ようこそクズヒモ男の教室へ   作:妄想癖のメアリー

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後半三人称視点です
急いで書いたのに投稿時間ミスった…

高評価、感想、ここすきをいただけると作者のモチベーションになります!
多分これからは返事ちゃんとします!


終幕

 

 

 

「……ほう? 随分と突飛な事を言うじゃねえか。優待者を共有して法則を見つける時間を減らしてまで、結果4にするメリットがあるのか?」

 

「メリットならあるよ龍園君。それは、()()()()()()()()()()()()()互いのマイナスポイントを0にできる事。この前の無人島試験で君に裏切られた斎藤君が、そんな無防備に優待者を教えるわけがないと思うんだけど」

 

 流石の洞察力だね。こちらの意図を完全に読んでいる。図星を突かれたにも関わらず余裕そうな雰囲気を変えない龍園君も流石だ。

 そう、一之瀬さんが言ったことは全て正解だ。俺が龍園君と協力する上で提示した条件は『Bクラスに協力を申し出て、その返事を待った後に優待者を公開する』というものだ。

 何枚もの契約書でガチガチに縛っているとはいえ、あの龍園君が大人しくそれに従う保証は無いからね。

 

「おいおい……俺は信用されてねぇみてぇだな?」

 

「日ごろの行いだと思うよ」

 

 俺が苦笑いで答えると、一之瀬さんもうんうんと頷いている。

 

「正解だよ一之瀬。俺と斎藤は互いのクラスの優待者を知らない」

 

「随分とあっさり白状するんだね。未だ優待者を把握できてないというのは、交渉を不利にさせるんじゃないかな?」

 

「勘違いすんじゃねえ。お前がこの交渉を断った場合、俺と斎藤は即座に情報を交換して法則を突き止める。結果が3だろうが4だろうが、お前が後手に回っている事に変わりは無ぇんだよ」

 

 そう語る龍園君だったが、実際の所全く対処法が無いと言うわけではない。一之瀬さんがそれに気が付いているかは怪しい所だが。

()()()()()()()()()()()()()()を考えながら、目の前で繰り広げられている攻防を眺める。

 

「でも君たちが獲得しているポイントが0だってことも変わらないよね? だとしたらBクラスにも挽回の余地があるのに、毎月60万ppt払えって言うのはおかしいんじゃない?」

 

「ならいくらだったら飲むんだよ。値切り交渉でもやるか?」

 

「『ポイントの支払いは無し、そしてAクラスの優待者を1グループずつ当てる』。これ以外の条件は認めないよ」

 

 そうなれば、最終的な結果がD、C、Bクラス50ポイント。Aクラスがー150ポイントになる。

 Aクラスに離されたポイントを無くすことはできるだろうが、ppt合わせて200ほどのポイントを得られる最初の契約に比べたら収入は大分減るだろう。

 

「はっ、じゃあ交渉は決裂だな。おい斎藤、さっさとこのつまんねぇ試験を終わらせるぞ」

 

「はいはい……本当に良いのかい? 一之瀬さん」

 

 ここだけ切り取って見ると、一之瀬さんが欲をかいて交渉に失敗したと思うだろう。

 しかし、絶望的な状況にもかかわらず、彼女の表情に影が差すことは無かった。

 

「はぁ……やっぱりそんなに甘くないよね」

 

「今更後悔してんのか? テメェが頭下げるってんならもう一度話をしてやってもいいんだぜ?」

 

「後悔? 何か勘違いしてるみたいだね龍園君。私はそんな話をするために来たんじゃないの」

 

「あ?」

 

 一之瀬さんはおもむろに、目の前のテーブルにスマホを置いた。

 

「ま、元々裏切る気なんて無かったんだけどね。()()()()

 

『────あまり驚かせないでください一之瀬さん。心臓に悪いですので』

 

 彼女のスマホに表示されていたのは電話の画面。スピーカー越しに聞こえてくるのは、10年来の馴染みの声だった。

 

「……面白ぇじゃねえか。おい一之瀬。この話を持ち掛けたのはお前か?」

 

「ううん。坂柳さんからだよ」

 

『一昨日ぶりですね龍園君。電話越しで話すのは中々新鮮な気分です。そして……居るのでしょう? 紡君』

 

「あはは……おはよう有栖ちゃん。ごめんね今朝のお誘い断って」

 

 お嬢様からのご指名だ。粗相のないように答えないと銀色の杖で叩かれてしまう。

 

『一昨日はあれだけ熱烈な時間を過ごしたと言うのに、もう私の事は嫌いになってしまったんですか?』

 

「えっ……」

 

「いや違うからね一之瀬さん。この子こういう所あるから気にしちゃダメよ」

 

 顔赤くしてこっち見ないで一之瀬さん。いくら何でもピュアすぎるよ……さっきの勘の良さはどこに行ったの? 

