ようこそクズヒモ男の教室へ   作:妄想癖のメアリー

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胎動

 

 

 

「おはよう。紡」

 

「おっ、早いね綾小路君。昨日はよく眠れたかい?」

 

 2日目の朝。川沿いでボーっとしていると、綾小路君が眠そうに目をこすりながら話しかけてきた。

 

「全くだ。都会っ子のオレには厳しい環境だ」

 

「……それ、都会って言えるのか?」

 

 何とも弄りづらいジョークだ。フッと笑った綾小路君は、そのまま俺の隣に腰掛ける。

 

「そういう紡は寝れたのか?」

 

「余裕余裕。熊とかイノシシとか出ないだろうし、テントもあるなんて俺にとっては天国よ」

 

「どんな環境で暮らしたらそうなるんだ?」

 

 付き合ってた子のクソ親父に、着の身着のまま森に投げ込まれたりしてたからな。当時ガリガリだった俺にはかなりキツかった。

 

「そう言えばさ、佐倉さんとはどうなの?」

 

「どう……というと?」

 

 お? しらばっくれるか? このむっつりめ。

 

「惚けても無駄だよ。佐倉さんといい感じなのは良く知ってるんだぜ? 池君じゃないけど、この試験中に進展したいとかは思わないの?」

 

『最高傑作』と呼ばれた綾小路君だが、恋愛に関しては一般人以下だ。口角が吊り上がるのを自覚しながらも、俺は追及することを止めない。

 

「正直、佐倉に関しては今すぐどうこうするつもりはない。あの件で男にトラウマを持ってるだろうし、何より付き合ったとして、彼女を不幸にさせない自信が無い。仮に卒業まで続いたとしても、その後のことは保証できないしな」

 

「……そっか」

 

 真面目だね。なるべくそのままで居てくれよ? 綾小路君。

 俺は無意識に浮かべていた自嘲の笑みを誤魔化すように綾小路君をからかった。

 

「付き合ってそのまま結婚すると思ってるの? 綾小路君ピュアで可愛いね」

 

「……紡だってオレと大して変わらないだろ。20人以上付き合ったくせして童貞なんだろ? 坂柳が言ってたぞ」

 

 えぇ……何で知ってるの? 

 

「どうやら坂柳はお前が言った言葉を信じてるらしいな。『紡君が私に嘘を吐くわけありません。吐くとしてもサプライズだけです』とか言ってたぞ」

 

 って事は、俺がママ活してたのバレた時に「童貞も初キスも捨ててない」って言った言葉を、有栖ちゃんは未だに信じてるんだな。確かに嘘はついてないけど……俺が有栖ちゃんに嘘をつくわけない、か……

 

「俺の居ないところで下の話するのやめてくれよ……まあ、正直言うと俺も童貞で、キスすらしてないよ」

 

「……本当か? お前の女慣れした様子からだと、正直想像もつかないんだが。というか可哀そうだな。小、中時代に居たお前の彼女は」

 

 あっ、そう言えば彼女遍歴聞かれた時、前世の話したんだ。やっべぇ……綾小路君と有栖ちゃんがここまで仲良くなると思ってなかったわ。迂闊だった……まあ、バレたら最悪見栄張ってたって事にすればいっか。

 

「色々あったんだよ」

 

「……なぁ紡、俺に何か「おはよう二人とも。今日も頑張ろうね」……」

 

 何か言いかけていた綾小路君だったが、後ろから話しかけてきた洋介君の声でかき消されてしまう。小さな声だったため聞き取ることが出来なかった。

 

「あ、ごめん。お邪魔だったかな?」

 

 そう言って苦笑いを浮かべる洋介君。少しだけ疲れている様子だった。

 

「いや、大丈夫だ。おはよう平田」

 

「昨日はありがとね。探索行ってくれて助かったよ」

 

 上から洋介君、綾小路君、俺の順番で会話が進んでいく。探索というのは、俺がテントや調理器具の説明をしている間に、食料や魚などの物資を調達する班をまとめてくれたことだ。

 

「礼を言うのは僕の方だよ。紡君のおかげで契約を有利に進められたからね。今の所物資に問題もないし、皆頑張ってくれてる。高円寺君のリタイアで、夜はちょっと荒れちゃったけどね」

 

