ようこそクズヒモ男の教室へ   作:妄想癖のメアリー

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ちょっと忙しさに怠けてました!
テスト期間中なので、12月入ったらもっと更新できると思います!

時間開いちゃってるので、前話と矛盾があったらご指摘いただけると幸いです!


第四章
戻りし日常


 

 

 

「────以上が特別試験の結果です。140ポイントで2位だったBクラスと比べてもその差は圧倒的です。満足いただけましたか?」

 

 試験を終えた日の夜。俺は茶柱先生に呼び出され劇場へと足運んでいた。今日の公演は既に終わったらしく、俺たち以外場内には人っ子一人見当たらない。

 

「ああ。……現在のDクラスの95ポイントと合わせると450CP。542CPのCクラスには及ばないが、十分射程圏内に収めたと言えるだろう。懸念だったCクラスとの取り引きも、一体どんな手品を使ったのか知りたいくらいだよ」

 

 契約の保証をして貰ったため、龍園君と結んだ内容も筒抜けだ。

 

「伝える相手が違いますよ茶柱先生。こと今回の試験では、俺は何もしてません」

 

 戸塚君のキーカード盗んだ以外、俺がやったのは神室さんに飯集ったぐらいだ。

 

「そうか。まぁいい。綾小路も上手く動いたようだからな」

 

 一瞬だけ何かを思案した後、茶柱先生は足を組みなおして満足げに語った。

 清隆君の名前は1度も出てないのに、わざわざ言い直す当たりこの先生の性格の良さが伺える。

 

「……では、俺はこれで失礼します。こっちはあれだけ苦労したんだ。約束は守ってくださいね」

 

 腹立たしいが、ここで反抗するメリットは無いため大人しく引き下がることにする。

 

「ああ。ご苦労だったな。斎藤」

 

 そんな心にもない労いの言葉を受けながら、オレはその場を後にした。

 

 

 

 ────────────────

 

 

 

 無人島での特別試験が終わってから3日。オレたち高度育成高等学校の生徒を乗せた豪華客船では、何事も起きることなく、平穏な時間が保たれていた。

 無人島でのサバイバルなど、青春を謳歌する学生にとっては、冷静な判断を失いがちな場であったことは今更言うまでもないことだろう。かく言うオレもその例外ではなかったようで、昔の自分からは考えられない様な行動をとってしまった。

 

 

 

 

 

「……そんな物語の中に出てくるような施設が、本当に存在するなんてね」

 

 ────思い起こされるのは3日前の記憶。

 オレは()()()()()()()()()()()()()()()()。もちろんオレの生まれ育った場所である『白い部屋』についてもだ。

 紡が驚いたようにこちらを見ていたが、オレだって驚いている。自分の弱みをみすみす明かすような真似をしたんだからな。というより、言って信じてもらえるかも怪しい話だ。『自分は人工的に天才を作る施設の実験体で、物心つく前から施設から一切出ずに生活してきた』だなんて。

 

「ああ。信じられないか?」

 

「ええ。そんな人権を無視した実験が、本当に日本で行われていただなんて……そう簡単に信じられないわ。でもどこか納得がいったわ。そのちぐはぐな人間性が出来た経緯がね」

 

 堀北はそこまで驚いた様子ではなく、納得すらしていた。「そこまでオレは世間一般から外れた学生ではない」と抗議したかったが、紡も同じような意見だったため、堀北の言っている事が正しいのだろう。

 

「それで、一体なぜこのタイミングでそれを明かしたのかしら? 正直、黙っていた方が得策だと思うのだけど」

 

「……オレは今後似たような状況になったとしても、同じことをするという確信がある。だが、お前がオレの目的を知って動いてくれれば、そういう状況を減らすことが出来ると考えた。ただそれだけだぞ」

 

「要は、なるべく鈴音ちゃんを傷つけたくないって事だよ。だよね? 清隆君」

 

 まるでオレがツンデレかのような言い方をされて不服だが、実際間違いはないため黙ってうなずいておく。

 こちらが傷つけておいて都合の良い事を言うもんだと自分でも思ったし、その身勝手さも重々承知している。ビンタ位なら甘んじて受け入れるつもりだったが、またもや堀北の反応はオレの予想の斜め上を行くものだった。

 

