ようこそクズヒモ男の教室へ   作:妄想癖のメアリー

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三人称→紡視点→綾小路視点です。書いてて思ったけど結構失敗でした。難しいです。
綾小路が『俺』って言ってたら間違いです。確認漏れあるかも。



日常

 

 

 

「それで、どうでした? 紡君のクラスは」

 

「正直言うけど、一部を除いて何で入学させたのーってヤツばっかりだった」

 

 入学式を終え、坂柳と斎藤は、坂柳の自室にて昼食を取っていた。

 

「あら、意外ですね。私のクラスは、程度の差こそあれ面白い方が沢山いらっしゃいましたよ?」

 

「俺んとこはもう酷いもんだよ。なんかの手違いで頭悪い高校来ちゃったかと錯覚したもん」

 

 折り畳み式の小さなテーブルに皿を置き、クッションに座る斎藤と、部屋に備え付けられている勉強机に座る坂柳。

 

「というより、なんでわざわざ俺に飯作らせたんだよ。ファミレスとかでよくない? お金いっぱい入ったんだし」

 

 キッチンには、濡れた状態で水切りに置かれた包丁とフライパンが置かれている。どれも斎藤が選んだそこそこ値が張る商品だ。

 

「外食するよりも、私は紡君の手料理の方が好みです。それと、この楽しい時間にノイズが入ってはいけませんからね」

 

「……さいですか。で、有栖ちゃんはここに()()()()の?」

 

 抽象的な質問だったが、坂柳にはそれが何を指しているかを理解することは簡単だった。

 

「私はここにきて正解だったと思っていますよ」

 

 これもまた掴みどころのない返答だったが、それを聞いた斎藤はその意味を理解したのか、げんなりとしながら床に寝転んだ。

 

「一切の煩いもなく、俺が平穏に女遊びするルートは?」

 

「あり得ませんね。第一、私という飼い主が居るのに、他の人に尻尾を振るような犬は要りません」

 

「誰がペットだ。そもそも何でお前が主導権握った側になってるんだよ」

 

 床に手をついて、呆れたように坂柳を見つめる斎藤。そんな中、食事を終えた坂柳が突然椅子から立ち上がった。

 反射的に手を差し出そうとする斎藤だったが、それを左手で制した坂柳は、上機嫌に小さく笑っている。

 

「なんだよ」

 

「いえ、無意識に私を支えようとしたあなたが、少し面白かったので」

 

「うざ」

 

 そう呟きながら横を向き足を伸ばす斎藤だったが、次の瞬間彼の頬が両手で包まれる。その冷たい感触に驚いて前を向くと、足を伸ばした斎藤の上に跨って立つ坂柳が居た。

 身長差からか、斎藤の頭は丁度坂柳のへその辺りにある。そして頬を撫でながら、小さく語り掛ける坂柳。

 

「嘘です。嬉しかったですよ。あなたと過ごしてきた月日を感じることができて」

 

「……杖持てよ。危ねぇだろ」

 

 いつも手に持っている杖は、彼女の右手首に掛けられている。

 

「その時はあなたが支えてください。まあでも、そうですね……じゃあこうしましょうか」

 

「ちょ、おま……」

 

 そのままストンと股関節の辺りに腰を下ろした坂柳、自然と形の良い臀部の柔らかい感触が伝わってくる。抗議の声を上げようとした斎藤だったが、もう一度頬を手で包まれたことでその声は尻すぼみになっていく。

 そして、息の温かさを感じられるほどの至近距離で、まじまじと斎藤の顔を見る坂柳。そして数秒の沈黙が流れた後に口を開いた。

 

「綺麗な肌ですね。一体どんなスキンケアをしてるのでしょうか?」

 

「……いい加減離してくんない?」

 

「あら、失礼しました。では少し目を瞑っててください」

 

 そう言って斎藤の顔をくいっと横にずらした坂柳。訝し気な顔をしながら目をつむった斎藤が、口を開こうとしたその瞬間

 ────彼の左頬に小さく、柔らかい感触が走った。

 

「マジか」

 

 斎藤の左耳に顔を寄せた坂柳は、そのまま唇に指をおいて小さく囁いた。

 

「ここはお預けです。あなたが、生涯を私と共にするという覚悟が出来た時に返してください。一応言っておきますが、浮気なんていう舐めた真似をしたら、許しませんからね?」

 

「……分かりました。でも、何で今?」

 

「餌付けです。この学校には魅力的な女性が沢山いるようなので」

 

「別にそんなことしなくても良いのに……」

 

 そんな斎藤の様子を見て満足げに笑った坂柳が離れようとするが、その背中を包み込むように、がっしりとした腕が回される。完全に密着しているためか、互いの心音もはっきり聞こえる。

