ようこそクズヒモ男の教室へ   作:妄想癖のメアリー

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旅行は明日から

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躍進

 

 

 

 それから玉入れ、綱引き、障害物競走、200m走と順調に勝利を勝ち取り、次に行われる紡のレースをテントで観戦中だ。

 

「順調ね。団体競技は全て勝ってるし、須藤君を含めたあなた達の個人競技は全て1位。正直ポイントのほとんどはあなた達のおかげね」

 

「個人競技はそれほど振るわなかったからな。平田や三宅含めた上位勢が振るわなかったせいだが……こればかりは運が悪かったな」

 

 オレ達ほどではないが、入賞を十分狙える生徒達がことごとくトップクラスの生徒に当てられてしまっている。組み合わせの運があまり良くなかったな。

 あるいは別の可能性を考えていると、となりに座った堀北が周りを気にしながら小さく質問した。

 

「参加表、あなたはどう思うかしら」

 

 はっきりとは告げなかったが、その質問の意図を読むことは容易なことだった。

 

「いや、まだ分からない。現状個人競技だとCクラスが圧倒的だが……組み合わせの運が良いのか、はたまたお前が()()()()()()()()なのか」

 

「現状、CクラスとDクラスの試合での勝率は3割。これが他のクラスだったら偶然で済ませられるかもしれないけど……」

 

「相手は龍園だからな。何らかの方法でこちらの参加表を獲得している可能性はある」

 

「……でも、だとしたら実力を隠していたあなたはともかく、斎藤君や須藤君にトップクラスの生徒を当てるわけ無いわよね……やはり考え過ぎかしら」

 

 そう。堀北が言う通り、参加表が筒抜けだと仮定した場合()()()()()()()()なのだ。団体競技で負ける可能性がある以上、本来ならもっと確実に勝ちを取ることが出来る組み合わせを考えるべきなのだが……

 現にプログラムを見る限り、本気で勝利を狙いに来ているとは思えない組み合わせなのだ。

 

「今考えてもどうしようもないからな。ほら、紡の競技が始まるぞ。応援しなくていいのか?」

 

「……どうせ1位でしょう? 今更応援なんてしなくても問題ないわ」

 

「恥ずかしがっても損するだけだぞ。ほら、あっちを見てみろ」

 

 オレが指差した先に居るのは、軽井沢率いる大勢の女子達。

 

「斎藤君頑張って!」

「今回もぶっちぎっちゃって!」

「応援してるよ!」

 

「お! みんなありがとう!」

 

 手を振る女子達に対してガッツポーズをする紡。ファンサービスも非常に充実している。

 

「こういう所のアピールが勝敗を分けると聞いたが……その調子なら無理そうだな」

 

「……後で覚えてなさい」

 

 安い挑発だが、堀北の闘志を燃やすことには成功したみたいだ。

 集団の中へと入って行き、レース前でストレッチをしている紡に向かって声を上げた。

 

「頑張りなさい! Dクラスの勝利はあなたに掛かってるわ!」

 

「……こりゃ負けてられねぇな。ありがとう鈴音ちゃん!」

 

 今まで応援に来なかった堀北が声を掛けたことで、紡の闘志もマックスになったようだ。

 

「……むぅ」

 

 その様子を見ていた軽井沢がむくれている。……なるほどな。軽率に煽ったはいいが、紡本人にとっては中々大変な状況そうだ。

 

 ────そんなこんなでスタートした紡。まあもちろん負けるわけもなく、圧倒的な差で1位を取った。

 

「流石ね。やっぱり応援しなくても余裕じゃない」

 

「そうだな。負けるところが想像もできない」

 

「でもあなたより少し遅いわね。一体どんなトレーニングを積んだらそこまで速くなるのかしら」

 

 呆れた顔を隠さずに語る堀北。確かに、100mや200m等の競技ではオレの方が若干上回る記録だったな。

 

「筋力等、単純な身体能力はオレの方が高いんだろうな。だがハードル走や障害物競走を記録を見る限り、運動神経や初見の動きを身に着ける能力はあっちの方が上だと思うぞ」

 

 どの競技も手本を見て7日ほど練習すれば、その集団の中で一番上手くこなせるようになるらしい。オレもどちらかと言えば後から追い上げるタイプだが、紡に関しては異常だ。

 ホワイトルームで習った格闘技やスポーツを思い出し、あの中に入っても余裕でやっていけるだろうと予想する。

 そんなことを考えていると、戻ってきた紡が悔しそうな様子で声をかけてきた。

 

「あーあ。また負けちゃったよ」

 

「ホワイトルームで死ぬほど練習してきたんだ。そう簡単に抜かされてたまるか」

 

「つっても陸上一本じゃない癖に」

 

 それはお前もだろうと心の中でツッコミながら、次の競技である二人三脚の準備を進める。

 今回はラストの組だ。目の前で行われているレースを見ながら、オレはペアである紡の左足と自分の右足を結んだ。

 

