ようこそクズヒモ男の教室へ 作:妄想癖のメアリー
多分これからは返事ちゃんとします!
────Dクラスのギャルはインドア派? (軽井沢恵)────
夏休みも佳境を迎えたある昼の1時。基本的にこの時間は誰かと遊ぶために家を空けている俺だが、今日は『とある人』を待つために家でゆっくり過ごしていた。
それから程なくして部屋のチャイムが鳴る。
「はーい」
そう返答して寮の扉を開くと、扉の前に居たのは軽井沢さん。今日俺が待っていたのは彼女である。
「あ、おはよー斎藤君」
「わざわざ良いのに。ま、とりあえず入ってよ」
夏休みのお昼時だ。いつ両隣の人が出てきて見られるか分かったものじゃない。見られたらどちらにとっても不都合なため玄関へ招き入れる。
「お邪魔しまーす」
「どうぞー」
「ふーん。結構片付いてんじゃん」
そもそも俺がミニマリストっぽいとこあるからね。有栖ちゃんにご指導貰って大分物増えたけど。
「意外?」
「ううん全然。逆に散らかってる方が意外かも」
「そう? 確かに池君とか須藤君よりは綺麗だけどさ」
というか、あの2人の部屋は散らかりすぎだよ。絶対女の子家に呼べないでしょ。
「比較対象おかしいでしょ……あと。はいこれ」
軽井沢さんが俺に手渡してきたのは、おしゃれな紙袋だった。
「これ、最近できたカフェのチーズケーキ。この前のお礼」
「あー! まだ行ったこと無かったんだよね。ありがとう!」
いつも遊ぶ人たちはあんまりカフェとか行かないからね。唯一そういうのに敏感な有栖ちゃんも、基本的に外食することはあんま無いし。
「ご飯食べた? 軽井沢さん」
「ん、まだだけど」
いいね。腕の鳴りどころだ。
「じゃあ食べていきなよ。そのケーキはデザートって事で。コーヒーと紅茶どっちが良い?」
「えっ……じゃあ、コーヒー」
「おっけー」
──料理上手はモテると聞いて──
「トマト大丈夫?」
「うん……別に良いのに。私がお礼したいって来たのに」
「良いからいいから。せっかくだしゆっくりして行きなよ。これコーヒーね。砂糖とミルクは?」
「一個づついれるー」
「はーい。もうちょっと待っててね」
「はい! 旬のフレッシュトマトとベーコンのペペロンチーノ」
「すご、お店じゃん」
「見た目だけじゃなくて味も保証するよ。ほら、食べよう」
「うん。いただきます……ん! 美味しい!」
「デザートにはさっきのチーズケーキだよ」
「……こんな料理上手かったんだ」
「料理上手だとモテるって聞いてさ」
「うわーあざとー」
──映画で泣くタイプの男──
「これから何しよっか? 外は出れないもんね」
「えっ、これから帰るつもりだったんだけど」
「良いじゃん良いじゃん。この後予定無いんでしょ?」
「まあそうだけど……2人じゃする事無くない?」
「甘いよ軽井沢さん。こういう時は映画が定番っしょ」
「ちょ、見るのは良いけどさ……近くない?」
「部屋に入るように2人にしたからしょうがないよ。嫌だった?」
「……別に、嫌じゃないけどさ。あたし一応彼氏いるし」
「バレなきゃ大丈夫だって」
「……浮気するときのセリフじゃんそれ」
「サブスクで映画見れるの凄いよねー。ちょっと前まではこんなの無かったのにさ」
「なんかジジ臭いんだけどそれ」
「えっ」
「……冗談。そんなショックされるとこっちが困るよ」
「だよね。焦ったー」
「……あ゛ー。いい映画だった」
「映画で泣くタイプの男なんだ」
「どうしてもこの手の映画は感情移入しちゃってさ。……ちょっと恥ずかしいけど」
「ま、あたしはそれに助けられたのかもしんないけど」
「カッコいい事言うね軽井沢さん」
「へへ、でしょ」
──次があるってこんなに良い──
「結局3本も見ちゃったね」
最後の映画を見終わると同時に、軽井沢さんが伸びをしながら話す。ずっと同じ体勢だと疲れるよね。分かるわ。
「それなー。もう外も暗くなっちゃったし」
時刻は夜の八時。丸一日家で過ごしたことになるが、これはこれで楽しい一日だった。
「あたし帰るね」
「うん。気を付けて帰って」
「エレベーター乗るだけなのに?」
そんなやり取りが面白かったのか、軽井沢さんは笑いながら靴を履いた。
そして、ドアノブに手を掛けようとしたタイミングで、軽井沢さんはポツリと何かを呟いた。
「……ありがとね」
「ん?」
