ようこそクズヒモ男の教室へ 作:妄想癖のメアリー
龍園君の取引を聞いた俺達は、彼に声が聞こえないように離れた場所で議論を進めていた。
と言ってもクラス全員が集まったわけではなく、話し合いに参加したい人間が挙手をする形で人数を絞った。あんまり多すぎると話が進まないからね。先ほどの俺と龍園君のやり取りについて来れた人だけがここに集まっている。
「それで、あの取引を受けたいと言ったが、納得できる理由はあるんだろうな?」
最初に切り出したのは幸村君。因みにメンバーは俺、堀北さん、洋介君、幸村君の四人だ。
見た感じこの中だと反対派が幸村君、賛成派が俺、堀北さんと洋介君はどちらとも言えないと言った様子だ。いいね、反対意見があると見落としが少なくて済む。
「俺が受けたいと言った理由はさっきも言った通りだよ。歩いてるときにざっくりとこの試験を乗り切るのに必要なポイントをまとめてみたんだけど……龍園君はちゃんとそこらへん分かってるみたいだね。絶妙な値段設定だ」
俺はメモ用紙に箇条書きで書いた概算を見せる。
食糧、飲料水……それぞれ1食6ポイント(セットで10ポイント)
仮設トイレ ……20ポイント
シャワー室 ……20ポイント
男子用テント……2つで10ポイント
その他雑費 ……30ポイント
「日に2食で済ませるのならば、飲料水を除いて152ポイント。飲料水を買った場合は200ポイントピッタリだ。あの短時間でこの作戦を思いついて、尚且つ一週間を問題なく過ごすのに必要なポイントを計算した龍園君は、間違いなく切れ者だね」
「そもそも200ポイントも使うという想定が甘えじゃないのか? トイレとシャワー室を我慢して、水も川の水を飲めば112ポイントで済ませられるはずだ」
節約派代表である幸村君がそう語る。少量のポイントで済ませられるはずなのに、わざわざそれを諦めて多量のプライベートポイントを支払うというのに納得がいかないのだろう。
「その計画は間違いなく破綻するわよ幸村君。篠原さん達は我慢して川の水を飲むことを認めたのに、彼女たちが望んでいたトイレもシャワー室も与えないのは、さっき斎藤君も言っていた通り彼女たちの中で不満が貯まるわ。そのストレスや冷たい川の水のせいで体調を崩したら、それこそ40ポイントの差額なんて水の泡と化すわよ」
それに対して返したのは堀北さん。その理論は完璧だったし、実際に争いを止めた彼女が言う説得力は中々の物だ。これを言われたら幸村君も強く否定することはできないだろう。
「……分かった。使用するポイントに関してはもう何も言わない。だが、あの悪名高い龍園との取引というところも問題だろう。一体何が目的なんだ? ……自らクラス間闘争を放棄するだなんて」
「放棄したとは言えないよ幸村君。さっきも言ったけど、このまま順当に試験を進めていった場合、どんなに頑張ってもせいぜい150ポイントが関の山だ。クラスの中で対立が起こる可能性を孕んだ上でね。そんな中ノーリスクで200ポイント相当のポイントを得られるこれは、あながち悪い判断でもないと思うよ?」
何故俺がここまで取引に対して前向きなのか。そこには大きな理由が二つあった。
最初に、節約できるポイントの恩恵がデカいこと。これは先ほど幸村君に説明した通り。
そしてもう一つ、
一番動きが読めなくて警戒すべき人間がこちらに来てくれたのだ。この契約を受けて、後は俺の予想があっているかを確かめるだけでいい。
そう思っていると、先ほどまでずっと静かに考え込んでいた、洋介君が呟いた。
「僕は龍園君との取引に賛成だ。ただ僕らの想定通りに話が進むとは考えられないかな。その対策を立てないと」
「それならもう考えてあるよ。時間が無かったからメモに書きながら説明するけど……まずこの契約をするにあたって、俺達は条件を設定する必要がある。
そう前置きをした俺は、手元のペンを走らせながら説明をする。結構難しいんだよな、これ。
「まず最初に譲渡される予定の200ポイントで買う物資は、俺達が全て決めることができる。前提条件だね。そして
「……よく思いつくな、正直お前にゾッとしたぞ」
そんな失礼な幸村君の発言だが、何故か平田君や堀北さんもうんうんと頷いている。え、酷くね?
