ナツメ(ブーディカ)が四号ライダーなのでこの回までがチュートリアルになります
「四人も仮面ライダーが出てきてギガメガ大変だったぜー」
「そんなにやばかったんだぁ」
ダイゴとノリカは夕飯の食事を囲っていた。今日は鮭の唐揚げに豆腐の味噌汁だ。
「エマって女のライダーはアーカイブ自体が欲しいのと、他の男の三人のライダーは何か願い事があるってこと? おかわり!」
「多分な。ん」
ノリカはダイゴに自分の茶碗を渡し、ダイゴはすぐにそれに白米を装い渡す。
「ノリカはよ、俺の歌をどう思う?」
「兄ちゃんの歌? 昔から上手だと思う」
「そうじゃなくてよぉ……懐かしいとか思うか?」
イザナに『懐かしい』と言われたのがどこか引っ掛かっていた。
「懐かしい、か。確かに兄ちゃんが歌うとなんか不思議な感じがするかも」
「不思議ってなんだよ」
「うーん、一回聴いたら忘れられない感じ!」
「えー、なんだそりゃ!」
ノリカのあやふやな返答にダイゴは余計に悩むのだった。
「兄ちゃん、今日の鮭美味しいよ」
「さんきゅ!」
でもノリカに食事を褒められ、一旦は吹っ切れた。
※
「ダイゴー!」
「お! ケンジ」
ある昼間の運河。停留所に止まったダイゴのゴンドラにケンジは乗り込んだ。
「図書館前まで行って!」
「おっしゃ!」
ケンジを乗せたダイゴは図書館近くの停留所に向かう。
「ねえねえ! 来月またギャラクシアガイの映画あるでしょ? 前の続きの」
「おう! 絶対に見に行くぜ! なんなら一緒に行こうか?」
「うん行きたい!」
ケンジとダイゴはギャラクシアガイについての会話に花を咲かせる。
「あーでもお前と行くならお前の親御さんの許可いるな」
「えー?」
「そういやお前の母ちゃんってどんな人なんだよ?」
ダイゴはケンジの母について問う。
「お母さん? ボクのお母さんはね、姫坂の会社でお仕事してて眼鏡しててちょっとドジで――」
ケンジは母、ナツメについて思うことを語っていく。
※
「へくちっ!」
姫坂コーポレーションの受付にいたナツメはくしゃみをする。
「今日ちょっと寒いのかな」
ナツメがそう思っていると、ある女が彼女の目の前に来た。
「ねえアンタ」
「! 貴女は……」
エマ・タカハシだった。
「やっぱり忙しすぎてアンタの手がどうしても必要なのよ。やっぱり、私の仕事を手伝って」
「仕事って……あの時に見せてくれたベルトに関係あることですか?」
「もちろんよ!」
エマはナツメに迫る。
「あんた、ニュースで仮面ライダーの情報は見てる?」
「ええ、一応……」
「じゃあクラーケンを見たことは?」
「何度か。見かけたらすぐに逃げてしまいますが」
「なら話は早いわ!」
「へ?」
ナツメはエマに問われ、戸惑うしかなかった。
「盛り上がっているようだね、ナツメ・クサカベくん」
「あ、貴方は」
そこに来たのは姫坂コーポレーションの専務、カラン・カトウだった。
※
「ダイゴ、リヴートスターズってどんな三人なんだ?」
「え?」
停留所でゴンドラを止めていたミキヤにダイゴは問われる。ダイゴは先程ケンジを降ろしたとこだった。ミキヤはまだイザナにもヘータにもサトルにも会ったことはない。
「うーんと、ぱっと見は普通の若い男三人って感じっすね。でもちょっと怪しいとこもあるかも」
ダイゴはリヴートスターズの三人、特にイザナについて思い出す。
「アイツらがアーカイブで叶えたい願いがあるみたいですけど、それがわかればいいんすけど」
「? なぜ知りたいんだ?」
ミキヤはダイゴに更に問う。
「アイツらの願いがアーカイブじゃなくても叶う願いってわかれば、余計な戦いしなくて済むじゃないっすか。俺らのメインの仕事はゴンドラ漕ぐことっすよ!」
ダイゴはイザナの顔を思い浮かべる。ゴンドラの上で見せたどこか寂しげな表情を。
「……ダイゴは相変わらずお人好しだな。危険かもしれない連中の願いの心配をするなんて」
ミキヤは少しクスリと笑う。
※
「仮面ライダーって、クラーケンを退治してくれるゴンドラ乗りさん達の使っているシステムのことですか?」
「そうよ。わかってるじゃない」
「うちの会社はゴンドラの整備もしてますから、一応話は聞いています」
カランに呼ばれ専務室にナツメはエマといた。
「クサカベくん、君にはそこのエマくんの仕事を手伝ってもらいたいんだ。エマくんは君を指名した」
「?」
カランはナツメに説明する。
「エマくんはうちの会社に出資してくれる投資家の一人でね、契約上彼女とは協力関係になっている」
「ええ!? こんな若いのに!?」
ナツメは驚いた。どう見ても自分より一回り以上年下の若い女が自分の勤める会社に投資している人物だとは思わなかったのだ。
「えっと、その、エマさんのお仕事を手伝うって投資のことですか?」
「うーん、ちょっと惜しいわね。手伝ってほしいことは……」
エマはナツメに視線を向ける。