聞こえなかったため聞き返すと、軽井沢さんは恥ずかしそうに声を荒げてこちらを振り向いた。
「だから! ……ありがとうって言ってるの。この前の事もそうだし、今日も凄い楽しかった。何か、心の底から笑えたって感じ?」
「あはは。何それ」
「わ、笑わないでよ!」
顔を赤くしながら、プンプンと可愛らしく怒る軽井沢さん。彼女の周りを取り巻く問題は、まだ完全に解決したと言うわけではないだろう。俺と軽井沢さんの関係も、はたまた彼女と洋介君との関係も、人には言えない嘘が混じったものだ。
「じゃあ、
「! ……うん! 今日はありがと!」
────しかし、『心の底から笑えた』という発言には、何一つ偽りなど無いように思えた。
────新しい趣味を見つけよう! (綾小路清隆)────
「……暇だ」
エアコンの駆動音だけが鳴り響く夏の部屋で、唐突に清隆君が沈黙を破るように呟いた。
……確かに清隆君は時間を潰せる趣味を持っているわけではないだろう。金欠からか新しい本を買ったりもしないし、スマホゲームをやるわけでもない。……というか。
「人の部屋に来て言う事じゃないと思うんだけど」
「……そうだな。どうする? またチェスでもやるか?」
「やだよ。この前みたいに丸一日潰れるじゃん」
4時間くらいぶっ通しでやったせいで、次の日体のあちこち痛かったし。
「あれは紡がもう一戦やろうって言うからだろ」
「いや、あれは『ちょっと出来る』ってレベルじゃねえから。普通にその道で生きていけるからなマジで」
手心加えてやろうかと思って、先手譲って優しくやってたらボコボコにされたわ。
「……結局勝負はつかないままだったか。次は持ち時間決めてやらないとな」
「そうだね」
うーん……あんな環境で生活してたら趣味なんてできるわけないよな……よし、高校生男子と言ったらコレっしょ。
リモコンを手に取り、プロジェクターのスクリーンを下ろす。
「映画でも見るのか?」
「それも良いけど……お、あった」
ソファ横の収納ボックスから『とあるモノ』を取り出すと、不思議そうにこちらを見つめる清隆君に投げ渡す。
「っと。これは……コントローラーか」
「ゲームの経験は?」
「ほとんどないな。池に誘われてスマホゲームを入れたが、結局すぐ飽きた」
いいね。ゲームの醍醐味を知らないとは、教えがいがありそうだ。
コントローラーの電源を入れると、自動的にゲーム機が起動し、音と共にスクリーンに出力される。
「良いっしょ? プロジェクターもスクリーンも高い奴買ったんだよね」
「……これ、合計10万近くするだろ。どうやって買ったんだ」
「そんな分かりきってること聞くなよ~」
ありがとう有栖ちゃん。
「……そうか。で、何をやるんだ?」
「2人で出来るやつだとホラー……はいいや」
こいつホラゲやっても絶対ビビんないだろうし。となると……
「地球防〇軍しかないっしょ。それ真ん中のボタン押したら自動で繋がるから、繋がったら2pってとこ選択して」
「これはどういうゲームなんだ?」
「んとね、名前の通り地球を襲うデカいモンスターを、ハイテクな武器でなぎ倒していくゲームだね。ガン〇ムみたいなのを操作したり、空飛んだりもできるよ」
「なるほどな」
お、ちょっとテンション上がってそう。そりゃ空飛ぶのとデカいロボットは男の共通の夢だからね。
「じゃ、早速やるか。お菓子とジュース用意してくるから、チュートリアルやってて」
「わかった」
──難易度調整はほどほどに──
「……簡単だな」
「言うねー。難易度HARDでもへっちゃらか。お、いい武器ゲットじゃん。それ強いよ」
「これか?」
「そうそう。じゃあ、一番ムズイのでやってみる?」
「やるか」
「ちょ! 死ぬ死ぬ清隆君! 味方撃つとダメージ入るから!」
「そうなのか? あっ……」
「ぎゃあぁあ! ロケラン撃ってくんじゃねえよバカ!」
「……ゲームする時性格変わるタイプなのか?」
「男とゲームする時なんてこれ位で良いんだよ! ほら、そっち行ったよ清隆君!」
──意外な一面? ──
「……? 何かHP少ないな……って、お前さっきからコソコソオレの事撃ってるだろ!」
「さっきのお返しだよー。ほれほれ……アイエェェェェ! C4*1!? C4ナンデ!?」
「こういう時の為に装備してたんだよ」
「ゲームするときも用意周到になってんじゃねぇよ!?」