例えが悪かったかな……龍園君なら俺らが指定した物資ぶっ壊すとか全然しそうだけど。一応ちゃんとした物資を頂戴ねって言う保険だよ保険。そんなに引かないでくれよ、拗ねるぞ?
「物の例えだよ。次は、この契約で支払うポイントを100cpt分にすること。平たく言えば値切りだね。あっちは使い切れない物資を渡してくるだけなんだから、何も満額払う必要なんてどこにもないんだよ」
「……流石に足元を見すぎじゃないかしら?」
「まぁまぁ、交渉は俺がやるから見ててよ」
龍園君の狙いが俺の思った通りなら、金額面に強くこだわることは無いだろうからね。
「────というわけで、俺達が求める条件は以上だ」
そして時は戻り、俺は再度龍園君と対峙する。その条件を聞いた龍園君からスッと笑みが消えた。余裕をもって対峙できる相手じゃないと判断したのだろう。
「……話にならねえな。本当にこの取引を別のクラスに持ち掛けても良いんだぜ?」
「そうなった場合はAクラス、Bクラス共に俺達が考えた条件を伝えに行くよ。そもそも、上二つに関しては保険。最後のポイントに関しては、君がリタイアすることで余るポイントを僕らが買い取るんだ。そこに満額払う必要なんてどこにあるんだい?」
さて、どう出る? もしこの取引だけが彼の計画なのであれば、俺の値切りに応じないだろう。だが、彼の
「ッチ。物資が破損した際のペナルティはCとDの折半にしろ。ポイントに関しては150で手を打ってやる。それ以下は認めない」
「へぇー……随分とあっさりだね? もっと刻んでくると思ったんだけど」
「フン。そんなしょうもない事するか」
……確かに大阪のおばちゃんみたいに値切る龍園君は見たくないな。
冗談は置いといて、これでお互いの妥協点が見つかったな。これなら問題なく進めることができるだろう。
「よし、じゃあ契約書作ろっか! 良い取引を期待してるよ、龍園君」
その後、俺と龍園君はそれぞれの担任の先生の許可を得て取引を完了させた。
「購入が確定している物は既に申請済みだ。明日の朝までに、残り何を購入するかしっかり考えておくんだな」
「ああ。ありがとう龍園君」
先ほどと同じような不敵な笑みを浮かべ、龍園君は森の中へと姿を消した。辺りに張り詰めていた緊張がスッと拡散していくのを、俺は肌で感じた。
「いやぁー。須藤をハメた奴って聞いたときはヤバいと思ったけど、意外と良い奴なんじゃねえか?」
「かもね! 食べ物もいろんな道具も買えるっぽいし、夜は皆でキャンプファイヤーとかやりたいかも!」
思わぬ収穫にDクラスのみんなは喜んでいる。実際、懸念事項だったトイレやシャワー。その他釣りの道具や調理器具等を余裕をもって購入できるため、一気にこのサバイバルが楽になった。
「はぁ……一時はどうなるかと思ったけど、今回ばかりは彼のおかげで上手くいきそうね」
隣で汗をぬぐいながら語った堀北さん。彼というのは龍園君の事だろう。
「ボーナスポイントを入れて大体320ポイントかな? Cクラスに払うポイントを換算しても大体17000円のお小遣いが確定してるし、皆のモチベーションも高くなってる。良い傾向だよ」
「これでDクラスのポイントは400。他のクラスが100ポイントちょっとと考えると……やっと見えてきたわね」
口調は相変わらずだが、その心の中には大きな喜びが見て取れる。俺はそんな堀北さんの肩を両手で揉みながら、彼女の緊張をほぐすように話した。
「肩の力張りすぎだよ。下手なことしなければ勝ちは確実なんだし、もっとリラックスして」
「そうはいかないわ。私は、皆の期待に応えないといけないし」
強情だな……よし、ちょっとイタズラしちゃおう。
今もなお眉をひそめて、何かを考えこんでいる堀北さん。俺は肩をもんでいた両手をスッと脇の下へと持っていく。
「ひゃっ!」
「堀北さんが頷くまでくすぐっちゃうよ?」
