「ちきしょうあの魔女~~」
ゴンドラステーションの屋上の掃除をしながらダイゴは奪われたアンデルセン・アーカイブを取り返せずに落ち込んでいた。
「仕事の邪魔しまくってくるとかギガメガ嫌すぎんだろ!」
モップを振り回しながらダイゴは先日のことを思い出す。ゴンドラでの仕事中に戦いをしかけられたり仕事で必要な装備を奪われるわで許せなかった。
「……よっし、全部終わったな」
ダイゴは屋上の床もテーブルも全て綺麗にし終わる。それからモップを持ったまま、歌い出す。気晴らしと練習のために。イタリア語の歌詞の歌でこう綴られている歌を。
―――深い海から眺めていた あの白く強い光を あなたが水の上にいるかもしれないと
―――波にもまれた音色は あなたに届くかもわからない
―――どうしてあなたは 空を眺めていたの?
その歌声は周囲に響き、やや離れた歩道のほうにも聴こえた。
「なあ、なんか誰かが歌ってねえか?」
「? どっかでラジオが流れているんだろ?」
最初にダイゴの歌声に反応したのはサトルだった。ヘータもそれに気付く。
「……いや、これは誰かが生で歌ってるな」
二人といたイザナも気付くのだった。以前とは別の歌だが歌っているのは同じ人物だとわかる。日本語ではない歌詞で意味はわからないがその歌声は確かに澄んでいて惹かれており、忘れられないでいたのだ。
「どこからだろう……」
「え!? ちょっとリーダー?」
「どこ行くんですか!?」
歌声に釣られて歩くイザナをサトルとヘータは追いかける。イザナ達は運河沿いの道に出る。
※
モップとバケツを片付けたダイゴは歌いながらゴンドラステーションの停船場に出る。自分のゴンドラを見つけ歌うのを止める。
「次はゴンドラだな ん?」
ダイゴの視界に見覚えのある三人の人物が入る。イザナとヘータとサトルだ。
「あ……」
イザナはダイゴに気付き近づく。ヘータとサトルはそれについていく。
「やあ、また会ったな」
「お前、こないだの……」
イザナはダイゴがアテランテだと気付いていない。
「さっきまで歌っていたのは、もしかして君か?」
イザナはダイゴに問う。
「そうだよ、悪いか?」
「いや、いい歌だと思ってここまで来てしまっただけだ」
「そりゃどうも」
ダイゴは褒めるイザナから目を逸らす。
「歌ってたのってアイツ?」
「みたいだな……」
イザナの後ろでサトルがヘータと話す。
「……それと、君は仮面ライダーって知っているか?」
「え?」
イザナはダイゴに更に問う。しかしその答えは言えなかった。
「わああああっ! ああ!」
やや遠くから男性の溺れる声がする。
「あ!」
ダイゴはそれを聴いてすぐに反応する。ゴンドラステーションのある運河に足を滑らせて溺れている男性が視界に入る。
「ちょっとがんばっててくれ! すぐに行く!」
叫びながらダイゴは制服の上着と下に着ている黒いシャツを脱ぎ、流れるように運河に飛び込み、男性に向かっていく。
「!?」
「?!」
「ちょ、なんだ!?」
イザナもヘータもサトルも、その速さに驚く。無駄な動きのない静かな泳ぎで、男性に近づく。それはまるで、いや本物の人魚のようだった。
「息してっか!? しっかりしろ!」
ダイゴは男性を支えながら静かに泳ぎ、停船場に向かい彼をゆっくりあげる。
「おいお前、救急車呼べ! 119番! Aエリアのステーションって言え!」
「え!? なんでオレ!?」
「いいから!」
ダイゴはサトルを指差し指示する。サトルは圧倒されシズクから支給されたスマートフォンで119番を押し救急車を呼んだ。
※
「じゃあお願いしまーす!」
数少ない車道を高速で走る救急車を制服の上着を着なおしたダイゴは見送る。男性は危険な状態と見たダイゴは医者が必要と見てサトルに通報させたのだ。
「助かったぞ。ギガメガサンキュ!」
「なんでオレだったんだよ! びっくりしたじゃねえかよ!」
ダイゴはサトルに礼を言い、サトルは素直な感想を言う。
「なんかえらいもん見せられましたね」
「ああ……」
迅速な救出劇を見てヘータとイザナは圧倒されていた。圧倒されつつも話を戻す。
「話は戻すが、仮面ライダーって知っているか?」
「ああ、それは……」
自分が仮面ライダーアテランテと明かせばややこしいことになるとダイゴは見た。
「それはお前らには教えられねえよ。企業秘密ってやつだ」
