ようこそクズヒモ男の教室へ 作:妄想癖のメアリー
追記:
第十話を公開したのですが、性的描写が不味いとの意見を頂いたので削除させていただきました。後日修正して出します…
通知を見て来てくれた方、申し訳ございません。
「大丈夫か?」
扉の前で立ち尽くしていると、心配に思ったのか綾小路がこちらを覗いてくる。
「まあ、俺は大丈夫。その言葉は、お前ら2人にそっくりそのまま返すよ……一体、何をそんなに執着してるんだか……」
思わず心の中にため込んでいた言葉を吐き出してしまったが、どうやら茶柱先生に向けての発言だと思われたのか、二人から突っ込まれることはなかった。
「……とりあえず……帰るか」
それから数秒の沈黙の後、綾小路君がそう言って速足で歩き出した。まるで逃げるような足取りだが、当然それを見逃すような堀北さんではない。
「待って」
そう声を掛け追いかける堀北さんだったが、綾小路君の足が止まることはない。このまま逃げ切ろうという算段だろう。仕方なく俺も2人についていく。
「さっきの点数……本当に偶然なの?」
「当事者がそう言ってるだろ。それとも意図的だって根拠でもあるのか?」
そう語る綾小路君だったが、まず間違いなく偶然ではないだろう。答案を見せてもらったが、正答率が低かった数学の問題を完璧に答えてた。そして、その問題は基礎ができていないと解けない問題だったが、何故かその基礎で点を落としていたりと、明らかに本気を出していない証拠がある。
「根拠はないけれど……。綾小路くん、少し分からないところがあるし。事なかれ主義って言ってるから、Aクラスにも興味なさそうだし」
「お前こそAクラスには並々ならない思いがあるようだな」
「……いけない? 進学や就職を有利にするために頑張ろうとすることが」
少し間をおいて答える堀北さん。嘘は言っていないんだろうが、恐らく目的はそれだけではないはずだ。思い出すのは一か月前の部活動紹介。その時の彼女の様子だった。
「別にいけなくはない。自然なことだ」
「私はこの学校に入学して、ただ卒業すれば、それがゴールだと思っていた。でも、実際は違った。まだスタートラインにも立っていなかったのよ」
気が付けば綾小路君の隣に追いつき、強い意志を持った瞳を向けていた。恐らく彼を説得し終えたら、次に向けられるのは俺なんだろう。
その事実にげんなりしながらも、目の前のやり取りを見逃すことはしない。
「じゃあお前は、本気でAクラスを目指すつもりなんだな」
「まずは学校側に真意を確かめる。私が何故Dクラスに配属されたのか。もし、茶柱先生の言うように私がDだと判断されたのだとしたら……。その時はAを目指す。いいえ、必ずAクラスに上がって見せる」
「相当大変だぞ、それは。問題児たちを更生させなきゃならない。須藤の遅刻やサボり癖、授業中の私語、テストの点数。それだけやって、やっと±0だ」
「……分かってるわよ。出来れば学校側のミスであることを期待するわ」
先ほどの発言についてだが、何も俺は茶柱先生にだけそれを言ったわけではない。
自らがAクラスだと妄執に囚われている堀北さんや、頑なに自身の能力をひた隠しにする綾小路君もそうだ。
「もしミスじゃないと仮定した場合、どうやってAクラスに上がるつもりなの?」
「学校側がこのまま静観を続けるとは思えないわ。恐らく、ポイントが一気に増減する機会が訪れるはずよ」
流石に頭の回転が速い。今日一日でクラス間闘争の存在を確信している。
「今綾小路君に話しかけているのは、その時に協力してもらいたいから?」
「そうよ。まずは断ってきそうな方から、次はあなたよ」
まあそうだろうな。俺の日常からの態度からして、協力を仰ぐことは簡単と思ったのだろう。実際俺は、
再び視線を綾小路君へと戻す堀北さん。しかし、綾小路君が素直に頷くとは到底思えなかった。
「今朝平田に断りを入れるお前を見たし、同じような理由で断ってもいいんだよな?」
「断りたいの?」
「あのな、オレが喜んで協力するとでも?」
「喜んで協力する、とまでは思っていなかったけれど、断られるとは思ってなかったわ。もしも本気で断ると言うのなら、その時は……いえよしましょう。今その先を考えても仕方のないこと。それで、協力して貰えるのか貰えないのか、どっちなの?」
こっわ。堀北さんなら平気でぶん殴ってきそうだ。同じことを思ったのか、綾小路君がすがるような瞳でこちらを見つめてくる。
「申し訳ないけど、これに関して俺がどうこう言えないよ。自分の意志で決めるんだ」
これ以上言えることはない。是とするか非とするかで、大きく学生生活に影響を与えるのだ。責任は持てない。
暗に込めた意思が伝わったのか、数秒の沈黙の後、綾小路君はため息を吐いて答えた。
「……1つ、条件を飲んでくれるなら」
「内容によるわね」
「紡がお前に協力するなら、考えてもいい」
……俺、自分の意志で決めろって言ったよな……?
