ようこそクズヒモ男の教室へ 作:妄想癖のメアリー
地の文多かったら言ってください。流石に張り切りすぎた自覚はあります。
さて、周りの人間が自己紹介に躍起になっているところだが、俺の持論を聞いてくれ。
俺が無駄に長く生きてきた中で学んだ教訓を教えたいと思う。ヒモの処世術だ。と言ってもそこまで難解な事を言うつもりもない。俺が言いたいのはただ1つ。『つるむ奴はしっかりと考えた方が良い』という事。
これだけ言われても意味わかんない思うので、実際に薬物依存という具体例を出してみよう。
実際に薬に手を出す人間というのは、大体が友人や知人からの誘われたのがきっかけだ。心が弱っている時に「みんなやってるから」みたいに誘われて、きっぱりと断れる人間なんてそこまで多くない。特に周りに合わせることを美徳と考える日本人なら猶更だ。
これは極端な例かもしれないが、受験期なのに勉強をやらずに遊ぼうと言ってくる同級生や、異性にモテたいがために努力する友人を茶化す奴だとか、この類の人間もあまり関わりを深く持たない方が良い。
そして関わりを持たない方が良い人間というのは、もう一種類存在する。『何考えてるか分からない奴』だ。
勿論マイペースで言動が抜けているとか、感性が少し他人と違ったりだとか、そんな程度で関わるなとは言っていない。俺が言いたいのは、
どうしてこんな事をわざわざ話しているかって? それは────
「こんな事を聞くのもあれだが、どうして斎藤はオレに話しかけてくれたんだ?」
「紡で良いよ。斎藤って数多いし呼びづらいでしょ? 話しかけた理由なんて、席が近いからに決まってんじゃん。こういう場面で一番最初に仲良くなる人って、席が近い人なんだぜ?」
────そう。この綾小路清隆君が、俺の言う『底が知れないヤツ』に該当するからだ。
人好きのする笑みと、ワンテンポ上のトーンの声を忘れずに会話をする。
「そうなのか……」
一見すると何の変哲もない平凡な男子高校生。しかしどこか違和感を感じる。一番近いイメージとしては
世間話を装って、俺は綾小路君に探りを入れる。やってることはキモい奴だが、頭の中の警笛が鳴り続けているのだ。それをシカトするわけにもいかない。
「特に趣味は無いって言ってたけど、綾小路君はなんかスポーツとかやってなかったの?」
「あー。習い事はピアノと書道をやっていた。スポーツは可もなく不可もなく、だ」
「ピアノと書道か。全く関わりない世界だから、ちょっと羨ましいかも」
『可もなく不可もなく』か……なるほどね。俺がその発言に返すと、今度は綾小路君から話題を振ってきた。奥手なタイプかと思えば、意外と積極性もあるらしい。
「ボードゲームが趣味と言っていたが、チェスとか得意なのか?」
「おう! プロ程……だなんて口が裂けても言えないけど、小さい頃から一緒に指す友達いたから結構得意だぞ。綾小路君はチェス得意なの?」
これは完全に有栖ちゃんの影響。小学校2年生の時急に始めようと誘われてから趣味になった。そして綾小路君についてだが、ここで敢えてチェスの名前を出してくるって事はやったことあるだろうな。
「少しだけだ。そんなに得意ってわけでもない」
「そうなんだ。じゃあ後で1局やんない? 今はスマホのアプリでも出来るしさ」
「いいぞ。是非やろう」
即答……ちょっとテンション上がったな。あまり友達とかに関心が無いタイプと思っていたが、どうやら違うようだ。
うーむ……分からん。とりあえず俺と友達になりたいのは本心っぽいし、墓穴を掘らなければ良い友達としてやっていけるだろう。
こんなこと考えといて取り越し苦労だったとなればお笑いだが、何もなければそれで良い。面倒ごとは好きじゃないし。
「────あら。あなたと話してくれる物好きな人間もいるものね」
「……お前、同じクラスかよ」
そんなやり取りを続けてると、綾小路君の隣の席、俺の斜め前に一人の女子生徒が座った。街中ですれ違ったら記憶に残るぐらいの美人さんだが、たった今綾小路君とのやり取りを見た感じ、仲良くなるには結構時間がかかりそうだ。