事実を伏せることにした。極秘ではないが部外者には深い事実を言えないのはクストーデのルールなので嘘は言っていない。
「そうか、まあいい。あと僕の名はイザナだ。お前ばかり言うな。後ろにいるのはヘータとサトルだ」
イザナはついでに名乗るとヘータとサトルの名も言った。
「イザナって言うのか。俺はダイゴ。ゴンドラ乗りのダイゴ・レガシーだ!」
名乗られた返しにダイゴも名乗る。
「ダイゴか。君の歌だけは気に入った。じゃあな、お前ら行くぞ」
「はい」
「うっす」
イザナはヘータとサトルを連れて去っていく。
「なんで上からなんだよ! 『歌だけは』ってなんだ!?」
イザナの態度にダイゴは腹を立てるのだった。
※
その翌日のことだった。ダイゴが危険と見て病院に輸送させた男性のその後がゴンドラステーションに届いた。
「昨日ダイゴが病院に輸送させた男なんだが、検査の結果……モンスターキーを使用したのがわかった」
「え?」
スズキは仕事用のタブレットでメールに記載された男性の検査を読む。
「使用して暴れて運河に落ちたかもな。モンスターキー自体も持っていた」
「その人は大丈夫だったんすか?」
「命には別状はないそうだ。今日の朝警察に引き渡すはずだったんだ。それでな……」
「だった? それでって?」
スズキは受け売りの情報を語り続ける。
「今日の朝、その人は病院を抜け出してどこかに行ってしまったんだ。モンスターキーも持ってな」
「!?」
スズキは苦い顔を浮かべる。
「くっそう、俺らの海で変な鍵がバラまかれてるなんて、許せねえです!」
ダイゴは危険性のあるものがバラまかれていると思い、怒る。
※
モンスターキーの回収はリブーターズの任務でもある。アジトのガレージとバイク等の装備の使用権、食料や日用品を買うための金銭、そして三人が探してる人達の情報収集をしてもらう条件なのでやるしかない。
ネオマリーナシティの運河の無い中心部にある噴水の前にリブーターズはいた。
「モンスターキーとかアンロッカーはオレら関係ねえじゃん、めんどくせ~」
「しょうがねえだろ。シズクさんとはそういう契約してんだからよ」
ぼやくサトルにヘータは言った。
「シズクさんもどこで誰がモンスターキーをバラ撒いているかわからないみたいだ」
イザナは先日シズクから渡されたアンデルセン・アーカイブのひとつを出す。そうしていると、騒ぎ声が聞こえてきた。
「きゃあああっ!?」
「うわあああ!」
三人の目の前で何人かの人間が逃げていく。
――チリン! リーン!
それと同時にイザナのブレス型の通信機が鳴る。鈴の音はアンロッカーが現れたサインだ。
「アンロッカーか! 行くぞ!」
「「おっす!」」
イザナがバイクに乗ると、ヘータとサトルもそれぞれのに乗車し反応のある場所に向かう。
※
「オラオラ! 全部燃えちまえええ!!」
アンロッカー、マグマ・アンロッカーはマグマを噴射し周囲の建物を熱で溶かしていく。その周りには黒い怪人も複数いる。これらはボーンと呼ばれる疑似生物の兵士である。
「フギッー」
「フギャー」
ボーンは鳴き声を上げながらマグマ・アンロッカーと暴れる。
「おわ! ボーンすげえいる!」
「奴は僕がやる。二人はボーンを蹴散らせ」
「はい!」
バイクに乗りながらサトルは驚き、イザナは指示しヘータは頷く。三人はバイクに乗ったままベルトを装備し変身する。
「「「変身っ!」」」
それぞれ変身した三人はボーンの大群に突っ込み、バイクから飛び降りて戦いを始める。イザナがマグマ・アンロッカーに向かっていくとボーン達はそれに群がる。それを止めるのはヘータとサトルだ。
「リーダーの邪魔するなら、」
「ブチのめすっ!」
ヘータは拳を振りかざしボーン達を殴り倒す。サトルは高く足を上げボーン達を蹴り倒していく。
その傍らでイザナとマグマ・アンロッカーが戦闘を開始する。
「お前がマークイスか」
「ああ、僕を知っているなら立ち退いたほうがいいぞ」
マグマ・アンロッカーの噴くマグマの弾丸をイザナは避け銃剣の銃で撃つ。近づいて二人は殴り合う。
「これで全部か」
「でりゃ! よっし!」
ヘータとサトルはボーンを全て倒す。そしてイザナとマグマ・アンロッカーの元へ走ろうとする。マグマ・アンロッカーはそれに気付いた。
「邪魔をするなガキ共!」
マグマ・アンロッカーはヘータとジキルに向かってマグマの熱線を撃つ。
――ドシャアアアン!!