 そんな力強くも優しい抱擁に、一瞬目を見開いた坂柳。しかし、自身の首元に顔をうずめた斎藤を見て、呆れたような表情を浮かべる。

 

「……何をしてるんですか?」

 

「いや、いい匂いだなって」

 

 そう言った彼はスンスンと大げさに鼻を鳴らし、さらに耳裏や首元を指先でさわさわと撫で始めた。

 

「……」

 

「嗅ぎ慣れた柔軟剤やシャンプーの匂いに、薄っすらと汗の匂いが混じって余計えr「いい加減にしてください」痛ったぁ!?」

 

 坂柳は斎藤の耳を両手で思いっきり引っ張り、そのまま急いで立ち上がった。自身の心音が大きくなったと自覚しつつも、それをかき消すように強い口調で言い放った。

 

「危うく流されるところでした。本当に油断も隙も無い男です」

 

「いや、でも人生思い切りが大事だって言うじゃん? キスは取っておくからさ」

 

「駄目です。私の覚悟を溝にでも流すおつもりでしょうか?」

 

「くっ……」

 

 そんな締まらない空気の中、二人は食事を終えた。

 

 

 

 ────────────────

 

 

 

「それで、結局の所どういう方針で行くの?」

 

 どうも、ビックウェーブに乗ろうとしたら耳を破壊された斎藤紡です。いや、あんなんされて手出さない男居ないと思うんですけど。

 そんなことはさておき、本題に入ろう。朝約束した時は、ただ生活用品を備えるためだけに集まったが、こればっかりはしょうがない。

 

「とりあえずは情報を集めましょう。毎月10万ポイント貰えるだなんて絵空事があり得ないことは、さっきの買い物でも証明されましたから」

 

「まぁね」

 

 俺達が出先で見つけたもの、それは数量限定の無料商品だった。

 

「覚えている限りだと歯ブラシや絆創膏、使い捨てのカミソリ等、どれも必需品と言える商品ばかりでしたね」

 

「浪費癖のある生徒への救済措置にしては甘すぎるな」

 

「私の予想が正しければ、恐らく学食なども無料の商品があると思われます」

 

「うわ嫌だなそれ。劣等感エグそう」

 

 自分だけ成績悪くて飯もロクなの食えないとか、周りの視線が痛いだろうな。そんな劣等生と付き合ってくれる可愛い子なんかも居ないだろうし。

 

「現状支給されるポイントが減るという情報しかないからな。まずは上級生に聞き込みでもしてみるか」

 

「緘口令が敷かれているとは思いますが、口で教えてもらう必要はありませんからね。この学校にはボードゲーム部があるそうです。今度先輩方にご挨拶に行きましょう」

 

 チェスでボコして動揺させて、その後情報を盗むってか……ドンマイ。名前も知らないボードゲーム部の先輩方。

 

 

 

 ──────────────────

 

 

 

 学校2日目、その昼休み。オレこと綾小路清隆は、今大きな一歩を踏み出そうとしていた。

 

「えーっと、これから食堂に行こうと思うんだけど、誰か一緒に行かない?」 

 

 平田は立ち上がると、そんなことを言った。こいつの思考回路というか、リア充っぷりには頭が下がる。昨日までのオレだったら、救世主が現れたと喜んで付いて行くだろうが、今のオレには斎藤紡という親友が居るのだ。

 何やらバックをガサゴソと漁っている紡。彼が平田の声に気が付いていないのは幸運だった。オレと平田だったら、流石にあっちに行くだろうからな。女子もいっぱい居るし。

 

「────な、なあ紡「斎藤君! 平田君と一緒に学食行くけど来る?」……」

 

 オレは舐めていたのかもしれない。自己紹介を派手に失敗したオレをフォローできるほどのコミュ力を持ったイケメンの人気を。……どういうことだよ! 何で他の奴らに見向きもしないで紡だけ誘うんだよ! 

 ……これは無理だろうな。流石にあの集団に誘われて断る男子は居ないだろう。

 

「あ! ごめん軽井沢さん。俺、弁当作っちゃってるんだよね……」

 

 弁当、しかも手作りだと!? オレの中で紡の人間としての格がどんどん上がっている。

 男子、それもクラスの人気者が弁当を自作してるなんて、気にならない女子は居ないだろう。現に彼の周りには大勢の女子が集まって輪を形成していた。

 

「え! すごい斎藤君、それ自分で作ったの!」

 

「うん。昨日モール行って食材買ってきたんだよね。ほら、凄いっしょ」

 

 弁当が開く音と、女子たちの感嘆の声が聞こえて来る。因みにオレは人だかりのせいで見ることができない。

 

「って事でごめんね。明日一緒に行こう?」

 

