ようこそクズヒモ男の教室へ   作:妄想癖のメアリー

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相棒

 

 

 

「よしお前ら! 三日目を無事乗り切ったって事で、かんぱーい!」

 

 3日目の夜。Dクラスの生徒達は火を囲んで夕食を取っていた。池君の言葉を皮切りに、各々が喜びの声を上げる。

 

「コップは無いけどね」

 

「おいおい! しけた事言うなよ~斎藤」

 

 そんな池君にツッコミを入れると、困ったような声で軽く突かれ、また一層笑いが起こる。

 

「高円寺のヤツもバカだよなー。こんな楽しいキャンプファイアーに参加できないなんてよ」

 

 今日取ってきたばかりの焼きとうもろこしをかじり、心底呆れたように声を上げている。

 

「ね! 綾小路君と佐倉さんが見つけてくれたトウモロコシも美味しいし! アウトドアって結構楽しいかもっ」

 

「分かってるじゃねえか篠原! それにしても、こんだけ食料手に入れられるんだったら、もっと他の事にポイント使えばよかったよなー」

 

 実際に池君が言ったことは正しい。初日に果物や魚を見つけることができたが、不安だっため数日分の食料を購入してしまったのだ。

 しかし安定した食事が有ると無いとでは、安心感に大きな差が出るものだろう。それを池君に伝えると、彼は唇を尖らせて拗ねたように呟いた。

 

「ちぇ~そんなもんか」

 

「まあまあ。僕らは270ポイント以上も残せてるんだから、そこまで切り詰めなくても大丈夫だと思うよ? 先ずはこの試験を乗り切ることを考えよう」

 

「そうだな! 頼りにしてるぜー平田」

 

 確か洋介君のことが気に食わないと言っていたと思うが、この団らんは池君のそんな気持ちをも吹き飛ばすらしい。

 紆余曲折ありながらも、Dクラスは皆が一丸となって試験を進めることが出来ている。

 

「ちょっと席外すね」

 

「ん、わかった」

 

 俺は隣にいた綾小路君に断りを入れると、余分に焼いておいたトウモロコシと果物を紙皿に乗せると、皆の輪に背を向けて歩き出す。

 

「1人で寂しくない? 伊吹さん」

 

「ん……あんたは」

 

 俺が向かったのは、一人離れて寂しく体育座りをしていた伊吹さんの所だった。そのまま話しかけた後、手に持った紙皿を彼女の隣にそっと置いた。

 

「はい! 俺特製焼きとうもろこし。熱いからやけどしないようにね?」

 

「……これに特製とかないでしょ」

 

「何言ってるんだ。焼き加減とかで味が大きく変わるんだよ? いいから食べて、ほら」

 

 俺が引かないことを理解したのか、伊吹さんはため息を吐いた後、恐る恐るトウモロコシにかじりついた。

 そのまま2、3回ほどもぐもぐと口を動かした後、少しだけ目を見開いてもう一度かじりついた。

 

「あははは、美味しいでしょ? 炎天下の中頑張ってくれてたし、塩気のあるものが良いと思ってね」

 

「これ、ポイントで買ったの?」

 

 伊吹さんが指差したのは、トウモロコシに薄っすらかかっている塩の結晶だった。

 

「本当はバターとかあれば最強だったんだけど、生憎腐るものはダメみたいでね。早く味の感想聞かせてよ」

 

「……美味しい」

 

 そう一言呟いた後、伊吹さんは黙々と食べ続ける。どこか小動物的な愛らしさがあって、実に絵になる光景だ。

 

「何ニヤニヤしてんのよ」

 

 二日間栄養ブロックだけの食事は堪えたのだろうか、ちゃんと全部食べ切った後に文句を言われてしまった。

 

「ごめんごめん。お代わりいる? まだたくさんあるけど」

 

「……いらない。そんな食べないし」

 

 ちょっと迷った? ……ま、これ以上追及したら怒られそうだから、ここに来たもう一つの目的を済ませることにする。

 

「そうだ、ちょっと叩かれたほっぺ見せてよ。どんな感じになってるか見たいし」

 

「ん? いいけど……ちょ!? どこ触って「はーい、落ち着いて。冷たいの来るよ」ひゃっ!」

 