「そういうお前はうるさ過ぎだ」
「……そうなんだよね。だから『ゲームやるな』って言われるのかな……」
「急に冷静になるなよ」
──ブレない男──
「……面白かったな」
「オンラインでも出来るし買ったら? 来月入った分と、試験の分合わせるとギリ買える位だと思うけど」
「飯代はどうするんだよ。山菜定食は嫌だぞ」
「そこは……あ! ほら、佐倉さんとかn「坂柳に堀北の事チクるぞ」……すいません」
「全く……」
──負けず嫌い×FPS=ヤバい──
「次は鈴音ちゃんも誘ってAP〇Xでもやろっか。丁度3人だし」
ゲームがひと段落したところで、そんなことを清隆君に提案してみる。
伝わるかどうか不安だったが、一応池君達がやっているだけあってかその名前自体は知っている様だ。
「堀北がハマるとは思えないけどな」
「やってみれば案外ハマるんじゃない? 負けず嫌いだし。それに……ヘッドホン付けてコントローラーでゲームする鈴音ちゃんちょっと面白くない?」
負けて煽られても、台パンとかはしないけど手とかプルプルさせそう。想像したら萌える。
「……確かにな。今度誘ってみるか」
何の気なしの提案だったが、俺たちは甘く見ていたのだ。彼女の負けることを許さないストイックさを。
────そして数か月後、バチバチにハマった鈴音ちゃんに毎日遅くまで付き合わされることになるのだが、それはまた別のお話。
────初心な美少女って良いよね(堀北鈴音)────
「お化け屋敷に行こう!」
『……いきなりね』
「いやね、どうにもケヤキモールにイベントで来てるみたいなんだよ。夏休みも半分過ぎたけど、鈴音ちゃんとは遊んでないと思ってさ」
スマホ越しに呆れたようなため息が聞こえて来る。
『いつ行く予定なのかしら?』
そんなことを言いつつも、すぐ承諾するあたりツンデレが過ぎると思うんだよね。可愛いからいいけどさ。
「夏休みでも土日入ると部活とかで混むだろうから……3日後とかどう?」
『3日後……金曜日ね。詳しい時間とかは後で送って頂戴』
「おっけー。じゃあまた連絡するね! おやすみ鈴音ちゃん」
『ええ。おやすみなさい……紡君』
そんなやり取りの後電話を切る。
それにしても……うん。最後の名前呼びは中々インパクトがあるわ。あの慣れてない感じが素の辺り才能あるよマジで。
それから3日が経った昼過ぎ、俺は待ち合わせ場所へと向かっていた。……っと、何時もと髪型違うけど……あれ鈴音ちゃんだよね。
「お! おはよ鈴音ちゃん。早いね」
集合時間より10分ほど前に付いたのだが、それ以上前に着いていたようだ。声を掛けると、鈴音ちゃんは一度ビクッと体を震わせてこちらを振り返る。
「おはよう紡君。それじゃあ……行きましょうか」
「おお……」
その姿が良い意味で衝撃的だったため、思わず感嘆の声を漏らしてしまった。
そんな俺を見て、鈴音ちゃんは不安そうにこちらを見つめて来る。
「……変だったかしら。色々勉強したのだけど……」
「いや逆。めっちゃいい感じ」
語彙力が無くなってしまったが、それだけ今の鈴音ちゃんはこの人混みの中でも目立つ存在だった。
まず先ほども言ったが髪型である。ロングヘアを少しだけサイドで編みこんでいるいつもの髪型は、お団子ハーフアップにとなっていて、これにより何時もの真面目な印象が一転、ふんわりと垢抜けた印象を与えている。
「……その、ずっと見られると恥ずかしいのだけど……」
そしてその印象を後押ししているのは、白のワイドパンツにベージュのTシャツ。着飾りすぎないのも学生らしくてポイント高い。
服の状態から察するに、この3日間で急いで揃えたものなのだろう。やっぱり長めに期間設けたのは正解だったね。
「めっちゃいい。天才、マジで」
「そ、そうかしら。なら良かったわ……」
もじもじとショルダーバッグを触りながら話す堀北さん。あざとい、あざといぞこの女。
「ねね、俺は? 似合ってる?」
鈴音ちゃんはカジュアルすぎる服装は好きじゃないと思って、オーバーサイズは抑えめでネックレスとかも付けてこなかったけど……案外この素朴さが良い感じかもしれないね。
「……似合ってるわ。普段とはまた違った印象ね」
普段のチャラい印象とという意味だろうけど、今の2人の場合傍から見たら俺の方が真面目そうだけどね。
