ようこそクズヒモ男の教室へ 作:妄想癖のメアリー
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遂にやってきた体育祭本番。これから長い一日になるであろうことを思わせる開会式を終え、オレ達1年Dクラスの生徒は支給されたテントへ向かった。どうやら赤組と白組同士が接触できないようにトラックを挟み込んで設営されているらしい。
「それにしても用意周到ね。結果判定用のカメラまで設置されてる」
最初の100メートル走に備えてかゴール地点と思しき場所にカメラが見受けられた。
「ここまでの設備は大会でも珍しいよ。全国レベルまで行かないとそうそう見れないから楽しみだね」
それを見て呟いた堀北に対し、紡も楽しげな様子を見せている。
「あなた達の100m走は何組目だったかしら?」
「俺は1組目だよ。清隆君は2組目」
「最初から圧倒するつもりね。悪くない作戦だわ」
一番最初に行われる競技の一番最初の組だ。ここで大きな印象を残しておけば、他クラスに対するプレッシャーになる。それを理解したのか感心したように頷く堀北。
「そろそろ行かないと。ここ一か月のトレーニングの成果見せてあげるから楽しみにしておいて!」
「度肝を抜いてきなさい。綾小路君もね」
「ああ。全力でやってくる」
紡がグータッチをして来たためそれに応じ。堀北からの激励に答える。中々青いやり取りだが、たまにはこういうのも悪くないだろう。
それからスタート地点へと向かい、紡の後ろの組で待機する。特等席でその活躍を見れないのは辛いが、後々沢山見れるだろうと我慢する。
『では最初の競技、一年男子100m走を行います!』
実況の声と共に歓声がグラウンド中に広がる。
トップバッターということもあって緊張する生徒が多い中、紡はこちらに振り返ってピースサインをした後スタート台に足を掛ける。クラウチングスタートの姿勢だ。
そして合図が鳴ると同時に強力な踏み込みを行う紡。電光掲示板には横からの様子が映っており、プロの陸上選手顔負けのフォームで圧倒的な差を見せつけてゴールした。
「うわ……10秒21だって。バケモン過ぎだろ!」
後ろに並んだ池がドン引きしている。一年生にして10秒台前半。これは陸上部のスカウトがうるさいと愚痴ってたのも頷けるものだ。
先ほどのものとは比にならないほど大きな歓声が広がる。因みにいま並んでいる一年男子はその限りではない。あまりの記録に呆けてしまっている。
「さて……やるか」
ちょっと羨ましいからオレも本気を出すとしよう。
紡に教えてもらった通りにスタート台に足を掛け、合図とともに駆け抜けた。遅れて7人が到着する。記録は……
「10秒19だってさ! 負けちゃったよー」
ゴールで待っていた紡が満面の笑みを浮かべていた。
「ほとんど変わりないけどな」
「うわ、嫌味かよ」
違和感が無いように徐々に記録を上げていったが、それでも練習で出した記録を大幅に更新してしまった。なんて言い訳すればいいかが悩みどころだ。
そして紡が向かった先は坂柳の居るテント。遠目からでもはっきりわかるほどいちゃついていた。
「……羨ましくなんてないぞ」
そう自分に言い聞かせながらテントへ戻ると、テントに残っていた十人近くの女子に囲まれることになった。
「綾小路君ヤバすぎ! 超足速いじゃん!」
「練習の時も凄かったけど、本番はもっと凄かった!」
「その調子でリレーも頑張ってね!」
「お、おう……ありがとう」
今まで扱いこそ悪くなかったが、ここまでチヤホヤされるのは初めての為たじろいでしまう。助けを求めるように紡と坂柳の居るテントを見たが、2人微笑ましそうにこちらを見るだけで何もしてくれなかった……クソっ! あいつら嵌めやがったな!
