ようこそクズヒモ男の教室へ 作:妄想癖のメアリー
多分これからは返事ちゃんとします!
このネタは一度やってみたかった。
「それでは、第4回秘密作戦会議を進めたいと思います!」
「ぱちぱちぱちー」と、やけにテンションが高い紡の声が甲板に広がる。
時刻は午後11時。2日目最後の話し合いを終え、オレと堀北、そして紡の三人は作戦会議をするために集まっていた。
「……付けられてないんでしょうね?」
「うん。ちゃんと確認したよ」
まさかCクラスも四六時中目を光らせてるわけじゃないだろうし、集まるタイミングずらしたからな。この集まりが龍園にばれることは無いだろう。もしも人が来てもこの見晴らしいいデッキの上。盗み聞きされることはまずないだろう。
それと同時に、警戒したように佇んでいた堀北がほっと息をついて、手すりに寄りかかる紡の隣に移動した。
「それじゃあさっさと済ませちゃいましょう。綾小路君、さっきの話を詳しく聞かせて頂戴」
……いや、近くないか? 肩先どころか、腕までしっかりくっついてるぞ。何なら少し寄りかかってるし、紡も苦笑いしている。
しかしそれを指摘するのは野暮だと思い本題に入る。
「……ああ。軽井沢に関しては────」
オレが語ったのは以下の内容だ。
以前からCクラスの女子とトラブルになっていて、今回暴力事件へと発展しそうになったこと。
オレと幸村が助けに入り事なきを得たということ。
────そして、その際の軽井沢の反応について。
「うーん……結構根深いとこまで来てるんだね。さて、どうしたものか」
話を聞いた紡は、腕を組みながらため息をついていた。
「軽井沢さんに謝らせればいい話じゃないの?」
「そう簡単な話でもないんだよ」
いまいち事態を把握しきれていない堀北に、紡はそう前置きをして続けた。
「まず第一に、俺たち3人とも軽井沢さんと接点が無いんだよ。俺たちが何か言っても、彼女の性格上聞く耳なんて持たないと思う」
「だったら平田君に……とはならないわね」
「そう。それが無理だから洋介君は清隆君に相談したんだよ」
実際のところ、平田は軽井沢に何度か態度を改めるように言ったはずだ。だが無人島試験の事もあってか、それを軽井沢が素直に受け止めることはなかった。
そこで助けを求めたのがオレの所。紡や堀北に直接言わなかったのは、下着泥棒の件の後クラスをまとめられなかったことや、軽井沢の暴走を止められなかった引け目を感じてだろう。
「ままならないわね……今回の件で、軽井沢さんはどう動くのかしら」
「恐らくはまず平田に相談しに行くだろうな。その時どんな方法で真鍋達を大人しくさせるかは正直分からない」
「あの感じで意外と謝りに行くから付いて来てほしいとか言うんじゃ……いや、無いか流石に」
紡がそんなことを言ったが、正直言って想像もつかない。それが出来るならここまで問題は大きくなっていないし、平田も苦労していないだろう。
「……こればかりは彼女たちの動きを見てから動くしかなさそうね。もし軽井沢さんが強引な手段を望んでいた場合、どうするつもりなのかしら?」
そう堀北が問いかけると、紡は数秒ほど唸った後に苦笑いを浮かべながらこう語った。
「こっちも
「……紡?」
「ん……ああいや、暴力で解決するとかそういう話じゃないから安心して。俺が女の子に手出すわけないじゃん」
もし被害者が坂柳だとしてもそのポリシーを守るかは疑問だけどな。オレは雨の中龍園を殺しかけた拳を思い出して辟易した感情が溢れてきた。
慌てて否定する紡だったが、怒らせたら滅茶苦茶怖い男というのは先の試験で身をもって知っている。渦中の女子達はなるべく地雷を踏まないように立ち回って欲しいものだ。
「ま、見ててよ。今まで問題が顕在化してこなかったのには、それ相応の理由があるんだから。とりあえず、これからやることを考えよう」
それから10分ほど相談をし、オレ達は部屋へと戻った。