「うん! 分かったー」

 

 そんなやり取りの後、彼女たちは教室を後にした。なんと言うか、しっかり後日行こうと約束を取り付ける辺り、レベルの違いを感じる。

 

「あれ、綾小路君一緒行けばよかったのに」

 

「そこの彼は、あなたと一緒に食べたかったらしいわよ。見ていてこっちが恥ずかしくなったわ」

 

 そんな声が隣から聞こえてきた。凄い恥ずかしいからやめて欲しいんだが。

 堀北の話を聞いた紡は、納得がいったという様子で謝罪をしてきた。

 

「あ、なるほど。ごめんね綾小路君、気が付かなくて」

 

「いや、紡は悪くない。大丈夫だ」

 

 しょうがない。一人で学食行くか……

 

「良かったらコンビニ行ってなんか買って教室で食わない? 俺飲み物用意してくるの忘れちゃってさ。学食の方が良いならアレだけど」

 

「……! 行こう、いや、行ってください!」

 

 紡の後ろに後光が差しているように感じた。それほどまでオレは、友達との食事というものに飢えていたのだろうか。

 

「よし、じゃあ行くか」

 

 教室を出ていく紡に付いていく。今オレの表情は、緩み切っててそりゃ酷いものになっているだろう。高校で友達と買い物に行くというのは、普通の人にとってはありきたりな事なんだろうが憧れだったのだ。これくらいは許してほしい。

 

「あ! 紡くんと綾小路くん!」 

 

 突然美少女に声を掛けられた。クラスメイトの櫛田だ。こうして正面から見るのは初めてなので、物凄くドキドキする。

 

「あれ、櫛田さん。皆と学食行ったんじゃなかったの?」

 

「後で合流するよー。二人に話かけたのは、少し聞きたいことがあって……」

 

 二人ということは、オレにも用があるんだろうか。紡は既に知り合いの様な話し方をしているが、オレは櫛田と話したことは無い。というか、こんな美少女と話したら絶対記憶に残る。

 

「オレにもか?」

 

「うん。二人って、堀北さんと仲が良いのかなって思って」

 

 どうやらオレに用件と言うより、堀北が目的だったらしい。ちょっと悲しい。

 

「あ、うん。その、一日でも早くクラスの子とは仲良くなりたいじゃない? だから一人一人に連絡先を聞いて回ってるところなの。でも……堀北さんには断られちゃった」 

 

 あいつ、勿体ないことを。こんな積極的な子がいるなら、便乗して連絡先くらい教えたら良かったんだ。そしたら意外とすんなりクラスに馴染めたかも知れないのに。

 

「綾小路君は、入学式の日も、学校の前で二人で話してたよね?」 

 

 バスが一緒だったことを考えれば、オレと堀北の出会いを見ていても不思議じゃない。

 

「堀北さんってどういう性格の人なのかな。友達の前だと色んなこと喋ったりする人?」 

 

 彼女は堀北のことを知りたいのか、色々と聞いてくるが答えられそうなことは何もない。

 

「堀北さんは人付き合いが苦手なタイプだよ。積極的に関わりに行くのはちょっとお勧めしないかなー」

 

 オレも同意見だ。あいつは同性の櫛田だからといって優しくするような人間じゃない……もしかしたら、オレが昨日下の毛の話とかをしたせいかもしれないが。

 

「どうして堀北のことを?」

 

「ほら、自己紹介の時、堀北さん教室出て行っちゃったでしょ? まだ誰ともお話ししてないみたいだし、ちょっと心配になっちゃって」 

 

「凄いよな。自己紹介の時に出ていく度胸。確かにらしいっちゃらしいと思うけど」

 

 その状況を思い出したのか、感心したように頷く紡…いや、いくら自分を貫いているからと言って、そこを褒めるのは良くないと思うのだが。

 そんな少しずれている紡に心の中でツッコミつつ、目の前の美少女について思案する。たしか、この子はクラス全員と仲良くなりたいと、自己紹介の時言っていた気がする。

 

「話は分かったけど、オレも昨日出会ったばっかりだからな、助けにはなれない」

 

「綾小路君が知らないなら、俺はもっと知らないかなー。話すきっかけも綾小路君だし」

 

「ふぅん……そうだったんだ。てっきり同じ学校の出身か昔からのお友達だと思っちゃった。ごめんね二人とも、いきなり変なことを聞いて」

 

「全然大丈夫よ。綾小路君も櫛田ちゃんみたいな可愛い子と話せて嬉しかったんじゃない?」

 

 ここでそのパスをしてくるか! オレには難易度が高いぞ紡! 

