ようこそクズヒモ男の教室へ 作:妄想癖のメアリー
体育祭が終わったとある10月の昼休み、俺はとあるイベントを目の当たりにしてテンションが上がっていた。
「ねえ、綾小路君」
俺の目の前で話しかけられる清隆君。その相手は鈴音ちゃんや須藤君ではない。恐らく清隆君にとっては初めて話す人だろう。
「今暇?」
その相手は佐藤さん。軽井沢さんと並ぶDクラス…現Cクラスのギャル代表である。割と男女ともに交友関係が広く、俺も割と話す仲だが清隆君と話しているところは見たことがない。
「何か用か?」
「うん、まあ。色々とね」
そんな佐藤さんが清隆君に話しかけた理由は1つしかないだろう。
きっと清隆君は歯切れの悪い佐藤さんに困惑しているだろうが、彼女の性格を考えれば清隆君に話しかける理由は1つしかない。
「あのさー。なんていうかちょっと顔貸してくんない? 話があってさ」
うわ、清隆君ちょっと警戒してる。おもろ。
体育祭でモテるって俺が言ったのに、完全に忘れてるのが初心でかわいい。
「ここじゃ何だから、いいかな」
場所を変えようとする佐藤さんについていく清隆君。なんだかんだ言ってちょろいのが笑いのツボに刺さる。
「あ……」
佐倉さんが不安そうにその様子を見つめている……お、目が合った。とりあえず頑張れの意味を込めたジェスチャーを送っておく。
「うう……」
顔を赤くして俯いてしまった。かわいい。
まぁ、鈍感系主人公の道を真っ直ぐ進む清隆君に惚れるのは大変だろうけど、俺はこのカップリング好きだから結構応援してるんだよね。
それから数分ほどして戻ってくる清隆君。佐藤さんは一緒じゃないようだ。
「……何ニヤニヤしてるんだ?」
「またまた~。隅に置けない奴だな清隆君~」
興味津々だと言う様子を隠そうともしない俺に、清隆君はため息をついて席に着いた。そして後ろを向いて椅子の背もたれに胸を付けるように座る。君がそれやるとシュールで面白いな。The・男子高校生って感じで良い。
「言っておくがお前が期待しているような内容じゃなかったぞ」
「あ、告られたんじゃなかったんだ」
「あのなぁ……」
あっけらかんと言い放つ俺に呆れたように呟く清隆君。
まぁ実際の所告られはしないだろうなとは思ってたけどね。だって佐藤さんみたいなギャルタイプの子が告るときは、周りが囃し立てがちだけどそれが無かったし。
「で、なんて言われたの?」
「友達になろうって。電話番号も交換した」
ひゅー。良いね清隆君。やっとモテ期が来たみたいだ。
「でも随分遅かったね。5分前くらいに佐藤さん帰って来てたよ」
「途中で葛城と会ったんだ。そこで少し立ち話をな」
え、葛城君と関わりあったんだ。意外。というか俺が知ってる範囲外で友達居たんだね清隆君。
「オレを何だと思ってるんだ」
「じゃあ友達何人いるか教えてよ。勿論Dクラス以外で」
「馬鹿にするな。まず一之瀬と神崎だろ? そしてさっき言った葛城に……」
意気揚々と両の手を広げた清隆君だが、オレの予想だと必要な手は1つだけだろう。
そして案の定最初の勢いのいの字も無くなってしまった。
「……さ、坂柳もいるし」
「うーんこれは重症」
そこチョイスするあたり本当清隆君らしい。でも有栖ちゃんが聞いたら喜ぶかも。
「そ、そんなに言わなくてもいいだろ」
「ごめんごめん。冗談だから凹まないで。それに、友達は
露骨に落ち込んだ清隆君。それにしても、この子は本当に奇跡の子だね。あんな劣悪な環境で育ったにも関わらず、ここまで素直でいい奴になったんだから。
だからこそ、清隆君にはもっと他の人たちと交流を深めて欲しい。
「……そうだな」
「喜ぶ所だと思うよ? ……何その絶妙な反応」
意外と変なツボ持ってるよな、清隆君って。
それから数日後、クラス内は重い空気に包まれていた。いつもはバカ騒ぎをしている池君や須藤君ですら大人しく席に座っている。
それもそのはず、今日は中間テストの結果発表の日。緊張感があることは良いことだろう。
「席に着け……随分と事前準備が出来ているようだな」
茶柱先生が教室にやってくるなりその見えない空気は更に重たくなり急速に冷え固まる。本来のあるべき姿。当たり前のクラス風景。その常識的な雰囲気に先生は驚きを隠さなかった。
そして数回の問答の後、テスト結果が張り出される。
「今から発表する点数には体育祭での結果も反映されている。活躍した者の中には結果として点数が100点を超えた者もいるが、等しく満点扱いだ」
先に行われた体育祭で結果を残せなかった下位10名には、中間テストにおける10点の減点措置が取られることが決まっていた。最近清隆君とゲームで遊んでいる外村君……通称博士は学年ワーストの一人であり、すべての教科で10点多く獲得しなければならない。
と言っても、ペナルティを受けていない生徒も緊張を隠せない様子だ。まあ仕方ないね。赤点=退学だもん。
「点数が心配か?」
清隆君が後ろを振り返って唐突にそんなことを聞いてきた。いや、君俺の成績知ってるよね。一応学年トップだよ俺?
