ようこそクズヒモ男の教室へ   作:妄想癖のメアリー

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初めての堀北パートです。原作を参考に地の文書きましたが、違和感があったら直します!



取引

 

 

 

『────いいよ。頑張ったご褒美がそれでいいなら喜んで。その代わり俺のことも紡君って呼んでね?』

 

つ、紡くん……

 

 斎藤君に握られた左手の感触が、今もなおずっと残っている。私は、それをかき消すように呟いたが、どうやら逆効果だったようだ。

 

「はぁ……慣れないわね」

 

 ただ名前を呼んだだけなのに、なぜこうも高揚してしまうのか、自分でも分からなかった。

 今わからないことは後で考えればいい。それよりも、私は目先の事思考を集中させることにした。

 

『そうかあ? 水は凄く透き通ってるし、天然水のようなもんだろー』

 

 遠くから不満げな池君の声が聞こえて来る。早速問題発生のようね。

 

「……しっかりしなさい。皆の期待に応えるのよ」

 

 そう自分に発破をかけ、私は何回見たか分からない池君と篠原さんを筆頭とする、男女の争いが行われている場所へと向かった。

 

「どうかしたのかしら?」

 

「あ、堀北さん! ちょっと堀北さんからも言っちゃって! 池ったら川の水飲もうとしてるんだよ!」

 

 篠原さんに話しかけると、彼女は私を救世主か何かと思っているかのような瞳を向けて来る。

 

「何だよ皆。何が不満なんだよ。折角見つけた川を有効活用しない手はないだろ!」

 

 池君もその発言でヒートアップしたのか、先ほどよりも語気を強めて言い放った。

 

「じゃああんたが試しに飲んでみてよ」

 

「は? ……別にいいけどさ」

 

 そんな売り言葉に買い言葉で、池君は手ですくって川の水を飲んだ。

 

「かー! キンキンに冷えて気持ちいぜ! うめぇ!」

 

「うわマジドン引き。無理無理、そんなの飲むなんて。気持ち悪い」

 

「はあ!? お前が飲めって言ったんだろ篠原!」

 

 その行動が事態の解決に役立つことは無く、逆に状況は悪化していくばかり。……少しは理性的に話を進められないのかしら。

 

「池君。あなたは何故川の水が飲めると思ったのかしら?」

 

 ただ見た目が透き通ってて綺麗だからという理由だけでは、あそこまでスムーズに川の水を飲むことはできないだろう。私は池君が水を飲めると確信した理由を知りたかった。

 そんな私の質問に対して、池君は拍子抜けしたように答えてくれた。恐らく批判の言葉が飛んでくると思っていたのだろうけど、そのつもりは一切ない。

 

「え? あー……小さい頃よく家族と一緒にキャンプしてたからさ。川の水飲んだりするのに抵抗ないんだよな。水源が綺麗で衛生的なことくらい見ればわかるし、飲んじゃダメなら注意書きとかあるかなって」

 

「なるほどね」

 

 その言葉に納得が言った私は、これ見よがしに川へと近づいた。

 

「え……おい!? 何してんだよ!」

 

 次の瞬間、私がとった行動に驚いたように池君が声を上げた。

 

「あなたの言う通り、()()()()()()()()()よ」

 

「いや、そういう事じゃねえだろ!? 飲もうって言ったけどさ……そんなサラッと飲むか普通!」

 

 篠原さんたちも、まさか私が飲むとは思わなかったのか、驚いたようにポカンとした表情を浮かべている。

 

「私は池君の話で、キャンプ場に流れている川の水は飲める場合があると認識した。そうしたら問題は、ここがそれに該当するかどうかね。ここは学校が指定したスポット、もちろんここを占有した場合、川の水を飲もうとする生徒は居ることは想定済みのはず。注意書きもせずに、汚れた水を放置するのは考えづらいと私は考えた。それだけよ」

 

「お、おぉー」

 

 感嘆の声が池君だけではなく、クラス全体から聞こえて来る。……恥ずかしいわね、これ。斎藤君も平田君もよく顔色変えずにできるわ。

 

