ようこそクズヒモ男の教室へ 作:妄想癖のメアリー
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多分これからは返事ちゃんとします!
待ちに待った…
あれだけ長かった夏休みも終わりを迎え、俺と有栖ちゃんは一か月ぶりの通学路を歩いていた。
「夏休みも終わりかー。今年は遊びまくっちゃったね」
「去年までがおかしいだけだと思いますよ。ほぼ毎週大会だったじゃないですか。その度に予定を合わせないといけないこっちの気持ちにもなってください」
文句を言うなら来なければ良いと思うのだが、週一ペースの大会ほぼ全て来てくれた有栖ちゃんと両親には感謝しないとね。
最前列で優雅に日傘をさして応援する有栖ちゃんを思い出してほっこりしながら、俺は更新された学校のHPを見る。でかでかと表示された
「体育祭かー。また暇になっちゃうけど大丈夫?」
いくら頭が良くても、運動が全くできないと言うのは中々のハンデだ。それを物ともせずAクラスのトップを張っている辺り、この子は本当に天才だと改めて認識する。
「ええ。私としては一年ぶりに紡君の勇姿を見る機会ですから」
「……あんま期待しないでね。トレーニングサボってるから」
もう半年くらいはロクに体動かしてないんだよな……というか。
「AクラスとDクラスが赤組として、CクラスとBクラスの白組と戦う感じなんだね」
「そうみたいですね。でも良かったです。紡君が優勝した時、周りを気にしないで喜べるので」
真っ直ぐな笑みをこちらに向けて来る有栖ちゃん。新学期初日だと言うのに、とても機嫌が良さそうだ。
「……ま、そこまで期待されたなら頑張ろっかな」
ボロ負けして『もうあの頃の紡君は居ないんですね』とか言われたら死ねる自信がある。
「朝ランニングするから、これから体育祭終わるまではお弁当作れないかも」
「それは嫌です。早起きしてください」
「まじかぁ……」
6時起き確定じゃん。
それから午前の授業が終了し、後の授業は2時間丸々ホームルームを行うことになった。何となく予想はついていたが、この時間で体育祭の説明と話し合いを行うらしい。
「今日から改めて授業が始まったわけだが、2学期は9月から10月初めまでの1ヶ月間、体育祭に向け体育の授業が増えることになる。新たな時間割を配るためしっかり保管しておけ。それから時間割表と共に体育祭に関する資料も配っていく。先頭の生徒はプリントを後ろに回していくように」
教壇に立った茶柱先生から受けた説明は今朝話したものと全く同じ。配られたプリントには以下の内容が書かれている。
・体育祭におけるルール及び組分け
全学年を赤組と白組の2組に分け行われる対戦方式の体育祭。
内訳は赤組がAクラスとDクラス。白組がBクラスとCクラスで構成される。
・全員参加競技の点数配分(個人競技)
結果に応じて1位15点、2位12点、3位10点、4位8点が組に与えられる。 5位以下は1点ずつ下がって行く。団体戦の場合は勝利した組に500点が与えられる。
・推薦参加競技の点数配分
結果に応じて1位50点、2位30点、3位15点、4位10点が組に与えられる。
5位以下は2点ずつ下がって行く(最終競技のリレーは3倍の点数が与えられる)
・赤組対白組の結果が与える影響
全学年の総合点で負けた組は全学年等しくクラスポイントが100引かれる。
・学年別順位が与える影響
各学年、総合点で1位を取ったクラスにはクラスポイントが50与えられる。
総合点で2位を取ったクラスのクラスポイントは変動しない。
総合点で3位を取ったクラスはクラスポイントが50引かれる。
総合点で4位を取ったクラスはクラスポイントが100引かれる。
「勝った場合でもクラスポイントが減らないだけなんだ」
「そうだ。クラス別のポイントもしっかりと計算されることになっているから注意するように。仮にAクラスが飛び抜けて活躍しておまえたちの属する赤組が勝ったとしても、Dクラスの総合点が最下位だった場合には100ポイントのペナルティを受けることになるからな」
中々厳しい試験のように思えるが、無人島試験の差し引きと考えると納得がいく。あちらはポイントがマイナスになることは全くない試験だからね。恐らく学校が想定するクラスポイントの範囲があって、そこから外れないように調節しているのだろう。
それでも茶柱先生が言った言葉は受け入れがたいようで、クラスには批判ムードが立ち込めている。
しかし俺が注目したのはプリントの次のページに書いてある内容だった。
・個人競技報酬(次回中間試験にて使用可能)
各個人競技で1位を取った生徒には5000プライベートポイントの贈与もしくは筆記試験で3点に相当する点数を与える(点数を選んだ場合他人への付与は出来ない)
各個人競技で2位を取った生徒には3000プライベートポイントの贈与もしくは筆記試験で2点に相当する点数を与える(点数を選んだ場合他人への付与は出来ない)