 そう。洋介君が少し疲れている理由は、昨日リタイアした高円寺君に対するクラスのヘイトを消そうと奮闘していたためだ。勿論俺も協力したが、俺と違って彼はどうも真面目過ぎる節がある。

 

「大変だな。2人とも」

 

 そんなねぎらいの言葉を掛けてくれたのは綾小路君。

 

「僕は好きでやってるだけだから。出来る限りクラスの皆が幸せでいてくれれば、それで満足なんだ。龍園君とのやり取りはほとんど紡君に任せっきりだったし、僕も頑張らないとね」

 

 

「Aクラスを目指したい生徒とDクラスのままでいたい生徒がいたら、どうするんだ?」

 

「ちょっと意地悪な質問なんじゃない? 綾小路君」

 

 冗談めかして咎めると、綾小路君は悪いと言って発言を取り消した。気になるとは思うけど、今聞くことじゃないだろう。

 しかし、洋介君は怒ることもなく答えてくれた。

 

「難しい問題だね。上のクラスを目指すということは、それだけ全員に無理を強いるってことだから……ごめん、答えはすぐに出ないよ。2人はAクラスを目指したい人? それとも学校生活が楽しめればいい人?」

 

「俺は堀北さんがAクラスに上がりたいって言ってるから、それに協力する感じかな」

 

「紡に同じくだ」

 

 俺も綾小路君も即答する。その裏に抱えているものはそれぞれ違くても、友達の夢を叶えたいという終着点は同じなのだ。

 

「そっか。上手く言えないんだけど、カッコイイな。三人とも」

 

「オレは何もしてないけどな」

 

「そんなことないよ。綾小路君がちゃんと協力してくれてること、僕も皆もちゃんと分かってるから」

 

 流石洋介君、フォローが上手いね。綾小路君もちょっと感動してておもろいな。ちょっと気にしてたもんね。クラスでの立ち位置というか何というか。

 

 

 

 それから点呼を終えた俺達は自由行動へと移った。うーん、昨日の時点で皆に指示を出し終えていたから、俺も今日は暇になるんだよな。Cクラスとの取引は既に完了したし。

 

「何しようかなぁ」

 

 伊吹さんにちょっかいをかけるか、他クラスの偵察をするか二択になるんだけど……まあ、無難な方でいっか。

 俺は同じく暇そうにしている綾小路君と、三回目のスポット占領を終えた堀北さんの下へと向かった。

 

「これから他のクラスの偵察しに行くけど、二人とも一緒行かない?」

 

 二人が頷いたのを確認すると、今朝教えてもらったBクラスのベースキャンプ地を目指して歩く。

 

「女子の方はどう、何か不満とか出てない?」

 

「そうね。現状は虫刺されとか、地面が固い位かしら。想像より少ない方よ」

 

「余ったポイントで対策立てといて正解だったな」

 

 上から俺、堀北さん、綾小路君と会話が続いていく。龍園君と交わした取引の余りで、虫よけスプレーや蚊取り線香等のグッズを買っておいたのだが、やっぱり正解だったね。

 他でも同じ不満を抱えているなら問題ない。これが男女で別れて来ると昨日のトイレの話みたいに拗れるし。

 

「今日の夜には下に敷くマットとかも使えると思うから、飲料水を妥協できたのは大きいね」

 

 それだけで50ポイント近く節約できたし。

 

「もう既にリタイアしたのかしら?」

 

「さあね。たった残り100ポイントで何ができるんだって考えると、昨日でバカンスを満喫して終わったんじゃない?」

 

「……理解できないわね」

 

 やっぱりAクラスに上がりたい堀北さんにとって、プライベートポイントを優先する龍園君の思考は理解できないのだろう。

 

「案外、Aクラスに行きたいとすら思ってないかもしれないな」

 

 そんなやり取りをしていると、程なくしてBクラスのベースキャンプ地へと辿り着いた。

 

「流石はBクラスと言ったところかしら……」

 

 Bクラスのベースキャンプに着くと、Dクラスとはまるで違う生活観がそこにあった。恐らく中心にある井戸がスポットなのだろう。その周りは木に囲まれていて狭かったが、そこにハンモックをかけて補っているようだ。

 

「やっぱり学校側はスポットを中心とした生活を想定してるみたいだね。使ってるアイテムは全く違うし」

 