本当はジャージ越しに胸でも揉みたかったが、流石にブッ飛ばされそうなのでやめておく。
「や、やめなさい……んっ、まって」
……なんか色っぽくね。もしかしてそういう癖なのかな堀北さん……ちょっと興奮してきた。どうしよう、一週間我慢できるかな。
「ほれほれ~早く言わないと、もっと酷いことになるぞ~? 「何馬鹿な事してるんだ」いてっ!」
調子に乗ってたら堀北さんではなく他の人に殴られてしまった。誰だと思って振り返ったが、こんなことする奴を、俺は1人しか知らない。
「痛てぇ……ちょっと叩く力強くない? 綾小路君」
「強くない。取引が終わったら作戦を練る約束をしただろ? 忘れたのか」
そう言えばそうだったわ。
「ごめんごめん。じゃあ、何かあったら相談してね。堀北さん」
「ま、待ちなさい!」
顔を真っ赤にしてこちらを睨んでくる堀北さん。いつもなら怖いけど、地面にへたり込んで耳まで赤く染めてる今の彼女にそんな迫力は無い。
「良かったのか? あのまま放置して」
「まあいいんじゃない? 緊張もほどけたっしょ」
「……そうか」
何か言いたげだった綾小路君だが、それ以上何かを口にすることは無かった。
────────────────
紡との話し合いが終わった後、オレは平田に頼まれて焚き火用の枝を集めていた。 ベースキャンプから遠く離れないよう、あくまでも周辺でだ。
本当は紡と堀北を誘う予定だったが、二人ともクラスメイトに引っ張りだこだったため泣く泣く辞退した……オレも頑張ってると思うのだが、一体この差は何なんだろうな……
「な、なあ綾小路。ここだけの秘密にしておいてほしいんだけどさ」
勿論、1人でやったら集め終わるまでに日が暮れてしまうため、何人か協力してくれそうな人とだ。その一人が、今話しかけてきた山内。首に手を回してきた山内は、は少し離れたところで枝を集めている佐倉を指さして耳打ちしてきた。
「俺……佐倉狙おうと思うんだ」
「え?」
「いや、櫛田ちゃんってレベル高すぎるじゃん? コミュ力も高いし。だからこの際その高い目標は捨てようと思う。それに比べて佐倉って人を苦手にしてるってか、その、男慣れ全くしてないしさ」
聞いてもいないことを長々と語る山内。オレの呆れを交えた視線も気にすることなく、己の欲望を大っぴらに語る。
「ぶっちゃけ、この旅行で行けるとこまで行こうと思ってんだよ。多分あの手の女の子は、優しく気配りできる男を演出できれば落ちると思うんだよな。何ならキスくらいまでするぜ。いやマジで。この際佐倉でオッケー。いや、佐倉でいい!」
……なるほど。最初に誘った時は断ったのに、佐倉が一緒に来てくれると知った瞬間協力を申し出たのは、これが理由だったか。
「この際って、今まで何一つ佐倉に絡んでなかっただろ。随分急だな」
「いやさ、見る目がなかったって反省してんだよ、それはさ。地味だから目に留まってなかったけど、すげぇ可愛いしアイドルだし? 胸はもう、最高だし。俺も斎藤みたいに女囲ってるって評判になりたいんだよ。それでアイドルを侍らせてるって、すげぇイケてないか!?」
後半に連れて鼻息が荒くなっていく山内。最初は彼女が欲しいだけだったと思うのだが、何故か紡を見て目標が変わってしまったらしい。
「だから応援してくれよ。例えば今から俺と佐倉を二人きりにするとかさ」
「それは応援とは言わないだろ……」
「何だよ。おまえ、もしかして佐倉狙ってんのか? あのおっぱいか!」
何故だろう。少しだけ腹が立ってきた。
「そもそも紡は女子を囲っているわけじゃないだろ。それにあいつを目標に設定するのは、少し無茶じゃないか?」
アイツの行動に100%同意できるかと言ったら怪しいが、それでも山内みたいに下品な欲をオープンにしたりはしてないだろう。そこに気が付いていない限り、あのレベルに達するのは不可能だと思うのだが。