 

「あ、ああ。櫛田と話せて嫌な奴なんて、居ないんじゃないか?」

 

「そ、そんなことないよ! でもありがとう二人とも! 綾小路君とは初めてだったよね? 改めてよろしくね」

 

 手を差し出され、ちょっと戸惑ったが、オレはズボンで手を拭いてから手を握った。

 

「よろしく……」 

 

 今日はラッキーなことがあるかもしれない。というか連続で幸運が訪れすぎて逆に怖いくらいだ。

 

 それからコンビニに立ち寄りパンを買ったオレは、紡と一緒に教室に戻った。そのまま席に着くと、オレの席を後ろに返してくっ付ける。おお! 実際にやってみると色々と感慨深いものがあるな。

 そのまま食事を始めたオレ達は、取り留めのない会話をする。何と言うか、オレの憧れだった行動全部紡のおかげで出来てる気がする。感謝してもしきれないな。後は彼女さえいれば完璧なんだが……

 

「……なぁ、紡って彼女居た事あるか?」

 

「どしたの突然。まあ……ないことは無いけど、そんな聞いてて面白い話でもないぞ?」

 

 まあそうだよな。紡がモテない世界線を想像できないし。そんな話をしていると、先ほどまでだんまりを決め込んでいた堀北が急に口を開いた。

 

「綾小路君に話の整合性を求めるのは酷よ。今も必死で話題を探してるに違いないわ」

 

「こいつ……こういう時だけ饒舌になりやがって……!」

 

 何分当たってるのが余計に腹立つ。

 

「なに? 俺の恋バナ聞きたいの、綾小路君?」

 

「ああ。参考にしたい」

 

「綾小路君はその無気力さと、たまに出るデリカシーのない発言を改めないと、彼女なんていつまで経ってもできないわよ」

 

「お前は黙っててくれないか……」

 

 さっきも言ったが、堀北のいう毒舌は基本正論を突き付けて来るタイプの毒舌だ。職場の上司に居て欲しくないランキングなんてものがあったら一位を取れるだろう。

確かこういうのをロジハラと言ったはずだ。どこぞの海軍大将じゃあるまいし、正義を押し付けるのはやめて欲しい。言い返せないから。

 

「あんま参考になんないよ?」

 

「……参考にならないなんて事あるか?」

 

 んーと唸りながら、彼らしくもない歯切れの悪さを見せている。5秒ほど迷った後、紡は口を開いてその恋愛遍歴を教えてくれた。

 

「初めて彼女が出来たのは小1の時、思い出深いのは相手のお母さんに、『そんなガリガリな体じゃダメよ!』って言われて飯めっちゃ食わされたことかな。めちゃくちゃ懐かしいわ」

 

「昔は痩せてたのか? 意外だな。小さい頃から運動してたって言ってたから、ちゃんと食ってるものかと思ってた」

 

「あははは……まあそっから小学校6年間で20人くらいと付き合って……」

 

 ん? なんかおかしな言葉が聞こえてきた気がするぞ。

 

「……20人?」

 

「うん。付き合って別れてすぐ付き合ってって感じで。小学生はすぐ自然消滅するからさー」

 

「そ、そうなのか。中学校ではどうだったんだ?」

 

 その軽薄な口調とは裏腹に、どこか遠い目をする紡。

 

「中学校でも同じ感じだよ。この頃になると、先輩とか、高校生と付き合ったりしてたかなー」

 

「想像もつかない世界だ……」

 

「綾小路君顔良いんだから、その奥手な性格直せば余裕だって」

 

 紡はそう言ってくれているが、オレは騙されないぞ。イケメンの言うこの手の誉め言葉は大体嘘だ。まず性格を直すところがもうすでに難しいし、何より急にオレが紡みたいにチャラくなったとて、ドン引きされるのがオチだ。

 でも紡に限ってそんなこと言うだろうか? いや、オレは親友を疑ったりしない! 

 

「そ、そうか? 参考程度にどこをどう直せばい「綾小路君には無理じゃないかしら」……お前には聞いてないぞ、堀北」

 

 ここぞとばかりに食いついてきやがって。

 苦笑いを浮かべる紡になんて返そうか迷っていると、スピーカーから音楽が流れてきた。

 

「本日、午後5時より、第一体育館の方にて、部活動の説明会を開催いたします。部活動に興味のある生徒は、第一体育館の方に集合してください。繰り返します、本日──」

 

部活動か。そう言えば、オレ部活なんてやったことないんだよな。

 

「お、丁度いいや。一緒に行こうぜ、綾小路君」

 

 ……やっぱり紡はオレの親友だ!

 

 

 




因みに主人公は、坂柳と出会ってから一度も彼女を作った事ありません。ですが嘘もついてないです。

アニメ版の綾小路は最初から物静かですよね。後から原作を読んでビックリしました。

皆さん何勢の方ですか?

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