ようこそクズヒモ男の教室へ 作:妄想癖のメアリー
これからは感想の返事ちゃんとします!
※オマケ
坂柳さんとの密約を交して1か月。迎えた有栖ちゃんの誕生日。
出会ってから初めての誕生日だが、うちの一家共々誕生パーティーにお呼ばれしてしまった。
何とも嬉しい話だが、うちの両親が「紡の誕生パーティはどうしましょう?」とか悩んでいた。止めてくれ恥ずかしい。
「……こんなに大々的にやらなくても良いのですが」
どうやらその気持ちを持っていたのは俺だけではなかったようだ。祝われる側からすると嬉しさと恥ずかしさが混じって変な感情になる。
とはいえ今回は俺もプレゼントを用意させてもらった為、盛大に祝わせてもらおう。
そう思っていると部屋の電気が消え、辺り一面が暗闇に覆われる。
「Happy birthday to you~♪ Happy birthday to you~♪」
それと同時に、8本のロウソクが立てられた3段のデカいホールケーキが台車で運ばれてきた。
運んでいるのはこの家の使用人さんで、両脇には有栖ちゃんのご両親が歌いながら歩いて来る。オレも歌うとしよう。
「Happy birthday, dear有栖ちゃん~♪ Happy birthday to you~♪」
「ほら、ロウソクを消して!」
「……仕方ありませんね。……ふー」
渋々と言った様子でロウソクに息を吹きかける有栖ちゃん。
ダメだよー。こういう場では恥ずかしくてもちゃんとやらないと。ま、皆それも織り込み済みか。
何度か吹き返して、ようやっとすべてのロウソクの火が消える。
「「「お誕生日おめでとう!」」」
「……あ、ありがとうございます」
わぁ、滅多にみられない有栖ちゃんのガチ照れじゃないか!
もじもじと両手を組んで斜め下を向く有栖ちゃん。うん、100点満点の照れだ。
「こうして大々的に祝うのは今年が初めてだもんね。ほんと、友達に祝ってもらってよかったね有栖」
「お、お父様。あんまりそう言うのは……」
うわ、坂柳さんもなかなかいい性格してらっしゃる。
抗議するように声を出す有栖ちゃんだが、うちの両親を含め、この場の皆は微笑ましそうにその様子を見ているだけだ。
ここで、使用人の方に目配せを行う。頷いたのちに、部屋の奥から大小様々なサイズのプレゼントが運ばれてきた。
「────ではここで、誕生日プレゼントを渡したいと思います!」
「うちの両親と、有栖ちゃんの両親、俺のプレゼントの3つがあるけどどれがいい?」
そう問いかけると、有栖ちゃんは迷ったような様子を見せた後、恥ずかしそうに小さく呟いた。
「……紡くんので」
よし、勝った。
奥で悔しそうに頭を抱える保護者ズにサムズアップをすると、俺は50×50cmくらいのプレゼントボックスを有栖ちゃんの前に置いた。
「開けてよろしいですか?」
「もちろん。ささ、どうぞ」
丁寧に結ばれた赤い紐をとき、緩衝材のつぶつぶの中から出てきたものは────
「────これは……ぬいぐるみ、ですか?」
そう。俺からのプレゼントは、デフォルメされた猫のぬいぐるみだ。
「有栖ちゃん猫飼いたいって言ってたでしょ? その代わりって言ったらあれだけど……まあ受け取って!」
中々の『自信作』だ。受け取ってもらえなかったら泣く自信がある。
まじまじとぬいぐるみを見つめる有栖ちゃん。ふとぬいぐるみを裏返すと、何かに気が付いたように声を上げた。
「あ……解れてますね。ここ」
「あはは……『手作り』だからさ、細かいとこは勘弁して」
坂柳さんから依頼を受けて1か月。逆にその期間で未経験者がここまで形になったのだ、少し褒めて欲しい。
「紡ったらね、この前からずーっと練習してたの! 何回声かけても返事してくれないから、お母さん寂しくって!」
「余計なこと言わないで」
こういうのはスカシて渡すのが正解だろうが。必死こいて練習したなんてバレたら恥ずかしくて仕方がない。
「ふーん……ふふっ、下手くそですね」
ほら言わんこっちゃない。滅茶苦茶楽しそうにイジるやんこの子。
「あはは……有栖ちゃんの持ってる子たちに比べたらね」
だって普通のサイズのぬいぐるみなのに数万するんだぜあいつら。職人が1人1人手作りしているものと比べんな!
「……でも嬉しいです。一生大切にします」
そう言って、不細工な顔のぬいぐるみに顔をうずめ、こちらを上目遣いで見て来る有栖ちゃん。
何だよそれ! 反則じゃねぇか!