「綾小路君の友達かな? 俺の名前は斎藤紡。よろしくね」
「友達? 冗談も程々にして頂戴。それによろしくするつもりはないわ。生憎、そこの彼みたいに友達作りに躍起になるタイプじゃないの」
「その言い方は無いだろ……それに、1年間名前も知らずに席が近いのは不便だと思わないか?」
「私はそうは思わないわ」
そんな綾小路君のナイスアシストが飛んでくる。多分俺を思っての行動だと思うが、この返事が返ってくることは予想がついていたからそこまで心配しなくても大丈夫だぞ。
しかし彼女の硬い心の壁は、その程度では揺るがないらしい。
「一応オレの名前を先に教えておく。オレは綾小路清隆。元居た中学から1人で来たから誰も知り合いが居ない。だから友達作りに躍起になってたことは認める」
「へぇー。1人だとやっぱ大変だったっしょ? 君はどうなの? ほかのクラスに知り合いとか」
しかし俺も綾小路君も引くつもりは全くない。俺は可愛い女の子、綾小路君は次の友達候補と仲良くなるために言葉を紡ぐ。
「……物好きねあなた達。私に話しかけても何も面白くないわよ」
「これ以上は迷惑だってならやめておく」
意外と引き際を分かってる様子の綾小路君。この調子なら一歩踏み出せば友達なんていくらでも作れると思う。顔イケメンだし。
ここで彼女との会話は終わりと思っていたが、呆れたようにため息を吐いた後、真っ直ぐな瞳をこちらへ向けてきた。
「私は堀北鈴音よ」
鈴音、いい名前だ。『名は体を表す』ということわざがある通り、凛とした彼女の性格にぴったりだろう。
因みに俺の名前である
「紡には言ったが、一応オレがどんな人間か教えておく。特に趣味は無いけど、何にでも興味はある。友人はたくさん要らないが、ある程度いればいいと思っている。まあ、そんな感じだ」
「事なかれ主義らしい答えね。私は好きになれそうにもない考え方だわ」
「へぇー、綾小路君事なかれ主義なんだ。まあ堀北さんの意見も分からなくもないけど、別にいいんじゃない?」
この年でその境地に至っているのか、中々の才能だな。本当は肩でも組みたい気分だが、生憎とキャラに合わない為やめておく……と言っても、残念だけど事なかれ主義はモテないよ綾小路君。
「……フォローが上手いんだな。紡は」
「ため息つくと幸せが逃げてくぞー」
「そうね。これ以上不幸が重ならない事を祈りたいものね」
あら、そっちにとらえちゃったか。ため息を吐いた綾小路君に対して、堀北さんは冷たい視線を向けて言い放つ。不幸って綾小路君のことか? ひっでえ奴だな。話してみると意外と楽しいのに。
「心中察するが、それは叶わないようだぞ」
そんなやり取りをしていた俺達だが、唐突に綾小路君が教室のドアに指をさした。そこに立って居たのは、金髪のロングの髪を持った少年だった。
「……なるほど。確かに不運ね」
「知り合い?」
そう聞いたはいいが、この2人に限って知り合いって事は無いだろう。というより、俺が気になったのはその体つき。勿論いやらしい意味ではない。俺にそっちの気は無いからな。立ち姿と歩いている姿勢しか見てない為断言はできないが、相当なやり手だ。
格闘漫画みたいなこと言うなと突っ込まれそうだが、俺もそんな一目見て相手の流派を予測するだなんて人間離れしたことはできない。ただあまりにも規格外すぎて一発で分かった。あれは何かしらのスポーツで名を残せるくらいのレベルだ。
「いいや。ここに来るまでのバスで──────って事があったんだ」
「うわ、凄いな」
綾小路君が事の顛末を話してくれたが、正直な感想が口から出てくるくらいにはドン引きだ。今も机の上に足をおいて爪を磨いている……あそこまで自分を貫けるのは、少しだけ羨ましいな。
人が自らを取り繕うのは、本性を表したら集団から疎外されるからだ。それを恐れるから、皆キャラを作る。別にこれが社会と言うものだから、文句は無いけどね。人間観察と並んで、俺の得意分野だし。
