ようこそクズヒモ男の教室へ   作:妄想癖のメアリー

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主人公兼ヒロインが多すぎるんですよね、この作品

更新される時間じゃないのにランキングから消えてるのは何でなんだろう?




微笑み

 

 

 

 いよいよ、須藤とCクラスの話し合いまであと1日。堀北の協力で佐倉という目撃者を見つけることができ、紡や平田、櫛田の3人を中心として多少クラスとしてまとまりを得たと言えそうだ。

 しかし、それらが決定打に欠けることは明白で、須藤を無実にするのはまだ難しい。 この審議のどこにラインを引くかで大きく戦い方が変わってくる。

 

「それにしても今日もまた暑いな……」

 

 地球温暖化問題を一番考えるのは、空調の効いた建物を出た瞬間だ。

 これから8月にかけて毎日苦しめられるかと思うと、自然とテンションが下がる。学校までの数分間肌を焼く痛みに耐えていると、軽い衝撃と共に後ろから声が聞こえてきた。

 

「なーに辛気臭い顔してんの? 綾小路君」

 

「紡か……こんな遅くに珍しいな」

 

 オレの肩に手を置き笑顔を浮かべるのは、つい先日衝撃の事実が発覚した我が親友。斎藤紡であった。

 

「ちょっと夜更かししちゃってねー。有栖ちゃんとの朝食もお預けなんだ」

 

 ポリポリと頬を掻きながら、苦笑いをうかべる紡。いつもホームルームギリギリに家を出るオレとは違い、紬はかなり余裕を持って登校してるため、こうして隣並んで通学するのは初めてだ。

 

「昨日はどうだった? 上手くやれた?」

 

「ああ、おかげさまでな。櫛田の恩恵は凄く大きかったが」

 

「なら良かった」

 

 心底安心したように、うんうんと頷く紡。

 ……そこまで心配されてたとなると嬉しいやら悲しいやら、複雑な感情が湧いてくるものだ。

 そこから数分ほど歩き校内に入る。いつもと違うことに気が付いたのは、下駄箱から少し先にある階段の踊り場の掲示板だ。

 そこに、須藤とCクラスに関係する情報を持つ生徒を募集する貼り紙がしてあったのだ。

 

「これは……」

 

「凄いな。ホントにありがたい話だよ」

 

 隣で紡が驚いたように目を見開いている。

 どうやら助っ人が動き出してくれたらしい。このような形の策を検討していなかっただけに、紡の言う通り非常にありがたい。

 

「これは、ちゃんと勝たなきゃダメだね。綾小路くん」

 

「……ああ、そうだな」

 

 しみじみと語る紡に同意する。誰かが自分たちのために何かしてくれたという事実は、心を温かくするものなのだろう。

 一通り貼り紙の内容に目を通し感心していると……。

 

「おはよー綾小路くん、斎藤くん」

 

 後ろから、通学してきた一之瀬に声をかけられた。

 

「おはよう、一之瀬さん」

 

「今貼り紙を見てた。もしかしてこれは一之瀬が?」

 

 貼り紙に視線を送ると、一之瀬は興味深そうにその貼り紙に目をやった。

 

「へえ。なるほどなるほど。こういう手もありだね」

 

「え? 一之瀬じゃなかったのか」

 

「これは多分───あ、いたいた。おはよう神崎くん」

 

 一之瀬は手を挙げ、一人の男子生徒を呼び止めた。

 一之瀬に気づいた男子生徒は、静かな足取りで近づいてくる。

 

「この貼り紙、神崎くんだよね?」

 

「ああ。金曜日のうちに用意して貼っておいた。それがどうかしたのか?」

 

「ううん、彼が誰がやったのか知りたがってたから。あ、紹介するね。Bクラスの神崎くん。こっちはDクラスの綾小路くん、斎藤くんの紹介はいいでしょ?」

 

「久しぶり神崎くん。コイツ友達少ないから仲良くしてやってくれ」

 

 一言余計だぞ。

 

「ああ。神崎だ、よろしく」

 

 オレは差し出された手を取る。

 

「どう神崎くん。有力な情報はあった?」

 

「残念ながら使い物になりそうな情報は無かった」

 

「そっか。じゃあこっちも例の掲示板見てみるね」

 

 そう言って携帯を取り出す一之瀬。昨日その話をしたばかりなので、その言葉が何を意味するのか把握するのは容易だった。

 学校のホームページから掲示板に飛ぶと、そこには確かに目撃者を募る書き込みがあり、閲覧者数まで見られるようになっていた。

 