各個人競技で3位を取った生徒には1000プライベートポイントの贈与もしくは筆記試験で1点に相当する点数を与える(点数を選んだ場合他人への付与は出来ない)
各個人競技で最下位を取った生徒にはマイナス1000プライベートポイント。(所持するポイントが1000未満になった場合には筆記試験でマイナス1点を受ける)
・最優秀生徒報酬
全競技でもっとも高得点を得た生徒には10万プライベートポイントを贈与。
・学年別最優秀生徒報酬
全競技でもっとも高得点を得た学年別生徒3名には各1万プライベートポイントを贈与。
「……清隆君、俺らで総ナメにして小遣い稼ごうぜ」
全員参加の100m走、ハードル走、棒倒し、綱引き、障害物競走、二人三脚、騎馬戦、200m走だけでも8種目。推薦種目である借り物競走、四方綱引き、男女二人三脚、学年合同1200mリレーを合わせると12種目だ。
これを全種目1位を取るだけで6万ポイント。最優秀成績も俺と清隆君なら余裕だろうし、ボロイ商売になりそうだ。
「あのなぁ……」
「別に運動できるってバレても問題ないって。ゲーム機も買えるよ? あと間違いなくモテる。絶対に」
呆れる清隆君を必死に説得する。実際Dクラスでも隠れたイケメンとして扱われているんだ。こいつが体育祭で噂になるくらいの成績残せばモテるのは間違いなしだろう。
「……悪くないな」
モテるの方に食いついた辺り、清隆君も健全な男子高校生の道を歩んでいるようだ。
「よし決定。どうせ他クラスの生徒も俺しか警戒してないだろうし、余裕余裕。どっちが女子の連絡先増やせるか勝負しようぜ。そっちが勝ったら体育祭でゲットしたポイント全部あげるよ?」
「……オレが負けても何も出さない条件なら受けてやってもいいぞ」
「いいね。俺はそれで全然OKよ」
遂に本気の清隆君が見れるのか……これは楽しくなりそうだ!
2時間目のホームルームは全学年で顔合わせの予定だ。
といっても最後のリレー以外は全て学年ごとの競技となるため、学年を交えての交流は、赤組の代表である3年Aクラスの先輩の挨拶のみで終わった。
「奇妙な形で共闘することになったがよろしく頼む。出来れば仲間同士で揉め事を起こすことなく力を合わせられればと思っている」
「僕も同じ気持ちだよ葛城くん。こちらこそよろしく」
少し離れた所では、今回有栖ちゃんに変わってAクラスの代表者をしている葛城君と平田君が話している。
「いいのか? お前が出なくて」
「まぁ大して変わらないでしょ。無人島試験とは違うし」
隣でその様子を見ていた清隆君が耳打ちをしてくる。
本来俺が行くべきなのかもしれないが、前回盛大な暗躍をしたため、ほとぼりが冷めるまで大人しくしとこうという合意に至った。
「────話し合いするつもりはないってことかな?」
その時、少し離れた所から声が響いてきた。ざわめいていた体育館に一瞬の静寂が訪れる。
その声の主はBクラスの一之瀬さん。組み分けを見た瞬間に何となく予想していたが、どうやら同じ白組の龍園君と揉めているようだ。
「こっちは善意で去ろうとしてんだぜ? 俺が協力を申し出たところでお前らが信じるとは思えない。結局端から腹の探り合いになるだけだろ? だったら時間の無駄だ」
「なるほどー。私たちのことを考えて手間を省こうとしてくれてるんだねー。なるほどー」
「そういうことだ。感謝するんだな」
明らかに納得していない様子の一之瀬さんだが、龍園君はそんな彼女を笑い飛ばし、Cクラスの生徒全員を率いて歩き出す。
「はぇー。凄い統率力」
「感心してる場合じゃないと思うけどな」
清隆君に小突かれる。いや、でもアレは凄くない? 誰も何も言わないで付いていくんだよ?
そして体育館が騒々しさを取り戻したタイミングで、近くに居た池君が唐突に呟いた。
「なぁあの子……」
その先には……なるほど。彼が指差した先に居たのは有栖ちゃん。1人物静かな様子で、杖を持ちながら椅子に座っている。
「彼女は坂柳有栖。体が不自由なために椅子を使用しているが理解してもらいたい……それと────」
葛城君が改めて俺たちに紹介してくれている。やっぱり気が利く子だよね。ひねくれ者ばかりのこの学校において、一之瀬さんと並ぶまともな生徒筆頭候補だろう。
夏休みの間に清隆君とも少し仲良くなったらしいが、一体どういうやり取りの末そうなったのかが非常に気になる。
「坂柳……ん? どっかで聞いたことあるような」
池君がそんな感想を呟く。というか、ちょくちょく話に出しているんだけど覚えてないのかな。
そんなことを思っていると、注目を浴びている事に気が付いたのか、有栖ちゃんは柔らかく微笑んで呟いた。
「私に関しては残念ながら戦力としてお役に立てません。全ての競技で不戦敗となります……自分のクラスにもDクラスにもご迷惑をおかけするでしょう。そのことについてはまず最初に謝らせて下さい」
絶対心苦しくなんて思ってないくせに、一体どんな気持ちで謝っているんだろう?