……仕方がないので、会釈しながらテントから離れると言うダサすぎる行為をしてしまった。……どうやらオレにはまだ早いみたいだ。
「あ、綾小路君!」
テントから離れると急に後ろから呼び止められた。先ほど散々ダサい対応をしてしまった為、二の舞は踏まないようにと意を決して振り返った。
「なんだ……って佐倉か。安心したぞ」
「安心? ……そ、そう?」
「ああ。さっきの女子達への対応を見ただろう。もし急に話しかけられてまともな対応が出来るとは思えないからな」
「ううん。その……凄く恰好良かったよ! あんなに速く走れて羨ましいかも」
どうやらわざわざそれを伝えに来てくれたらしい。クラスの皆の前では恥ずかしくて言えなかったのだろうが、その気づかいが心にしみる。
「ありがとう。佐倉も頑張れ」
「! うん! 私、頑張るね!」
そう返すと嬉しそうに小走りで戻って行く佐倉……これから走ると言うのに疲れないのだろうか。
「ひゅーひゅー」
そんな間抜けな声が隣から聞こえてきた。ため息をついてそちらを見ると、そこにはニヤニヤと嫌な笑みを浮かべこちらを見つめる紡が居た。
「……お前なぁ。ああなるって分かって1人で行かせたな?」
「いや、元々行くつもりではいたよ? ただ戻ろうとしたら面白そうなことになってたからさ」
「助けてくれても良かっただろ……」
「やだよ面白かったし」
紡の悪い所が出ている。基本的には面倒見のいい年長者ムーブをかましてる癖に、こういう時だけ質の悪いいたずらっ子になるのは一体何なんだろうか。
「あんなんでたじろいてたら後が持たないよ? これから俺たちは推薦競技を総なめして総合最優秀賞を取るんだから。1年で取った生徒は今まで居なかったらしいし、楽しみだね清隆君」
「……そうだな」
それから俺と紡はテントに戻ると、そこでは競技に手を抜いて挑んだ高円寺と須藤が言い争いをしていた。
しかし紡が見事な手腕で須藤を収め事なきを得た。常日頃堀北や坂柳といった猛獣たちを飼いならしてるだけある。
『まあまあ。俺と須藤君が居れば十分っしょ? 高円寺君まで参加したら誰も勝ち目無くなっちゃうって』
『そりゃそうだけどよ……』
『逆に手を抜いた生徒が居てもぶっちぎって優勝したらカッコよくない? そしたら須藤君はDクラスの英雄だよ』
『……ッチ。お前が言うならしょうがねえな。てか綾小路! テメェなんであんなに足速ぇんだよ!』
『紡と特訓した』
『そんなんで誤魔化せると思うなよ! テメェスポーツ舐めてんのか!?』
その苛立ちは最終的にオレの方へと向かってきたんだが……頑張っているのに踏んだり蹴ったりな気がしてならない。
続いての競技はハードル走。100m走よりも技術が求められる競技だが、陸上経験者の紡にとっては余裕だったらしい。
その後に続いてオレもレーンに並ぶ。隣には何かと縁のある生徒、神崎の姿があった。
「早速当たったようだな」
「……お手柔らかにな」
「冗談を言うな。100m10秒台の男が言うセリフじゃないだろ」
そんな手厳しい返事を貰ってしまった。
結果としては1位だが、100m走よりも大きな差で紡に負けてしまった。これに関しては技術面の割合が多いため仕方のない事なのだろうが……悔しいものは悔しいな。
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どうも、現在清隆君に一勝一敗のヒモです。
まさか100mで負けるとは思わなかった。笑顔でおめでとうと言ったけどめちゃくちゃ悔しい。でも女子に囲まれてキョドる清隆君を見れたから満足かな。
それは置いといて、次の競技は棒倒し。DクラスとAクラスの混合チームとCクラスとBクラスのチームで分かれて戦う体育祭一スリリングな競技だ。
「頑張ってください紡君。応援してますよ?」
別れ際に有栖ちゃんが応援してくれた。これは格好いいとこ見せないといけないね。
「よーし。じゃあ皆この前話し合った通りにやろう。OK?」
「「「おう!」」」
事前に立てた作戦通りに進めると確認を取る。提案した当時は懐疑的な意見も多かったが、清隆君の本気を目の当たりにした今文句を言う生徒は1人もいなかった。
試合のルールは2本先取した組の勝ち。葛城君と洋介君は事前の話し合いで、オフェンスとディフェンスをクラス毎に交互にすることを取り決めていた。クラスを混合させるより連携を取りやすいし分かりやすいだろう。
「最初ちょっと不安かもしれないけど気長に待ってて」
「? 分かった」
そう葛城君に一言伝え、攻撃側となったDクラスの集団に交ざる。
そして試合開始の合図が鳴り、須藤君を中心に我先と皆が敵陣へ突撃する。
「がああぁぁぁあああ!」
「来たぞ! 須藤に気を付けろ!」
余りの迫力に守りの司令塔である神崎君が棒のてっぺんに乗って指示を出す。ここまでは計画通り。
「上手く進んでるな。タイミングは任せたぞ」
「はーい」