「そ、そう? じゃあ……作ってよかったかも」
やべぇ、ここまで純真な気持ちを向けられると流石の俺でも照れてしまう。
そんなぶっきらぼうな返事しかできなかった。
「あらあら……うちの子が珍しく照れてるわ坂柳さん!」
「そっとしておいてあげましょう。大人が首を突っ込んでは野暮ですよ」
「それもそうね。ふふっ、紡ったら」
うるせぇぞ保護者! さっきまで落ち込んでたくせにっ!
ーーーーそんなこんなで、俺たちが出会って初めての誕生日は無事幕を下ろしたのであった。
────────────────
「退学って……これが入れられてたってこと?」
「ああ。Dクラスだけじゃなく、全てのクラスに入れられていたらしい」
何だよそれ……面倒だな。
全くの事実無根なら良いけど、これに関してはそうではない。一体どこからこの情報を仕入れてきたのだろうか?
堀北会長? ……いや、ないな。あの人が龍園君にわざわざバラす理由がない。
「騒ぎが広まる前なら対処は出来ただろうが、既に学年中で騒ぎになってるぞ。ちゃんと説明しないとマズいんじゃないか」
「そうだね。一体何を考えてるんだか……」
テスト前のこの時期に、Cクラスを混乱させるためだろうか? だとしてもタイミングが早すぎる気もするが……
「とりあえず戻ろう。出ていきっぱなしだと怪しまれちゃうからね」
「そうだな」
心配そうにこちらを見つめる清隆君にそう提案し、2人でロビーへと戻る。
自動ドアを開け人混みへと向かうと、そこには見覚えのある二人が言い争いをしていた。
「この手紙はどういうことかな龍園君。こんな事を書いて、学校側が見過ごすとは到底思えないけど」
「お前には関係ない。関係ない奴は引っ込んでろ一之瀬」
一之瀬さんと龍園君だ。
毅然とした態度で問いかける一之瀬さんに対し、龍園君は余裕そうな笑みを絶やそうとしない。
2人の元へ歩いてゆくと、足音に気が付いたのか龍園君がこちらを向いた。
「ようヒモ野郎。遅かったじゃねえか」
「いろいろ言いたいことは多いけどさ。何? これ」
右手で清隆君からもらった紙をつまんで見せつけると、龍園君は見せつけるように肩をすくめて言い放った。
「書いてある通りだぜ? こっちは確かな情報を仕入れてるんだ。嘘をついても無駄だ」
「誰情報よそれ。こちとら試験勉強で忙しいって時に、こんなデマ流されたら迷惑なんだけど」
「情報の出所は問題じゃない。ただ、お前の秘密を俺が握っている。それだけだ。事実の証明なんてこの場じゃ不可能だろうしな?」
「チッ」
残念ながら彼の言う通りだ。いくら評判の悪い龍園君でも、ここまで堂々と犯行に及ばれたら信ぴょう性が増してくる。
ましてや対人関係でよく騒がれる俺の噂ともあって、この流れは非常に良くない。
「斎藤君……」
よく見ると、Cクラスの子たちが集団の中にちらほら見える。
「大丈夫。明日先生に報告して、この手紙の内容が龍園君の勘違いだって証明するからさ」
「何だ? この場で証明できないのか斎藤」
「俺が何言っても君は信じないだろ? 無駄な事に労力割きたくないんだよ」
「はっ、それもそうだ。じゃあ俺は帰るぜ? ここに居ても無駄みたいだからな」
そういって人の群れを割るように越えてゆく龍園君。
「……はぁ」
「大丈夫か?」
思わずため息をついてしまった俺を、労う様に声をかけてくれる清隆君。
「ん、大丈夫。どうせ明日には収まってるよ」
「だな。きっと龍園なりの妨害か何かだろう。その証拠に、あいつは最後まで情報の出所を明かさなかった」
「だと良いんだけど」
いかんせんこのタイミングというのが引っかかる。
俺が心の中で退学することを決めたのは8月。無人島試験が終わって数日がたった頃の話だ。
そしてそれを表に初めて出したのが10月。体育祭のリレーが終わった後。更にそこから2か月、何とも絶妙なタイミングだ。
「ま、とりあえず帰って返事返すよ。皆不安にしてるかもだからね」
「……そうだな」
────そう返す清隆君の目は、何時ものように無気力なそれではなく、どこかはっきりとした意思を含むものだった。
そして、その些細な違いに、最後まで俺が気が付くことは無かった。
最終的に、この話は龍園君の勘違いということで幕を閉じた。
と言っても俺に対する好奇の目はしばらく止むことは無く、それでも龍園君にはちょっとしたプライベートポイントのお咎めしか与えられなかったのには少し不満が残る。