 

『まあ、冗談は置いておきましょう。良いですね一之瀬さん?』

 

「うん! パーッとやっちゃって」

 

『分かりました。……紡君?』

 

「……はい」

 

『────今日の夜、ちゃんとお話し聞かせてくださいね?』

 

 

 

『鼠グループの試験が終了いたしました』

『牛グループの試験が終了いたしました』

『猿グループの試験が終了いたしました』

『鶏グループの試験が終了いたしました』

『犬グループの試験が終了いたしました』

『猪グループの試験が終了いたしました』

 

 

 

『────すべての試験が終了いたしました。試験結果は午後11時に発表となります。お疲れさまでした』

 

 

 

 ────────────────

 

 

 

 時刻は夜の11時前。後10分ほどで試験結果が公表されるというタイミングで、斎藤は坂柳に呼び出された場所へと向かっていた。

 彼女が指定した場所は船前方にあるラウンジ。今は暗闇に覆われているが、昼間は水平線へと向かってゆく景色が見れる人気スポットだ。

 斎藤がラウンジ内に入ると、ちらほら結果待ちと思われる生徒が見える。基本密会するときは2人きりの状況を好む坂柳が、この場所を指定するのは珍しく思えた。

 

「お待ちしておりました。紡君」

 

「こんばんは。一体何の話かな?」

 

 坂柳が座っていたのは鈍角に張られたフロントガラスの前面。最も注目が集まる場所だった。

 いつもなら隣に座ろうとする斎藤だったが、有無を言わせない彼女の様子から悪手だと判断し、四人席の対面に腰掛ける。その様子を横から見ていた生徒達から、決して少なくないざわめきが聞こえて来た。

 

「今回の試験についてです。あなたもわかっているでしょう?」

 

「まぁね。俺が龍園君と組んだことがそんなに不思議だった?」

 

「そうですね。あなたが彼に苦汁を飲まされたことは、もう既に周知の事実ですから」

 

「そりゃどーも」

 

 げんなりとした様子で返す斎藤。やはり冤罪とはいえ下着泥棒の名が広まるのは勘弁してほしいのだろう。

 何かもの言いたげな坂柳に対し、斎藤は足を組んで背もたれに寄りかかりって語る。

 

「確かに有栖ちゃんにはショックだったかもしれないね。だが俺だって真剣にAクラスを目指してるんだ。前回の無人島試験だって、皆の協力があってこそだよ」

 

「……それは、分かってますが……」

 

「だったら甘えてる暇じゃないんじゃないかな? 俺は試験に勝つためなら、嫌いな龍園君とだって手を組むよ。それが勝ちにつながる一手だったらね」

 

 いつも強気の坂柳が何処へやら、今は親に怒られる子供……いや、最も適切なのは身勝手な理由で男に振られる女だろうか? 少なくとも、野次馬としてその様子を見ていた人間からはそう感じられた。

 そこに、タイミングを見計らったかのように一人の男が入ってくる。

 

「おいおい、鈴音と揉めた後は坂柳か? 大層モテてるんだな? 羨ましいぜ」

 

「龍園君……」

 

 斎藤の隣に腰掛けたのは、今回の試験で彼と手を組んだ龍園だった。

 

「そろそろ時間だ。結果は分かり切っちゃいるが、確認しなくていいのか?」

 

 そして午後11時を迎え、一斉に携帯に届くメール。彼ら以外にも、大勢のスマホの音が鳴る。既に騒ぎを聞きつけて、ラウンジに集まった生徒は30人を超えていた。

 龍園と斎藤の結託や、それに対する坂柳と一之瀬の呉越同舟。この2つは一部の生徒を除いて、ほとんどの()()()()()()()()()()()()()()()()事なのだ。その上お互い仲が良くクラスの代表者である坂柳と斎藤が、険悪な雰囲気で向かい合ってたら注目も集まるだろう。

 

「さて、高円寺君は優待者を当てられたのかな?」

 

 

 

 子(鼠)───裏切り者の回答ミスにより結果4とする

 丑(牛)───裏切り者の回答ミスにより結果4とする

 寅(虎)───裏切り者の回答ミスにより結果4とする

 卯(兎)───裏切り者の回答ミスにより結果4とする

 辰(竜)───裏切り者の回答ミスにより結果4とする

 巳(蛇)───裏切り者の回答ミスにより結果4とする

 午(馬)───裏切り者の回答ミスにより結果4とする

 未(羊)───裏切り者の回答ミスにより結果4とする

 申(猿)───裏切り者の正解により結果3とする

 酉(鳥)───裏切り者の回答ミスにより結果4とする

 戌(犬)───裏切り者の回答ミスにより結果4とする

 