「それはこっちのセリフだよ。こういう服着るんだね鈴音ちゃん」
「こういう時くらい、普段とは違う感じにしたかっただけよ」
デートとかしたこと無いだろうし、今日一日楽しみだ。
「よし! じゃあ行こっか」
「ええ」
そう言って2人で歩き出す。ここで手を繋がなかったのは後の為だから覚えておいて欲しい。
「お化け屋敷とか行ったことある?」
「無いわね。今までそういうのとは無縁だったし。行く相手もいなかったわ」
「そっかー。怖いのとかは大丈夫? 俺は結構いける口何だけど」
「余裕よ。そもそも、幽霊なんて非科学的なもの怖がる方がおかしいわ」
どこかムッとした様子で言い切る鈴音ちゃん。子ども扱いされたと思っているかもしれない。
「そっか。じゃあ余裕だね」
「もちろんよ」
でも今回のお化け屋敷は、ここに来てるだけあって
──難易度調整はほどほどに(2回目)──
「優しい、普通、激コワの3つがあるけどどうする?」
「……とりあえず普通でいいじゃないかしら」
「あれ、あれだけ啖呵切ったのに日和るの? 俺は激コワでも余裕だけど」
「言ったわね。腰を抜かしても助けてあげないから」
「そりゃ参った。じゃあ頑張って付いていくよ」
『ぎゃあ゛あ゛ぁぁあ゛!!』
「きゃっ!? つ、紡君……待って!?」
「おっと、大丈夫? 暗いから転ばないようにね」
「何でそんな平気なのよ! 『アあ゛ぁァあ嗚呼』ひっ!?」
「あははは。ビビりすぎだって鈴音ちゃん。手繋ぐ?」
「……うん」
「おっ、後4分の3だって! がんばろー」
「えっ……」
「あ、あとどれ位かしら」
「半分! ほら、行くよ鈴音ちゃん」
「あと半分!? ……うぅ」
「怖いの?」
「怖くない!」
「このエリアで最後だって……あれ、鈴音ちゃん?」
「少し、少しだけ待って頂戴」
「もしかして腰抜けちゃった?」
「……」
「しょうがないなぁー。ほら、おぶってあげる」
「……ありがとう」
──あざとい美少女もまた良い──
「ほら、終わりだよ鈴音ちゃん。って大丈夫?」
結局最後のエリアは全部おんぶした状態で進むことになってしまった。心なしかお化けたちも生暖かい視線を送っていたような気がする。
「……泣いてないわよ」
「いや聞いてないけど……丁度休めるところあるから、そこで落ち着くまでゆっくりしよっか」
余りにも反応が良いものだからいじめすぎてしまった。反省反省。
おあつらえ向きに置かれたベンチにゆっくりと座らせると、鈴音ちゃんは涙こそ流していないが目が赤くなっていた。
「あらら。ハンカチ使う?」
「……知ってたのかしら」
「ん? 何が」
無言でハンカチを受け取ると、鈴音ちゃんはしゃくり上げながらこちらを睨みつけてきた。
「私がこうなると知ってたってこと!」
「いや、まさかここまで怖いとは思ってなかったよ。ホントホント」
「ふん。全然平気だった癖に、よく言えたわね全く」
ある程度落ち着いてきたのか、鋭い言葉尻が戻ってくるが、いかんせん涙目で睨まれても可愛いとしか思えない。
「ごめんごめん。悪気は無かったんだよ?」
「どうだか……」
そう言うと、鈴音ちゃんは立ち上がって右手を差し出してきた。
「許してあげるから、今日一日エスコートしなさい。……楽しみにしてたんだから」
「ははっ……おっけー。仰せのままに」
暗に手を繋げと言う意味も込めてあるだろう。さっきまであれだけソワソワしてたのに……こうやって人は成長していくんだね。
────そんなしみじみした思いを抱きながら、俺と鈴音ちゃんのデートは無事幕を閉じたのであった。
『またね』と言われて喜ぶ軽井沢
年頃らしい趣味を見つけた綾小路
斎藤に更なる父性を見つける堀北 の三点でお送りしました。
ちなみに、僕の中で紡くんの容姿がハッキリと浮かんでないんですよね。もし良ければどんなイメージか感想に書いてみてください!
次は体育祭編となります。お楽しみに!
モチベ=投稿頻度なので、もし続きが見たいって思って頂けたなら高評価や感想してくれると超嬉しいです!
話の進むテンポについて
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もっとサクサクでもいいよ
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今のままで良いよ