そんな思考が顔に出てしまっていたのか、綾小路君は弁明するように両手を振って答えた。
「いや、これはオレなりに考えた結果だ。まず、堀北一人に協力するとなると何をさせられるか分からない。その点、お前が間に入ってくれれば無茶な要望をされずに済むと考えた。次にリーダー格の紡が居れば、クラスメイト達の協力が仰ぎやすい。そうすればオレ一人にしわ寄せが来ることなく、効率的にポイントを稼ぐことができる」
「……あなたは人を何だと思っているのかしら?」
キレ気味に呟く堀北さんだったが、俺は中々いい落としどころを見つけたと感心していた。
このまま断り続けても堀北さんは聞かないだろうし、それだったら協力する姿勢を見せつつ、自分に有利な条件を付ける。これをたった数秒で考えただけでも、頭の良さを隠せていない。
「という事で、オレは帰るぞ。後は二人でじっくり話してくれ」
……面倒事を押し付けられたという可能性も、無くはないだろうが。
そう言って歩き出した綾小路君を見届けたら、次のターゲットは俺だ。
先ほど言われた言葉が気に食わなかったのか、堀北さんはムッとした顔でこちらを見つめている。いつ噛みつかれるか分からないため、俺は先手を打つことにした。
「とりあえず、飯食わない? 金は俺持ちで」
隣で不機嫌そうに手を組んでいる堀北さんの頭に手を乗せ、ポンポンと撫でる。まだ飯の時間には早いが、腰を据えて話す場所が欲しかったため、丁度いいだろう。
……にしても癖になるな。美容とか気にしてる様な質じゃないと思ってたが、このサラサラの黒髪は撫でごたえが……痛ぁ!?
「……あまり調子に乗らないで頂戴」
「ごめんなさい……」
おっかねぇ女だよホントに……
「────場所を変えることには賛成だけど、なぜあなたの部屋に来ないといけないのかしら?」
リビングから堀北さんの不満げな声が聞こえて来る。
そう、何を隠そう堀北さんは、今俺の部屋でくつろいでるのだ。返事をしてやりたいのも山々だが、目の前の料理を焦がすわけにもいかないため、一言で返すことにする。
「別に襲ったりしないから安心しろー」
堀北さん重そうだし。
「……そういう話をしてるわけじゃないのだけど」
反論するように呟いたが、これ以上言っても無駄だと理解したのか、以降口を開くことはなかった。
何だかんだ言って押しに弱いよな、この子。今も戸惑いながらちゃんと来てくれるし。信頼してくれてるってのもあるだろうけどさ。
「ほい、オムライス。卵大丈夫だったよね? 待たせるのもアレだったから手軽なの作っちゃったけど、味は保証するよ?」
炊く時間が無かったため、レンチンで食べられる米に、炒めたウィンナー、ケチャップ、塩コショウを混ぜる。そしてできたケチャップライスを、少量のコンソメで味付けした卵で包めば完成。手軽でクッソ上手いからぜひ試してみてくれ。ケチャップでハート形でも書こうと思ったが、制服に付くとマズいので自重した。
「……まあいいわ。いただきます」
出されたものを拒むような性格ではないのか、納得がいかない表情をしつつも、行儀よく食べる堀北さん。
ケチャップライスをふわふわの卵で包み、それを口に入れる。うん、可愛い子は食べるだけでも様になるね。
「どう、美味しい?」
「……あまりジロジロ見ないで頂戴」
「ごめんごめん」
味の感想は聞けなかったが、俺が席を離れた瞬間、黙々と食べ始めた為悪くない出来だったのだろう。
「ごちそうさまでした……上手なのね、料理」
「お粗末様でした。まぁね、特技の一個だよ」
前世では小3位から俺が飯作ってたからな。それより前はビニ弁とか菓子パンばっかだったし。流石に上手くならなかったら才能が無さすぎる。
「それで、結局斎藤君は協力してくれるのかしら?」
「いいよ。ただ一つ条件がある」
「あなたもなのね……まあいいわ。その条件は何?」
確かに綾小路君と同じ文言になっちゃったな。ただこれだけは確約してほしかった。
「今じゃなくてもいい。ただ、必ずクラスの皆と協力すること。これが条件だ」
「……協力しない方が上手く進む場合は?」
「それだったら大丈夫。ただ、クラスメイトを『使えない』とか言って見捨てたりしない。これは絶対だ。今回のテストでも同様、テストの点数をポイントで買ってでも、救わないといけない」
俺の言葉に視線を逸らす堀北さん。やっぱり思ってた通りだ。