 反対側の頬に手を添え、声を荒げる伊吹さんの頬にタオルでくるんだ保冷剤を当てる。

 

「え、これ……」

 

「余ったポイントで、保冷剤とソーラーパネル付きの小型冷凍庫をレンタルしたんだ。昨日冷やして、やっと使えるようになった感じ」

 

 日中は電源無しで動かせて、夜も10時間近く持つ優れモノだ。10ポイントと破格だったが、仮設トイレやシャワーに比べると買った時の値段も安いし、割と妥当だろう。

 熱中症予防+働き終わった後のご褒美として大人気だったが、どうやら伊吹さんは存在すら知らなかったらしい。

 

「早く治るといいね。20分くらい付けたら、また5分くらい休んでつけるのを繰り返してく感じでやってみて」

 

「……ありがとう」

 

「どういたしまして……えっと、そろそろ手離しても大丈夫かな?」

 

 因みにさっきからずっと両頬を手のひらで支えたままである。さっきは小動物みたいと言ったが、今回に関しては猫みたいだな。

 

「あ……わ、分かったから早くあっち行って!」

 

「あはは、仰せのままに……俺達は何時でも歓迎だよ? 伊吹さん」

 

う……ホント、お人好しなんだから

 

 そう言って皆の所へと戻って行く。少し寂しそうな様子の伊吹さんだったが、あっちから来てもらうのを待つのが一番いいからね。

 

 見えてきたのは綾小路君の無防備な背中。特に話す人もいないのか、ボーっと火を見つめている……よし、この前の仕返しをしてやろう。

 俺は隣においてある小型冷蔵庫から保冷剤を取り出すと、綾小路君の首元にピタッと当てた

 

たうわ!? 

 

「ぶっ……っはははは! 『たうわ!?』だって、ははは!」

 

 だめだ。流石に面白すぎる。ホワイトルーム最高傑作が『たうわ!?』って。腹痛てぇマジで。

 

「……紡?」

 

「ちょ、だめ。ごめん綾小路君。流石に笑うわ……ってええっ!?」

 

 俺が笑い転げていると、綾小路君はいつの間にか俺を横抱きに抱え、そのまま隣の川に放り投げる。

『ザバッ!』っと大きな音が鳴り、俺のケツとジャージは尊い犠牲となった。

 

「痛ってぇ!? やりすぎだろ! 風邪ひいたらどうすんだよ!」

 

「馬鹿は風邪ひかないって俗説を知らないのか?」

 

「俗説の意味調べてこいバーカ!」

 

 自然に笑えるようになって嬉しいとか言っておきながら、クソウゼェ薄ら笑いを浮かべている綾小路君。

 

「どうせシャワー浴びるんだから気にするな。その間火に当ててれば乾くだろ……っ!?」

 

 俺は得意げに語る綾小路君に、己の身体能力の全てを駆使して水をぶっかける。波の様に押し付ける水の塊に、綾小路君はたちまちびしょ濡れになる。

 

「だったら上がって来いよ綾小路君。世間知らずの都会っ子に、俺の恐ろしさを見せてやる」

 

「……後悔するなよ」

 

 そう言って身の丈のまま飛び込んでくる綾小路君。────上等だ、ぶっ潰してやるよ。

 

 

 

 

 

「……」「……」

 

 1時間後。俺達は上裸で仲良く、バチバチと音を立てる焚火に手をかざしていた。その隣には、びしょ濡れになったジャージと下着の一式が並んでいる。

 

「────バカなの? あんた達」

 

 ────そんな伊吹さんの視線が、燃え盛る炎よりも冷たく突き刺さった。

 

 

 

 ────────────────

 

 

 

 試験4日目の深夜。オレは紡と深い森の中を歩いていた。月明りしか道を照らす術がない中、紡は迷うことなく歩みを進めている。

 

「……よく迷わないな」

 

「まあね~。にしても、昨日のアレで体調崩してたらお笑いだよホント」

 

 どうやらお互いに馬鹿だったらしく、昨日のじゃれ合いで風邪をひくなんてこともなかった。全く……こんな形で、丈夫な体に感謝したくなかったぞ。

 そんなことをボヤキながら、今日得た情報を紡と共有する。

 