「こっちでも報酬にポイントって、さすがに悪いから払うよ」

 

 申し訳なさそうに眉を八の字にする紡。俺も同意見だ、情報提供も呼びかけてもらって、その上ポイントまで払わせるという現状は、あまり居心地のいいものではない。

 

「ううん、ポイントのことなら気にしないで。私たちが勝手にやってることだから。それに今の手ごたえだとちょっと新しい情報は難しいかもね。……あ」

 

「どうした?」

 

「書き込み、2件ほどメール来てるみたい。少し情報があるって」 

 

 一之瀬は携帯画面を確認する。 

 暫くメールを読んでいた一之瀬だったが、読み終えたのか少し笑みをこぼす。

 

「こんな感じなんだけど」 

 

 文章をこちらにも見えるよう携帯を傾ける。

 

「例のCクラスの一人、石崎くんは中学時代相当な悪だったみたい。喧嘩の腕も結構立つらしくて地元じゃ恐れられてたんだって。同郷の子からのリークかな」

 

「わーお、こりゃすごい情報だ」

 

「確かに興味深いな」

 

 オレも2人と同様、非常に興味深く面白い情報だと思った。須藤にやられた3人組は、全員ごく普通の生徒だとイメージしていた。

 けど喧嘩慣れしている人物がいるなら話は別だ。残りの二人も運動神経はバスケ部だから悪いってことはないだろうし。その3人が一発も殴れず返り討ちに遭う。明らかな不自然さを感じずにはいられない。

 

「と言ってもこれだけで無実に持ってくのはキツイだろうね。さて、どうしようか? 綾小路くん」

 

 隣でうんうんと紡が唸っているが、期待に応えれるような返事は思いつかない。

 

「それは今日皆で集まって話そう。生憎だが、具体的な解決策は思いつかない」

 

 実際は手がないこともないんだが、今それを言うのは宜しくないため口を塞いでおく。

 

「とりあえず、情報くれた子にはポイント振り込んであげないとね。あ、でも相手は匿名希望か……どうやってポイント譲渡すればいいんだろ?」

 

「あ、俺教えるよ。左上にID番号があるから────」

 

 教えようと思ったが、その役目は紡が果たしてくれるらしい。

 

「出来た! ありがとう紡くん!」

 

「礼を言うのはこちらの方だよ。この件が落ち着いたらなにかお礼させて欲しいな」

 

「ああ、期待してるぞ」

 

 穏やかに語り合う3人だったが、今一瞬見えた一之瀬の携帯に出ていた画面のある部分が脳裏に焼き付いて離れない。

 

 ────何をどうすればあんなことが現実的に可能なのか……堀北の目指すAクラス、一之瀬たちはそれを阻む大きな障害になるのかも知れないな。

 

 

 

 

 

「おはよ! 綾小路くんっ!」

 

「お、おう。おはよう」 

 

 今日はいつにも増して明るく元気な櫛田がオレに挨拶をしてきた。その勢いと眩しさに反射的にのけ反ってしまった。

 

「斎藤くんもおはよう!」

 

「おはよう櫛田さん。どうだい? 綾小路くんは上手くやれていたかな?」

 

 会って早々その話とか、どれだけオレは心配されてるんだ……? 

 

「うん! 昨日はすっごく助かったよ! 斎藤くんが選んだ服も似合ってたし!」

 

「お、でしょ? 元がいいからね、綾小路くんは」

 

 ホッ……良かった。その言葉が本心かは分からないが、現時点で悪印象は抱かれていなかったらしい。

 

「また、今度一緒に遊ぼうね」

 

「お、おう」 

 

 なんて社交辞令と分かりきった言葉にもちょっとドキッとしたり。一昨日の服選びといい、充実した週末を送れたな。

 

「休日は櫛田さんと一緒だったの?」

 

「そうなんだよ。その前日には紡と服を買いに行ったぞ! 2人でな」

 

 何時になくハイテンションで堀北へ返す。ああそうさ、ちょっと自慢したかったのは否定しない。

 散々オレをコミュ障だ何だ馬鹿にしてきた仕返しだ。紡に惹かれている堀北は、そんな彼が俺と2人でお出かけをしたという事実に打ちひしがれるだろう。

 

「そう」

 

 ふふふ……悪いな堀北。お前は捕食者側から被捕食者側に回ったんだよ。ちょっと面白いので、このまま惚け続けてからかってみよう。いい反応が見られるかもしれないし。

 ……女子をイジって反応を楽しむ紡を悪趣味だと思ったことがあったが、これは案外ハマるものかもしれない。

 