「あ! おはよう三人とも!」

 

 三人で行動していれば嫌でも目立つ。ジャージ姿で木にハンモックを掛けていた一之瀬さんが挨拶をしてきた。

 

「上手くやれているみたいだな」

 

「あはは。最初は苦労したよー。でも何とかね、色々工夫して作ってみたの。そしたら逆にやることも増えちゃって。まだまだ作業が山積みだよ」

 

「時間余ってるし設営位なら手伝うよ? お互い協力関係だと思ってるし、相談しながらでもどうかな?」

 

 俺達の目標的に、Bクラスに2位を取ってもらうのが理想なんだよね。だから協力を惜しむつもりはない。Cクラスの話もしておきたかったし、丁度いい機会だろう。

 

「ホント! 助かるよ、ありがと~。じゃあ結び方教えるね!」

 

 そう言ってハンモックを渡してくる一之瀬さん。

 

「まあ見ててよ」

 

 前世ぶりだと思うのだが、意外と体が覚えているようだ。するすると結び目を作ってきつく縛ると、一瞬でハンモックが完成する。

 

「……驚いたわね。池君がアウトドア経験あるのは知ってたけど」

 

「昔ちょっとね。一之瀬さんは2人に教えてあげて」

 

「うん! じゃあ────」

 

 二人とも呑み込みが早いのか、人数分の設営は直ぐに終わった。

 

「皆手伝ってくれてありがと! 一瞬で終わっちゃったよー」

 

 それぞれのクラスの状況を教え合っていたため、お互い有意義な時間を過ごせただろう。

 完成した寝床を、遠くからうんうんと嬉しそうに眺める一之瀬さん。

 

「それにしても、龍園君の発想は凄いよね。初日に全員リタイアしちゃうだなんて。道理で偵察に行っても見当たらないわけだ」

 

「オレ達はそのおかげで完了までの目途が立ってる。昨日の敵は今日の友じゃないが、正直かなり助かった」

 

「でも羨ましいなー。だって1人リタイアしちゃった子がいても、270ポイントそのままでしょ?」

 

 ハンモックに腰掛け、だらーっと体を倒す一之瀬さん。確かに、200ポイントの物資提供何て、いくらプライベートポイントの支払いがあったとしても魅力的だろう。

 

「Bクラスに話が来てたら取引受けた? 一之瀬さん」

 

「えー……どうだろう。正直取引の条件とか言われるまで全く気が付かなかったし、龍園君ならやりそうだよね。わざと壊れた物資渡してくるのとか」

 

「お前らの龍園に対するイメージ悪すぎないか……?」

 

 そんな綾小路君の呟きで笑いが起こる。BクラスとDクラス。互いに違うクラス同士だが、協力することも不可能ではないのだ。それはひとえに一之瀬さんの人柄がなすものなのだろう。

 ほっこりした空気の中、堀北さんはふと思い出したように切り出した。

 

「そうだ一之瀬さん。さっき斎藤君も協力関係って言ってたけど、リーダーの正体を見破るっていう追加ルール。お互い除外し合う事を提案したいのだけど」

 

「私も同じこと考えてた。一クラスでも警戒対象から外れてくれると凄いありがたいかも。と言ってもCクラスはリタイアしちゃったっぽいし、警戒すべきなのはAクラスだけだね」

 

 互いに情報交換と協力関係の再確認を終え一段落したが、堀北は辺りを見渡して感嘆の息を漏らす。それぞれの生徒が自分の役割を持って行動しているのか、一糸乱れぬ連帯感がある。

 圧倒的に有利だという状況でモチベーションが上がってるDクラスに比べても遜色ない辺り、クラス全体の纏まりにおいては負けてるね。

 

「このクラス……想像以上に統率が取れているわね。やはりあなたが率いてるの?」

 

「うん。一応私がやってるよ Dクラスは誰か纏めてくれる人は居るの? やっぱり斎藤君と堀北さんの2人?」

 

「……そう「見栄を張るな。主に紡と平田の2人だ」……別に、嘘はついてないわよ」

 

 ここで見栄張る辺り、俺のツボを押すの得意だよね堀北さん。

 

「こうしてみるとDクラスって女子に人気の男の子多いよね。イケメンランキング1位の斎藤君に、3位の平田君、綾小路君も6位でしょ? この前クラスの子が言ってたもん」

 