そんな失礼なことを考えていたら、ふと有栖ちゃんと目が合ってしまう……げっ。
「やっぱりさ……この学校可愛い子多いよな!」
「な! 益々彼女欲しくなっちゃうぜ……って、どこ行くんだよ斎藤」
山内君と池君が話す中歩き出すと、池君が不思議そうに声をかけてきた。
「呼ばれたからちょっとだけ外すね。気にしないで」
そう言ってAクラス……正しくは有栖ちゃんが座っている場所へと向かうと、そこには先ほどまでの浮世離れした美少女感はどこへやら、こちらをジト目で見上げる俺の可愛い幼馴染が居た。
第一印象とのギャップがある生徒ランキングだったらかなり上位に入っていると思う。クラスの生徒とは必要以上に馴れ合わない的な事を言ってた癖に、ちゃんとオシャレなカフェとかに行ってるのを俺は知っている。
「どしたの有栖ちゃん」
「いえ。何か言いたげな様子でしたので」
げっ、バレてるじゃん。コワー
「すぐ表情に出す癖直した方が良いですよ。……それともわざとやってるのでしょうか?」
「いやわざとじゃないし、そもそもそんなこと思ってないよ。それより有栖ちゃん。今日の晩御飯どうす……いっ!」
後頭部に鈍いダメージが走ったため振り返ると、そこには呆れたように腕を組んだ神室さんが立っていた。周りに聞こえないように耳元に顔を寄せてひそひそと話しかけてくる。
「……何普通に話してんのよ。周りが見えてないわけ?」
「えっ、別に良いよね?」
そう有栖ちゃんに聞き返す。
「ええ。今回AクラスとDクラスは協力関係ですから。何も問題ないでしょう」
「……バカップルが。この前こっぴどく騙されたくせに「何か言いました?」……」
座ったままビシビシと杖を神室さんの脛に当てる有栖ちゃん。
最近耐久性を上げた杖を新調したらしい。他人を引っ叩く為のカスタムじゃないことを祈りたいところだ。
「ちょ、俺にも当たってるんだけど」
「紡君も紡君です。私の知らぬ間に、二人とも随分仲良くなってるんですね?」
不機嫌そうに足を組みながら聞いて来る有栖ちゃん。……さっきまでの頭いい感が台無しになっているけど大丈夫なのだろうか。
「畜生! あいつが言ってた有栖ちゃんってあの子の事かよ!? 隣の子もめっちゃ可愛いし!」
「俺やっぱアイツ嫌いだわ」
遠くで池君と山内君が何か言っている気がするが気にしないことにしよう。
それから有栖ちゃんの友達に挨拶をしながら、平田君たちの話が終わるのを待つと、ずんずんと歩いてきた鈴音ちゃんに引っ張られる形で退場することになった。
「気を抜きすぎ! いくらAクラスでも、競い合う相手には変わらないのよ!」
誰もいない教室で、怒り心頭といった様子の鈴音ちゃんに怒られる。
開いた窓の外から聞こえて来る部活動の掛け声が、やけに耳に残って仕方がなかった。
「はい……」
「紡は意外と尻に敷かれるタイプなのか?」
やかましいわい。お前も鈴音ちゃん相手だと強く出れないだろ!
「でも良いのかい清隆くん。そんなのほほんとして」
「?」
疑問符を浮かべる清隆君に、チャットの友達画面を見せつけて言い放つ。
「俺はあの時間で、有栖ちゃんの友達4人と連絡先交換したよ?」
「……丁度今言おうと思ってたんだが、坂柳キレてたぞ。杖を持つ手が震えてた」
「は? マジ?」
絶対今日の夜ご飯気まずくなる奴やん。
「当たり前でしょ……」
放課後の薄暗くなった教室に、そんな鈴音ちゃんの呆れた呟きがこだました。
清隆君のモチベがゲームとモテる事になってます。経過は順調です。
因みに紡君はその後夕食時にしっかり怒られました。自分そっちのけで他の子と話してたし、しょうがないね。
モチベ=投稿頻度なので、もし続きが見たいって思って頂けたなら高評価や感想、お気に入り等してくれると超嬉しいです!
話の進むテンポについて
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