「いや囲ってるだろ! 幼馴染だっていうすげぇ可愛い子と毎朝登校してたし、堀北だって完全に惚れてるだろ? それに最近ではBクラスの一之瀬も、斎藤の事凄い奴だって皆に言ってるらしいし、ムカつくぜ全くよぉおお!」
坂柳、堀北、一之瀬か。最後に関しては別に惚れてるわけじゃないと思うけどな。恋愛相談に乗って、偽カメラ作戦の発案者だって事を知ってるくらいだろう。
しかし、どうやら山内にとっては同じ括りのようだ。
「今は諦めてくれ。もう少し佐倉と仲良くなったら協力するから。それに、早いうちに戻ってちゃんと焚火ができるか試しておきたいし。だろ?」
がっくりと山内は肩を落としたが、すぐに気を持ち直した。
「ったく固いよな。まあ、そう焦らなくてもいっか。綾小路も俺達の仲間だしな!」
同じにしないで欲しい。オレは心の底からそう思った。
「ほら枝しっかり集めろよ。俺も向こうでちゃんと拾うからさ」
そう言って自分が集めていた枝をオレに押し付けてきた。しかし、佐倉には悪いことをしたかもしれない。恐らく1人で枝を集めなければならないオレを憐れんで一緒に行ってくれたと思うのだが、まさか佐倉が苦手そうな男子筆頭の山内が付いて来るとは。
結局佐倉はオレや山内を警戒してか、殆ど無言で枝を集めていた。
「もうこれくらいでいいんじゃね? 今日の分は十分っしょ」
確かに、今日一日で言えば十分すぎる量が集まった。山内の一言で枝集めの作業を終え、3人でキャンプ地へ戻りはじめる。
「なあなあ佐倉。持つの手伝ってやろうか? 女の子だと大変だろ。怪我するかもだし」
最初からそう切り出すつもりだったのか、手にはオレの半分ほどしか枝がなかった。優しく気配りの出来る男を演出するつもりらしい。
「だ、大丈夫です……綾小路くん、いっぱい持ってるし。手伝ってあげてください」
「くぅ! 佐倉は優しいなあ! ったく、一人でいっぱい持つなんて欲張りすぎだぜ綾小路。ほら、半分持ってやるから貸せよ」
そう言って最初に押し付けた量の半分くらいを掴んで回収する。佐倉に断られた場合でも優しさをアピールできる二段構えの作戦だったようだ。こういう時だけ機転が利くのは、山内らしいと言うか何と言うか────そんな帰り道の出来事だった。
ふと横を見ると、大木に背中を預けるようにして座り込んだ一人の少女が居た。Dクラスの生徒じゃない 他クラスなのだから放っておけばいいのだが、少女の様子が只事じゃないことはすぐに分かる。
その子の頬には赤く腫れた痕。一目で誰かに叩かれたのだと分かった。それもかなり強い力で。
「なあ。どうしたんだよ、大丈夫か?」
山内は傷ついた女の子を放っておくことが出来ず、率先して声をかける。
「……ほっといてよ。何でもないから」
「何でもないって……全然そうは見えないし。誰にやられたんだ? 先生呼ぼうか?」
腫れの状態から察するに、相当な痛みを伴っていることが容易に見て取れる。
「クラスの中で揉めただけ。気にしないで」
自嘲気味に笑い、少女はそう言って山内の言葉を拒絶した。口調こそ男勝りな感じだったが、元気が無いのは明らかだ。
「揉めたとなると……Cクラスの生徒か?」
「……何で知ってんの」
「龍園が言ってたからな『俺の計画に反対したバカを追い出したから、もし見かけたらリタイアするように言え』って」
「それは嫌。こんなすぐに戻ったら、何されるか分かんないし」
あの計画にクラス全員が頷くとは到底思えない。恐らく反対意見は無理やり抑えて、それでも反発した生徒が彼女なのだろう。
「俺たちDクラスの生徒なんだけどさ。良かったらベースキャンプに来なよ」
山内に軽く同意を求められたので、オレと佐倉は少しだけ頷いて話を合わせた。
「は? 何言ってんの。そんなことできるわけないでしょ」
「困ったときは助け合いって言うか、当然っていうか。な?」
そんな言葉にも耳を貸すつもりはないのか、そっぽを向いて黙り込んだ。放っておけば楽なのは間違いないが、よっぽどの事情がなければ女子一人でこんな場所にはいない。