「今回も勉強してればとれる点数だよ。もし赤点とったらクラスにペナルティ入っちゃうし、流石にちゃんとやったよ」
張り出された紙を見ると…お、全教科満点だ。やったね。
どうせ有栖ちゃんはペナルティで10点引かれてるだろうし、今回はまごう事無き俺の勝利だ。今日の晩飯は俺が決めさせてもらう。
「…そんな下らない勝負をしてたのか」
「下らなくないよー。有栖ちゃん意外と偏食だから、こっちが献立決めないと栄養バランス悪くなっちゃうんだよ。ただでさえ体弱いのに」
風邪ひいたら大変だし、俺が面倒見なきゃいけなくなってしまう。
でも熱を出してよわよわになった有栖ちゃんは超かわいい。ずっとくっついて来るし、そういう日だけ一緒のベットで寝ている。
風邪が移るから止めろと言ってるのに、『無駄に頑丈な体してる癖に何言ってるんですか』という失礼な返しは恒例行事だ。因みに今世は生まれて一度も風邪をひいたことがない。言い返せねぇ…
「ま、どちらにせよ今回も乗り切ったな」
「そろそろ本気出したら? 体育祭の後だし皆気にしないと思うけど」
全教科100点で学年1位の俺に対して、清隆君は全教科60中盤程。平均点よりちょい上くらいだ。こいつは一体どんな気持ちでテストを受けているんだろうか。それが少し気になる。
そんなしょうもないことを考えていると、退学者が0だったことにより浮ついた様子の生徒達に、茶柱先生が穏やかに語った。
「まさか、史上初の0ポイントからスタートしたクラスがここまで上り詰めるとはな。無人島試験、優待者試験、体育祭と全て1位という結果を残して、400近くのポイント差を覆してCクラスとなった。正直驚いてるよ」
「なんかムズムズするな、褒められるとさ」
「正当な評価だ。この学校が設立されてからこれまでの歴史の中、この短期間で500ものポイントを獲得したクラスは初めてだ。十分誇っていい」
照れくさそうに頭をかく池君だが、茶柱先生がその口を閉じることはない。
そしてそのまま教壇から降り、生徒の机の間をゆっくりと抜けてゆく。
途中池君の席の横に辿りつくと、茶柱先生は足を止めてこう言った。
「無事に一つの試験を乗り越えたが、改めてこの学校はどうだ? 評価を聞きたい」
「そりゃ……良い学校ですよ。最近はお小遣いもめっちゃ貰えるし、飯だってどこもうまいし部屋も綺麗っすよ」
それから、と指を折りながら追加していく。
「ゲームとかも売ってるし。映画とかカラオケもあるし、女の子も可愛いし……」
マジでそれな。有栖ちゃんパパ顔採用とかしてないだろうな。
「あの……俺、なんか間違ったこと言いました?」
「いや。生徒にしてみれば間違いなく素晴らしい環境だろう。教師の私から見ても、この学校はあまりに恵まれすぎている。常識では考えられない好待遇が与えられているからな」
そしてゆっくりと教室を一周し終え、茶柱先生は壇上に戻ってくる。
何とも芝居がかったやり取りだったが、一体何を目的として行ったのだろうか。今まで表面上は生徒に対して無関心を貫いていた彼女だったが、Aクラスに対する並々ならぬ執着は知っての通りだ。
となると、その意図は何となくだが読めてくる。
「おまえたちも分かっていると思うが、来週、2学期の期末テストに向けて8科目の問題が出題される小テストを実施する。既にテストに向けて勉強を始めている者もいると思うが、改めて伝えておく」
中間テストが終わってすぐテストか。まあ予め伝えられてはいたけど、このタイミングで行われるのは中々面倒だ。
そう思ったのは俺だけじゃなかったらしく、騒ぎこそしないが皆不満そうだ。
「気落ちする気持ちは分かるが安心しろ、今回のテストは全100問の100点満点だが、その内容は中学三年生レベルのものになっている。更に1学期同様成績には一切影響はない。あくまでも現状の実力を見定めるためのものだ」
「お、おぉっ。マジっすか! やった!」
「だが…もちろん小テストの結果が無意味なわけでもないことを先に伝えておく。何故なら、この小テストの結果が次の期末試験に大きく影響を及ぼすからだ」