「で、でも川の水だよ? 学校だってそこまで考えてないかもじゃん!」

 

 しかしいくら水が綺麗と言っても、川の水だという事実には変わらない。篠原さんはそこに抵抗を感じているらしい。

 

「篠原さんがそう思うのも分かる。私も彼の話を聞くまでは抵抗があったもの……だから無理強いをするつもりはない。飲料水として使う以外にも、水の使い方は無限にあるしね」

 

 実際に理論を押し付けて、すぐに割り切れというのも難しい話だろう。でもこれだけは言っておかなければならない。

 不安げにこちらを見つめる篠原さんに向かって、私はもう一度力強く言い放った。

 

「私にはAクラスに行くと言う夢がある。だからそのための努力を惜しむつもりはない。でもその努力を押し付ける気もないわ。だから池君も、まずは抵抗が無い人だけで飲んでみるのはどうかしら? 無駄に争うより、そちらの方が良いと思うんだけど」

 

「……分かったよ」

 

 自分の行いを振り返り気落ちする池君。どう声を掛けようか悩んでいた私だったが、その必要は無くなった様だ。

 

「俺も飲むぜ。お前らには散々迷惑かけたしな」

 

「僕も飲むよ。皆! 僕達と一緒に飲んでくれる人は居ないかい?」

 

「お前ら……」

 

 須藤君、平田君と続いて男子を中心に手が上がっていく。

 

「私も飲んでみる!」

 

「いいんじゃない? あたしも飲むよ。堀北さんなんかかっこよかったし」

 

 ……川の水を飲むのと、私がかっこよかったことに何の関連性があるのかしら。

 まあいいわ。櫛田さんと軽井沢さんという、Dクラス女子の中心でもある2人が名乗り出れば、他の人たちも影響されるだろうし。

 

「く、櫛田さんも軽井沢さんも本気なの!? ……じゃあ、私も飲もうかな」

 

 篠原さんもそれに続く形で、結局Dクラスの生徒は全員川の水を飲むという選択を取った。……結果としては良かったし、話を持ち掛けた私が何を言うんだとなるかもしれないけど、すこしだけ複雑ね。

 ────平田君が呼びかけてから男子のほとんどが、女子でさえ櫛田さんと軽井沢さんの2人に続く形で全員が飲むことになった。今ここに居ない斎藤君もそうだけど、D()()()()()()()()()()()()()()()()()()節がある。もしその支柱が外れれば、たちまち統率が取れなくなる可能性が高い。

 

「……そんなこと、まずあり得ないと思うけど」

 

 

 

 そんな最悪の想像が現実になるだなんて、私は思ってもみなかった。

 

 

 

「────随分と早く動き出したと思ったら、何下らねえことで言い争ってんだ? 不良品ども」

 

「君は……Cクラスの子が何の用かな? 龍園君」

 

「テメェら雑魚に用はない。斎藤の野郎を呼んで来い。『取引』だ」

 

 

 

 ────────────────

 

 

 

「斎藤ー! 大変だ! 龍園が、龍園の奴がお前を出せって!」

 

 どうも。何故かあった事もないCクラスのリーダーにお呼ばれされてるヒモです。もしかしてモテモテな俺の噂を聞いて、口説きに来たのかな? 生憎俺にそっちの気は無いぞー。

 

「馬鹿なこと言ってないで早く行ってこい」

 

「はーい」

 

 怒られちゃった、ぴえん……と、そんな馬鹿な思考は隅に追いやって。俺は呼びに来てくれた池君についていく。

 やけに焦った様子だったが、一体どんな問題ごとを持ち込んでくれたのか。そして少し歩いた先に見えたのは、たった一人でDクラスの皆と睨み合う龍園君の姿。肝っ玉座ってんなー。高校生とは思えんわ。

 

「初めましてかな? 龍園君。須藤君の件は世話になったね」

 

 挨拶は大事だからしっかりと行っておく。嫌味? 知らんよそんなもの。

 