「……呆れた。やっぱりあなたは大馬鹿者よ。綾小路君」

 

「……は?」

 

 しかし、ここでも堀北から帰ってきた反応はオレの予想外のものだった。唖然とする俺を尻目に堀北は続ける。

 

「先ほどの話を聞いたら、あなたがただいたずらに試験を裏で操ってたなんて思えない。これはただの予想だけど、そうせざるを得ない状況だったのでしょう?」

 

「……そういう問題じゃないだろう。オレは、自分のためにお前を傷つけた。友達であるお前を……」

 

 完全に言い当てられてしまった。試験の疲労が抜けていないのか、はたまた()()()()かは分からないが、何時もスラスラ出るはずの繕った言葉が出ることは無かった。

 

「もういいんじゃないかな。清隆君。鈴音ちゃんも病み上がりなんだしさ、素直に認めちゃいなよ」

 

 隣から紡の軽薄な言葉が聞こえて来る。動揺しているオレを面白がっていることは、表情を見ずともよく分かった。

 

「言うなら最後まではっきり言って欲しいものね。『助けてください堀北様』って。そうしたら考えてあげても良いわよ」

 

「……もしかして鈴音ちゃんってそういう趣味の……ちょ、ごめん叩かないで」

 

「口は災いの元。よく覚えておきなさい」

 

 何処か入学したてを彷彿とさせる棘のある言葉だったが、その内に込められた暖かさに気が付かない程、オレは鈍感ではなかった。

 すぐそっちの方面に持っていこうとする紡の悪い癖が働いているが、今に限ってはありがたい事だった。

 

「2人とも」

 

 目の前で漫才のようなやり取りを繰り広げる2人に、オレは小さく呟いた。

 

「ん?」「何かしら」

 

「……ありがとう」

 

 もう少し気の利いた言葉を言いたかったのだが、どうやらオレの頭は思うように動いてくれないらしい。

 ────そしてその理由も、今になってようやく確信が付いた。

 

「あはは。今更だと思わない? 鈴音ちゃん」

 

「そうね。友人同士がこんな事でわざわざありがとうなんて、普通は言わないと思うのだけど」

 

「……お前も今まで友達いなかったくせn「随分と元気になったみたいね? 綾小路君」……ごめんなさい」

 

 そんな俺のぼやきも、堀北の手刀によって無に帰すことになる。そしてそんなオレ達のやり取りを見て笑う紡。

 またいつもの日常が戻ってきたと、ほっと胸をなでおろすオレがいた。

 

「泣いたり笑ったりして忙しいね? 清隆君」

 

「うるさいぞ。オレは泣いてなんかない」

 

「はいはい」

 

 ────どうやら、オレはこの2人の事になると上手く頭が回らなくなってしまうらしい。

 

「……用が済んだなら帰って貰えるかしら? 風邪移っても知らないわよ」

 

「やっぱり堀北さんも大概だよね「何か言ったかしら?」ひぃ……ほら、帰るよ清隆君!」

 

 紡と2人で逃げるように部屋から出る。何ともバカみたいなやり取りだが、そんな些細なことでさえオレは楽しく感じる。

 

「よし! じゃあ俺は疲れたから寝るっ! 夜ご飯一緒に食べよう清隆君。また後で連絡するね」

 

「ああ」

 

 ────だが、それが特段悪いことだと、オレは微塵も思わなかった。

 

 

 

 

 

「恵まれてるな。オレ」

 

 そんなことを思い返しながら、オレは上機嫌に自室で読書を再開する。

 オレがわざわざ船内に持ち込むことに違和感を抱いている人が居たら、その違和感は正しい。この本は堀北から「どうせ遊ぶ相手もいないだろうし」とのことで貸してもらったものだ。体調が悪い堀北はともかく、オレは紡と一緒に過ごすつもりでいた為、この本を読み切ることは無いだろうと思っていた。思っていたのだが……

 

「……もう最終章か」

 

 文庫本一冊の小説だが、ページはもうほとんど残っていない。因みにこれで読み返すのは二回目である。

 

「あれ? もしかしてずっと部屋にいるの?」

 

 ため息を吐きながらすでに知っている結末を見届けていると、同じ船室でのルームメイトである平田が話しかけてきた。

 