 ───以上の結果から本試験におけるクラス及びプライベートポイントの増減は以下とする。

 

 Aクラス……変動なし +150万ppt

 Bクラス……変動なし +150万ppt

 Cクラス……-50cpt +100万ppt

 Dクラス……+50cpt +200万ppt

 

 

 

「ッチ、まあいい……おい斎藤。しっかり取り立てろよ」

 

「もちろん。今回は残念だったけど仕方ないね。また機会があったら頼むよ」

 

「その時が来ると良いけどな?」

 

 捨て台詞を残して。龍園は帰り道の階段を上って行く。

 そんな彼に対し、ラウンジの上の段からその様子を見ていた生徒が声を荒げた。

 

「お、おい! これどういう事だよ!? 何でいきなり試験終わったと思ったら、ほとんど結果4なんだよ!」

 

「はっ。何も知らされてねぇ雑魚が騒ぐんじゃねえよ」

 

 ポケットに手を突っ込みながらそう返す龍園。鼻で笑われた生徒が悔しそうに歯ぎしりするも、事情を知らないのは事実の為何も言い返せない。

 

「……全く。ずっとあの態度で疲れないのかな……さて。オレもそろそろお暇するよ有栖ちゃん」

 

「……今回は」

 

「ん?」

 

 悔しそうに俯いて呟く坂柳。そんな彼女に珍しく淡白な反応を見せた斎藤だが、坂柳は気にすることなく続ける。

 

「クラスの方を信用しきれなかった私の負けです。ですが、()()同じように行くとは思わないでください」

 

「……そっか。頑張ってね」

 

 そんな坂柳の頭を、ポンポンと二度優しく撫で、斎藤もその場を後にした。

 

 

 

 ────────────────

 

 

 

「ごめんねみんな。何も伝えずにいきなりこんな事して」

 

 場所は打って変わってBクラス専用のラウンジ。午後11時という遅い時間でありながら、欠員1人いない状況はもはや異常ともいえるだろう。

 その集団の前で頭を下げるのは一之瀬。今回の試験に大きく関わった一人だ。

 

「一之瀬が頭を下げる必要は無い。実際この試験結果は、相対的に見たら悪いものではないからな」

 

「そうだよ! DクラスとCクラスに一矢報いたんだから凄いよ!」

 

 そんな一之瀬に声を掛けるクラスメイト達。彼女の取った行動に感謝こそすれ、文句を言うような生徒は1人もいなかった。

 

「でも……貴重なポイントをゲットできるチャンスを逃しちゃって……」

 

「そんなの、後二年と半年あるんだし余裕っしょ?」

「それなー」

「無人島でもうちら良い感じだったし。Dには負けたけど」

「いや、あれは反則っしょ」

 

 三者三様の反応を見せるが、一之瀬を責めるような反応は1つもなかった。

 

「皆……ありがとう! これからも一緒にがんばろ!」

 

「「「おー!」」」

 

 

 

 その後全体で解散となり、扉の横でクラスメイトを見送っていた一之瀬。一番最後に出ていこうとした生徒が彼女を呼び止めた。

 

「一之瀬。少しいいか」

 

「うん? どうしたの神崎君」

 

 その生徒の名は神崎。前回、今回の試験共に一之瀬の参謀として立ち回って、Dクラスや斎藤個人ともかかわりが深い人物だった。

 

「Dクラスとの協力関係についてだ」

 

「……うん」

 

 あまり聞きたくなかった話題なのか、目に見えて表情を暗くする一之瀬。そんな姿に罪悪感を覚える神崎だったが、一之瀬本人の為にも心を鬼にして突き返す。

 

「今回の試験で、斎藤が俺たちを裏切ったのは明白な事実だ。元より協力関係を結んでいたわけではないが、これから無条件で協力とはいかないだろう」

 

「そうだね。私もそう思う」

 

「ならどうするつもりだ? 俺個人としては、斎藤の行ったことに怒りは覚えていない。実際龍園と組むことは、一番の策だったと言っても過言じゃないからな」

 

 だが、と一度大きく前置きして続ける神崎。

 

「Bクラス全体……斎藤本人と関わりが無い人間はそうもいかないだろう。今まで友好的に過ごしてきた人間が、そんな素振りを見せずに牙をむいてきたんだ。もし今後ともDクラスと協力するのなら、その()()()()()()()()()()()()()()