俺と清隆君はそれに参加するまでもなく後ろでゆるりとしている。サボっている訳ではなく、これも作戦の内だ。円を描くように棒を囲んだDクラスがじりじりと距離を詰めもみくちゃになる。
今頃外へ押し出そうとするBクラスと、それを押し込もうとするDクラスで棒の周りは地獄と化してるだろう。良かった外に居て。
「おい! あいつらまだかよ!? もう疲れてきたんだけど!」
堪らんというような池君の声が聞こえて来る。もうそろそろお互い体力ヤバそうだね。よく見たらAクラスの方も結構危ないし、そろそろ行かないと。
「よし、行くよ清隆君」
「おう」
そう言って一気に棒の手前5mほどまで走る清隆君。そこで初めてBクラスは、俺と清隆君がこの集団の中に居ない事に気が付いた様子だった。
「!? 斎藤はどこだ!」
神崎君が声を荒げるが、それに耳を貸す余裕は皆なかったようだ。
「よーし……じゃあ行くよ!」
「おう。あまり痛くないように頼むぞ」
神崎君に見えない位置でスタンバイした俺は、前傾姿勢で一気に駆けだす。
「────皆! 今だ!」
その合図と共に、Dクラスの生徒達は相手の服を引っ張って後ろに倒れ込む。
抵抗が急に無くなった為、Bクラスの生徒達はその上にのしかかるようにして倒れ込んでしまった。それにより棒を守る生徒は途端に半分以下に減り、左右に大きくぐらついた。
「なっ!?」
そのまま素足で片膝をついた清隆君の肩を踏み、天高く飛び上がる。
「怪我すんなよ! ……っらぁ!」
────棒倒しに使われる棒のサイズは基本的に3~5m程。この学校のものも例に漏れず4mと少し位だ。そして棒倒しのセオリー通り、棒の頂点には神崎君がしゃがんで居るため重心が非常に高くなっている。
さてさて問題です。棒を守る生徒は大半が転んでいる中、体重70㎏以上の俺が棒に思いっきり飛び蹴りをかますとどうなるでしょうか?
「おい……おいおい! ヤバいって!」
答えは簡単。てこの原理により突然かかった莫大な負荷に耐えられず棒は倒れる!
勢いのまま空中で体勢を立て直し、両足で思いっきり棒を蹴り飛ばす。『バキッ!』という音と共に棒が一気に傾いた。
「クソッ! 滅茶苦茶だ!」
落ちてきそうだったら助けるつもりだったが、そこは運動神経の良い神崎君。自分からサッと降りて見事な着地をした。
そして勢いよく倒れてくる80㎏近くある棒。下敷きになったら普通に骨折する位の勢いはついているが、ここで登場するのは我らが清隆君だ。
「よっと。流石にずっしり来るな」
落ちてきた棒を両手で受け止める清隆君。流石に大怪我させるつもりもないし下手すると失格になるため対策もばっちりだ。
『そこまで! 1戦目はADクラスの勝利!』
「いぇい! 大勝利! ナイス清隆君!」
「大成功だな」
ハイタッチをして喜びを分かち合う。清隆君も嬉しそうだ。
次は2戦目を待つだけなのだが、何故か先生方が忙しなく走り回っている。どうしたんだろうか?
そんなことを思っていると、突然実況席からアナウンスが流れてきた。
『1年男子棒倒しの2戦目ですが、棒が破損してしまった為15分の準備の後に再開します』
「えっ」
そう言えば確かに木が割れるような音が聞こえてきたような……
恐る恐る倒れた棒を見ると、俺が蹴った箇所がピッタリ陥没し、それによって棒が縦に一筋に割れてしまっていた。
「っべぇ……」
それからDクラスのテントに戻ると、そこには何時ものようにバインダーを持って腕を組む茶柱先生の姿があった。……心なしか怒っているような気がする。
「気がするじゃない。怒っているんだ」
「んー……事故です! 「やりすぎだ馬鹿!」痛い!?」
バインダーを縦にしてストンと頭を引っ叩かれる。縦にしないでよ縦にはっ!
「今回は怪我人もいないし、初犯ということでお咎めなしだ。だが……次やったら今年の最優秀賞は取れないと思え」
「はい……」
呆れたようなため息と共にお叱りの言葉が飛んでくる。誠にごめんなさい。
その後しっかり鈴音ちゃんに叱られた後、2戦目はちゃんと守り抜いて勝ちました。すれ違いざまに転ばせたり、バレないように投げ飛ばせば余裕余裕!
「だから! そういう問題じゃないって言ってるでしょ! ちゃんと平和にやるの、分かった?」
「前々から若干思ってたが、紡って勝負ごとになると途端にIQ下がるよな」
「……」
「分かった!?」
「はい……」
本格的な体育祭は前世含めてやった事無いからね。楽しくてしょうがないみたいだから、どうか寛大な心で許してあげてください。
モチベ=投稿頻度なので、まだやってないよって方は高評価や感想、お気に入り登録をしてくれると超嬉しいです!!
よう実のブルーレイと0巻買ったけどめっちゃ良かったです!
ホワイトルーム出身オリ主の二次創作書きたくなってきた…
話の進むテンポについて
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もっとサクサクでもいいよ
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今のままで良いよ