「アンタには、仮面ライダーとして私の戦闘を手伝ってほしいの。私のコレクション集めのね」
「!? 私が、仮面ライダー?」
ナツメはエマの鋭い視線に固まりつつも、予想もしなかった言葉に驚いた。
※
『きのう午前11時頃、ネオマリーナシティ・月原区にて殺人未遂事件が発生しました。被害者は40代男性で未だに意識不明の重症、容疑者の〇〇□□は犯行に違法とされる「モンスターキー」を使用したとされ、現在も逃亡中で――』
ゴンドラにあるラジオから殺人未遂の情報は流れるのをダイゴは聞いていた。
「やっぱモンスターキーの事件が増えてやがるな。一体どこで誰が流しているんだ?!」
モンスターキーのことはダイゴも気になっていた。
「それなんだよなぁ」
それはダイゴの傍にいたスズキもそうだった。
※
女がくたびれた服装で街を歩いていた。その女は危険物の使用を理由にたまたまその場に居合わせた見知らぬ男に重症を負わせてしまいそれゆえに逃げていた。女はその手に持っていた危険物、モンスターキーを見る。
「もっと、もっと甚振りたい、苦しむ声が聴きたい……」
女はアンロッカーになり暴力を奮い、その快感が忘れられなくなっていた。
「だから、もっと苦しんでよ!」
そう呟き女はモンスターキーを腕に刺し、ウルフ・アンロッカーに変わる。
「うわ! なんだ!?」
「きゃあああ!」
ウルフ・アンロッカーが周囲の人間を襲おうと、暴れる。鋭い爪を高く上げる。
「アンロッカーだわ!」
そんなウルフ・アンロッカーに見つけたのは、エマ・タカハシだった。その隣にはナツメもいた。
「ええっ!? あ、あれが……ニュースで見た、怪物?」
初めて見た怪物にナツメは震える。
「うん。契約上アイツらを退治してモンスターキーの回収をするもの、私の仕事よ」
エマは自分のベルトとディスクを出す。
「さっき説明した通りにやって。私に続いて! 変身!」
エマはエスポワールに変身する。
「さあ、ガッポリ行くわよ!」
エマはウルフ・アンロッカーに向かっていく。
「どわ! きゃあ! 爪でか!」
エマはウルフ・アンロッカーの爪を避けながら弓で攻撃していく。
「ナツメ、アンタもベルトとディスクで変身して戦うのよ! 早く!」
「い、いきなり?! 無茶ですよそんな怪物相手に!」
ナツメはアンロッカーと甚振り合うエマを見て涙目になる。単純に恐ろしく見えてしまう。
「ほっといたらこういう奴らにアンタの家族が狙われる、かもしれないわよ! アンタ旦那と子供いるんで、しょ!」
「!」
旦那と子供。エマにそう言われナツメはヒデオとケンジを思い浮かべる。ウルフ・アンロッカーに襲われたのは彼女と面識の無いごく普通の男性だった。夫や息子が襲われた男性と同じ目にあってしまったら……と、一瞬過った。
「……わかりました、行きます! ……変身!」
震えながらナツメは渡されていたベルトとフロッピーディスクを持ち、ベルトを装着しディスクを刺す。
『システムコード! ブーディカ!』
ナツメは黄緑と灰色の女戦士、仮面ライダーブーディカに変身した。
ナツメは走り、使い慣れない銃をウルフ・アンロッカーに向けて撃つ。アンロッカーはその弾に動きを鈍らせる。
「よっしゃ上出来!」
エマは一度アンロッカーから離れる。アンロッカーはナツメに向かって爪を大きく振る。
「わ! きゃああああ!」
ナツメはそれに怯え、避ける。
「やっぱり怖い~!!」
ナツメは仮面の下で泣き出す。
「今のいいダメージになってたわ! もう決めていいかも」
エマは自分のディスクを裏返し刺しなおす。それがライダーキックのギミックだ。
『エスポワール・ブレイキング!』
エマはナツメから離れたアンロッカーの周りを走り回る。
「すんごいの見せてあげるっ!」
エマはそのまま高く飛び、大きくキックする。
――ドガアアッッ!!
「ジャアアアア!!」
ウルフ・アンロッカーはキックを喰らい、そのまま倒れ爆発する。
アンロッカーは元の女の姿に戻り、倒れる。その身体からモンスターキーが排出されエマはそれをキャッチする。
「はい終わりー」
エマは変身を解除する。ナツメも解除し、その場にガクンと、座り込む。
「こ、こわかったぁー……。あ! とりあえず警察呼ばなきゃ! いや救急車? 消防車?」
初めての戦いで震えながらも、ナツメはスマートフォンを出し通報する。
※
「なんじゃこりゃオイ! ギガメガありえねえ!」
後日。エマがウルフ・アンロッカーを倒したことがネットニュースとして出回った。タブレットに表示された新聞記事を見てダイゴが驚く。
「ピンクの仮面ライダーがエマで……このもう一人は、誰だ?」
記事の写真にはエスポワール、つまりエマの姿と、見知らぬ黄緑の仮面ライダーの姿があった。その黄緑の仮面ライダーがケンジの母親であることをダイゴはまだ知らないのであった。
続く
リヴートスターズの食事シーンもいつか書きたいです