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時刻は夜中の2時過ぎ。清隆君から連絡があったため、俺は地下2階の休憩コーナーへと向かっていた。
廊下は明るいが、それに不釣り合いなほど辺りは静かだ。自らの解決方法があまりよろしくないということは百も承知だが、軽井沢さんの今後の事を考えると仕方が無いだろう。
そんな誰に対してか分からない言い訳を心の中で呟きながら、足音を立てないようにゆっくりと歩く。
「お願いだから助けてよ……平田くんは私を守ってくれるんでしょ?」
構造上廊下と直で繋がっているためか、軽井沢さんの悲痛な声が聞こえてきた。
こっそりと顔を出すと、清隆君や洋介君、そして軽井沢さんが数メートル先に立っていた。
「もちろん守るよ。だけど理不尽な理由で真鍋さんたちを傷つけることは出来ない。
洋介君が居るから大丈夫だと思ったが、話は大分拗れてしまっているようだ。
いつもなら相手に合わせて譲歩する洋介君だが、暴力による解決には嫌悪感を抱いているらしく、かなり強い口調で軽井沢さんを咎めている。
「だから無理なんだってば! そんなことが出来るなら助けてなんて言わない!」
滅茶苦茶な言い分だが軽井沢さんの言うこともよく分かる。
彼女が他の女子生徒に集団リンチを食らいかけたにしては、余りにも洋介君の対応は穏便すぎる。もし有栖ちゃんにそんな事しようものなら、明日の朝日を拝めると思わない方が良いだろう……別に付き合ってないけどさ。
「理由がなんであれその期待には答えられないよ。僕にとって、軽井沢さんは大切なクラスメイトの1人だ。困っていれば助けるし、守るよ。だけどそのために他の誰かを傷つけることは出来ない。それがCクラスの生徒だとしてもね」
そんな軽井沢さんの悲痛な叫びにも、洋介君は態度を変えることなく言い切った。……凄いな。最近の高校生はここまで覚悟ガンギマリなのか。
「嘘つき! 守ってくれるって言ったのに!」
「嘘? 僕は最初から一貫して同じ態度でいるつもりだよ」
洋介君は立て続けに、衝撃的な言葉を口にした。
「最初に言ったよね?
……嘘やん。ちょっと奥手なカップルだと思って応援してたのに……というか言っちゃうんだねそれ。清隆君も流石にびっくりしてるんじゃない?
「……」
全然驚いてねぇわ。何やねんコイツ。お前が佐倉さんと良い感じなの知ってるんだからこっちは!
「あたしが……暴力を振るわれてもいいってこと?」
……やべ、ビックリしすぎて話全然聞いてなかったわ。助けられる確信があるからって気抜きすぎだな。反省しないと。
「だからそうは言っていないよ。僕は全力で君を助ける。朝になったら真鍋さんたちに話をするつもりだ。これ以上軽井沢さんを困らせないで欲しいって。不本意かも知れないけれど、軽井沢さんは謝ろうとしていたって伝えても構わないよ」
「それは嫌!」
今日一番の大声で叫ぶ軽井沢さん。聞かれたくない話のはずなのに、往来の場で叫んでしまったのはそれだけ余裕がないからだろう。
「だとしたら僕に出来る手助けはないよ。残念だけどね。綾小路君、君になら何か解決策は「もういい! あたしの願いを聞いてくれないんなら、あんたなんか必要ない!」」
洋介君の言葉を遮り、軽井沢さんは持っていた缶ジュースを廊下に叩き落とした。
「今日で関係は終わり。終わりよ!」
そう言って走り去っていく軽井沢さんを、最後まで平田君が追うことは無かった。……さて、後は任せたよ清隆君。
そんなことを思っていると、清隆君は真顔でこっそりサムズアップしてきた。ちょっとおもろい。
「……さて、こっちの方向だったな」
姿が見えなくなってしまったのに追いかけられるのかと思うだろう。しかし、女子の前で強気なリーダーとして振る舞っている彼女が、泣いている状態で部屋に戻ることはまずないだろう。船内の構造的に、彼女が向かうであろう場所は大体絞られてくる。
────そんなことを考えながら歩いていると、視界の端に一人のうずくまる生徒が見えた。
「あれ? 軽井沢さんじゃん」