そんなことを考えていると、堀北さんがいつの間にやら本を読んでいた。普通ならここで話しかけるのを辞める。だがコミュ力だけで生きてきた人間を舐めないでほしい。
「ああはなりたくないねー……おっ! それ、ドストエフスキーの『罪と罰』じゃん。いいセンスしてんね堀北さん」
『罪と罰』フョードル・ドストエフスキーの代表作でもある長編小説だ。ドストエフスキーがこの小説を執筆した時の背景などを絡めて考えると面白いんだよな。
因みに何でこんな頭良さそうな本を読んでいるかというと、これもまた完全に有栖ちゃんの影響だ。毎回読んでいる本の内容を得意げに語ってくる彼女だが、俺が? マークを頭に浮かべてると「そんなんでは私の隣に立てる人間にはなれませんよ」てな感じで、無理やり読ませてくるのだ。いや、俺は隣に立ちたいんじゃなくてヒモとしてぶら下がっていたいだけなんだけど……
「……意外だわ。人は見かけによらないものね」
少しだけ彼女の中での俺のポイントが上がった気がする。確かに俺のムーブって、頭悪めの陽キャって感じだからな。こう思われてるって事は、キャラ作りが成功してる証明にもなる。
「やかましいわい」
「私はこの手の本をよく読むけど、学校の図書館にあなたのような人は居なかったわ」
本の趣味も同じと。こりゃ頑張ればお近づきになれるかもな。顔も可愛いし、この雰囲気で頭が悪いって事もないだろう。幸先良いね。
それから数分ほど経って、始業を告げるチャイムが鳴った。それと同時に、スーツを着た1人の女性が教室へと入ってくる。
うへぇ、ちょっと苦手なタイプかも。見た目の印象だが、規律を重んじる堅い女感がひしひしと伝わってくる。
そんな失礼な事を考えている中、彼女は教壇の前に立って俺たちに呼びかけた。
「えー新入生諸君。私はDクラスを担当することになった茶柱佐枝だ。普段は日本史を担当している。この学校には学年ごとのクラス替えは存在しない。卒業までの3年間、私が担任としてお前たち全員と学ぶことになると思う。よろしく。今から1時間後に入学式が体育館で行われるが、その前にこの学校の特殊なルールについて書かれた資料を配らせてもらう。以前入学案内と一緒に配布はしてあるがな」
前の席から見覚えのある資料が回って来る。合格発表を受けてから貰ったものだ。入学式までに再度確認をという事だろう。
────この学校には、全国に存在するあまたの高等学校とは異なる特殊な部分がある。それは学校に通う生徒全員に敷地内にある寮での学校生活を義務付けると共に、在学中は特例を除き外部との連絡を一切禁じていることだ。
たとえ肉親であったとしても、学校側の許可なく連絡を取ることは許されない。凄いよな、俺のお母さんなんて初めて説明した時は泣いてたぞ。
ただしその反面、生徒たちが苦労しないよう数多くの施設も存在する。カラオケやシアタールーム、カフェ、ブティックなど、小さな街が形成されていると言ってもいい。田舎の県庁所在地なんかより何倍も学生に優しい。これはマジでありがたい。女の子とデートする場所が一杯だ。
そしてもう1つの大きな特徴。それがSシステムの導入だ。
「今から配る学生証カード。それを使い、敷地内にあるすべての施設を利用したり、売店などで商品を購入することが出来るようになっている。クレジットカードのようなものだな。ただし、ポイントを消費することになるので注意が必要だ。
────ん? 何だ、含みを持たせたな。
「施設では機械にこの学生証を通すか、提示することで使用可能だ。使い方はシンプルだから迷うことはないだろう。それからポイントは毎月1日に自動的に振り込まれることになっている。お前たち全員、平等に10万ポイントが既に支給されているはずだ。なお、1ポイントにつき1円の価値がある。それ以上の説明は不要だろう」
ちょっと待て。10万? ……ヤバい。考えてたこと全部飛んだわ。
1クラス40人、学年で160人、全校生徒で480人とした場合、1月当たりの予算で4800万円。1年で5億7600万円の予算になるんだが、それを毎年支出してるのか? いくら優秀とはいえ、ただの学生の小遣いに?