「それがクラスにとってマイナスな生徒でも、見捨ててはいけないのかしら? 例えば須藤君。あなたは知らないかもしれないけど、彼は直ぐ暴力に出ようとする気質よ。もし喧嘩でもして訴えられたら、どんなペナルティを食らうか分からない。わざと退学させるだなんてことはしなくても、大きな代償を払ってまで救うべきとは思えないわ」
「それでもだよ、堀北さん。第一、劣っている人を切り捨てていいなんてありえない。そんな考えは間違っている」
「間違ってる? 私のどこが間違っているのかしら? まさかクラスメイトを切り捨てる人に未来はない、だなんて説教をするために呼び出したんじゃないでしょうね?」
俺の言葉が気に食わなかったのか、語気を強めてこちらを睨んでくる堀北さん。
しかし、その優生思想的な考えは見過ごすわけにはいかない。それは多くの人を不幸にする。今は若さゆえ大丈夫かもしれないが、いずれ大きな問題が発生する。
「君の考えを否定するわけじゃない。それは俺がやっていい事じゃないからね。ただ、素行の良さや、日ごろの態度だけでこの学校が判断していると思うかい?」
「それは……」
「君も分かっているはずだ。須藤君は運動神経、池君には周りを盛り上げるコミュ力がある。今はまだ良くない点が目立つだろうが、成長すれば彼らは大きな戦力になる。だから茶柱先生は俺達を『不良品』と呼んだんだ。違うかい?」
「……」
先ほどの様子はどこへやら、堀北さんはすっかり黙り込んでしまった。つまり、反論を詰まらせる程、俺の言葉に納得しかけていると言うことだ。
……賢い子だよ。自らの価値観にヒビが入って尚、客観的な視点で物事をとらえようとしてる。
「納得できないならそれでもいい。さっきも言ったけど、君の考えを否定するわけじゃない。ただ、純粋な損得で考えても、彼らを残すメリット……いや、退学した時のデメリットだってあるはずだ」
「……退学時、クラスに与えられるマイナスポイントを、減らすことができる」
「そう考えれば気持ち的にも良いんじゃないか? 君が彼らを気に食わないという気持ちだって理解してる。ただ、君が本気でAクラスに行きたいのであれば、損得の面から考えても、彼らを見捨てるべきじゃない」
本当は損得以外で判断してもらいたいが、今彼女にこれを言っても拒否反応を起こすだけだ。それだったら、一度こっちから譲歩した方が受け入れやすいだろう。
その見立ては正しかったのか、数秒ほど悩んだ後、彼女は首を縦に振った。
「分かった。ただ彼らを赤点から引っ張り上げるのは容易ではない。そこまで言ったんだから協力してくれるのよね?」
「もちろん。俺のテストの点数、忘れたわけじゃないっしょ?」
俺が笑顔で答えると、堀北さんは苦い顔をしてこちらを見つめてきた。
「……つくづく疑問だわ。悔しいけど、運動も勉強もあなたの方が私より優れてる。そんなあなたが、何故Dクラスに?」
「んー。内緒で」
流石にママ活とかパチンコのせいって言ったらマジで引かれそうだ。この話は頑張って墓場まで持っていきたい。
「そう。じゃ、私は失礼するわ。いつセクハラされるか分かったものじゃないし」
だから襲わないって。
「それじゃ、おやすみなさい斎藤君。明日からよろしく頼むわ」
そんな俺の反応が面白かったのか、堀北さんは小さく笑みを浮かべて部屋を後にした。
「……疲れたな」
ベッドの上に寝転がって呟く。柄にもなく熱くなってしまったが、こればっかりはしょうがない。
堀北さんは赤点以外で退学になる可能性なんて考えていなかっただろうが、上級生の教室に行けば、
「……いや、そうじゃねぇだろ」
慣れないことをした反動か、独り言が漏れてしまった。実力のない生徒は退学か……
「マジでクソみたいな学校だな」
主人公は子供が大好きです。……勿論ロリコン的な意味ではありません
私事にはなりますが、明日から人生初のバイトに行ってきます。その為投稿が遅れるかもしれません……
追記:
第十話を公開したのですが、性的描写が不味いとの意見を頂いたので削除させていただきました。後日修正して出します…
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ぶっちゃけ原作(小説・アニメ・漫画)見てます? 見てない方多かったら、試験の説明詳しく書きます
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