 有栖ちゃんも投票してたんだよね。聞いたときは笑っちゃったわ。

 

「……そんなランキングがあったのね。知らなかったわ」

 

 話が逸れてしまったが、最終的に俺達はAクラスのベースキャンプ地を教えてもらった。

 

 

 

 一之瀬さんにお礼を言った後、俺達三人は深い山を目印通り進んでいく。

 

「Bクラスにも居たな。龍園に逆らって追い出された生徒が」

 

「やはり伊吹さんだけではなかったみたいね。自分たちは一日バカンスを楽しんだ後船で自由に過ごし、反対した生徒には暴力と追放という制裁。一体いつの時代にいるつもりなのかしら」

 

「俺的には女の子を殴るのが理解できないかな。未だに腫れ引いてないらしいし、しかも顔とか」

 

 効率的とはいえ、それを躊躇なくできる辺り大物だよ。

 そして森を切り抜けると、拠点にできそうな大きな洞窟があった。それを示すかの如く入り口の傍には仮設トイレが二つ、シャワー室が一つ置かれている。

 

「よし。行ってみるか」

 

「ああ」

 

「ちょっと2人とも……!」

 

 何のためらいもなく茂みから飛び出した俺と綾小路君。ここでジッとしてても何にもならないからね。()()()()()()()()()()()()()()()()し、一石二鳥だ。

 近くまで言って分かったが、洞窟にはブルーシートで作ったであろう巨大な目隠しが広げられていた。これでは中が全く見えない。

 

「なんだお前ら。どこのクラス……ってお前は!」

 

「昨日はどうも。戸塚君だったかな?」

 

 入り口の傍には、有栖ちゃんを突き飛ばした挙句、謝罪もなしにDクラスの皆を馬鹿にした戸塚君が見張りをしていた。有栖ちゃんと仲良くしていたためか、何故か顔を覚えられている。

 

「偵察に来たのよ。何か問題ある? ……Aクラスを名乗るからにはさぞ賢い生活をしていると思ったけれど……」

 

 ビニールで覆われた洞窟の入り口を見て、わざとらしくため息をついて見せた。

 

「賢いというよりは、姑息。臆病なやり口ね」

 

「なに? ……頭の悪いDクラスのクズ共に言われる筋合いはねぇぞ!」

 

「頭の悪い、ね。それなら私たちにこの中を見せても特に影響はないでしょう? それとも中を見られるだけで窮地に立つのかしら?」

 

 良いぞ堀北さん。もっと言ってやれ。

 

「そんなわけあるか!」

 

「だったら中を見せても問題ないでしょう? お邪魔するわね」

 

「ま、待て! おい! 待てって! 勝手なことすんな!」

 

 戸塚君は焦ったように回り込むが、それで止まるような堀北さんではない。

 

「────何をしている。客人を呼んでいいと許可した覚えは無いぞ」

 

 このまま押し切れると思ったその時、有栖ちゃんから説明を受けていた例の生徒が洞窟から出てきた。

 

()()()()! こいつら、俺たちの寝床を偵察に来たんですよ! 汚い連中です!」

 

「ビニール如きで大げさなことを言うわね。中を少し見せて貰うだけよ」

 

 振り返り、その男たちと対峙する堀北は怖気づく様子が微塵も無い。

 

「だったら遠慮せず中を見てみればいい。その代わり覚悟はしておくことだ。指一本でも触れた瞬間、俺は他クラスへの妨害行為として学校に通達する。その結果Dクラスがどうなるかは保証しない」

 

 ……ふむ。彼が葛城君か。実際に対面したのは初めてだが、確かに今までのリーダー的生徒とは違うタイプだね。洞窟をいち早く占有した判断力、他クラスに偵察を許さない慎重性、どれを取っても優秀だ。これは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()な。

 今もなお、堀北さんの強い口調に対しても冷静に返している。

 

「……まぁいいわ。Aクラスの実力がどの程度のものか、結果を楽しみにしておくから」

 

「随分と威勢がいいな。こちらこそ期待しておくとしよう。Dクラスの悪あがきに」

 

 流石に下がるしかないか。さて、()()()()()()()()だが……

 

「そうだ。Dクラスに斎藤という男がいたはずだろう」

 