「特に出歩く理由もないし、遊ぶ相手も……居ないことは無いんだが」

 

「だよね。堀北さんとか、紡君とか」

 

 そう。今のオレには気軽に誘える友達がいる……居るはずなんだが。

 

「堀北は他の女子達にずっと連れまわされてるし、紡はずっと坂柳と一緒にいる」

 

「あっ……」

 

 何かに気が付いてしまったという表情を浮かべる平田。頼むからそんな顔で見ないでくれ。心が痛むから。

 先の無人島試験での結果は、紡と堀北の功績だとクラスメイトには伝えている。目の前の平田も例外では無い。棘が取れてツンデレキャラが固定化されている堀北が、試験では機転を利かせてクラスを救ったとなれば、人気者になるのは当たり前と言える。堀北自身もクラスメイトとのコミュニケーションが大事だと自覚している為、断ることなく積極的だ。同性の友達が増えるのも時間の問題だろう。

 

「凄かったもんね、堀北さん。紡君が抜けた後も頑張ってたし」

 

 本人のストイックな性格が功を奏したのだろう。今堀北の株はうなぎ上りだ。櫛田が発狂しないか気がかりだが、そうなったとて問題はないだろう。

 

「……まあな。流石だよ」

 

「でも試験で頑張ってたのは、綾小路君も同じだと僕は思うよ? 色々な仕事を率先してやってくれたしね」

 

「地味な仕事だけどな」

 

「それでもだよ」

 

 気を使われてしまったな。別に労いの言葉が貰えないことに不満をもってはいないのだが……

 

「今だから2人とも忙しいだろうけど、綾小路君から誘えば来てくれると思うよ? 余計なお世話だけどね」

 

 ……こちらもお見通しか。あちらからお誘いが無いことに不満を感じているわけではない……いや、正直少しだけ不満を感じている。

 

「まあ、その時までオレは本でも読んでるよ」

 

 そう言って三度目のエピローグを読み終えてしまった。堀北の下へ別の本を借りに行こうとしたが、友達がいないから時間が余っている奴だと思われるのはオレの精神衛生上よろしくないから辞めた。

 

「そうだ。じゃあ僕とお昼ご飯でもどうかな?」

 

 二人きりの室内。ベッドで隣り合わせに座り、オレに真剣な眼差しを向ける平田。紡もそうだが、Dクラスの二大イケメンと言われるだけあって相当顔が良い。

 

「……意外だな。てっきり他の誰かと約束しているものだと思っていたが」

 

 変な方向へと向く思考を戻しながら、オレは平田に問いかける。

 

「あー……元々軽井沢さん達から誘われてたんだけど、彼女たちとならいつでも食べられるよ。でも、綾小路くんとはこうして同じ部屋にもなったわけだし、一緒に食べられる機会は今までほとんどなかったから」

 

 あくまで聞かれたから答えただけで、誘われている事を隠してまでオレと食事を共にしたいと……なるほどな。

 

「分かった。俺でよければ一緒に頼む」

 

「ほんと! ありがとう綾小路君! 時間もちょうどいいし一緒に行こう」

 

 オレの理性が裏があるぞと囁いて来るが、三日間紡と堀北が楽し気に遊ぶ傍ら、1人寂しく引きこもっていたオレにその言葉が通ることは無かった。

 善は急げと言わんばかりに部屋を出る平田にルンルンで着いていく。もしかしたらこの食事がキッカケで新たな友人が出来るかもしれない。そんな楽観的な思考を巡らせながら目的の店へと向かう。

 

「やっぱり混んでるね……早めに座っちゃおう」

 

 目的のお店に辿り着くと半数以上の席が埋まっていた。人ごみに紛れ込むように、まだ空きが残っている席を二人で確保する。

 席につきメニュー表に視線を落とすなり、平田は少し申し訳なさそうに話を切り出した。

 

「実は……少し相談があるんだ」

 

 

 

 ……やっぱり裏があったか……

 

 





ウキウキで着いていったら、やっぱり裏があってがっかりする綾小路君でした。
平田君は原作より少しだけ焦っています。その原因は次回明らかになるのでお楽しみに!

軽井沢さんどうしよう

  • ヒモのヒロイン(ドロドロに依存される)
  • 綾小路のヒロイン(原作より健全な仲)
  • 作者に任せる
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