右手に自販機で買った温かいココアを持ちながら、あくまで偶然を装って接触する。彼女が居たのは同じフロアにある反対側の休憩室。人通りがほとんどない端の席だった。
「……放っといて」
普通に考えれば、わざわざ地下のフロアに飲み物を買いに来るわけがない。しかし、そんなことを考える余裕が軽井沢さんにあるわけがない。
しゃくり上げながら、潤んだ瞳でこちらを睨みつける。
「何があったかは知らないけどさ、放っておける訳無いっしょ? あ、ココア飲む?」
激情を露わにした後に走って汗をかいているであろう軽井沢さん。真夏の休憩室は嫌になるほど冷房ガンガンだ。
「……うん」
冷えた体が無意識に求めていたのだろう。軽井沢さんの白い手が、温かいココアの缶を包んだ。
そんな彼女の隣に腰掛ける。いつもなら鋭い言葉が飛んでくるであろうが、今回に限っては何もなかった。
「洋介君と喧嘩でもした?」
「……!」
冗談めかして言ったのだが、余りにも素直な反応の為か笑いがこぼれる。
「マジ? あの洋介君と?」
「……あんたには関係ないでしょ」
「まぁね」
その言葉を最後に、辺りには沈黙が流れる。気まずさからかココアを一口飲んだ軽井沢さんだが、帰って欲しいという言葉が飛んでくることもなかった。
無料で買える飲み物だが、施しを受けた手前追い返すのに罪悪感が働いているのだろう。作戦通りである。
「……気まずくないの。この前、アンタに色々言っちゃったのに」
「下着泥棒の件? だって軽井沢さん被害者でしょ? 謝ることはあれど、俺が怒るわけないじゃん」
「……そう。ありがと」
感謝されることは何も言っていないのだが、引け目を感じていた彼女から返ってきたのは感謝だった。
「それにしてもさ、学校も性格悪い試験すると思わない? 無人島でサバイバルした後は他クラスと混合の試験だよ」
「まぁ……確かに」
「軽井沢さんも大変でしょ? だってメンツの癖強すぎじゃない? ござるござるばっか言ってる外村君にバカ真面目な幸村君、あとはコミュ障の清隆君だよ?」
ごめん清隆君。軽井沢さんのために犠牲になってくれ。間違ったことは言ってないから。
「ぷっ、酷くない? 綾小路君と、仲いいんでしょ?」
「でも事実だよ? 軽井沢さんみたいな可愛い子とは絶対目合わせて喋れないっしょ? 絶対そうだって」
ごめん清隆君。ちょっとだけ話盛るね。君は顔も良いんだし、そろそろ彼女の1人くらい作った方が良いと思うよ。
「ふーん。堀北さんとか、Aクラスの子とかと仲いいのに、私にもそんな事言っちゃうんだ?」
「えっ、いや……別に付き合ってるとかそういうのじゃないからね」
「……! そう、なんだ……」
さっきはびっくりしたけど、軽井沢さんが『クラス内での地位』を目的として洋介君と付き合ってたなら、この発言は中々クリティカルのはずだ。
俺は洋介君と同じくらいモテてたからね。わざわざ敵を作りやすい方と付き合った理由は、俺が鈴音ちゃんや有栖ちゃんと仲良いって噂になってたからだろう。
その俺がフリーと知って、尚且つ洋介君と復縁は厳しいとなると……
「……斎藤君、これから寝る?」
「んー。昼寝したからまだ全然かな。明日は1日中休みだからね。ちょっと夜更かししたい気分だし」
「そっか。じゃあ……その、ちょっと相談したいことがあるんだけど……」
────ほら食いついた。俺の『どしたん? 話聞こか?』作戦は順調に進んでるね。
何となく想像ついていると思いますが、紡君は身内と判定した人間には超甘くなりますが、それ以外の人間には割とドライです。
綾小路が偽カップル関係に薄々気づいている中、本気で気が付いていませんでした。
そしてその身内の人間が1人増えます。軽井沢の過去は紡君には大特攻です。
なお身内判定を食らった女性はことごとく紡君に惚れてる模様。
モチベ=投稿頻度なので、もし続きが見たいって思って頂けたなら高評価や感想してくれると超嬉しいです!
話の進むテンポについて
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