うーん、知ってた。
だって凄いデジャヴを感じるもん。『成績には』一切関係ないって言った時点で察したよね。
「何なんだよ、その影響ってのは。もっと分かりやすく言ってくれ」
敢えて不満を煽るように語った茶柱先生に対して、須藤君が説明を求める。
そして茶柱先生が後に語った内容は、次に行われる期末試験に対する説明だった。まとめると以下の通りとなる。
・来週行われる小テストの点数を基準に、『クラス内の誰かと2人1組のペア』を作る
・そしてそのペアで8科目合計400点、各科目50点のテストに挑む
・通常の定期試験と異なり、
・1つはペア2人の科目辺りの合計点が60点を切った場合。もう1つは、ペアの合計点が一定(例年では700点ほど)以下だった場合に赤点になる
「小テストを基準にペアを作る、か」
「恐らくは何かしらの法則があると考えていいわね。成績が振るわない生徒を組ませたらその時点でほぼ退学が決まるようなものだし」
前の席で清隆君と鈴音ちゃんが話している。俺も同意見だ。その為の小テストと言っても問題ないだろう。
そして、説明を飲み込み終えた生徒に対して、茶柱先生は追加で説明を続ける。
「それからもう一つ、期末試験では別の側面からも課題に挑んでもらう。まず、期末テストで出題される問題を
ペアを組んでテストに挑むだけでも大変なのに、問題の作成も自分たちでやらなきゃいけないのか。これはまたハードな試験になりそうだ。
「僕たちが問題を考え、他クラスの生徒に出題する……聞いたことがない話です。ですがそれは成立するんでしょうか。生徒が答えられないような問題を作れば、相当難易度の高いテストになってしまうと思いますが……」
「そうだそうだ。習ってないところとか、滅茶苦茶な引っかけとか! 無理無理!」
洋介君の発言を聞き、池君がお手上げだと高々に言い放つ。
確かに、解けないような問題は調べればいくらでも作れるだろう。それでは試験として話にならない。
「当然、生徒たちだけに任せたらそうなるだろう。そのため、作り上げた問題は私たち教師が厳正かつ公平にチェックする。指導領域を超えていたり、出題内容から解答できない問題がある場合には都度修正してもらうことになるだろう。そのチェックを繰り返し、問題文とその解答を作成し完成させていく。今危惧しているような事態にはならないだろう」
とまあそこはそこそこ歴のある学校。毎年行っているらしい試験の為か抜かりなしだ。
「にしても合計400問か…学校ももうちょっと早く言ってくれればいいのに」
試験まで約1か月程。先生からのチェックを考えると今からでも作成に取り掛からなければならない。
「問題を作る際の手段は自由だ。学校が許容できる範囲であれば内容も問わない。攻撃を仕掛けるクラスは生徒側が教師に報告。他クラスと攻撃先が被っていたら代表者同士のくじ引きで決めることになる…以上が小テスト、期末テストの事前説明になる。後はお前達で自由に話し合うことだ」
そう茶柱先生は締めくくり、今日の授業は終了となった。
「…さて、帰るかー「作戦会議よ。平田君には声をかけたから。あなたも残りなさい」…はい」
早速帰ろうとしていたのがばれてしまった。鈴音ちゃんに襟首を掴まれる形で席に着席させられる。
「それと、毎日とは言わないけどテストが終わるまで坂柳さんと家で食事するのを止めなさい。何時テストの内容が流出するか分からないし」
「んな殺生な」
「殺生も何もないでしょ。彼女から紡君の食事は美味しいと惚気られる私の気持ちにもなりなさい」
嘘だろ。一体いつの間に知り合ったんだ君達。
「いやいいけど…一体いつの間に知り合ったn「分かった?」…はい」
裏で色々行われている事に気が付いていない紡君でした。
友達がモテだして嬉しそうですね()
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週2投稿を目指します!
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