「ポイントの支給額が多いことに驚いたか? この学校は実力で生徒を測る。入学を果たしたお前たちには、それだけの価値と可能性がある。そのことに対する評価みたいなものだ。遠慮することなく使え。ただし、このポイントは卒業後には全て学校側が回収することになっている。現金化したりなんてことは出来ないから、ポイントを貯めても得は無いぞ。振り込まれた後、ポイントをどう使おうがお前たちの自由だ。好きに使ってくれ。仮にポイントを使う必要が無いと思った者は誰かに譲渡しても構わない。だが、無理やりカツアゲするような真似だけはするなよ? 学校はいじめ問題にだけは敏感だからな」
あー……流石にそうだよな。今の茶柱先生の言葉で確信したことがある。絶対に確認しておきたいことだから、ちゃんと質問しないとな。
「何か質問はあるか? 今のうちに聞いておいた方が楽だろう?」
お、来た来た。こうやって言ってくれると手を挙げやすくて良い。
ざわつくクラスメイト達を尻目に、はっきりと挙手し声を上げる。
「すみません! 2つほど質問があるのですが、よろしいでしょうか?」
「斎藤か、いいだろう。答えられる範囲でなら何でも答えるぞ」
答えられる範囲で……か。茶柱先生の了承を得た為、クラス中の視線が注がれる中、にこやかな笑みと少しだけ高いトーンを意識して話す。
「先ほど先生は『学校内においてこのポイントで買えないものはない』とおっしゃっていましたが、例えばテストの点数を購入することなどはできるでしょうか?」
「何だよお前! そんなに成績が心配なのか?」
振り返った男子生徒の声で、クラス中に笑いが起きる。こういうお調子者って、一人いてくれると全然違うよな。俺は君のこと好きだよ。
しかしそんなクラスの雰囲気に反して、茶柱先生は好戦的な笑みを浮かべている。
俺知ってるぞ。少女漫画に出て来る「へぇー……面白れぇ女」的なノリだ。
「もう1つの質問は? まとめて答えるぞ」
もう1つの質問を促さされたため、一度呼吸を整えて再度声を上げる。彼女の一挙手一投足を見逃さないように。
「分かりました。では次の質問です────
先ほどまで興味なさげに前を向いていた堀北さんが、ハッとしたようにこちらを振り返った。
そう、俺が確信したこと。それは、
さっきの話のキーワードは、『この学校は実力で生徒を測る』『入学を果たしたお前たちには、それだけの価値と可能性がある』の2つ。一見すると10万ポイントが永続的にもらえると言う意味だろうが、これは恐らくミスリード。
考えてもみてほしい。入学段階の評価で10万ポイントと言っているが、その評価は面接や試験で取ったものだ。そこから安心して成績がダダ下がりしたり、素行が悪くなったりなんてざらにあるだろう。というか、そっちの方が絶対多い。
勿論真面目に勉強をして、学生の本分を果たす者もいるだろう。しかし、実力で生徒を測ると謳っているこの学校が、前者と後者を同じ待遇にするだろうか? いや、あり得ないだろう。だってそんなことしたらみんなサボりだすに決まってる。
────その場には一瞬だが、確かに沈黙が流れた。まるでこの質問を想定していなかったかのような茶柱先生の態度に違和感を覚えるが……いや、これは
先ほどまでの彼女の様子からして、教員としてのレベルは高いように見受けられた。先ほど、発言に含みを持たせたのも合わせて推測するに、彼女は俺達にポイントが変動する事を伝えたがっている。
「何故ポイントが変動すると思った?」
「え……何? マジで変わる感じなの?」
上から茶柱先生、先ほどの男子生徒と続く。クラスの雰囲気も、少しだけ落ち着きを取り戻している。
「親に小遣いは大事に使えよーってきつく教えられていたので……ちょっと怖くなっちゃって……すみません、変な質問して」
苦笑いを浮かべながら、あくまで一般人の範囲内であろう受け答えをする。実際100%嘘はついていない。いくら金にがめつい俺でも、出会って間もない女の子に10万円ポッと渡されたら逃げる。寝てるとき刺されそうで怖いもん。
話が逸れたが、俺のこの質問に対する茶柱先生の答えを予想する。さて、どう出るかな?