「目標は?」

 

「100m10秒台で行こう。流石に前半は無理だろうからな」

 

「うわエグ。じゃあ俺に合わせてね? そっちの方が足速いんだから」

 

「任せろ」

 

 本当は紡もオレも別の人と組むはずだったのだが、色々あってペアになった。

 

『────紡、二人三脚だが俺とペアを組まないか?』

『いいけど、分かれた方が勝てる組増えない?』

『だが体格も足の速さもほとんど同じだろうし、悪くないと思うんだが』

『うーん?』

『綾小路君はあなたと組みたいだけよ。人の事を散々ツンデレとか言っておいて……全く、恥ずかしくないのかしら』

『……』

『ウケる。いいよ、一緒に走ろう清隆君』

 

 ……嫌なことを思い出した。とりあえず周りを見て忘れよう。

 現実逃避をしていると、目に映ったのはテントから出てきた坂柳。隣には焦ったような女子生徒の姿があった。

 

「ちょ、ちょっと。なんであんた急にテントから出てきたのよ。あんまり無理するなって言われてたじゃない」

「大人しくしてられる訳無いじゃないですか真澄さん。紡君と綾小路君がペアを組むんですよ?」

「はしゃぎ過ぎ! 面倒を見る私の気持ちにもなりなさいよ」

「見たくないんですか?」

「……見たいけど」

「じゃあ良いじゃないですか」

 

 ……退屈にならないかと紡が心配してたが、思いのほかエンジョイしているみたいだな。

 そしてやってきた俺たちのレース。もう一度紐を強く結び直し、スタートを待つ。

 

「皆から期待されてるし、ぶっちぎりで駆け抜けよう」

 

「そうだな」

 

 二人三脚と言えば、転倒に気を付けながらランニングよりも少し早いペースで走るのが一般的だ。

 だが、紡と組んでそんなしょうもない走りをするつもりは無い。今回の距離は100m。それを全力で駆け抜ける。

 

「行くぞ」

 

「おう!」

 

 互いに結んだ足を後ろに、スタンディングスタートの姿勢を取る。────開始の合図とともに、オレたちは完全に同タイミングで一歩目を踏み出した。

 それから1人で走るのと変わらないスピードで足を交互に前に出す。途中バランスを崩すことさえ全く無くゴールにたどり着いた。

 

「……凄い迫力でした。あそこまで息ピッタリだなんて……少し羨ましいです」

「うだうだしてると取られちゃうんじゃない? ……痛っ」

「冗談も程々にしましょうね?」

「……怖」

 

 ……オレにそっちの気は無いからな。これからモテる予定なんだから、変な噂を流さないで欲しいものだ。

 心の中で名も知らない女子生徒に抗議をした後、次の騎馬戦に向けての準備を進めるのであった。

 

 

 

 ────────────────

 

 

 

 二人三脚ではしゃぎまくる有栖ちゃん可愛いかったなぁ……どうも斎藤です。俺と組みたがっていた清隆君も可愛いし面白い。何だか男版の鈴音ちゃんを見ているような、そんな微笑ましい気持ちになった。

 そんなことは置いておくとして、次に行われるのは騎馬戦。個人戦最後の競技で、これが終わったらお昼ご飯だ。しっかり6人分のお弁当(俺、清隆君、鈴音ちゃん、軽井沢さん、神室さん、有栖ちゃん)を作らされたため、早くお昼を済ませたい。

 

『続いての競技は一年男子騎馬戦です。出場する選手は中央へとお集まりください』

 

 案内に従って中央へ向かい一緒に戦う清隆君、須藤君、洋介君と合流する。

 

「よし。僕達で女子の分も頑張ろう!」

 

「言われなくても分かってらぁ! ボコボコにしてやるぜ!」

 

「オレは早く紡の弁当が食べたい」

 

「お前はもうちょっと緊張感持とうぜ……」

 

 上から洋介君、須藤君、清隆君と会話が流れる。最後に関しては最早競技関係なくなってるじゃねえか。

 因みに女子はギリギリのところで負けてしまった。単純に総合力で一歩及ばずといったところだね。

 

「よし、じゃあ組むよ。練習通りやれば大丈夫だから」

 

 AD連合とBC連合、合計16の騎馬が向かい合う。中々圧巻の光景だ。

 そしてDクラスからは俺たちの騎馬、Aクラスからは葛城君の騎馬がそれぞれ中心に立ち、開始の合図を待つ。

 

『それでは! 一年男子騎馬戦……スタートです!』

 

 実況と共にスタートを知らせるピストルの音が鳴る。

 

「うおっしゃあああ! お前ら付いて来いよ!」

 