「私はCクラスだ。つまりおまえらの敵ってこと、それくらいわかるでしょ?」
助けてもらう筋合いは無いということだろう。
「けどさ……こんなところに一人で置いてけないって。そもそもCクラスは俺達に物資をくれた良い奴らなんだぜ! 敵だなんて思わねえよ」
「ああ。どちらにせよCクラスは全員リタイアするんだ。リーダー当てなんてできるわけないしな」
「……バカだなお前ら。相当なお人好し。うちのクラスじゃ考えられない」
助けることが当然と言った様子の俺達に対して、彼女は諦めたようにため息を吐いた。
「大丈夫だ。別に何も問題ないと思うぞ」
「だよな? 問題なしってことで。俺は山内春樹。よろしくな!」
「まぁ良い奴らってことなんだろうけど……やっぱりバカだ」
呆れつつも自己紹介を受けた少女は、こちらに見向きもせず短くこう答えた。
「私は……伊吹」
「────って感じだ。俺達で匿ってやれないか?」
「なるほどねぇ……ちょっと傷見せてくれる? 伊吹さん」
オレはベースキャンプに帰還した後、紡に声を掛けた。事の経緯を説明すると、紡は痛々しそうに眉を八の字にした。
「ん……」
「痛かったろうに……酷いことするなぁ龍園君は。気休めかもしれないけど、これ使って」
紡はアメニティとして配られたハンドタオルを持ってきた。それを川で冷やし適度に絞ると、伊吹の頬にピタッと当てた。紡がたまに出す父性というか、母性的なものが遺憾なく発揮されている。
「これあんたのタオルでしょ?」
「ん? ああ、新品未使用だから心配しないで」
「……そういう問題じゃないと思うんだけど」
紡が残っててくれて助かった。これなら伊吹をDクラスで匿う話もうまく通りそうだな。そう思っていた最中だが、早速紡は伊吹を連れて皆の所へ向かっている。オレが願わなくとも話を通してくれるらしい。
取引を結んだCクラスの生徒で、尚且つ龍園に殴られたという経緯もあった為か、意外にも伊吹はクラスに馴染めているようだ。
「どう? 斎藤君カッコいいでしょ?」
「……まぁ、噂がCクラスまで来てる理由はよく分かった。ちょっと抜けてる所あるけど」
「そこが良いのよ!」
「よし。伊吹さんの方は何とかなりそうだね」
「……紡。彼女は
一切疑う様子が無かったため、一仕事終えたといった様子で戻ってきた紡に確認を取る。
「ん? 流石にスパイだと思うよ? いやー中々悪だね龍園君も。取引で仲間だと思わせて安心させた後に、スパイとして潜り込ませた伊吹さんが、リーダー情報を盗み取るって感じかな? まだ確定はしてないけど、そう思って動いて損はないね」
「だろうな。全く、大人しくリタイアしてくれればいいのに」
「そう甘い相手じゃないね、龍園君は」
────この時のオレは想像もしていなかった。いかに龍園が悪辣で、ずる賢い人間なのかを。
『馬鹿は死んでも治らないって言うけど、一度試してみるかい? 一度死んで見えてくる景色もあると思うんだ』
もしここで伊吹を追い出していたら、オレと紡の関係性は、また違ったものになっただろうか?
────そんな無意味な仮定をしてしまうほど、オレは彼のことが分からなくなっていた。
特別試験一日目終了。
Dクラスが保有するポイント:272ポイント(高円寺リタイア、ボーナスポイント)
高評価、感想いただけると作者の励みになります!全てに返信することは出来ないですが、きちんと読ませていただいているので、もし良ければ気軽にどうぞ!
どっちが読みやすい?
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会話文一行ずつ開ける(今採用してる方)
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会話文は改行しない