「へぇー……葛城君は現在2つのスポットを占領してるんだ。そして、3つ目の塔に関しては占領してないと」

 

 昨日のブチ切れた様子はどこへやら、紡は顎に手を当てて考え込んでいる。

 

「ま、Aクラスについては余裕だね。これから天候も悪くなりそうだし、運は俺達の味方みたいだ」

 

「最初に聞いたときは耳を疑ったが、これ以上コスパのいい作戦は浮かばないな」

 

「因みに綾小路君が言ったことを参考にしたんだけど」

 

 ……そんなこと言ったか? そうオレが疑問を浮かべていると、紡は咳払いをして話を変えた。

 

「まぁいいや。後は()()()()()だね……さて、どうする? 伊吹さんだけど」

 

「罪悪感で犯行を止めさせる作戦だったか? 正直上手くいきそうにもないが」

 

「言い方良くないぞー。というか、俺的には躊躇するくらいで止めておきたいんだよね。そうしないと龍園君にまた制裁されちゃうし」

 

 あくまで伊吹を案じているところは変わらないらしい。

 そのまま数分ほど歩き続けると、前を歩いていた紡が横に手を伸ばしてきた。止まれのハンドサインだろう。紡が見ている方向を凝視すると、薄っすらとした光が見えてきた。

 

「この類は綾小路君の得意分野でしょ? 偵察、頼んだよ」

 

「……分かった」

 

 いくらホワイトルームでも、忍者の育成はやってないんだがな……しかし、こういう特殊部隊的なやり取りは、男として心躍るものがあるな。

 そんな余計な思考をしていると、少しだけ開けた場所に出た。ゆっくりと茂みから顔を出すと、パチパチとした音が聞こえる。どうやら光源の正体は、誰かが焚いた炎だったらしい。

 

「龍園さん……俺たちゃ何時までこんな事しなくちゃいけないんすか?」

 

「うるせぇ。もう少しで良いものが見れるんだ。だから黙ってとっとと寝ろ。アルベルトもだ」

 

 そこにいたのは、須藤事件の主犯である石崎と、リタイアしたはずの龍園だった。隣には、大柄な黒人の生徒もいる。

 ……なるほどな。やはりオレ達の見立ては当たっていたようだ。

 

「……あ?」

 

 このまま聞いて居たいのは山々だが、これ以上はマズイな。

 そう思ったオレは、龍園にバレる前に紡の下へと引き返した。

 

「ナイス偵察だ綾小路君。これで伊吹さんと、Bクラスに居た男子生徒はスパイで確定だね。そして彼の目的も、何となく想像がついた」

 

 恐らく紡も同じ結論へと至ったのだろう。

 ────龍園の目的、それは最初から変わっていなかった。()()()()()()()()()()()()()()()()という目標から。

 

「恐らく最初Aクラスに取引を持ち掛けたのも、葛城君の性格からしてスパイ行為を成功させるのが、他クラスに比べて難しかったからだろうね。そして、()()()()()()()()()()()()()()()()か……」

 

「想像していたよりも警戒すべき男だな。龍園は」

 

 わざわざ残りの100ポイントでデジカメを用意する必要は無い。伊吹が龍園に直接教えれば良いからだ。

 ーーーーとなると、自ずと可能性は1つに絞られてくる。

 

「……『アレ』は最終手段だ。この無人島試験を、堀北さんの成功体験の一つにしたいからね。裏で俺達が全て操ってたとなると、また彼女の成長を妨げる事になってしまう」

 

 紡の言葉に小さくうなずいて同意する。

 

「同意見だ。Aクラスの方は任せたぞ。オレは伊吹に集中したいからな」

 

「────了解。気張って行こうぜ? 相棒」

 

 

 





無人島試験四日目終了
Dクラスが保有するポイント:278ポイント(ボーナスポイント)

 「たうわ!?」は、原作一巻で綾小路君が、堀北さんにコンパスで刺された時の反応のオマージュです笑
 上裸で火にあたるシーン。あまりに2人の体つきが良すぎた為、それを見ていた女子たちの話題はそれ一色に染まってしまいました。その中で何人かは、腐の道を歩みかけた生徒もいます。イケメンランキング1位と6位だからね、しょうがないね。

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Twitter始めました。ほとんど初めてなので不備があったら教えてください。

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