わない。それにもうちょっと楽しそうな表情しないと」

 

 あたふたする神室さんだが、俺は容赦なく指を絡める。緊張からか指がピンと伸びていたため、簡単に恋人繋ぎをする事ができた。

 

「デートって……私たち、ホントのカップルじゃないで「だめだよ? 冷めること言わない」んっ……」

 

 余計な事を言おうとした神室さんの唇に、人差し指をスっと当てる。驚いたように目を見開いた神室さんだが、次の瞬間には顔を赤くし目線を逸らしていた。

 こんなウブ反応を見せる彼女を微笑ましく思いながら、俺は手を握り語りかける。

 

「ほら、洋服見に行くんでしょ? 今日は一緒に楽しもう」

 

「……うん、分かった」

 

 そうして再び歩き出す俺たち。繋いだ手は相変わらず強ばったままだが、それ自体を拒否されることは無かった。

 そして同時に1つ、確信したことがある。

 

「あ! これとか凄い似合うと思うよ!」

 

「そ、そう?」

 

 ────彼女の目的は俺とのデートではなく、全く別の所にあるということだ。

 

 

 

 その後順調にデートを終えた俺たちは、ケヤキモール上層階にて夜食をとっていた。

 窓の外からは東京の街の灯りが遠く見える。可愛い女の子と夜景を見ながらディナーという、中々に乙な体験だ。

 目の前に広がる美女+夜景の福眼を堪能していると、神室さんが気だるげに語りだした。

 

「……あと3年もここに居なきゃ行けないのね、私たち」

 

「高校の3年なんてあっという間だと思うよ? それに悪い場所でもないし……お小遣いがあればだけど」

 

 審議明後日だよな。早くポイント戻ってくれ~。

 

「ふふっ、何それ。私のポイントで食べてるくせに」

 

 口元に手を当て上品に笑う神室さん。初めて会った時のぎこちない雰囲気もどこかに行ってしまったようで、非常に楽しげな様子だ。

 

「ゴチになりまーす」

 

「全く……調子いいんだから」

 

 刺々しい言葉だが、その裏側にある好意が手に取るようにわかる。楽しんで貰えて何よりだ。

 それを最後に俺たちの間には数秒の沈黙が流れる。何か言いたげな神室さんだったが、喉を鳴らし意を決して口を開いた。

 

「……ねぇ、あんたのこのサービスって他何人くらいにやってるの?」

 

 来た、大体デートコース終わりの子達はみんなこれ聞いてくるんだよな。いくらレンタルとは分かっていても、本当に付き合えるかもしれないと思ってしまっているんだろう。

 こういう時はキッパリ可能性がないことを伝えておく。拗らせると厄介な事になるからな。そうなる前に手を引くのが正解だ。

 

「うーん……10人とちょっとかなー。君含め、皆大事な『お客さん』だよ」

 

「……そう」

 

 あ、ちょっと寂しそうな顔した。まぁしょうがない。本当に付き合いたいならこういう形じゃなくプライベートで仲良くなってくれ。

 俺はレンタル彼氏と違ってワンチャンあるぞ、まずは有栖ちゃんの壁を突破してからだな……多分無理だけど。

 

「じゃあ大変なんじゃない? あんたに本当に好きな子ができた時とか、付き合う事になった時とかさ」

 

 ぶっきらぼうに聞いてくる神室さん……痛い所突いてくるなぁ。

 そこを追求されると困るため、お茶を濁しておく。

 

「その時はその時だよ。俺はこのサービスを受けた人が他の形で幸せになれることを祈ってる。神室さんだって、今日一日で色々分かったこと、あるんじゃないかな?」

 

 荷物を入れるためのカゴに入っている複数の紙袋に目を通す。Aクラスなだけあってお金は余ってるみたいだ。似合う服を紹介されてテンション上がった神室さんは可愛かったぞ。

 

「それは……感謝してる。でもその話はまた別でしょ?」

 

 鋭いなぁ、さすがAクラスなだけある……Aクラスか、マジで安請け合いするんじゃなかったわ。多分クラスの人に言ったりはしないだろうが、もしも有栖ちゃんがこれを知ったらちょっと面倒だ。

 いくら付き合ってないとはいえ、中学でママ活してたってバレた時はおっかなかったし……

 

 納得してないといった表情をする神室さん。そこから誤魔化しきれないことはよく分かった。

 仕方が無いので、俺は本心を彼女に打ち明けることにした。嘘偽りのない言葉だ。

 

「好きな子は居るよ、もちろんお客さん以外でね。昔からの幼馴染なんだ。俺はその子の幸せの為なら、本当に死んでもいいと思ってる」

 

 冗談みたいな話を本気で語る俺に対して、驚いたように目を丸くする神室さん。……やっちまったな。こりゃ引かれたか? 