 踵を返す俺達に対して、思い出したかのように葛城君は語り出した……なるほどね。こういう感じか。

 

「ん? 斎藤だったら俺の事だけど」

 

「坂柳から伝言を頼まれている。『体調を崩さないようにしてください』とな。知り合いなのか?」

 

「平たく言えば幼馴染だよ。だから個人的にはAクラスとは戦いたくないんだよね」

 

 苦笑いを浮かべながら語ると。葛城君は心底同情した様子を見せてくれた。

 

「……そうか。災難だったな。坂柳と懇意にしているのであれば、こちらも邪険に扱うつもりはない。今は試験中だから出来ないが、何もない時にAクラスに顔を出すこと位誰も文句は言わないだろう」

 

「あはは。ありがとう葛城君」

 

 随分と良い関係を築けているみたいだ。葛城君も性格いい子だし……全く、さぞ心が痛む。

 

「何でわざわざDクラスの奴に伝えたんですか! それも坂柳の伝言だなんて」

「坂柳はクラス間闘争で必ず必要な人材だ。お前はどうしてそこまで彼女を目の敵にしているんだ?」

「うっ……いや、それは」

 

 後ろでは葛城君達の会話が聞こえて来る。苦い顔をして歩く堀北さんに向かって俺は一言用事があると告げた。

 

「あ、そうだ。俺ちょっと寄る場所あるから先帰ってて」

 

「? 分かったわ。行きましょう綾小路君」

 

「ああ。よろしくな、紡」

 

 

 

 ────だが、物事には優先順位というものが存在する。残念だけど、その点において俺は妥協をするつもりはないんだ。

 

 後ろからチラチラと視線を感じながらも、俺は数分程深い森の中へと歩みを進める。そして辺りに誰もいないことを確認した後、俺は小さく呟いた。

 

「もう出てきて大丈夫だよ。久しぶりだね、神室さん。そして初めまして────坂柳派の皆」

 

 その言葉を皮切りに、俺を囲むようにして4人の生徒が顔を出した。恐らくもっと人数は居るだろうが、有栖ちゃんが信頼を寄せる選りすぐりの子供たちなんだろう。

 集団から一歩踏み出したのは神室さん。

 

「一応言っておくけど、私以外はまだあんたの事信用してないからね」

 

「じゃあ神室さんは俺の事信用してくれてるんだ? 嬉しいな」

 

「……うっさい。早くして、誰が来るか分からないでしょ」

 

 俺の弁当を喜んで食べてる癖して、可愛い反応をするものだ。

 未だに警戒を続けている坂柳派の生徒達。確か有栖ちゃんの紹介の仕方が悪かったんだよなぁ……

 

『彼らには、私が心から尊敬している人だと紹介しました。少しハードルを上げすぎたかもしれませんが、紡君ならこのくらい余裕でしょう?』

 

 ……絶対帰ったらエッチな悪戯してやる。そう胸に決意した俺は皆に語りかけた。

 

「初めて会った俺の事を信用できない気持ちはよく分かる。だが、俺達の行動原理は同じだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。その為に、葛城君主導となっている現体制は、跡形もなく破壊しなければならない」

 

「……私たちは何をすればいいの? リーダー情報を教えて欲しいってんなら今すぐにでも教えるけど」

 

「それには及ばないよ神室さん。俺が君達坂柳派の生徒にしてほしいのは────」

 

 計画の内容を伝えると、彼らの顔は驚愕一式に染まる。俺だってこんなことしたくなかったんだ。だが、やった事の代償は払ってもらわないとね

 

「……それ、本気で言ってんの?」

 

「ああ。戸塚君がリーダーで、尚且つAクラスの空気感を感じとった限り、難しい事ではないはずだ。詳しいことは後で伝えに来るから、まず君達には()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。あくまでも偶然を装ってだ」

 

 そして、俺はあらかじめ場所の目星をつけておいたメモを彼らに渡す。

 

「分かった」

 

 そして俺が解散宣言をすると、彼らは蜘蛛の子を散らすように姿を消した。

 

 

 

「さて、()()()()()()()()。頑張るぞ、俺」

 

 

 

 ────そんな俺の呟きが、誰もいない森の中へとこだました。

 

 

 

「……」

 

 

 





無人島試験二日目終了
Dクラスが保有するポイント:274ポイント(ボーナスポイント)

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