「ふっ、なるほどな。いい親じゃないか? そして答えだが……すまないな。
ビンゴ。こりゃ100点だな。帰って有栖ちゃんと情報交換しよう。
「何だよ! 貰えなくなるわけじゃねえのかよ! 心配して損したわ!」
……いや、なんで今の受け答えでそう判断したんだ?
まあいいや。とりあえず必要な情報は手に入ったし、一旦引くとしよう。
「そうですか……分かりました! ありがとうございます!」
「ああ、いい質問だったぞ。他に質問のあるやつはいないか?」
ざわめきを取り戻したクラスに呼びかける茶柱先生。返事がないと判断するや否や、そのまま教室を後にした。
「……驚いたわ。意外と頭回るのね? あなた」
「意外は余計だよ意外は。でもどう? 少しは見直した?」
辛口で突っ込まれると想定した発言だったが、その返事は意外なものだった。
「ええ。ほんの少しだけど見直したわ。頭の悪そうな男から、金にがめつい頭の悪い男にね」
「……余計悪化してない?」
悪口の鋭さが高1レベルじゃないんだが……アラサーのOLと喋ってる気分だわ。
「諦めろ紡。堀北はこういうやつだ」
「あら綾小路君、あなたに彼の発言の意図が伝わったなんて……驚いたわ」
「その発言で行くと、俺は紡以下って事になるな……間違ってはいないんだろうけど」
なんと言うか……相性が良いな。俺を含めたこの3人。テンポよく会話が進むから楽しいわ。ヒモとか関係なしに普通に仲良くなりたい。
「皆、少し話を聞いて貰ってもいいかな?」
そんな会話をしていたら、唐突に男子生徒が手を挙げた。
「僕らは今日から同じクラスで過ごすことになる。だから今から自発的に自己紹介を行って、一日も早く皆が友達になれたらと思うんだ。入学式まで時間もあるし、どうかな?」
ありがて~マジで。彼が言わなかったら俺がやっていたが、こういう優等生ムーブは後の女遊びに響くからな。
ただこう言う場で賛成しておくと、ノリの良い奴と思われるから積極的に行う。俺は男相手でも余裕でぶら下がれる人間なんだ。
「いいねー自己紹介。俺賛成!」
「私も賛成ー! 私たち、まだみんなの名前とか、全然わからないしー」
俺に続いて賛成の声が多数上がってくる。いい流れだ。このままグループ作ってline交換して遊びに誘っちゃおう。
「僕の名前は平田洋介。中学では普通に洋介って呼ばれることが多かったから、気軽に下の名前で呼んで欲しい。趣味はスポーツ全般だけど、特にサッカーが好きで、この学校でも、サッカーをするつもりなんだ。よろしく」
提案者である彼はスラスラと、非の打ちどころがない自己紹介をする。
そこから席順に自己紹介をする流れになり、俺の番が回ってきた。慣れっこだから特に準備などはしていない。
「さっき茶柱先生が言ってたと思うけど、俺の名前は斎藤紡! 趣味は洋介君と同じくスポーツ全般とボードゲーム。部活はまだ決めてないから、もし一緒にやりたいって人いたら見学しに行こう! あ、あとみんなお金は大事に使うんだぞ?」
最後の発言でクラスに笑いが起こる。倹約キャラを逆手にとったギャグだ。陽キャになるにはこういう機転を凝らさないといけない。これを見ている皆はぜひ参考にしていてくれ。特に綾小路君。お前絶対自己紹介とか苦手なタイプやん?