 

「そうだね……でも、私はDクラスとの協力を惜しむつもりはないよ」

 

 そんな神崎の正論に対しても、一之瀬は前向きなスタンスを崩すつもりは無いらしい。

 その言葉を聞いて眉を顰める神崎に一之瀬は付け加えるようにして説明を続けた。

 

「もちろん。何も無しでって訳じゃないよ? でも今回確信したことが一つあるの。斎藤君のことについて」

 

「確信したこと?」

 

「うん。斎藤君は、()()()()()()()()()()()()()()()なんだと思う。それって当たり前かもしれないけど、小さい頃から仲良しの坂柳さんに対してもあんな感じだったし」

 

 龍園に呼び出される前、動揺していた坂柳に取引を持ち掛けられた時のことを、一之瀬は思い出していた。

 

「……なるほどな。お互いが利益を出せるように協力すれば、心強い味方が出来るというわけか」

 

「そう! 逆に安心じゃない? 今までの斎藤君達優しすぎだもん。この前の無人島試験でも、要らなくなった道具とか余った食料とかわざわざ持ってきてくれたしさ」

 

「そうか……なら俺から言うことは無い。ただ、斎藤には今度何か奢ってもらおうか。ポイントも入るだろうしな」

 

 神崎自身も個人的な恨みはないようで、冗談めかしてそう笑った。

 

「あ! それいいね! この前お祝いで行ったら楽しかったもんね!」

 

 この2人は斎藤、綾小路、堀北たちと5人で一度食事に行ったことがある。須藤事件に協力してくれたことに感謝するという理由でだ。

 綾小路と堀北を斎藤が、神崎を一之瀬が無理やり連れてきたという話は当人たちの間では笑い話となっている。

 

「……これから忙しくなるだろうな」

 

「そうだね……でも、皆なら絶対乗り越えられるって信じてるから」

 

 ────この試験をきっかけに、Bクラスはより一層結束力に磨きをかけることとなった。

 

 

 

 ────────────────

 

 

 

「今回の試験、前回の試験と失敗続きね。アンタに不満抱えてる生徒もいるんじゃない?」

 

 そして同時刻のCクラス。龍園は信頼のおける生徒を部屋に集めていた。

 伊吹からの鋭い言葉も、龍園は気にかけていないのか楽しげに指を組んでいる。

 

「ほっとけ。多少積極的な輩はむしろ都合がいい」

 

 以前までなら、自身に反抗する人間には容赦しなかった龍園。しかし、その龍園が反逆者を認めるような発言をした。この敗北が彼にどのような影響を及ぼしたのだろうか。

 

「……あっそ。私は何も言わないけど、いい加減ポイント増やしてくんない?」

 

「おい伊吹……!」

 

 そんな伊吹の態度に石崎は異議を唱えるが、龍園がそれを遮り2人へ問いかけた。

 

「お前ら。一昨日の坂柳と斎藤だが、本当に何も話してなかったのか?」

 

「だからそう言ってんじゃん。あんま思い出させないでよ」

 

 伊吹はどこかげんなりとした様子だ。あの時の斎藤たちの雰囲気がトラウマになっているのだろう。

 その言葉を聞いた龍園は、顎に手を当て数秒ほど何かを考え込んだ。そして一つの結論を導き出す。

 

「……()()()()()な」

 

「ハメられた? ……どういうことっすか?」

 

 意味ありげに語る龍園に、石崎が真意を聞きだす。

 

「恐らくだが……あの流れは斎藤と坂柳が仕組んだ流れだろうな」

 

「は……? え、それって」

 

「ああ。よくよく考えれば分かることだ。まず第一に、()()()()()()()()()()()()。斎藤が俺に接触してきたのは2日目の夜。協力と引き換えに『真鍋達のいじめを止めさせろ』と要求してきた。最初はあのバカ共のいじめが協力のきっかけだと思ったが、いじめの証拠があっちにある以上、わざわざリスクを冒す必要は無い」

 

 そのまま説明を続ける龍園。彼の勘は、無意識のうちに最大以上に研ぎ澄まされていた。

 

()()()()()()。試験が同時に終了してから1時間経ってない中、各クラスの動きを完璧に把握して一之瀬に接触し、こちらの出方次第ですぐに優待者を外す準備までしてやがった。元から想定して動いていたとしか言いようがない」

 

「だから何なんだよ。最初の段階だったらリスク0じゃん。Bがどうであれまた考えられる時間はあっただろ?」

 