 機動力、馬力ともに圧倒的な俺たちの騎馬がガンガン突き進んでいく。

 因みに構成を説明すると、騎手が俺で前方が須藤君。左に清隆君と右に洋介君の布陣だ。化け物馬力の須藤君を左右2人が全力でサポートする布陣で、騎手には格闘技経験のある俺が抜擢された。クラスでの練習時、1対3で相手全員のハチマキを奪い返した時は中々気持ちよかった。

 

「おいテメェら! 1人で動かないで固まって動け!」

 

 両騎馬が激突すると思ったその瞬間、相手の対象である龍園君の指示で一か所に騎馬が集まった。

 

「あ!? 逃げんのかテメェ!」

 

「こっちは脳筋のお前と違ってちゃんと考えてんだよ」

 

 その言葉に今にもキレそうな須藤君をなだめ、相手の布陣を確認する。

 龍園君が騎手のセンターには何時ぞやの山田君が居た。そしてそれを護衛するようにもう一つの騎馬がこちらを睨んでいる。恐らく最も脅威と判断した俺たちをここに釘付けにするつもりだろう。

 

「どうする。無理やり突破するか?」

 

「良いけど、全力でやって怪我でもさせちゃったらマズいから……とりあえず様子見だね」

 

「そうだね。僕もそれが良いと思う」

 

「チッ、しょうがねえな」

 

 吹き飛ばした隙に怪我したと嘘でもつかれたら最悪だ。龍園君ならやりかねないし、相手の総力含めた騎馬2つを釘付けに出来る。悪くない作戦だ。

 

「クソッ! どうなってやがる!」

 

 お互い睨み合っている中、少し離れた所から声が聞こえてきた。

 声の元はDクラスの三宅君。洋介君と並んで運動神経と身体能力が高い生徒だった。今回俺を除いた騎手3人の中でも最もセンスを感じた生徒でもある。

 その三宅君達が組み合っていたのはCクラスの騎馬。何故か露骨に右手をジャージに拭っている三宅君だが、その隙をつかれたのかハチマキを奪われてしまう。

 

「……なるほどね。よし皆、合図したら全速力で横に走って」

 

 その不可解な様子を見て気が付いた。相手に聞こえないように小声で3人に呼びかけた。

 

「────よし! GO!」

 

 その瞬間トップスピードで駆けだす俺たち。Dクラスで最も運動神経が良い3人を集めたため、一気に追い抜く形となる。

 

「気づきやがったか。おい! ボサっとしてねぇで追いかけろ! 本隊に合流されたら厄介だ!」

 

 後ろから追いかけて来る龍園君の騎馬。すると突然前方にCクラスの騎馬が現れる。

 

「止まれ! ……っておいおい! 危ねぇぞ!?」

 

「もう一回合図したら1メートル左……今だ!」

 

 このまま行くと激突してしまうため、後ろ2人の肩を叩いて横に移動させる。急激なGが体に掛かったが、何とか堪えてすれ違いざまに相手のハチマキを奪う。

 

「やっぱ細工してたみたいだね。危ない危ない」

 

 手に持ったハチマキを握ると、ヌメっとした感触が伝わってくる。恐らくローションか何かを塗っていたのだろう。

 

「おい嘘だろ!? 何で取れるんだよ!」

 

 ────何回女抱いたと思ってんだ!ローションなんかで止められると思うなよ! *1

 でも男の汗が染みこんでると思うとキモいので、手に付いた液体は清隆君のジャージにぬりぬりしておく。

 

「おい!?」

 

「よーし行くぞー! この調子で後7つだ!」

 

「……後で坂柳にチクってやる」

 

 皆に合流した時点でADからそれぞれ1騎馬が脱落してしまっていたため、現状6対7で若干不利な状況。

 ────その後龍園君率いる複数の騎馬による集中攻撃と、機動力に長けた柴田君を下にした神崎君の騎馬のコンビネーションにより2騎馬脱落。

 俺が追加で3枚のハチマキを奪い何とか同点まで持ち返したが、タイムアップとなってしまい結果は引き分けで終わってしまった。

 

「クソッ! あいつらハチマキに細工しやがったな!?」

 

「それだけじゃないよ。Cクラスの騎馬がBクラスの盾になることで脱落を防いだんだ。龍園君の指示が的確だったね」

 

 悔しがる須藤君に対して補足する洋介君。こればっかりは相手の采配が上手かったと言う他ない。

 

「意外だな。龍園がBクラスの生徒に協力するとは思わなかったぞ」

 

「それだけ取る戦略の幅が広まってるってことだと思うよ……結局やってることはズルなんだけどさ」

 

 

 

*1
斎藤は気づいてないが、がっつりデカい声で叫んでいる





個人競技終わりました!現状騎馬戦以外出場種目全て1位を取ってる斎藤と綾小路、須藤です。強すぎて草生える

モチベ=投稿頻度なので、まだやってないよって方は高評価や感想、お気に入り登録をしてくれると超嬉しいです!!

話の進むテンポについて

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