「それがどうかした……か……」

 

「……」

 

 拳の1発でも飛んできそうだったので堀北の方を一瞥したが、そこには今まで1度も見た事がない表情の堀北が居た。

 

「……ちょっとちょっと

 

 今まで静かにことの成り行きを見守っていた紡が、オレの肩をちょんちょんと叩く。

 そしてそのまま堀北に背を向け、顔を寄せてきた紡が小さく語りだす。

 

「やりすぎ。あとは俺に任せて」

 

「? ……おう」

 

 特に怒ってはいないようだが、何がやりすぎなのだろうか? 

 振り返って堀北の前の席に座った紡は、そのまま机に肘を置いて小さく語り出した。まるで小さな子供をあやすような仕草が板についていて面白い。

 

「堀北さん? ────」

 

 どんな事を話すのか後学のために聞いておきたかったが、櫛田がちょんちょんと肩を叩いてきたためそれも叶わない。

 

「ちょっと来て」

 

 廊下まで連れて行かれると、櫛田はちらちらと教室の中を窺いつつ言った。

 

「なんかものすごく新鮮なものを見た気がするね。あんな顔もするんだ堀北さんって」 

 

 櫛田には堀北の表情の意味が分かったのか、驚きと喜びを見せる。

 

「新鮮? 不気味……やや怒ったような堀北だったと思うが……」

 

「違うよ。あれは私を誘ってくれなくて寂しい、疎外感を感じる、って奴だね。多分2人で服を見る時に誘われなかったのが原因だと思うなっ」

 

 あの堀北が、何故わざわざオレの服を見るのに付いてくるんだ? 紡と一緒に出掛けたかったなら分かるが、別の日に誘えばいいだろうに。

 そんなオレの疑問を感じ取ったのか、櫛田は楽しそうに笑顔で語り出した。

 

「3人で出掛けたかったんだよ、きっと」

 

「……そんな事あるか? あの堀北だぞ」

 

「うん! だって綾小路くんと斎藤くんと3人で話してる堀北さんって、周りから見たら楽しそうなんだよ?」

 

 それ以上語ることは無いといったように教室に戻る櫛田。オレも続けて入ると、何処か拗ねたように窓の外を見る堀北がいた。心無しか顔が赤くなってるように感じる。

 

「あ、やっと戻ってきた!」

 

 その前には満面の笑みを浮かべる紡。……なるほど、またどうせ堀北をイジり倒したとか、そんな所だろう。

 そう思いながら自分の机に戻る。何時もなら皮肉の一つでも飛んで来るものだが、肝心の堀北はノックダウンしている。

 

「今度の休日、空けといてね綾小路くん」

 

「ん、また何処か行くのか? 心配いらなくとも、俺はいつでも暇だぞ」

 

 ……自分で言ってて悲しくなった。だってしょうがないじゃん、誘ってくれる人が紡しか居ないんだもん。

 それを聞いた紡がニッコニコでサムズアップをする。月曜の朝からテンション高いな……

 

「なら安心だ。今度俺と堀北さんと3人でどっか出掛けようぜ? 堀北さんが行きたかったらしいよ?」

 

「……別に、そうとは言ってないでしょ」

 

 どうやら櫛田が言っていたことは正しかったらしい。それを自覚した途端、先程の自分の行いがいかに罪深いものかを悟ってしまった。

 ……ごめんな堀北、須藤の件が落ち着いたら目一杯遊ぼう。

 

「……今すぐそのニヤケ面を止めなさい。ぶつわよ」

 

「おおー珍しいね、綾小路くんが笑うの」

 

 ハッとなったオレは、自らの口元に手を当てる。

 

 

 

 そこには確かに、ほんの少しではあるが吊り上がった口元の感触があった。

 

 

 

「……オレだって、笑う時は笑うぞ」

 

 

 

 どうやらオレは、たった2ヶ月で自然と笑えるようになるほど、こいつらに惹かれているらしい。

 

 

 

 

 

 ────その事実はオレにとって、たまらなくむず痒くて……そして心地良いものであった。

 

 

 





綾小路「心地良さを覚えた自分に驚いたんだよね」



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この3連休までに無人島編まで行って、R18も書きたいなぁ……

ぶっちゃけ原作(小説・アニメ・漫画)見てます? 見てない方多かったら、試験の説明詳しく書きます

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