「さあ? 何のことだろうな。お前の事はよく聞くぜ斎藤。良い噂が立ってるからな」

 

「へぇー。何? どんな噂」

 

 まぁまぁまぁまぁ……言わなくてもわかるよ。イケメンランキング一位の俺に抜け目は無い。

 そんな風に心の中でドヤ顔をかましていると、龍園君は意地の悪い笑みを浮かべて言い放った。

 

「『Dクラス最低のスケコマシ野郎』だってな」

 

「は?」

 

 何やねんその噂……でも間違ってないからなんも言い返せない。

 

「ククク、まあそんな話はどうでもいい。お前らにいい話を持ってきてやったんだ。感謝しろよ?」

 

 自分から振っといて何がどうでもいいだよ。ったく、これから取引する相手に挑発するとは、用意周到なんだから大胆なんだかわからんな。

 

「取引する相手に挑発はしない方が良いんじゃない? ()()()()()()()()()()()って言ってる様なもんだと思うんだけど」

 

「……ふっ、流石あのカメラ作戦を立てただけはあるな。後ろに立って虎の威を借りる狐共とは違うようだ」

 

「何だと! なんか言ってやれ! 斎藤」

 

「……恥ずかしいから口を閉じててくれ、池君」

 

「はい、すいません……」と言って口を閉じる池君。龍園君の言ったことそのまんまじゃん、何してんだ全く。

 そんなアホみたいな漫才で緩和してきた空気を、もう一度引き締めるように俺は龍園君に向かって言い放つ。

 

「で、何? 取引って」

 

「簡単な話だ。『俺達Cクラスが購入した物資を、200ポイントで買い取れ』」

 

 確かに簡単な話だが、余りに衝撃的な内容にクラス全体がざわめきだした。……物資の買い取りか、一体何が目的だ? 

 

「……クラス間のポイントのやり取りは出来ないと思うんだけど」

 

「ああ。だから俺は代案を考えた。来月から卒業するまで、Dクラス全員200cpt分のプライベートポイントを俺達Cクラスに支払う。これで妥協してやる。お前らは物資を購入するポイントを温存でき、俺達は多量のプライベートポイントを手に入れることができる。悪くない話だろ?」

 

 確かに悪くない話だ。200ポイントという条件設定も、よく考えられている。

 しかし、この案をすんなり受け入れられない理由が一つある。

 

「話にならないな。この条件を呑んだ場合、俺達Dクラスは無条件で200ポイント分の物資を使用することになる。もっと切り詰められる可能性を、みすみす捨てるわけにはいかない。第一お前らCクラスの物資はどうするつもりだ。まさか残りの100ポイントで賄うつもりじゃないだろうな?」

 

 声を上げたのは幸村君。後半に関しては、俺の言いたいことを全部言ってくれた。

 そんな反論にも、龍園君はいたって冷静な様子だ。まあ、こんな取引を仕掛ける位だ。このぐらいの反論、一つや二つ位は想定しているだろう。

 

「誰が一週間こんなクソ暑い中サバイバルするって言ったんだ? ()()C()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「────は?」

 

 その言葉と同時に、後ろから誰かの呆けた声が聞こえて来た。

 

「試験を放棄するって事? 甚だ理解できないわね。100ポイント近く差がつけられても構わないのかしら?」

 

「放棄? 何を言ってるんだこの特別試験のテーマは自由だ。100だか200だかのポイントのために、お前らみたいに惨めな思いはしたくないんでね」

 

 全員リタイアねぇ……。よし、ここは1つ探りを入れてみるか。

 

「確かに悪くない話だし、君の発想も面白いと思うよ? 君にクラスをまとめる自信が無いことは分かっちゃったけどね」

 

「……あ?」

 

「こんな面倒な試験を行う理由がさっき分かったんだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だ。男女それぞれ価値観が違うことが原因で争う中、堀北さんはそれをまとめ上げた。君はこの一週間、素行が悪いCクラスの生徒をまとめ上げる自信が無かったんだろう?」

 