 

「そう、なんだ……馬鹿みたい、私

 

 辛辣な言葉が帰って来るかと思ったが、彼女は自嘲的に笑い語った。

 

「そんなに好きなら付き合っちゃえばいいのに。どうせあんたなら出来るんでしょ?」

 

 何故か確信を持ったように語ってくる神室さん。そんなに今回のデートは良かったのかーなんてふざけてみるが……どうにも上手く思考が回らない。

 何とか言葉を紡いで誤魔化そうと試みる。

 

「あはは、どうだろうね?」

 

 笑って誤魔化したが、自分の頭はそう簡単に誤魔化せるわけではないらしく、余計なノイズが頭に響き渡る。

 

 ────俺みたいなゴミクズが付き合っていい相手じゃないんだよ、有栖ちゃんは。……今も尚、心に空いた穴を埋めるために女の子を侍らせてるクズ男がね。

 そうさ、間違いなく有栖ちゃんは俺と付き合ったら後悔する。周りの人間をことごとく不幸にしてきたこんな男よりも、良いパートナーを見つけられるはずだ。

 

「ちょっと、顔色悪いけど大丈夫?」

 

「……ああ、大丈夫」

 

 何してんだ、金貰ったならちゃんと役割果たせよ。そんなことも出来ないのか、俺は。

 

 

 

 ────思考がうまく回らない。

 

 

 

「ごめん、ちょっとお手洗い行ってくるね」

 

「あ! ちょっと……!」

 

 心配そうに手を伸ばす神室さんを尻目に、俺は早足でトイレへと向かう。

 

「う゛っ……おぇ」

 

 そして多目的トイレに入り鍵を閉めた後、俺は便器の中に今日食べたものを全て吐き出してしまった。

 

「……はは、ディナーが台無しだな」

 

 洗面台の水で口の中を洗い流し、気付けに顔を2回ほど洗う。

 そしてそのまま鏡に映る自分の顔を見て、俺は自身に暗示をかけるように呟いた。

 

「頑張れクソ野郎。水も滴るいい男じゃねぇか(なんて醜い面してやがる)

 

 そのまま顔に付いた水滴をペーパーで拭った後、俺は落ち着いた足取りを意識し神室さんの元へと戻った。

 

「あっ……」

 

「ごめんごめん。時間もいい感じだし帰ろっか?」

 

「……うん」

 

 気まずそうにこちらを見つめる神室さんに言葉をかける。よし、上手く笑えてるな俺。その調子で頑張れ。 

 

 

 

 ────────────────

 

 

 

「じゃあ今日はここまで。ポイントはもう貰ってるから気にしなくて大丈夫! 楽しかったよ、神室さん」

 

 寮近くの公園のベンチに座った私達、今日はここで解散らしい。

 斎藤は先程と同じく、人好きのする笑顔で語りかけて来る。何と言うか、さっきのあの表情は幻だったんじゃないかと思うほど、その笑顔は自然なものだった。

 

「ごめん、さっきは変なこと聞いて」

 

 この一言こそ余計かもしれないが、謝らずには居られない。それほどまでに、アレは見る人の心を痛めるものだった。

 

「ん、何の話?」

 

「何でもない。私も……結構楽しかった」

 

 全く覚えていないと言った雰囲気の彼に、思わず言葉が詰まってしまう。そこまでして誤魔化したいものなのだろうか? 

 

「そっか、じゃあ良かった! 俺はちょっと寄ってくとこあるから。じゃあね神室さん」

 

「うん、おやすみ」

 

 笑顔で小さく手を振り、背を向けて歩き出す斎藤。

 その背に名残惜しさを感じた自分に呆れながらも、カバンに入れたスマートフォンを取り出し、『坂柳有栖』と書かれた通話画面を開く。時間にして6時間、バッテリーもギリギリだ。

 

「聞こえてた? あいつが言ってた幼馴染。あんたのことでしょ?」

 

「ふふ、そうみたいです。全く罪な男ですね紡くんは」

 

 電話越しに上機嫌な声が聞こえてくる。やっていたことは単純。盗聴だ。

 本当は尾行が良かったらしいが、さすがに1人で歩き回るのは体力的にきつい。そのため坂柳は、部屋の中で私たちの会話を電話越しに聞いていたということだ。

 

「それにしても、Aクラスの女子というのに無警戒とは、紡くんにしては珍しいミスですね」

 

「あんたなら、知った瞬間問い詰めてくると思ってんじゃない? こんな回りくどい事せずに」

 

 おかげで大変な目にあった……まぁ、お金はこいつが持ってくれたし、楽しかったからいいけど。

 

「それにしても女々しい方ですね。何をそんなに躊躇っているのでしょう?」

 

 そして話題は斎藤へと移る。

 

「あんたも面倒くさい男に惚れたわね。7歳からの付き合いなんでしょ、何があったわけ? あれは筋金入りっぽいけど」

 

 あの一瞬だけ見せた絶望の表情からして、相当根深いトラウマがあるはずだ。

 興味半分に聞いてみたが、坂柳の返答は私の予想の斜め上を行くものだった

 

「さぁ、なんでしょうね?」

 

「……何、全く知らないの?」

 

 なんと、彼女は彼の過去について何も知らなかったのだ。

 言葉とは裏腹に自信満々な坂柳。なんともチグハグな様相だったが、そのまま坂柳は意気揚々と語る。

 

「ええ、バカな紡くんがたった1人で何を抱えているか……そんなこと、私の知ったことじゃありません」

 

 その声色には喜びや興奮、そして少しの怒りが込められていたように感じる。

 

「私があの時どんなに救われたか……紡くんは全く理解してない様です。それならば、分かるまで教え続けて差し上げましょう。だって────」

 

 

 

 

 

 

 

「────釣った魚にエサをあげないなんて、許されるはずがないんですから」

 

 

 





さて、どちらが攻略される立場なのでしょうか?

ぶっちゃけ原作(小説・アニメ・漫画)見てます? 見てない方多かったら、試験の説明詳しく書きます

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