「自己紹介ありがとう。良ければ今度サッカー部に見学しに行かないかい? 紡君」
「全然オッケー! むしろ俺から誘おうと思ってた!」
ここでサラッと平田君を名前呼びで行くんだよね。こーれポイントです。
ほら、イケメン同士の名前呼びに一部の女子が黄色い声を上げている。恐らくこのクラスは俺と洋介が女子の人気を二分するだろう……自分で言っててあれだけど、キモいな。
「────じゃあ、次はそこの君、お願いできるかな?」
そして順番は綾小路君に回ってくる。なんか考え事してたな? 上の空になってるし。
「えー……えっと、綾小路清隆です。その、えー……得意なことは特にありませんが、皆と仲良くなれるよう頑張りますので、えー、よろしくお願いします」
……終わってんな。しょうがない、アシストしてやるかー
立ったまま硬直している綾小路君の背中を叩き、笑いながら皆に顔を向ける。
「こんな下手くそな自己紹介だけど、結構面白い奴だからみんな仲良くしてやってくれ。俺の第一友達なんだ」
「そーなのー? じゃあ今度皆でカラオケ行こうよ! 綾小路君も誘って!」
まずは根暗な印象を取り除く。そうすると結構顔が良いからこの通り。良かったね、誘ってもらえて。
無事自己紹介を終えた綾小路君は、涙を流す勢いでこちらに振り返ってきた。
「ありがとう紡。お前は俺の親友だ……!」
「ふふーん。これくらい楽勝よ」
何か守ってやりたくなるんだよなーこいつ。第一友達だからなのか、それとも
まあ、最初に感じていた得体の知れなさは勘違いだろう。ごめんね、綾小路君。
「────どうだった? 有栖ちゃん。今月振り込まれたポイントは?」
5月1日。スマホで所持ポイントを確認した俺は、隣を歩く有栖ちゃんに質問をする。
俺の手元に表示されているのは7万5千程、新生活のための準備を含めたら、節約できた方だろう。
「9万4千ポイントでした。紡君の方はどうですか?」
「
嘘。ここまで差が出るとは思わなかった。何だよ0って、遊びに行けねえじゃん……何で? 何でなん? ……どうして有栖ちゃんのお父さんは俺をDにしたん?
死んだ魚のような目をする俺と対照的に、有栖ちゃんは楽しそうな笑みを浮かべている。
「────ええ。この
楽して暮らしたいだけなのに……どうしてこうなった……
────高度育成高等学校データベース 7/1時点────
氏名:斎藤紡(さいとうつむぎ)
部活動:無所属
誕生日:4月29日
身長:180㎝
体重:70kg
──評価──
学力:A
知性:C+
判断力:A
身体能力:A
協調性:B+
──面接官からのコメント──
小、中学と非常に高い成績を収めており、身体能力も中学校では部活動にこそ所属していなかったが、地域のスポーツクラブに所属し、複数の団体競技でチームをリーダーとして全国へと導いた。積極性こそないが、教師や同級生からの評価は高く、クラスメイトとの交流で積極性を身につける事が期待される。
この点だけで言えば、卒業生と比較しても抜きん出る実力者であることは確実。しかし、過度な欠席回数や、別途資料記載の問題行動を考慮しDクラスへと配属する。
──担任メモ──
クラスの中心人物として広い交友関係を築けています。しかし、問題行動の予兆を感じられるため、注意深く観察していく所存です。
因みにサブタイトルには3つの意味が込められています。
皆さん何勢の方ですか?
-
原作
-
漫画
-
アニメ