 先ほどまでいがみ合っていた池君と篠原さんが苦い表情をする。別に責めてるわけじゃないから安心して。堀北さんのかっこいいとこ見せてもらったし。

 

「随分とデカい態度を取るじゃねえか? この話を別のクラスに持ち込んでも良いんだぜ?」

 

 あくまで挑発には乗らず、尊大な態度でこちらを見つめる龍園君。生殺与奪の権があちらにあると認識させるための演技だろうが、生憎その手は通用しない。

 

「別のクラスに? 笑わせないでくれよ龍園君。君は既に()()()()()()()んだろう? AクラスとBクラスのどちらか、またその両方にね」

 

「……」

 

 ビンゴ。まあ、考えてみればすぐにわかる話だ。俺は後ろで疑問符を浮かべている皆に向けて、淡々と説明する。

 

「今俺達Dクラスのポイントは95。仮にこの試験で300cpt獲得したとしても、今後の試験次第で支払いが出来なくなる可能性は十分ある。何せ俺達は1000から0ポイントまで減らしたDクラスなんだからね」

 

 そう。何故この取引をAクラスやBクラスではなく俺達に持ち込んだのか。そこが気になって仕方がなかった。

 

「葛城君は慎重な男だ。問題行動が多いCクラスが持ち掛けてきた取引なんて受けないだろう。クラス内で派閥争いでもしていれば、話は別だろうけどね」

 

 有栖ちゃんとバチバチにやりあってたら受けてたのかな? どうなんだろう? 

 

「そしてBクラス。これは言わなくてもわかるだろうね。今まで散々嫌がらせされてきた一之瀬さんがこの取引に応じるとは思えないし、何より彼らのポイントを上げるのは、君にとってもあまり嬉しくないだろう?」

 

 反応的にBクラスにはこの話を持ち込んでいない感じかな? 優先順位はA→D→Bの順番っぽいね。

 圧倒的差が付いているDクラス、そして確固たる支払い能力を持っているAクラス。どちらもメリットデメリットがある。

 

「……ッチ。どうやら噂通り、ただのスケコマシ野郎ではないみたいだな」

 

 不機嫌に舌打ちをする龍園君。その瞬間後ろのクラスメイト達からも安堵の声が聞こえてきた。まあ、直前にバチバチにやりあったクラスとの取引なんてしたくないか。

 しかしそんな彼らの安堵は、俺が発した言葉に掻き消されることとなる。

 

「もし俺に裁量権があるのであれば、この取引喜んで受けたいんだけど……どうかな皆?」

 

「正気か!? 相手はあのCクラスだぞ! それに、いくら200ポイント分の物資を譲渡されるとはいえ、この取引は余りにリスクが大きすぎる!」

 

 俺の言葉に声を荒げるのは幸村君。確かに卒業まで200cpt分、毎月80万pptの負債は流石に嫌だろう。

 

「だけどこのまま上手くいけば300ポイント+ボーナスで20ポイントが入り、俺達のクラスポイントは400を突破する。なかなか魅力的だと思わないかい?」

 

「……確かに魅力的な話だ。それにリスクもない。もちろん物資はこちらが選んでも良いんだよね?」

 

「ああ。どちらにせよ、使うことのない物だからな。で、どうするんだ? 受けるのか、受けないのか。相談する時間くらいは与えてやる」

 

 平田君の質問に答える龍園君。流石に当たり前だね。これで200ポイント分のバーベキューセットとか届いたら憤死案件だ。

 

「よし、じゃあ皆ちょっと集まってー」

 

 リーダーを決めた時の様に集まる。

 そして俺達は、数分の話し合いで出した結論を龍園君に伝えた。

 

 

 

「────この取引を受けよう。だが、いくつか条件がある。」

 

 

 

 





ある程度の構成はできてるので、原作と矛盾しないように頑張ります!もしおかしいと思ったら早めにご指摘ください。助かります。

どっちが読みやすい?

  • 会話文一行ずつ開ける(今採用してる方)
  • 会話文は改行しない
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