そして大きく爆発する。
「!」
イザナはそれを見て黙る。
「お仲間がいなくなって残念だな。次はお前だぞ」
マグマ・アンロッカーはイザナのほうを見る。しかしイザナのマスクの下の表情は曇っていない。
「どうかな。あんなので終わる奴等を僕は連れている覚えはないぞ」
「は?」
イザナとマグマ・アンロッカーの前に爆風の中から出てきたヘータとサトルが来る。そしてヘータはパンチを、サトルはキックをマグマ・アンロッカーに一撃与える。
――ドバッア!!
「あんなもんで満足してんじゃねえよ」
「全然熱くねえぜ!」
マグマ・アンロッカーは大きく倒れた。
「大義だった。これで終わらせよう」
イザナは二人の無事を確認し、赤いアンデルセン・アーカイブ、『ブラッドシューズ』を出してベルトに差し込む。
『アーカイブ! ブラッドシューズ!』
「赤い靴」の力を持ったアーカイブでイザナの下半身の装甲は赤く染まる。
「ダンスに付き合ってもらうぞ」
イザナは立ち上がるマグマ・アンロッカーに向かって蹴りを入れる。いつもより軽くなった足で確実に追い詰める。マグマ・アンロッカーは抵抗していたが次第に動きが止まる。
「リーダー、やっちゃってください!」
サトルはイザナに呼びかける。イザナはアーカイブを差し込み直し、技を出し始める。イザナは大きく飛び上がり、そのままマグマ・アンロッカーに向かってキックする。
『ブラッティダンシング!』
――ドガアアアンン!!
技が決まるとマグマ・アンロッカーは元の男性に戻り、身体からモンスターキーを排出させる。イザナはそれを掴む。
「ふぅ……行くぞ。警察が来る」
「はい」
「うっす」
イザナ、ヘータ、サトルはそれぞれバイクに乗り、その場を去る。
※
ダイゴが救助し病院に搬送させた後に病院から抜け出した、モンスターキーの所持者はネオマリーナシティの中心部で負傷した状態で見つかった。彼の持っていたマグマのモンスターキーはどこにもなかった。その報告はダイゴとスズキの元に入った。
「建物や車はいくつか溶かされたが怪我人や死者は出なかったそうだ」
「それはギガメガ良かったっす!」
ダイゴはそれを知って安堵する。
「現場状況から見て、誰かと戦って負傷したらしい。その相手はわからん」
「とりあえず良かったですよ! 誰も死んでねえならそれに越したことないです……」
ダイゴは軽く俯くのにスズキは気付く。
「自分がモンスターキーの所持者を助けたのは間違いだったと思っていないか?」
「え……?」
「お前も私も奴がモンスターキーを持っていたのは知らなかったしそれで暴れるだなんて思ってもみなかったんだ。誰が何をやらかすなんて未来はお前が気負いすることじゃない。罪人の罪は溺死じゃ消えないし償えない。お前が助けたいって思う人を助けていけばいい」
スズキは凛々し気さのある微笑みを見せる。ダイゴはそれを見て、胸のつっかえが少し取れる。
「あ、あざっす……!」
ダイゴは少し前を向く。
リブーターズが交戦し、モンスターキーを回収したことをダイゴもスズキも知らないのであった。
続く
戦闘後、リブーターズはラーメン屋行ってます
サトル「リーダー、ラーメン屋行きましょうよ!」
イザナ「ああ、久々に行くか」
ヘータ「いいけどお前が全部出せよ」
サトル「なんでだよー」