「災難だったわね」
隣を歩く鈴音ちゃんが同情の目を向けて来る
「ほんとだよ」
もうテストまで一週間切ってるってのに、余計なことに頭は使いたくないものだ。
「問題の方はどう? 上手くできた?」
「ええ。ある程度分担したから、後は提出を済ませるだけ」
「なら良かった」
順当に行けば勝てる試験だ。ここら辺を鈴音ちゃんがしくじるはずがない。
「じゃあ、あと1週間頑張って詰めないとね……忙しくなるなぁ」
テスト前最後の1週間は、俺も全体の指導役として参加することになっている。この準備期間で模擬問題も作ったし、準備は万全だ。
────そして、そこから時は流れテスト当日。
テストは2日に分けられて行われるが、この初日に全てが掛かっているといっても過言じゃないだろう。
「頼んだぞ斎藤! 俺の進退はお前に掛かってる!」
「勉強してきた分は頑張ってよ……」
山内君が両手を合わせてこちらを拝んでくる。調子のいいやつだ。
と言っても、みすみすこんなところで退学になる気は無いためしっかりと試験に臨む。最初の科目は現代文。特に苦手な科目でもない為、落ち着いて高得点を狙っていきたい。
そしてテストを終え2日目。金田君が作ったであろう問題は中々難しかったが、しっかりと範囲の学習を進めておけば問題は無いはずだ。
問題を解き終え、チャイムの音と共にテストが終了。答案の回収の後に解散となった。
「お疲れ山内君。どうだったテストは?」
「……ヤベエかも。斎藤! お前ちゃんと取ってくれたよな!?」
ほら言わんこっちゃない。相方が俺だからって油断しきってるからこうなる。
「ま、別に大丈夫だとは思うけど。これに懲りたらちゃんと勉強してね?」
「は、はい……」
よろしい。
こうして、俺たちは無事試験を乗り越えたのだった。
────それから数日が立った、とある日の放課後のことだった。
「あれ……? 有栖ちゃん電話出ない」
テストも無事終わり、鈴音ちゃん直々に接触を許された(他クラスの生徒とかかわりを持ちすぎるなと小言を貰ったけど)俺は、何時ものように有栖ちゃんと過ごす予定でいた。
今日の献立の希望を聞きたかったのだが、どうしても電話に出ない。
「おかしいな……」
この時間は基本暇にしてるはずなんだけど、クラスメイトにでも捕まったか?
今日は清隆君も体調不良でおやすみとのことで、立て続けに2人知り合いが連絡取れなくなるとなると、風邪でもうつしてしまったか心配になる。
仕方がないのでチャットで聞いておこうと端末を開くと、先ほど電話をかけていたであろうタイミングで着信があったようだ。
「神室さん? 珍しいな」
基本的に、俺と神室さんはチャットでしかやり取りをしない。そんな緊急で話すことなんてないからね。
間違えてかけた可能性もあるが、一応折り返しの電話を掛ける。
「もしもし? どうしたの電話で、珍しいn『良かった!』……」
返ってきたのは、いやに焦ったような様子の神室さんの声だった。
心なしか息切れもしているように思える。
「ど、どうしたの、大丈夫?」
『大変なの! たった今私のアドレスにこんな写真が』
「写真?」
チャットの通知音が鳴る。通知を確認すると、どうやら神室さんが写真を送信したらしい。
スマホをタップしてその画像を表示する。
────すると、その瞬間俺の目に衝撃の光景が写り込んだ。
「なん……だよ、これ?」
『あいつ、昼過ぎから戻ってなくて、体調不良で早退したのかなって思ったらこんな……私、どうしたらいいか分からなくてっ』
「今すぐ送られてきたメールを転送してくれる? 後この敷地内の区画がまとめられている資料を、今すぐ図書室に行って借りてきてページの写真を送って欲しい」
混乱した様子の神室さんに指示を飛ばす。大分説明を端折った自覚はあるが、今それを考える余裕が俺にはなかった。
『わ、分かった。……あんたはどうするの?』
狼狽えたように答える神室さん。
そんな彼女の質問に、恐ろしく底冷えした声で返事をしたのを自覚した。
「……そんなの、一つしかないだろ」
スマホを持った手に自然と力がこもるのを感じる。
────そこに映っていたのは、両手を後ろに縛られ、目隠しをされた状態で床に倒れ込む有栖ちゃんの姿だった。
上げて下げます。
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