 いまいち要領が得ないと抗議する伊吹だが。意味とは裏腹に言葉自体は正しいものであった。

 

「ああ。だから()()()()()()()()()()()()。あのヒモ野郎は、ハナからBクラスと協力する気も、Bクラスを潰す気もなかった」

 

「……それって何のメリットがあるの? まるで坂柳と斎藤が協力したみたいな言い方だけど、ギリギリで引き分けだったら何の得にもならなくない?」

 

「お前は今Aクラスで、坂柳がどんな状況か想像つくか?」

 

『どんな状況』という曖昧な質問だったが、その意味を理解できたことに苛立ちを覚える伊吹。腕を組みながら、ぶっきらぼうに答える。

 

「別に普通なんじゃないの。むしろあの状況から0まで持って行ったことが凄いって言われてるかもね」

 

()()()。そしてピンチに陥った理由が『プライベートで仲のいい生徒の裏切り』だとしたら、お前はどんな反応をする?」

 

「どうって……可哀そうだなとは思うけど……! まさか!」

 

 あのゲロ甘い2人の食事を見続けるという拷問を受けた伊吹。もし仮に坂柳が斎藤と仲がいい事を周囲に惚気ているのなら、周りの生徒の反応は容易に想像できるだろう。

 

「葛城の体制は前回でボロボロ。新たな体制も不安定な状況で、坂柳が取った行動は『クラスの基盤を固めること』だった……そんな想像だが、あながち間違ってるとも思えねぇ」

 

「……そのために、試験の一つを無駄にするなんて……」

 

 確かにこの流れが仕組まれていたものだったら、朝一之瀬を呼び出した時点で連絡をすでに入れているという早業にも納得がいく。

 そう思った伊吹だが、あまりにも自身が持つ価値観との違いに戦慄を隠せないようだ。

 

「だが結束した場合の厄介さは断トツだろうな。……そうなってくると、()()()()()()()()()()()()()()もつじつまが合うと思わねぇか?」

 

「……全部あいつらが仕組んだ通りだってこと?」

 

 思い出されるのは、鬼神の如く龍園たちをなぎ倒した斎藤の姿。格闘技をやっている伊吹から見ても、あれは高校生がやれるような動きではなかった。

 

「顔も見せずに気絶させるなんて、普通の高校生が出来る芸当じゃねえ。運動能力、技術、そしてバカみてぇな胆力と自信が無いと出来ない。その点、俺が知る中でそれが出来るのは斎藤だけだ」

 

「斎藤……次はリベンジしてやる」

 

 やっと話に入るタイミングを見つけたのか、ここぞとばかりに決意を固める石崎であった。

 

「あ、居たんだ石崎」

 

「……難しい話は勘弁っす」

 

 石崎が入ることによって、二人の間に張り詰めていた空気が一瞬で弛緩した。話している内容はかなり物騒だが、この学校には珍しいタイプの、真っ直ぐなバカなため仕方がないのだろう。

 

「馬鹿みてぇな話してんじゃねえよ。これから面白くなるんだからよ」

 

「またDクラス潰すつもり?」

 

「いいや、潰すんじゃなくて()()んだよ。一見完璧に見えても、中身が腐っているなんてよくある話だからな」

 

 そうして龍園はスマホを取り出し、とある生徒とのやり取りの履歴を見直した。

 

「……()()()、信用できるわけ?」

 

「さぁな。ムカつく話だが、さっき言った話が全て真実だった場合、斎藤と坂柳に真っ向から挑むのは無理筋だ」

 

 学力、運動神経、統率力、思考力、暴力において抜け目がない斎藤や、運動こそできないがその他で追随する勢いを持つ坂柳。

 龍園はこの2者をラスボスと想定し、次の構想を練る。

 

「俺は俺らしく、今後ともあいつらが嫌がるような手段を取っていく。……そうだな、まずはもう1人に接触する。Aクラスでも大層肩身が狭いだろうからな? 親玉にも見捨てられたとなったら、もう早々居場所なんてねぇだろ」

 

「……やっぱそっちの方がアンタらしいよ。ま、そのレベルの争いについていけるのはアンタしか居ないだろうし。今度は負けないでよ」

 

「テメェに言われなくてもやってやるよ」

 

 

 

 ────薄暗い部屋に、そんな龍園の笑い声が小さく響いた。

 

 

 




次はAとDの反応書こうかな。それで干支試験は終わりです!

モチベ=投稿頻度なので、もし続きが見たいって思って頂けたなら高評価や感想してくれると超嬉しいです!

話の進むテンポについて

  • もっとサクサクでもいいよ
  • 今のままで良いよ
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